数日後、真澄と秋山は毎度の如くコンビニ船に乗り込んで学園艦を目指していた。場所はアンツィオ高校。
この学校は創始者の意向もあって観光目的で来る人もおり、常に多くの人が出入りできる様になっていた。そのため……
「すごい人……」
「わぁ!屋台が一杯ですね!」
そこには多くの人とたくさんの屋台が並んでいた。事前に調べていたとはいえこれはすごい。確かに観光客で酷い時は授業が止まるわけだ。
「しかし……」
するとそこで秋山は横にいる真澄を見てつぶやく。
「まさか男装してくるとは思いませんでした」
そう言いボーイッシュな服装に髪も纏めており、側から見るとロン毛男子の様に見えていた。
「でもこれなら怪しく思われないだろう?」
少し音程を低くして声まで男に寄せている彼女はそう言うと、秋山もそのガチっぷりに思わず呟く。
「なんだか、女性が釣れるような気がするのは気のせいでしょうか……」
そんな不安を抱きながらアンツィオの制服に身を包んだ秋山は学校に降り立っていた。
そしてアンツィオ高校に潜入した真澄は片手にカメラを持ちながら学園艦を歩く。
「さすがは観光地で儲けているだけはある」
本場の様な雰囲気に真澄は学園長の頭の良さを感じていた。
「屋台まで出しているとは、毎日が学園祭みたいだな」
思わずそう溢してしまうと、そこで通りすがりの生徒に聞いた。
「君達、すまないが道を聞いても良いかな?」
「っ!?はっ、はい!何でしょうか!//」
突然話しかけられて顔を赤くしながらその少女は答えると、まずはそこで聞いた。
「戦車道部の場所を知らないかい?」
「せっ、戦車道部ですか?」
「あ、あっちの方……です」
そう言いその生徒は指を指すとそこで真澄は感謝した。
「ありがとう」
そう答えて去っていくと、残った女性とはボーイッシュなその青年を見てざわついていた。
「さっきの人……」
「すっごい良い人だった……」
「戦車道部に知り合いでもいるのかしら?」
「ええー、嘘ー」
少女達は突如現れたイケメンに大興奮だった。
「あのちょっと涼しげな顔がなんとも……」
「良い雰囲気だよね。私ああいうの好きだわ」
のちにこの噂が変に出回り、とんでもないイケメンが戦車道部にいると噂になり。アンツィオの戦車道部に入部希望者が殺到したとかしなかったとか……。
少し時は経ち、私はある屋台で注文をしていた。それは……
「アンツィオ名物鉄板ナポリタンだよ~。美味しいパスタだよ~」
そう、偵察である。
ここの屋台は屋根がセモヴェンテを模しており、戦車道が経営している店の様だ。そこで私はナポリタンを食べるためにゲフンゲフン、情報を聞くために注文をしていた。因みにこんなに屋台があるのは観光客に渡す料理を作って追加で部費を稼ぐためらしい。
なるほど、ここの学園長は頭が回っている様だ。常貧乏なウチでも同じことできないかな……あ、でもうちの名物。あんこうとしらすと干し芋しか思い浮かばねぇ……あらいっぺ推してもなあ……まほさんは喜びそうだけど。
「まず、オリーブオイルはケチケチしな〜い。具は肉から火を通す〜、今朝取れた卵をトロトロになるくらい……ソースはアンツィオ校秘伝トマトペーストを……パスタの茹で上がりとタイミングを合わせて……完成!特製鉄板ナポリタン出来上がり!」
出来上がるまでのスピードが早すぎる!!そして美味しそう!!
あれ?でもナポリタンって日本発祥じゃあ……そもそも卵ってあったっけ?(卵は愛知県のナポリタン。ただし卵はナポリタンの下に敷いている)
まぁ、美味けりゃ問題なし!
そう言い、一口食べる。
「うわっ、美味!!」
一瞬で平らげるとキッチンでナポリタンを作っていた少女が声をかける。
「お客さん、すごい食いっぷりだね〜」
「そうか?」
「おう!そんな速度で食べるなんてまるでCV33みたいだな!」
「ふーん」
そう話しかけてくる少女に私はさりげなく話しかける。
「もしかして……ここの屋台って戦車道か?」
「おう、そうだぞ?あ!もしかしてウチラに興味あるのか!?」
「ああ、そんな所だな」
男ボイスでそう言うと少女は自分を誘う様に言う。
「うち、ペパロニって言うんだ。後で戦車道のイベントあるから見ていってくれよ」
「へぇー、何処でやるんだ?」
「あそこのコロッセオさ」
そう言い指差す。その先にはローマのコロッセオに似た建物があり、人が集まっている様だった。
「じゃ、後でお邪魔しようかな」
「おう!ぜひ見に来てくれよな!お兄さん!そので秘密兵器も見せる予定だしな!!」
うぉい!秘密兵器ゆうてるやん。秘密とはなんぞや。思わず真澄は呆れてしまっていた。
そして周りではイケメンに見えているらしい自分を見る目線が集まっていた。
そして、先ほどのペパロニとか言った少女が言った様にコロッセオには大勢のアンツィオの生徒が集まっており、その中で真澄は秋山を見つけた。
「調子はどう?」
「バッチリです!黒田殿は?」
「うーん、編成はわかったけど作戦は分からなさそう」
そう答えると秋山は渋い表情を浮かべていた。
「そうですか……無理だとは思っていましたが、どこかに隠しているのでしょうか?」
少なくとも美味しそうだったから屋台巡りをしながら探していたなんて言える訳ない……あれ?今まで何個屋台巡ったっけ?
「(お土産で武代達にも買っていくか……)」
そう思っているとコロッセオに一人の少女が立ち、歓声が巻き起こる。
「諸君!待たせたな!このアンツィオの統帥、アンチョビの登場だ!!」
コロッセオの舞台上になっているところから軍服姿でツインドリルをした少女が現れる。どうやら彼女がアンツィオ高校戦車道部の隊長らしい。
「あ!ドゥーチェ!!」
「いつの間に!?」
「ドゥーチェだ!」
「「ドゥーチェ!!ドゥーチェ!!ドゥーチェ!!ドゥーチェ!!」」
怒涛のドゥーチェコールが巻き起こり、空気が揺れる。スッゲェ、五月蝿ぇ……。
そう思うとアンチョビは壇上から降りて歩く。そして緑色の布に隠された何かを指しながら言う。
「諸君!我らの悲願である準決勝戦出場為に、大洗との二回戦に向け痛切な思いでコツコツと貯金してやっとの思いで秘密兵器を買った!みんな見ろ!これが、我々の秘密兵器だ」
そう言うと掛けられていたシートが下されて秘密兵器の姿を現した。装甲がリベット溶接の古めかしい、被弾経始が成された長砲身の戦車だった。
そう、それはイタリアの重戦車、P40であった。
「おお!!P40の本物!初めて見ました!」
「確かに珍しいわね……」
だが、性能は確かに良いものだ。イタリア降伏後に未完成品を接収したドイツ軍がわざわざ使用したくらいだからな。
「バソットでは有りませんでしたね」
「ああ、その様だな」
セモヴェンテM43の通称で秋山は話しかけると真澄も頷いていた。まあ、固定砲塔より全周砲塔を選ぶわなという話で……だってそっちの方が使いやすいし。
どちらにしろ秘密兵器がP40という事で、隊長であるアンチョビはP40の砲塔に昇ってポーズを取る。
「これで大洗なんぞ一捻りだ!」
「さすがドゥーチェー!」
「ドゥーチェ。こっち向いて~」
生徒たちが呼びかけるとアンチョビさんはにこっと笑いその生徒たちにポーズをする。
「現場は大変な盛り上がりです」
「「「「「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!」」」」」
このドゥーチェコールはしばらく続いていた。
「随分と人気ですね……」
「ああ、それだけ慕われている証拠だ」
そう言うと秋山は真澄を見ながら一言。
「黒田殿もですよ」
「え?」
そう答えると秋山は後ろに目線をやった。
その方を見ると慌てて目線を動かした複数の女生徒達。
「見事に生徒を釣っているではありませんか!!」
「えぇ……」
思わず真澄は唖然となってしまう。そんな釣れるのかとも思ってしまうと秋山が言う。
「これから潜入任務に来る時はもっと影を消してからきましょう!」
「そんなものかなぁ……」
真澄はそう言うと二人はコロッセオを念の為にバラバラに出て行くとそのまま学園艦を後にしていた。
あとついでにお土産で屋台料理を少々買って行った。
そして大洗女子学園生徒会室ではみほ達が集まって作戦会議を開いていた。
「河嶋、次のステージどこ?」
「はっ!アンツィオとの対戦は山岳と荒地ステージに決まりました」
「はーい!質問、アンツィオってどんな学校?」
「あぁ〜、確か創始者がイタリア人だった筈」
角谷がざっくりと説明をしてくれた。
「イタリアの文化を日本に伝えようとしたイタリア風の学校だ。だから戦車道もイタリアの戦車が中心。先の一回戦で使用した車両は、CV33とセモヴェンテM41」
そこで河嶋がホワイトボードに貼られたアンツィオ高校のCV33とセモヴェンテM41のイラストの説明をする。
「(豆戦車と突撃砲か……)」
豆戦車は短十二糎自走砲の苦手な相手だ。
そもそも豆戦車は機動力に長けた車両である代わりに極限まで装甲と武装をとっぱらったニッチ車両であり、正直対人戦の存在しない戦車道では偵察以外に使えない完全偵察用の車両だ。
「(直射で当てればひとたまりも無いのだが……)」
何せ小銃弾ほどしか防げない装甲だ。榴弾砲を叩き込めば確実に倒せる。
「CV33ってわたくし大好きです!小さくて可愛くてお花を活ける花器にピッタリです!」
「だからって花を植えないでよ」
榎本がそう言うと、河嶋が溢す。
「新型戦車が入ったと聞いたが?」
「どんなの?」
「ちょっとわからないです」
「一回戦には出なかったもんね」
「だからこその秘密兵器か……まいっか。そのうち分かるし」
角谷がそう答えると、武部が首を傾げた。
「え?何で分かるの?」
思わず武部が角谷に尋ねようとしたと同時に、生徒会室の扉が勢い良く開いた。
「秋山優花里、ただいま戻りました!」
「ただいま〜」
そこには前と同じコンビニの店員服を着た秋山となぜか男装している真澄がいた。
「おかえり〜」
「おお、待っていたぞ」
「お疲れ様〜」
生徒会トリオは、待ってましたと言わんばかりの態度で出迎えていた。
「その格好!?」
「優花里さん達…もしかしてまた?」
「御名答、お土産もあるから食べながら鑑賞会をしようや」
彼女達はそう言うと片手に屋台料理を持ってそう言った。