そして秋山達の偵察で敵の秘密兵器がP40である事を把握した角谷達は真澄が買ってきたアンツィオの屋台料理を食べながら言う。
「非常に珍しい車両です」
「初めて見ました。運用しているところ……」
思わず駆けつけた伊藤がそう溢すとそこで真澄は言う。
「P40重戦車はほとんど活躍していませんからね。情報を集めるのは至難の業ですよ」
「そうだね……」
みほはそこで戦車を見ながら真澄の買ってきたナポリタンを食べていた。
アンツィオの偵察から数日後。
「……確かこの辺りのはずなんだけど」
「地図だとこの辺りなんだよね?」
日差しが差す中、真澄とみほの二人は地図に従って歴女達の住むシェアハウスを探している。
「ごめん真澄さん。わざわざついて来てもらって」
「問題ないわよ。私も珍しい戦車を見てみたいし」
そう言い、真澄はどこか楽しげに語る。
アンツィオで秘密兵器と名高いP40の資料はほとんど残っていない。と言うか活躍の場が少なすぎてまともなデータがないのだ。一応、ドイツ軍はこれを中戦車として徴用し、アンツィオの戦闘に投入したとは言われているが、詳細は不明だった。
そこで欧州戦線に詳しいエルヴィンがその資料を持っていると言う事でカバさんチームのシェアハウスに来ていた。
「でもカバさんチームもシェアハウスをしていたなんて……」
「プライベート丸出しになるからみほちゃんにはお勧めできないなあ……」
「そうなの?」
そんなことを言いながら歩いていると、どこからかカコンッと言う金属音がしてきてその方に行くと。そこには和風の家があり、表札を見るとカバさんチームのソウルネームが書かれていた。
「間違いないね」
「みたいだね。てか、ここでも表札はソウルネームなんだ……」
そう言い、真澄とみほの二人は玄関まで行き声をかける。
「ごめんくださーい。誰かいませんか?」
すると玄関の扉が開き中からエルヴィンと左衛門佐、おりょうが笑顔で出迎えてくれた。
「「「いらっしゃい!」」」
「「お邪魔します」」
普段改造した制服を着ている歴女達が普段着なのは新鮮な気がするが、それでも個性が強い。そして二人は居間へと上がる。
「お茶はいったよ」
そう言いカエサルがお茶を持って来てくれたが、お盆に乗っている湯呑みがこれまた個性丸出しであった。
「ああすまない」
「ありがとう」
真澄とみほが礼を言う。
「P40の資料あまりないけど……」
そう言ってエルヴィンが机の上に大量のP40に関する資料を置く。
「こんなに沢山」
「英語じゃないぜよ」
エルヴィンが持ってきた資料は、日本語ではなく英語でもない。
「……イタリア語?」
みほが首を傾げる中、真澄とカエサルが資料を見て言う。
「「Le Ferze armate italiane」」
「「「「えっ!?」」」」
二人は流暢なイタリア語で本の題名を言う。その事にみほ達が驚く。
「イタリア語読めたんだ!?」
「びっくりぜよ」
「イタリア語ラテン語は読めて常識だろ?」
「常識じゃない!」
カエサルがあっさり答えると左衛門佐がつっこむ。するとエルヴィンがリュミを見ながら言う。
「真澄さんもイタリア語読めたんだ」
「ええ、他にも色々読めるわよ?中国、スペイン、フランス、ドイツ、アラビア……etc」
軽く十カ国程言うとみほ達は口をあんぐりとさせたままであった。
「まるでビクトル・ボウトでござる……」
「おいっ、私を死の商人と同じにすんじゃない」
真澄がそう突っ込むと彼女はみほ達に言う。
「特にイタリア語なんてローマ字読みが発音だから意味さえ覚えれば読めるわよ」
「「「「そうなの(でござるか)!?」」」」
「ああ、その通りだ」
エルヴィンがそう言いって頷いていた。その事にへぇ〜となっている他四名。取り敢えず目的を果たそう。
「図面やスペックはわかるから、コンビニでコピーにしよう」
カエサルはそう言いスラスラとノートにP40のスペックを翻訳して書き写してくれる
「キリがないけど、だいたいこんな所かな」
「ありがとう」
P40の基本的な諸元、情報の書かれた資料をみほが受け取る。
「本当は私の知り合いがアンツィオ校に居るから、聞いてみる方が早いんだけどな」
「そんな奴居たのか?」
「初耳ぜよ」
「どんな友達なんですか?」
「小学生からの友達で、ずっと戦車道やってる子だ」
自信ありげにカエサルが言う。
「そんな情報源があるなら最初から聞けばよかったのに」
「いや、敵が友達だからこそ正々堂々と情報集めたいな。私は」
「なるほど、友情は友情。試合は試合ぜよ」
「複雑だな」
エルヴィンの言葉にカエサルがそう言うとおりょうは納得した様に頷いていた。
「ライバルですか、羨ましいです」
みほが羨ましそうにそう言う。みほちゃんのライバル……確かにいないわね。どっちかっていうとみほちゃんは友人ができる部類の人間だから……。それなんて主人公キャラ……。
「じゃあ坂本龍馬と武市半平太」
「ロンメルとモントゴメリー」
「武田信玄と上杉謙信」
「ミハエル・ヴィットマンとジョー・イーキンス」
「シ⚪︎アとア○ロ」
「「「それだ!!」」」
歴女達が指を指して一斉に同意する。
「……って、それアニメでござる」
「あら?バレちった」
おりょうのツッコミに真澄は少し面白そうにしていた。
翌日、二回戦に向けて練習の始まるため。各チームの車長達は机を中心に集まった。
「んで、向こうの装甲はどんな感じ?」
角谷が聞くと、みほが答える。
「P40の前面はカバさんチームやクマさんチームなら相手の有効距離の外から貫通可能です」
「心得た」
「了解」
そこでエルヴィンと榎本が頷く。
「んじゃあ、ぴよぴよの相手はカバさんチームとクマさんチームだね」
「ぴよぴよ?」
そこで真澄が思わず首を傾げる。
「P40のことですか?」
「そうそう、ぴよぴよ」
「ぴよぴよって、もっと他に良い言葉はなかったんですか会長?ヒヨコじゃああるまいし……」
思わず真澄が聞いてしまう。
「いいじゃん黒田ちゃん、P40よりピヨピヨの方が親しみやすいしそれに可愛いじゃん。んじゃあ、ちょっと敵味方にわかれて練習してみよっか。ぴよぴよ役はどれがいい?」
「P40に比較的近いのはⅣ号ですね」
諸元表を見ながら真澄が言うと、角谷は続ける。
「じゃあ、あんこうがぴよぴよ。アヒルさんとクマさんがカルロベローチェってことで」
「では、Ⅳ号と八九式、短十二糎を仮想敵として模擬戦をやってみましょう」
「「「はい!」」」
そんな訳で二回戦に向けた本格的な訓練が始まる。
P40をⅣ号が、CV33やM41役を八九式や短十二糎が担当していた。
「今度の山岳マップ、榴弾砲にはもってこいの場所ね」
「でも聖グロの時のような所業は難しいわよ」
「ただでさえ相手は速度が命みたいな編成ですからね……」
「マグロかな?」
大隈がそう言うと車内に笑いが飛んだ。
訓練内容は簡単で、逃げるあんこう、アヒル、クマさんチームを他のチームが追撃。
八九式を追撃する38tの車内で(主に河嶋)が煽り運転を受けて怒鳴り散らし、残るⅢ突とM3はⅣ号と短十二糎を追撃する。
しかしその途中でM3はクラッチの操作をうっかり誤り、M3が脱落する。
その後、Ⅲ突に長距離射撃訓練を行わせ。その監督は大久保が行っていた。
『急停車して、車体の動揺が収まると同時に発砲して下さい』
『撃ったらすぐ移動を心がけなさい』
そう言い、遠距離での砲撃を行うが。Ⅲ突の砲弾はみほ達の頭上や横を越していく。
「撃てっ!」
代わりに大久保の十二センチ砲弾はⅢ突よりも弾速が遅いにも関わらず一発でⅢ突を撃破していた。
『ま~て~!』
その頃、M3の周りをハムスターの滑車の如く八九式と38tは走り回っていた。
『いやです!』
『止めたければ力づくで止めればいいじゃないですか! ……なんちゃって』
『言ったな!こいつ!』
そう言うと、河嶋は激昂して八九式を追いかけ回していた。
数時間後。
「よし!練習終わり!解散!」
「「「お疲れさまでした!」」」
今日の訓練が終了し、真澄や戦車から降りた四人はポ○リを飲みながら汗を拭う。するとそこでふと大久保がこぼす。
「今日の夜どうしよう……」
「イタリアンはどう?」
「次がアンツィオだから?できるの?」
「やってみるしか……」
伊藤がそう言うと、そこで大久保が言う。
「そうそう。あと私もアンツィオの料理が食べたかった……」
「アハハ……」
大久保がそう言い、思わず苦笑してしまっていると武部達が声をかけて来た。
「ねぇねぇ、皆んな!今日の夜どうするの?ウチらイタリア料理にしようと思ってたんだけど……」
「え?あ、うーん……ウチらもなんか適当にイタリアンにしようと思ってたとこ〜」
「おぉ!クマさんチームも同じでしたか!」
秋山がそう言うと、そこで真澄の携帯がなった。
「あっ」
その携帯を見て真澄は一瞬声を上げると、榎本達にいう。
「悪い、呼ばれたから先に帰ってて」
「え?ああ、分かった……」
榎本がそう反応すると真澄は先に学校を後にしていた。
そして学校を出た真澄はそこで携帯を取っていた。
「もしもし?」
電話の相手はエリカからだった。
『ああ、本当に繋がったのね』
「何よ、私が嘘ついているみたいじゃないの」
『前に私の電話番号って言ってヤクザ事務所に電話かけさせたのは何処の何奴?』
「あれは騙される方が悪い」
真澄はそう言うとエリカは呆れた声を漏らす。
『はぁ……まあ今回はいいわ。それより、今のみほの状況が聞きたくてね」
「そんなの自分から電話すればいいのに……」
『できる訳ないでしょう。みほが黒森峰を去った時のことを考えれば……』
「……」
喧嘩別れしたんだなと真澄は納得できてしまう。今度みほの実家に行って説教をした方が良いかも知れないと思いながら真澄は言う。
「ともかく、一回戦勝利おめでとう」
そう言うとエリカは不完全燃焼といった声色で呟く。
『ええ、相変わらずの突撃戦法だったわ。中学生大会の時の準優勝が嘘みたいに撃破が簡単だった』
「そうかい。そりゃ、辻先輩が隊長じゃあねえ……」
参謀としては無能の……ゲフン典型的な愚鈍で怠慢気質の彼女に思わず真澄も苦笑してしまう。
「まあともかく。みほちゃんは新しい場所でうまくやっていけているよ」
『そう……』
真澄がそこでそう言うと、エリカも少し安心した様子でそう漏らしていた。
『今度、そっちはアンツィオとですって?』
「ええ、今みほちゃん達が作戦を立てているわ」
『そう……』
エリカはそこで電話向こうで話している胡散臭いノッポに向かって最後にこう言った。
『アンタも必ず、戦車道を取り戻しなさい。私が大洗に乗り込む前にね』
「はいよ、その時が来たらね」
真澄は心の籠もっていない声でそう答えていた。