知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第四四射

そして二回戦のアンツィオ高校との戦いが近づいてくるある日、真澄はある場所に呼び出しを受けていた。

 

『横浜にいる。来るならさっさと来い』

 

こんなメールが送られてきた時点で誰が送ったかなんてわざわざ見なくても分かった。

私服姿で学園艦を降り、そのまま横浜のとあるカフェに訪れた真澄はそこで店員に言った。わざわざ横浜などと言う場所に呼び出した理由は定かではないが……。

 

「いらっしゃいませ」

「ああ、予約していたものです」

「畏まりました」

 

そう言うと真澄は店員の案内でそのまま店を進むと、そこでメールを送った人間である西住まほを見た。彼女は黒森峰の制服に身を包んでいた。

 

「お久しぶりです。まほさん」

「……もうお姉ちゃんとは、呼んでくれないんだな」

「流石にこの体でそれは周りが驚きますよ」

 

少々悲しげにそう話すまほに真澄は自分の時折忌々しくなるこの身長で返す。

元々自分が戦車道を始めようと思ったきっかけがこの西住姉妹との出会いだった。初めて会った時にまほに勘違いされて『お兄さん』と言われのは良い思い出である。

 

「真澄、みほは元気にやっているか?」

「ええ、楽しく戦車道をやっていけていますよ」

 

彼女は席に座りながらそう答える。

 

「そうか……」

 

それを聞いてまほは安堵した様子を浮かべる。そして次に真澄を見ながら言った。

 

「二年前、私はお前を守る事が出来なかった……」

「謝罪なら受け取りませんよ?」

 

真澄はまほに対してそう答えると。彼女はそんな真澄に後悔をこぼす。

 

「私は真澄を戦車道に招き入れた人間だ。それなりに責任を…私は持つべきだった」

「……はぁ」

 

そこで真澄は呆れたようにため息を吐く。

 

「まほさん。貴方も貴方で馬鹿な人ですよ」

「?」

 

すると真澄はそこで鋭い目をまほに向ける。

 

「私が知波単学園に行ったのも私の判断。

私が戦車道を始めたのも私の判断。

全て私の選んだ人生です。そこにまほさんが入ってくるような真似はしないでください。貴方の勝手な妄想には私もついていきませんよ」

「……」

 

真澄の父親譲りの鋭い目とナイフのような鋭さを持った言葉で彼女はまほに言う。

 

「大方、今日呼び出したのは改めて私にみほちゃんのことを頼みにきたんでしょう?」

「……」

「すでに電話は何件か届いていますし、手紙も来ています」

「っ……!!」

 

彼女はそう言うと、まほは驚いてしまっていた。

 

「今の所、私の部下に全て処分させていますので。みほちゃんには一切届いていません。それから常に彼女に危害が加わらないように監視も行っていますよ」

「……選り取り見取りだな」

「ええ、貴方達が動けない以上。みほちゃんを守れるのは私くらいでしょう」

 

彼女はそう言うと、まほは真澄に頭が上がらなくなっていた。

 

「少なくとも、去年の大会で失態を犯したみほちゃんは今でもそのことを気にしている兆候が見られます」

 

そこで真澄はみほの現状を細かく伝えるとそこで改めてまほに聞いた。

 

「昨年度に落下したⅢ号の乗員はその後。どうなっています?」

「……赤星を除いた全員が、大会後すぐに転校した」

 

まほはそう答えると、そこで真澄はまほに向かって静かに。それでいて恐ろしいほどの怒気を孕んだ声色で言った。

 

「それが今回の事件で貴方達の犯した最大の過ちだ」

 

彼女はキッパリとそう言うと、頼んだコーヒーを持ってきた店員ですらその気迫に顔を青ざめていた。

 

「まほさん。貴方は無理にでもそのⅢ号に乗っていた乗員を引き止めるべきでした。出なければみほちゃんが苦しむこともなければ。その乗員も一生を後悔に埋め尽くされて生きていく事も無かった」

「……」

「みほちゃんが戦車道を逃げるようにしてやめて言ったのは大会での失態もあるかも知れませんが、一番の原因はその転校していった乗員達です」

 

するとそこで真澄はまほに説教をし始める。

 

「黒森峰女学院が悲願の十連覇を逃した事実を、黒森峰のOG会はみほに全て押し付けようとした。しかしそこを貴方が庇ったと言うのは聞いています。ですがその前にⅢ号の乗員を保護するべきでした」

 

そこで真澄はコーヒーを一口飲んで続けた。

 

「みほちゃんが大会中に人命救助を行った事は賛否両論かも知れません。事実、人命救助中にフラッグ車を撃ったプラウダ高校の生徒にも批判が届いているのです」

 

そこで彼女は仕入れた情報をまほに伝える。

 

「しかしそこでなぜ、黒森峰に対する批判も多いのか。貴方はご存知ですか?」

「それは……」

 

まほは心当たりが一つあった。するとそこで真澄は頷いた。

 

「そうです。黒森峰には大勢の西住流の教えを受けた生徒がいるからです」

 

日本最古にして、知名度では最大の流派である西住流。その門下生の多くは黒森峰女学院に入学しているのもまた事実。

 

「『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心』それが西住流……私も教わった時は散々言われてきました」

 

そう言い彼女が西住流の元で戦車道を学んでいた一時の景色を思い出す。彼女は一通り西住流の教義を学んだ後に、すぐに辞めて別の流派に学びに向かってしまっていたので。まほと試合をした事はほとんどなかった。

彼女は行脚のように戦車道の各流派を学び歩いており、その過程で多くの事を学んでいた。だからこそ、彼女の言葉には重みがあった。

 

「しかし、勝利至上主義を貫く事は同時に敵を多く作ることでもあります」

 

そう言うと、真澄は西住流の欠点を言い出す。

 

「味方をどれだけ犠牲にしても確実な勝利を手にする西住流は、時に武士道の面において禍根を残す問題を作り上げます。

 

例えば、去年の大会のように他の車両の救援などでフラッグ車が動けない時。確実な勝利を求める西住流の流儀であれば確実にその瞬間を砲撃するでしょうし、事実。過去に貴方はそれを行った」

「……」

 

まほはそこで小学生の時に、救援中だったフラッグ車を西住流の教えに基づいて撃ち抜き。その選手の妹に恨まれた当時の記憶が蘇った。

 

「確かに試合で勝利をする事はできますが、あくまでもスポーツの域を出ない戦車道においてその方針は客観的に見てどう受け入れられると思いますか?」

「……」

 

そんな真澄の言葉にまほは黙り込んでしまう。

 

「『恨まれて当然』そう言うふうに捉える人間が当然の如く現れます。

今はまだ日本最大の流派であるからこそ押さえ込みが効いていますが、最近は島田流も徐々に影響力を伸ばし始めています。この西住流の在り方に当然疑問視される目が増えるわけです。

だからこそ、西住流や圧倒的な強さを誇る黒森峰女学院が去年の大会で準優勝となった時に『ザマアミロ』と言った記事まで書かれてしまうんです」

 

そう言い彼女は調べ上げた去年の全国大会後に書かれたネットニュースを思い返していた。

 

「まほさん。みほちゃんの事は私が責任を持って守ります。今のみほちゃんは新たな自分なりの戦車道を見つけられる直前の段階です。あれは相当化けると思っておいてください」

「……分かった」

「多分、決勝まで登りますよ」

「そうか……」

 

まほはそんな真澄からみほの話を聞き、少し頼もしい目をすると真澄は言う。

 

「今の私にできる事と言えばみほちゃんを陰から援助する事ぐらいしかできませんからね……」

 

皮肉混じりに彼女はそう溢すと、コーヒーカップを傾けていた。するとそこで真澄はまほに言う。

 

「近々、しほさんの元に行こうと思っています」

「っ!?」

 

まさかの宣言にまほは驚いてしまうと、彼女はその訳を言う。

 

「あの人の事です、みほちゃんが戦車道を再会している事実に驚いていることでしょう……」

「……」

 

するとまほが小さく顔を伏せたので、そこで真澄は色々と察した。

 

「あらあら、師範はまだ知らないと……」

「…よく分かるな」

「ええ、これも慣れですよ」

 

まほは相変わらずの観察眼だと舌を巻いてしまうと、そこで真澄は小さく笑って言う。

 

「まほさん。しほさんがみほちゃんの戦車道に気づいた時は一報を入れてください。私から師範にある提案をさせていただきます」

「……どんな提案なんだ?」

「それはまだ秘密です。成功するかどうかも分からないので」

「……」

 

茶目っ気に人差し指を口元に当てて答える真澄にまほは相変わらずだとも思ってしまった。

すると真澄はつけていた時計の時間を見ると、席を立ってしまった。

 

「もういくのか?」

「ええ、まほさんも試合の練習があるでしょう?早めに帰ったほうがいいですよ」

「そうだな……今日はすまなかった」

 

まほがそう言うと、真澄は笑って答える。

 

「いいんですよ。マネージャーは試合前後でもなきゃ基本的に暇ですから」

「……」

 

真澄がそう答えると、やはり少し悲しげな眼差しを向けるまほに真澄は言う。

 

「大丈夫ですよ。戦車道に関われるだけまだマシな部類ですから」

「しかし、真澄には戦車道の才能がある。それは確かだ」

 

まほがそう断言すると、真澄は少し嬉しげに答える。

 

「次期西住流師範候補に言われるとはありがたい話ですよ」

「…まだ決まったわけじゃないのだが……」

「半分そんなもんでしょう。同期の中では貴方が一番優秀ですしお寿司」

「……」

 

まるで時が動いていないかのように変わらない彼女の態度に、まほは安心感を覚えた。

どれだけ周りが変わろうとも、この関係だけは変わっておらず。また会って話がしたいと思ってしまった。

 

「困ったときは言ってください。今の私は大洗戦車道部のマネージャーですから」

「ああ…困った時にな……」

 

まほはそう返すと、そこでふと真澄に気になっていた疑問を問いかけた。

 

「ところで何だが……」

「はい?」

「名刺に書かれていた『大洗風紀機動隊監督官』……あれはなんだ?」

「……ああ、あれですか」

 

まほの疑問に真澄は納得した様子で頷いた。

 

「風紀委員なのか?」

 

まほがどう言う役職なのか聞いた。

 

「ええ、強い風紀委員ですよ。なんせ私が鍛え上げた元は不良狩りの集団ですからね」

「……」

 

その言葉に思わずまほ目を見開いてしまっていた。そりゃそうだよな、真面目だって言われてた私が不良狩りなんてしてたんだから……。

 

「やっぱり追放されてから大変だったのだな……」

「だからんなんでそっち方向に持って行こうとするんですか……」

 

そんなまほの言動に思わず真澄は呆れ前ってしまっていた。

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