知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第四五射

まほの説教を終え、二回戦のアンツィオ戦を前日に控えたこの日。

学園の廊下ではみほ、五十鈴、武部の三人が話しながら歩いていた。すると、みほ達と反対方向から金髪に猫耳カチューシャに、瓶底メガネを掛け長身の女生徒がみほ達に声を掛けようとしていた。

 

「へぇ〜、継続高校って結構強いんですね」

「うん、前に練習試合の時に苦戦したんだよね」

「黒森峰なのに?」

「そうなの!危なかったんだ」

「うちとどっちが強い?」

「やってみないと分からないけど、隊長が凄く優秀な人で……」

 

しかし声かけに失敗し、三人はその生徒に気付かないまま過ぎ去って行った。女生徒はその場でボーッと突っ立っていた。

 

「また声かけれなかった……もうダメだチキンハートボク……次はきっと頑張るんだ、ねこにゃー!」

 

するとその瞬間、

 

「何してんだ、あんた?」

「っ!?」

 

後ろからその少女が声をかけられると、そこには自分よりも背の高い。鋭い目をした少女が立っていた。

そこにいるだけでも威圧感のある見た目にそのメガネをかけた少女は少し虚どっていた。

 

「えっと……貴方は?」

「戦車道部マネージャーの黒田真澄だ」

 

そう言うと、少女はハッとなって挨拶をした。

 

「あ、あの僕。ねこにゃーって言います」

「ねこにゃー?」

「あっ、違う。猫田舞です」

 

慌てて本名に言い直すと、真澄はそこで聞いた。

 

「猫田さん、みほちゃ……西住さんに用があるみたいだったけど、どうしたの?」

「あっ、僕も戦車道に入りたいって思っていて……」

「ああ、なるほどね」

 

そこで真澄は彼女の体の肉つきなどを見て聞いた。

 

「君、戦車の経験は……」

「ゲ、ゲームなら……」

「なるほどなるほど……」

 

そこで彼女は猫田を見ながら言う。

 

「戦車道に入るのは歓迎するけど、まずは体力からだな。今のままじゃクラッチ入れるだけでも苦労するぞ」

「そ、そうなのか?」

 

彼女はそう答えると、真澄は頷いた。

 

「ええ、おまけに戦車道やるなら最低でも三人はいるから」

「わ、分かった。ネット仲間に同じ人がいるか、聞いてみる」

 

内心大丈夫かなと思ってしまう真澄であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

戦車道履修と言う事で合法的な授業免除がなされた真澄はその後、戦車倉庫を訪れていた。

 

「……」

 

そんな中、短十二糎自走砲の前で真澄はその車体に手を触れる。

 

父親によって奪われた戦車道選手としての人生。しかしこれくらいであれば許してくれるだろう。

 

前に清靖がここを訪れた時にも言われた。

 

ーー姉さん、戦車道やろうよ!やっぱり姉さんには戦車道が似合っているんだ!父さんには僕からも言っておくからさ!

 

「そいつはちと厳しいぞ。清靖……」

 

父は戦車道を嫌っていた。戦車道を私がやりたいと言った時、父は猛反対だったのだから。おかげで中学生の時に家を出て行ってしまった。

父が戦車道を嫌う理由は、かつて初恋だった人が戦車道で大怪我をしたからだと、後で母から教えてもらった。

 

中学生の時に近場で戦車道をやっている学校は聖グロリアーナ女学院と知波単学園があり、なんとなくで私は知波単学園を選んだ。

 

普通なら実績のある聖グロリアーナに行こうと思うだろう。おまけに当時はまほから黒森峰女学院に招待もされていた。これほど美味しい話を私は蹴って、あえて蛇の道を進む選択を選んだ。

 

人生は一度きり、充実した日々を送るのなら苦労した方が何倍も楽しいだろうと。その時の私は思っていたのだ。

事実、知波単学園で先輩達との言い争いばかりだったあの日々は実に充実していた。

 

しかし、その時私は大人と言う、親と言う縛りを持たぬ存在が行う権力という名の下の横暴の事実を知らなかった。

 

彼等は噛みついて、その上肉を剥ぎ取っていく私の存在をうるさく思っていた。

だから持っている力を使って私を潰しにかかった。

 

そして父も、そんな私の無実の不祥事を本物にすり替えて私を戦車道の世界から強制的に追い出した。それも、己の持つさらに強い権力で……。

 

「権力なんてクソッタレだ……」

 

中学生というまだまだ幼い立場で、私は抗う術を持っていなかった。

 

あれから少し成長し、高校生というより一層責任を伴いながらも社会でも通用できる権力を手に入れた。権力が嫌いだというのに権力を欲しがる、何という矛盾か……。

 

「はぁ……」

 

しかし、そんな力を持って尚。私はもう反抗しようとしなかった。

もう、反抗する事すら面倒に思えてしまったのかもしれない。

 

「黒田ちゃん」

 

その時、ふと真澄は声をかけられる。

 

「角谷会長……」

 

倉庫の入り口には角谷が立っていた。

 

「授業、出なくていいんですか?」

「今日は担当の教師が出張でいないんだ」

「そうですか……」

「黒田ちゃんは?」

「私は休暇を使いました」

 

真澄がそう答えると、そこで真澄に彼女は聞く。

 

「黒田ちゃん……戦車道の事、どう思っているの?」

「……」

「こんなマネージャーをやってくれて、私としてはありがたいんだけど。黒田ちゃん、辛いとは思わないの?」

 

角谷はそんな疑問を投げかけた。戦車道を除名され、それでいて尚この大洗の戦車道部のマネージャーという生殺しのような職務を請け負った真澄の真意を聞いていた。

 

「……確かに、戦車道をやりたいと思った事はあります」

 

そんな角谷の問いに真澄はゆっくり答える。

 

「しかし、私が除名されて二年。もう戦車道には飽き飽きしている自分がいるんですよ」

「……」

 

真澄はそう答えながら、皮肉を交えた様子で続ける。

 

「会長であればご存知かもしれませんが、私が戦車道を除名された半年後に。連盟は私の足取りを必死に探し始めました」

「……戦車道選手育成計画」

 

角谷がそう溢すと、真澄は『やはり』と言った様子でそんな角谷を見る。

 

「ええ、連盟は国際大会に向けた訓練を始めている。その際、選手を選抜するために必要な規定区分の有力候補として。私が持っていると言うそれを欲しがっているんですよ」

「…じゃあさ、それって……」

 

そこで角谷が聞くと、そこで真澄は言う。

 

「流石の会長にも隠し場所は言えません。なにせ、私が一ヶ月かけて考えた究極品ですからね」

「まあそうだよね……」

 

真澄の返答に角谷はそう答えると、角谷は真澄に聞いた。

 

「そんな風に言うって事は、黒田ちゃんは戦車道をやりたいと思っているって事?」

「……」

 

そんな角谷の問いに真澄は少し考えた後に答えた。

 

「……案外、やりたくないと思っているかもしれませんね」

「それは……何で?」

 

思わず目を見開いて驚くと、真澄は言う。

 

「簡単に力に簡単に屈してしまう癖に、欲しいものだけは得ようとする傲慢体質の連盟が好かないから。と言ったところでしょうかね」

「……そっか」

 

そこで角谷は彼女に連盟がしてきた数々の行為を思い返すと妙に納得できてしまった。

するとそこで真澄は補足して続けた。

 

「でも私は連盟が好かないだけで、戦車道自体はやりたいと思っていますよ」

「……」

 

その答えを聞き、角谷は難しげな様子を浮かべながら真澄に言う。

 

「じゃあさ、あくまでも理想像だけど。黒田ちゃんの持っている情報はそのまま隠した状態で、戦車道に復帰できるって言ったら?」

 

そう聞くと真澄は少し笑った後に角谷に言う。

 

「本当に理想像ですね……まあ、そんな提案だったら私も乗るかもしれませんね」

「なるほど……いやぁ、悪かったね一人の所」

 

そこで軽く頷くと、角谷はそのまま倉庫を出て行ってしまった。

 

「……結局何がしたかったの?」

 

聞いてくるだけで結局、何をしたかったのか分からなかった真澄は首傾げてしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

放課後。

久々に風紀委員機動隊に改称された本部に訪れた真澄は、そこで戦車道に転身しなかった隊員達を見ていた。

大洗機動隊の監督官を務める彼女は隊員の管理は各部隊長にお任せし、訓練内容やらなんやらを共有しただけであとは風紀委員会にお任せしていた。

 

規則上、機動隊の隊員達は戦車道部の後方要員に任命されていたが。戦車道選手に対しての人数比がバグる事になり、キャパオーバーということで戦車道部に転部するかどうかのアンケートを取って選抜していた。

 

「あっ!」

 

車庫を歩くと、そこで水を補給中の九三式装甲自動車の傍で隊員が真澄を見ていた。

 

「監督官に敬礼!」

 

咄嗟に『監督官』と書かれた腕章をつける真澄に敬礼をすると、彼女も同じように返す。

 

「ご苦労」

「はっ!」

 

真澄はそしてそのまま機動隊の監督官室に入る。

 

元々、機動隊の出動で破壊した物品の賠償や責任を全て押し付けるために風紀委員の傘下に入ったわけだが、なぜかその風紀委員からの出動要請が多い日々。週に二回は出動要請がある時点でだいぶヤバいと思うのは気のせいではないだろう。

 

現在、風紀委員機動隊は第十機動隊まで編成されており。それぞれに灰色のかまぼこ型が特徴的なバスが一台支給されていた。これらは全部中古品のバズを改造したものではあるが、隊員輸送にはこれで十分であった。

 

ウーッ!ウーッ!

 

するとその瞬間、倉庫に警報が響いた。

 

「うわっ、また出動?」

「今週何度目だよ」

 

そのサイレンを聞き、呆れながら隊員達は出ていく。

せっかく編成されたのだからと風紀委員会本部は何度も出動要請を出していた。主な時間はこう言う夜から朝にかけての学校のない時間。主な要件は巡回警備らしいが、そんなもんにバスを持ち出すなと言いたいわけで。

 

「ったく、こっちはこの前のデモでクタクタだってのに」

 

そう文句を溢しながら九三式装甲自動車に乗り込んでいく隊員達。でも実際、機関放水銃を搭載した本車は威力巡回には向いている事この上なかった。

エンジンも最近の物に換装しているので、驚異的な加速力を得ていた。

 

『試射開始!』

 

無線でそう言うと、倉庫前で一旦放水銃の試射がされる。ただの放水銃として水を噴射した後に機関銃モードで連射されて発射されるそれはそのまま確認を終えると巡回任務に出撃して行った。

 

「よくもまあレストア品でここまで動くもんだ」

 

思わず真澄はそう溢してしまう。結成よりまだ短期間しか経っていないと言うのに、なぜか風紀委員会よりも人数が多い事実。

まあ、中学校の生徒も混ざっているから仕方ないのかなと思いながら真澄は今日も今日とて巡回任務に向かう部下達を見送っていた。

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