そして、迎えた第63回全国戦車道大会第二回戦。
今回のマップは山岳地帯。アンツィオ高校が得意な部類のマップだ。
『これより…戦車道全国大会二回戦。第四試合、アンツィオ高校対大洗女子学園の試合を始めます』
試合前のアナウンスも流れ、観客席にはダージリンやケイ達の姿もあった。
「ここがポイントです」
みほ達がそうして地図を見て確認していると、そこに一台のAS42サハリアーナがやって来た。
運転するカルパッチョの横で腕を組んで立ち乗りしているアンチョビの姿があった。
「たのもぉー!」
高らかな掛け声と共にやって来たアンチョビ。
「お〜、チョビ子」
角谷が手を振りながらそう言うと、アンチョビが不服そうな顔をしてAS42サハリアーナから降りて来た。
会長、あんたどこまで顔が広いんですか?
「チョビ子と呼ぶな!アンチョビ!」
「で、何しに来た安斎?」
「ア・ン・チョ・ビ!試合前の挨拶に決まってるだろ!」
そしてアンチョビは気を取り直して言った。
「私はアンツィオの総師アンチョビ。そっちの隊長は?」
擬音語が付かんばかりに指を指しながらアンチョビがそう言うと、河嶋がみほを呼び寄せる。
「おい、西住」
「あ、はい」
河嶋に呼ばれたみほはアンチョビの所に行く。
「ほ〜、あんたがあの西住流か?」
「西住みほです」
そう言ってみほはお辞儀をし、アンチョビはみほを上から下まで見て言った。
「ふん!相手が西住流だろうが島田流であろうが絶対に負けない……じゃなかった!絶対に勝つ!今日は正々堂々勝負だ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
アンチョビから握手を求められ、みほもそれに応じる様に握手を交わしていた。
「P40は見た目こそ古いですけど、性能は指折りですからね」
「ええ、何せアンツィオの戦いで投入されたくらいですからね」
「でもP43じゃなくてよかったですよ」
そんな中、榎本達は小さくそう溢す。するとそこで伊藤が自分の集めた知識を思い返しなが小声で答える。
「確かに、P43の主砲は最大で一〇五ミリ砲になりますからね」
「九〇ミリでも十分厄介だっての」
そう言い四人は言い合っていた。試作車が完成しているのでP43を出す事に問題はなんら無いのだ。
だからこそ、イタリア戦車を調べていた時にこの戦車が出てこなくてよかったと心底思っていたのだ。
その頃、カバさんチームでは……。
「ひなちゃん!?」
「たかちゃん!久しぶりー!!」
先ほどからキョロキョロと誰かを探していたカルパッチョがカエサルを見つけると嬉しそうに駆け寄った。
「ひなちゃんも!久しぶりー!!」
カエサルもそれに気付くとすぐにカルパッチョの元に行き、二人して手を繋ぎ互いに嬉しそうに笑い合う
「たかちゃん、本当に戦車道始めたんだね。びっくりー。ねっ、どの戦車に乗ってるの?」
「えへへ、ひみつー」
「え~、まぁそうだよねぇ。敵同士だもんね」
そう話し合う中、他のカバさんチームはそれを見て唖然としていた。
「たかちゃんって誰ぜよ?」
「カエサルの事だろう」
「いつもとキャラが違う……」
いつもクールな表情で堂々としたカエサルを見てきた他の三人。しかしそんな三人に気付かずカエサルこと貴ちゃんは楽しげに会話をしていた。
「でも、今日は敵でも。私達の友情は不滅だかね」
「うん、今日は正々堂々戦おうね」
「試合の前に会えて良かった。もう行くね、ばいばい」
「うん、ばいばい」
そして笑い合って手を振って、嬉しそうな表情のカエサルだったが、後ろを振り返ると……。
「たーかちゃん♪」
「カエサルの知られざる一面を発見だな」
「ひゅーひゅー」
後ろで他の歴女メンバーがニヤニヤした表情で見てカエサルを茶化していた。
「なっ……なんだ!なにがおかしい!!」
それを見たカエサルは顔を真っ赤にさせてそう叫ぶのであった。
同じ頃、観客席では真澄が片手に一升瓶を抱えながら試合を観戦していた。
するとそこで、横に誰かが座って話しかけてきた。
「ああ、やっと見つけた」
「なんだ、清靖か」
そこで座り込んだ長身の青年を見て真澄はそう短く溢す。
「姉さん、大きい大洗のウインドブレーカーだから見つけやすかったよ」
「そうかい」
そう答えると、わざわざ観戦に訪れた清靖に聞いた。
「どうやってここまで?」
「母さんに頼んで飛んできたよ」
「って事は、終わったら帰らにゃならんと言う事だな」
「そうだね」
中学生という事でまだまだこの見た目だが義務教育を受けなければならない年齢の彼は母にめっぽう言われてきたのだろうと予測できていた。
「父さんには姉さんの監視ってことできているけどね」
「……かぁ〜、親父も心配性な事で」
「それだけ戦車道をさせたく無いって思うとむしろ関心レベルだよ。本当……」
二人して呆れていると、清靖の姿に周りにいた女生徒達は唖然となったりしていた。
「ってか、軽くでもいいから変装でもしてきなさいよ。これじゃ試合に集中できないわよ」
「いやぁ、こっちも忙しくてね……」
「はぁ……」
すると真澄は懐から持っていたサングラスを取り出すと、それを清靖に渡す。
「ほれ、周りの女の目に毒だから。これでもかけてなさいよ」
「ああ、ありがとう」
そう言いサングラスを受け取ると、そこで真澄は清靖に言う。
「これから私、聖グロとサンダースに挨拶に行くから。ここを離れるわよ?」
「そっか。じゃあ僕はここにいて試合を見ているよ」
そこでサングラスをつけた彼は端的に返すと、真澄は相変わらずだと軽くため息が漏れる。
「相変わらずみほちゃん以外には興味なしと……」
「そりゃあ…まあね……」
すっかり一目惚れしている清靖を見ながら真澄は少し微笑ましく見てしまう。
「(まあ、だからみほちゃんを守りたいって思うんだけどね)」
真澄は内心そう吐露するとそのまま試合が始まるのを待っていた。
「パンツァーフォー!」「Avanti!」
そして、試合開始のアナウンスが鳴ると共に大洗とアンツィオ両チームの戦車隊が一斉に動き出す。
「行け行け!どこまでも進め!勝利を持ち得る者こそごパスタを持ち帰る!」
「最ッ高すよアンチョビ姐さん!」
フラッグ車であるP40のキューポラから上半身を出して無線でアンチョビがそう言い、CV33に乗るペパロニが興奮しながらP40と並びながら走行する。
「テメェらもたもたすんじゃねえぞ!このペパロニに続け!地獄の果てまで進め!」
『『『おぉー!!』』』
興奮気味なペパロニの言葉に他の乗員の子達も声が上がる。そしてそのままペパロニ達はアンチョビのP40を追い越して先行して行く。
「よし、このまま『マカロニ作戦』開始!」
「カルロベローチェ各車は、マカロニ展開して下さい!」
無線でアンチョビとカルパッチョが作戦展開を指示する。
「OK!マカロニ特盛で行くぜ!」
そうして、カルロベローチェ部隊は得意の機動性で森の奥まで入ると急停車してそのまま乗員は降車すると、車体後部のエンジンルームの上に積んでいた荷物を下ろしてどこかに持って行った。
一方の大洗は、山を登って八九式を偵察のために先行させる。
「先行するアヒルさん。状況を教えて下さい」
急斜面を登って行く八九式のキューポラから磯部は顔だけ出して辺りを警戒する。
「十字路まであと一キロほどです」
『十分注意しながら、街道の様子を報告して下さい。開けた場所に出ない様気を付けて!』
「了解!ずっとコート外行くよ!」
「はい!」
磯部がそう言って川西は八九式を十字路へと向かって行き、街道手前に着くと八九式が停車して磯部がキューポラから身を乗り出す。
「街道手前に到達しました。偵察を続けます」
双眼鏡を取り出して辺りを見回す。そして磯部の視線の十字路には既にアンツィオの戦車が展開していた。
『セモベンテ二両、カルロベローチェ三両。既に十字路配置!』
「十字路の北側だね?」
無線でアンツィオの位置を聞いた武部がそう答える。
「流石の機動力。もう配置が済んでいるのね」
「流石に豆戦車の速度には勝てませんからね」
そう言い、短十二糎の中で榎本と伊藤がそう溢していた。
その頃カメさんチームは……
「それなら南から突撃だ!」
『でも、全集警戒の可能性もあります』
「相手はアンツィオだぞ!ありえん!!ここは、直行だ!」
「突撃いいね〜」
突撃を渋るみほに声を荒げる河嶋に角谷は賛同する。それを聞き、みほは言う。
『分かりました。十字路に向かいましょう。ただし、進出ルートは今のまま行きます』
「直行しないんですか?」
『ウサギさんチームのみ、ショートカットで先行してもらいます。まだP40の所在も分かりませんから。我々はフィールドを抑えつつ行きましょう』
そう言うとウサギさんチームのM3が隊列から離れて丘の斜面へと登って行く。
『ウサギさん、十分気を付けて下さい』
「頑張ります」
みほがそう言うと澤がそう言う。そして、磯部からみほに無線で連絡が入る。
『こちら、アヒルさん。変化なし、指示をください』
「本隊が向かいますので、そのまま待機でお願いします」
武部にそう言われ、磯部は双眼鏡でアンツィオを見張っていた。
「う〜ん……動きがないな……」
「エンジンも切ってますね?」
双眼鏡で見張っている磯部とキューポラから身を乗り出す佐々木が先からずっと動かないアンツィオ戦車に不信感を募らせる。
そして試合が始まったのを真澄達も観客席から見て感心した様子を見せていた。
「なるほど、これは面白い」
そしてその横で清靖も頷く。
「向こうの指揮官、中々優秀なのかな?」
「そうね、確かにこんな作戦を思いつくのは策士かもしれないわね。でも……」
そこで真澄は映像に映るそれを見て呟く。
「彼女達は重大なミスを犯してしまった」
「え?」
思わずその言葉に清靖は驚いてしまう。すると彼女は少しほくそ笑んで言った。
「次に映像が見えた時によく見てご覧。その違和感にみほちゃん達が気付かない訳ないわ」
「……」
そう言われ清靖は切り替わっていく映像をよく見ていると、そこで違和感を感じた。
「……ああ、なるほど」
「向こうも惜しいことをしちゃったわね」
「多分、全部置いたんだろうね」
そこで思わず清靖は苦笑してしまうと、そこで真澄は席を立った。
「じゃあ、私は挨拶に行ってくるから」
「うん、わかった」
そう言うと真澄は去って行った。