試合が始まり、偵察に出たウサギさんチームでは……。
「速〜い、練習の成果だね」
阪口の操縦するM3がかなりの速度で坂を登っていた。
「きゃ〜もっと飛ばして!」
「出過ぎ出過ぎ!!もう、街道だよ!!止めて止めて!」
澤がそう言うと、阪口はM3を急ブレーキを踏んで急停止させようとするが速度がかなり出ていた為急には止まらなかった。M3はそのまま街道に勢いよく飛び出た。その時、澤が木々の間からアンツィオの戦車を発見した。
「っ!後退!後退!」
澤は直ぐに後退するように言い阪口は急いでM3を後退させる。
『街道南側敵発見!すみません、見られちゃったかも……』
「発砲は?」
『ありません』
そう答えるとみほはそこで運が良かったかと思っていた。
「くれぐれも交戦は避けて下さい!」
「分かりました!』
ウサギさんチームから通信を受けたみほはすぐに指示を出す。
「一番の要所を完全に抑えるなんて、流石アンツィオですね。ノリと勢いで攻めてくると思ったんですけど、今回はノリと勢いを封印して来るとは当てが外れましたね」
秋山が膝の上に地図を広げて感心したようにそう言う。
「持久戦に持ち込もうと言うのでしょうか?」
『態と中央突破させて、自慢の足で包囲する作戦かもしれないわ』
みほ達が地図と睨めっこしていると榎本が無線で聴く。
因みに盗聴器は今のところ見つかっていない。やっぱりあれは金持ち学校しか無理の様で、あの試合後に盗聴器禁止のルールが追加された。ただなぜか携帯の使用はまだ禁止されていなかった。本当になんで?
「ウサギさんチーム。陣取っているアンツィオの車種と数を教えて」
『はい、えっと……カルロベローチェ四両、セモベンテ二両が陣取っています』
その報告を受けて思わず榎本が驚いた声を上げてしまう。
「えっ!?どう言う事、数が合わないわ?間違いないの?」
『はい、間違いありません』
榎本が詳細を聞くと澤と丸山が戦車から降り茂みに隠れ双眼鏡で確認する。澤からの報告を聞いて違和感を感じた。
「どう言う事?……みほちゃん、二回戦は十両までだったわよね」
『はい、大会ルールではそうなってます』
「妙ね……」
思わずそう溢すと横で大久保も言う。
「確かに妙ね。アンツィオ戦車の数が一致しないなんて……インチキかしら」
「いや、高校生若きがそんな卑怯な真似をするとは思えない」
そこでキッパリと榎本は言うと次に違和感を口にした。
「第一あんなのすぐバレて試合中断よ?それに妙なのはそれだけじゃない。敵がウサギさんチームを見過ごした事もそう。いくら停車していたとは言え敵が来たらエンジンと履帯の音で気付くはず。それに全車見逃すなんてあり得るの?」
「確かに」
榎本はアンツィオ戦車の数が合わない事もそうだが、一両も発砲してこない事に不審に思った。
「数が釣り合わず発砲してこない戦車……。まさか……みほちゃん?」
『武代さん。もしかして……』
ある懸念が浮かんだみほはマイクに手を当てる。
『ウサギさん、アヒルさん退路を確保しつつ、斉射して下さい。反撃されたら直ちに退却!』
『『了解!』』
そしてアヒルさんチームとウサギさんチームは其々前方の敵に向かって主砲や機銃を発砲する。
放たれた機銃と砲弾はアンツィオのCV33とセモヴェンテに命中するが、撃破を示す白旗は上がらず機銃で貫かれたり砲弾で木っ端微塵に吹っ飛んだ戦車の絵が描かれた木の板だったのだ。
「なっ!?」
「看板!?」
「板だ!?」
「「「ニセモノだー!?」」」
自分達がずっと見張っていた敵の正体が木の看板だった事からアヒルさんチームとウサギさんチームから驚きの声が上がる。そこで榎本達は思わず溢してしまう。
「成程。相手さん、看板を囮にして混乱しているところをアンツィオ自慢の機動力で三方向から包囲して狙い撃ちにしようって作戦ね……」
「へぇー、うまく考えたわね」
「数え間違いさえなければ……」
「惜しいなぁ〜」
実際は少し事情が違うが自分たちを欺いた相手の司令官にあっぱれと言いたかった。
「……で、どうする隊長?」
『考えがあります。ウサギさん、アヒルさん』
みほは無線でウサギさんチームとアヒルさんチームに指示を出す。
敵の目的がわかった以上。こちらも手を打たねば……。
大洗が立て看板に気付いて行動を行っていた頃。ペパロニ率いるCV33部隊は当初の作戦通りに道を疾走していた。
「アハハハ!今頃あいつら十字路でビビって立ち往生しるぜ!戦いは火力じゃないオツムの使いかただ」
ペパロニがそう言うと、そこで操縦手が叫んだ。
『ペパロニ姐さん!』
「なんだ?」
『大変です、ティーポ八九が!!』
「なんだって!」
ペパロニが車内の小窓から後方を覗くと、坂を登ってくるアヒルさんチームの八九式中戦車が追いかけて来た。
「何でバレてんだ!……まぁいいや、ビビってんじゃねぇ!アンツィオの機動力について来られるかつーの!シカトしとけ!!」
ペパロニの言葉でCVは追ってくる八九式を無視してそのまま進軍を続ける事にした。これがのちに大失態への引き金となると思わずに……。
同じ頃、大洗チームは……。
『敵五輌発見しました!F24地点を東に向かっています』
アヒルさんの磯部が無線で敵の位置を報告しつつCVを追撃して行く。
その一方、ウサギさんチームは森の中を走っていた。
「あっ、二時に敵影!」
車長である澤が森の奥の丘の上にセモベンテ二輌を発見した。
「また、セモベンテ。先と一緒だ騙されるもんか!」
「あっ、ちょっと!?」
またデコイだと思ったあやは梓の静止を聞かずに、あやはペダルを踏みセモベンテに向けて機銃を発射して、同時に三七ミリ砲もセモベンテに向けて放たれた。すると放たれた砲弾はカキンっと金属同士がぶつかる音がした後、セモベンテが仕返しと言わんばかりにM3に砲撃して来た。
「ええっ、本物だ!!」
「もう!!」
また偽物だろうと予想していたが、本物だった事に驚く大野に澤がそう言う。
『A23地点、セモベンテ二両発見!今度は本物です!!』
「撃ってないわよね?」
『すみません。もう交戦始まっちゃっています!!』
するとみほが言う。
「大丈夫。敵の作戦はわかりました。セモヴェンテとは付かず離れずで交戦してください。もし二輌が西の方へと行動を始めたらそれは合流を意味します。その際には全力で阻止してください」
『は、はい!』
みほの指示に澤は返事をし、みほはほかの車両に指示を出した。
『我々あんこうとカバさん、クマさんチームはカメさんを守りつつ進撃します。主力が居ない間に敵のフラッグ車を叩きましょう。当然ながら、その際には此方のフラッグ車は勿論ですが、火力が高いクマさんチームの短十二糎も警戒されるでしょうが。逆に囮として上手く敵を引き付けてください!』
「了解、みんな行くよ!」
みほの指示に頷くと作戦を行い始めた。
一方、アヒルさんチームは広い荒野でCV隊を追いかけていた。アヒルさんチームが激しい砲撃や機銃掃射をする中。CV隊はジグザク走行で攻撃をよける。そしてCV隊隊長のペパロニは叫ぶ。
「くそっ!しゃらくせっ!!おい!反撃だ!!」
「Si!」
ペパロニが車内後部の窓を覗きながら、操縦手のアマレットに支持するとアマレットは頷き返事をする。すると二輌のCVは八九式の前に、残りの三輌は後ろにつく。
「バックアタック!」
「はい!」
背後に回ったのを見た磯部は佐々木に背後の敵を撃つように指示し。佐々木は背後にいる三輌のCVに向けて車載機銃を撃つが、カルロベローチェはその弾丸をよける。そしてペパロニ率いる前を走っていた二輌が反転してバック走行を始めた。
「撃て!」
そしてペパロニの指示で五両のCVは一斉に機関銃を乱射する。
「「イッテテテテテテ!?」」
CVの八ミリ機銃弾は八九式の装甲を貫けず弾くが、なぜか車内で磯部と佐々木が痛がっていた。
「痛いのは戦車ですから取り敢えず落ち着いて反撃しましょう」
通信手の近藤妙子が適切なツッコミを入れる。そして磯部達はCVに反撃を仕掛け、あっという間に二両のCVに砲弾を命中される事に成功した。
「よっしゃ!」
「バレー部の時代来てるぞ!次だ次!Gクイック!」
「そーれ!」
「ナイスアタック!」
そうしている間もまたもCVに砲弾を命中させていた。
一方、セモベンテ二輌に追撃されているM3のウサギさんチームでは逃げ回っていた。
「逃げてるだけだよ」
「二両相手じゃ……」
「回り込んじゃいなよ〜」
「逃げるので精一杯!」
そうして澤達が話し合っていると、宇津木が何かを思い付いた様子で言う。
「そうだ、考え方次第だよ。向こうが二両で一つの砲、こっちは二つであいこじゃん」
「なるほど」
「なるほどじゃない!」
宇津木の言葉に大野が納得するが、澤がツッコミを入れる。そしてウサギさんチームはセモベンテに追われながら林の中を走って行た。
大洗がそれぞれ戦闘を開始している中。とある地点の草影では、アンチョビのP40を始める両脇にはセモベンテとCVが待機していた。P40のキューポラの上でペパロニ達CVのマカロニ作戦の報告の一向に来ない事に疑問に感じて無線を取る。
「おい、マカロニ作戦はどうなっている?」
『すみません姐さん。今それどころじゃないんで後にしてもらえますか?』
アンチョビは、ペパロニにマカロニ作戦の進み具合を聞くが、ペパロニから作戦の報告では無く『今それどころじゃない』との事で、その報告にアンチョビは訳がわからず首を傾げた。
「何で?」
『ティーポ八九と交戦中です。どうしてバレちゃったのかな?』
「十字路にちゃんとデコイ置いたんだろうな!?」
ペパロニに作戦通りにやったのかと問いただす。
『ちゃんと置きましたよ全部!』
「全部!?」
『全部』と言うワードにアンチョビは叫ぶ。
「は!?十一枚だと数多いから即バレるだろうが!」
思わず突然の話に彼女は愕然となってしまっていた。