プラウダ高校
そこはロシア風の校風で有名な戦車道の名門。
昨年度、黒森峰を撃破して優勝を飾った学校だ。そんな雪の降る学校の前で寒がる女性が一人。
「うぅ…冷えるなぁ……」
思わずそう溢してしまうのは黒田真澄その人だった。
現在彼女はとある人物に呼ばれてこのキエフ級にも似た学園艦を新たに買った新機の操縦も兼ねて飛んできていたのだ。
今の彼女の格好は黒いマフラーに草色のトレンチコートに黒いブーツと重武装であった。
「そこに軍帽があれば完成ですね」
するとそこで声をかけてきた人物が一人、今回こんなクソ寒地域に自分を呼び出したダージリンその人だった。
「全く、こんな良く冷える場所に呼び出しやがって」
「あら、いけなかったかしら?」
少し小悪魔な笑みを浮かべて彼女は答えていた。
「いやいや、そちらこそ。この前の試合、残念でしたね」
「ええ、公式戦で戦えないのが残念ですわ」
そういう彼女の瞳には『いつか必ずリベンジマッチですわ!!』と言えそうな強い感情が孕んでいた。まあ、まほのいる黒森峰相手に聖グロは厳しかっただろうな。
「まあ、来年まで気長に待てば良いですよ」
「ええ、その時はあなたもね……」
どこか含みある言い方で彼女は言うと真澄は首を傾げていた。
「さて、行きましょうか。今日は楽しいお茶会です」
「所で誰に会うんです?」
彼女がそう聞くとダージリンは少し悪い笑みをしながら言う。
「貴方を目の敵にしている人」
「ああ、苦手だなぁ……w」
その中に少しだけ笑みを浮かべながら真澄は今度の対戦相手となったプラウダ高校の校舎へと向かった。
そして校舎前では一人の黒髪長身の女性が立っていた。
「プラウダ高校へようこそ。そしてお久しぶりです、ダージリンさん」
そう言いまず始めにその女性はダージリンを見た後に次に自分を見た。
「そしてお初にお目にかかります。軍師殿」
「やめてくれ、私はもう軍師じゃないんだ」
思わず彼女はそう答えてしまうと、その少女は少し真澄を見上げて申し訳なさそうにしていた。
「それは失礼……では真澄様。私、プラウダ高校戦車道部の副隊長ノンナと申します。以後お見知り置きを」
「ああ、宜しく」
そう答えるとノンナは真澄達を校舎に入れる。
そして今回の
「ZZZ……」
小学生かと思てしまうほどの容姿だが、これでも自分より学年は年上という面白さ。
「あらあら……」
これには思わずほっこりしてしまうダージリン。
「カチューシャ様、ダージリン様と真澄様がお越しです」
そう言ってノンナはロr…ゲフンゲフン少女を軽く揺するも起きる気配はなかった。
「……ふーん」
それを見て少し悪い笑みを浮かべる真澄。
「あら、何をするの?」
「今から可愛い姿を見せてあげる」
ダージリンの問いに彼女はそう言うと懐からお面とでんでん太鼓を取り出した。まるで子供をあやす様だが、そのお面を見てダージリンやノンナはその後の展開が容易に想像できた。
ガラガラガラガラッ
耳元ででんでん太鼓を鳴らすと、その音で寝ていたカチューシャは寝起き声をあげる。
「うっ、うーん。何今の音……」
『悪い子ぁ、居ねえがぁ……?』
「ん?」
ガラガラ声が聞こえ、その方を向いたカチューシャはそこで目の前に現れた般若の面を見た。
「くぁwせdrftgyふじこlpーーーっ?!?!?!」
そこでカチューシャは声にもならない悲鳴を上げてキュウリを見た猫のように驚いていた。
カシャリッ
そしてその瞬間を逃さずノンナはこれまだどこから持ち出してきたのか、どでかい一眼レフを持って写真を撮っていた。
「……撮れた?」
「はい、バッチリと」
般若の面をつけていた真澄が聞くと、まるで親友かの如くノンナは答える。
「いくら?」
「千円」
「五百円」
「九百円」
「六百「ちょっと!?何してんのよ!!」……」
そこでカチューシャ自身からのツッコミが入った。
「あはははっ!」
それを見て思わず笑ってしまった真澄は付けていた般若の面をつけたまま言った。
「いやぁ、驚かせて悪かったね。フェーヤ」
そう言うと、カチューシャはそのあだ名を聞いて驚いた様子を見せた。ちなみにフェーヤと言うあだ名にノンナは眉を少し動かすと『それもありだな』と思ってしまった。ちなみにフェーヤはロシア語で妖精という意味である。
「そのあだ名…もしかしてノッポさん……?!」
「「(ノッポさん?!?!)」」
そのあだ名に咄嗟に二人の間にとある知育番組に出ていた俳優を連想してしまった。随分古い番組ではあるが、確かに彼女は女性にしてはノッポの部類だ。何せ今のノンナより身長が大きいのだから……。
「あっ、じゃなかった。マスーミャ!」
慌ててカチューシャは言い直すと、真澄も少し微笑みながら付けていた面を外した。
「やあ、久しぶりね」
そう言うと、カチューシャはそのまま勢い良く真澄の顔に抱きついていた。
「生きていたの?!心配したんだから!!」
「貴方は相変わらずなご様子で」
「この!さらにでっかくなっちゃって!このっ!!」
「イデデデデデ!」
頬をつねられ、痛がる真澄にダージリンは唖然とし、特にノンナは今にも包丁で突き刺しそうな目をしていた。
「あの、二人はどう言った関係で?」
「分かりません。返答次第では刺します」
「それはやめておきなさい」
思わずダージリンがマジレスしてしまうと、そこでカチューシャと戯れていた真澄が言う。
「あれ?ダー様知らなかったっけ?」
「ええ、一度も」
真澄が首を傾げ、ダージリンも初耳だと驚いていると、そこでカチューシャが答えた。
「マスーミャはね!私の初代肩車要員よ!」
「「ああ、なるほど」」
そこでダージリンとノンナは納得できた。背が高い真澄にカチューシャが肩車をせがむ光景が容易に想像できた。
「元々は親父とカシューシャの実家の関係でね」
「そう!元々はパーティーで知り合ったの!」
「と言っても警察関係者の奴で、子供は子供で別の場所だったのよね」
真澄が補足を入れると、そこで納得した様子の二人。
「カチューシャのご実家の……」
「そうよ!」
「と言うことは幼い頃のカチューシャ様を……」
そこで何かブツブツと呟き始めるノンナ。若干怖いっすけど……。まあでも、
「小さい頃のカチューシャの写真ならいっぱいあるわよ。特にお気に入りは五年生の時の……」
「ああ!馬鹿マスーミャ!言っちゃダメ!!言ったらシベリア平原に一〇〇ルーブルよ!!」
「ぎゃああっ!!」
そして頬に加え耳まで引っ張られた彼女の言葉にノンナは真顔で聞いた。
「その写真、いくらで売ってくれますか?」
「聞いてんじゃないわよ!ノンナ!!」
こうして楽しいお茶会が始まったのだった。
初めて出会ったのはとあるパーティーに参加した時だった。
東京からのお偉いさんも居ると言うことで、私たち子供は別室に集められて暇だからとごっちゃになって遊んでいたが、その子供だけは嫌に背が高く。少しうらやましかった。
その少女の名前は黒田真澄、なんと年齢は自分よりも一つ下だった。そのことが羨ましくて、つい『肩車させろ!』と言った時は喜んで肩車をしてくれた。
それからと言うもの、何度か私は真澄と……初めはノッポさん、後にマスーミャと言うあだ名をつけて交流をして、いい相談役にもなっていた。
前に背が伸びなくて馬鹿にされると言った時、彼女は言った。
「背が小さくて泣くなら態度だ」
「え?」
するとそこで真澄はアドバイスを送った。
「人間、最初のインパクトが重要。最初にできた印象はなかなか崩れにくいのよ?」
「そうなの?」
「私を見てみなさいよ。でっかいから何をしなくても向こうが怯むのよ。でっかいことは正義」
「なるほどっ!」
「自信を持った大きい態度さえあれば周りの人間なんてイチコロよ」
彼女はそう言うと相変わらず自分の頭を撫でていた。
「まぁ、これが私とマスーミャの出会いね!」
紅茶を飲みながら彼女は言うと、ダージリンはそのまま目線を真澄に移していた。
「そんな過去が……ねえ?真澄さん」
「ええ、懐かしい話です。あの時の泣き顔と言ったら……」
しみじみと趣深く語る真澄にノンナは少し唾を飲み込んでいた。そして、それと同時に少しばかりの殺意も生まれた。
「(これは少し対策を練らねば……)」
なにせ、愛おしいカチューシャに自分より先に肩車をした人間がいたのだから、早急に対処すべきだ。(完全なトバッチリ。
「まるで妹が出来たいみたいでね……」
「妹じゃないわよ!!」
「ふふっ」
思わずダージリンもそんな姉……下手をすれば母親と間違われる雰囲気をしている真澄を見て軽く吹き出してしまう。
「でもだからこそ。マスーミャが除名された時は許せなかった……」
そこでカチューシャの握る拳に力が籠った。本当の怒りを孕んだ感情だ。
「マスーミャが虐めなんて言う陰湿な悪事をするはずが無いもの」
「……」
そう言いカチューシャは除名された時の景色を思い返しながら言う。
「マスーミャなら、意図的にもっと大体な悪事をするはずだもの」
「ぶっ」「はい?」
カチューシャの言葉に思わずダージリンとノンナは吹き出てしまう。
「おいおい、それはあれかい?私はよっぽどの悪人ってことかい?」
「違うわよ。どちらかと言うと、人の嫌なことを率先してやるタイプでしょうに?!」
カチューシャは堂々と真澄に向かって言ってしまうと、そこで真澄はカチューシャに対する強力なマジックカードを発動した。
「ほうほう、それはつまり。小学五年生の「ああ!言うな!言ったら粛清よ!!それか芋掘り一千ルーブル!!」」
顔を真っ赤にしてそう叫ぶカチューシャ。そこまでして隠す彼女の過去に大いにダージリン達は気になってしまった。
「「(彼女は一体どんな秘密を……?)」」
その内容に二人は興味津々だった。