真澄とカチューシャの思わぬ関係にダージリン達は驚く一幕などがあったが、茶会の話題は今年の全国大会に移った。
「準決勝は残念でしたね」
「去年カチューシャ達が勝った所に負けるなんて」
そう言いカチューシャは去年倒した黒森峰に敗れた事を皮肉って言っていた。
しかし、真澄は口には出さなかったが。それが賛否両論の意見である事は違いなかった。その点、でっかい態度を取れと言った助言は間違いだったかもしれないと思っていた。
「勝負は時の運と言うでしょ」
ダージリンとカチューシャが話している間にノンナが、紅茶とジャムそしてお菓子を配った。
「どうぞ」
「ありがとう。ノンナ」
ノンナに紅茶をもらったダージリンは、ジャムをスプーンで掬い紅茶に入れようとしてした。するとカチューシャが叫ぶ。
「違うの!」
カチューシャが、紅茶にジャムを入れようとするダージリンの行動を止める。
「紅茶にジャムを入れるのは邪道よ!本場ロシアのロシアンティーはジャムを中に入れるんじゃないの!舐めながら紅茶を飲むのよ」
因みにウクライナなどの地域だとダージリン方法でも許されるそうだ。
そして見本を見せるつもりでカチューシャは、スプーンで掬ったジャムを口に含み、紅茶で流し込んだ。そして、案の定カチューシャの口の周りにジャムがべったりこびり付いていた。
「付いてますよ」
「余計な事言わないで!」
ノンナがカチューシャの口の周りに付いているジャムの事を指摘するとカチューシャが怒り出す。
子供っぽさを思わせるカチューシャの姿にノンナは微笑む。
「ほらほら、可愛い顔が台無しよ」
「可愛いって言わないで!!」
「じゃあなんて言えばいいの?」
「……」
そう言われ黙り込んでしまったカチューシャを見て、完全に楽しんだ目をしている真澄は彼女の口周りを持っていたハンカチで吹いていた。
「気が効くわね。今度召使いとして雇ってあげようかしら?」
「結構です。仕事が立て込んでいますので」
軽くあしらうと、横からノンナが言う。
「ピロージナエ・カトルーシカとペチーネもどうぞ」
ダージリンが茶菓子に手を伸ばそうとした時、フッとある事を思い出して手を止める。
「次は準決勝なのに随分と余裕ですわね。練習しなくていいですの?」
ダージリンがそう聞く。確かに準決勝も近いのに全く練習をしている気配がない。カチューシャは思いっきり馬鹿にした様に言った。
「燃料と弾薬、時間が勿体ないわ。相手は聞いた事のない無名の弱小校だもの」
「でも、隊長は家元の娘よ。西住流の」
「えっ!?そんな大事な事を何故先に言わないの!!」
カチューシャはまるで初めて聞いた様な感じノンナに詰め寄った。ノンナは相変わらず落ち着き払った様子で言い返す。
「何度も言ってます」
「聞いてないわよ!!」
それはカチューシャ、君が覚えていないだけだ。
「ただし、妹の方だけれど」
「えっ?ああ、なんだ……」
しかし、大洗の隊長が姉の西住まほでなく妹のみほだと聞いてカチューシャはホッとした表情になる。
「黒森峰から転校して来て、無名の学校をここまで引っ張って来たの」
「そんな事を言いに態々来たの?ダージリン」
「……まさか、美味しい紅茶を飲みに来ただけですわ」
そう言うとダージリンは紅茶を一口飲むと、そこでカチューシャは真澄に話題をする。
「消えた二年、マスーミャは何をしていたの?」
「適当な高校に通っていますよ」
「へぇ、どこの?」
そんな彼女の問いにダージリンはああ、またかと言った様子を浮かべる。
「大洗女子学園よ、戦車道部に参加しているわ」
そう答えるとカチューシャは一番の驚きをしていた。
「っ!!それが一番大事な話じゃ無いのよ!!」
思わず彼女は叫んでしまうと、真澄は続ける。
「でも私はマネージャーとしてなので、選手じゃありませんけどね……」
「…ああ、そっか……」
そこで彼女は納得した様子を浮かべて、そのまま席に座り込むと。そこでシュンと気を少し落としていた。
「マスーミャはまだ除名されたままだったわね……」
「まだ、じゃなくて永遠にですよ」
「そんな事ないわ!私が隊長になったからには、大会が終わった暁に連盟に乗り込んでマスーミャを有罪にした人間を粛清してやるんだから!!」
「ほほう、そいつは有難い話だ」
「当然!マスーミャに恩を返すためならなんだってするわ!」
彼女は力強く言うと、真澄も薄い感情で頼もしげにみていた。
「(あれは全て諦めた人間の顔だ……)」
その横でそんな真澄を見たノンナは思わずゾッとなってしまった。あの目は負け試合が確定した戦車道選手の目などではない、人生を諦めた様な目をした人の顔をしていた。
「(まるで死人と同じ目だ……)」
冷たい冬の湖に凍る魚のような瞳をしている彼女の目は生を宿している様には見えなかった。
「(何が原因であんな顔を……)」
ノンナはその違和感を感じ取りながらカチューシャのカップに紅茶を入れていた。
「それかどう?プラウダに来れば私の権限で戦車に乗せてあげるわよ!」
「いえいえ、そんな事しなくても結構ですよ」
真澄はそんなカチューシャの提案を丁寧に断っていた。
「(うっ、羨ましい…私だってそこまでしてもらった事ないと言うのに……!!)」
カチューシャに特別待遇を受けている真澄にノンナは思わずドス黒いオーラが漏れてしまいそうになる。
「(いけない、カチューシャ様の側で)」
咄嗟に理性が働き感情は押さえつけられたが、脳内では完全に真澄の首を絞めているイメージ図ができていた。
「(おお怖。カチューシャの副官やばいな……)」
そんな一瞬見て彼女の感情を見て思わずそう思ってしまう真澄。これを思うと自分の周りって以外と戦車道関係者多くないか?
そう思っていると部屋に一人の銀髪碧眼の生徒が入ってきた。
「クラーラ!何しに来たの?!」
思わずカチューシャが入ってきた生徒を見て叫んだ。なるほど、彼女はクラーラと言う生徒なのですかそうですか。
するとその生徒はロシア語でノンナと話していた。
「『同志ノンナ。カチューシャ様のお昼寝の準備が整いました』」
「『わかりました』」
「ちょっと!日本語で話しなさいよ!!」
思わずツッコミをかけるカチューシャ。中学生の時と全くわからない様で何より。
するとそのクラーラがこちらに近づいてきて挨拶をしてきた。
「『お初にお目にかかります。黒田真澄様』」
その横でノンナが翻訳を入れようとした時。
「『ああ、通訳は大丈夫です。一応簡単な会話程度であれば……』」
「「「!!」」」
するとプラウダの三人は一瞬驚いた表情を見せた後にクラーラに言う。
「『随分とカチューシャを慕っているのですね』」
「『ええ、しかし同志ノンナより私の方が西シベリア平原のように広く。母なる川ボルガのように雄大なカチューシャ様の素晴らしさを知っているかもしれません』」
それを聞いて真澄は確信した。この人もノンナと同類の人間であると……。
「(ゾッコン二人に囲まれてかわいそうに……南無三)」
真澄はそこでロシア語で話す真澄達に騒ぎ立てるカチューシャを横目に合掌していた。
「マスーミャ!クラーラはなんて言ったの!!」
「…カシューシャは偉大だと……」
誤訳してやろうかと思ったが、嫌な予感が発動し。あえて意訳で収めていた。
命拾いしたと思ったのは違和感ではないはずだ。
そしてその後、プラウダ高校を後にする時。
「じゃあ、私たちはこれで」
「そうね、そろそろ行きましょうか」
そう言いダージリンが席を立つと、そこでノンナがカチューシャに言う。
「カチューシャ、そろそろお昼寝の時間です」
「あらそう?じゃあね、マスーミャ。またいつでもカチューシャのプラウダに来なさい。いつでも歓迎するわ!」
「ええ、カチューシャも。いっぱい寝て大きくになりなさいね」
「よっ、余計なお世話よ!!」
カチューシャはそう言い、それを聞いたノンナは少し微笑んだ後に真澄にメールアドレスを書いたメモ用紙を渡しながらロシア語で話しかけてきた。
「『カチューシャ様のお写真の一件でお話を……それから先ほどのカチューシャ様の赤面エピソードを……』」
「『…ええ、了解。但しさっきのカチューシャの写真と等価交換で』」
「『分かりました』」
「ちょっと!何話したのよ!!」
すんなりと承諾したノンナにカチューシャは叫んでいた。そんなカチューシャに真澄は笑って答えた。
「カチューシャをよろしくって話よ」
「あっ、そう。それならいいわ!」
そう言うと彼女はノンナにある物を手渡した。
「これお土産です」
そう言い彼女は先ほど使ったでんでん太鼓をノンナに手渡した。
「カチューシャが寝れなくなったら使ってください」
「ちょっと?!」
思わず顔を赤くするカチューシャにノンナは頷いた。
「はい。ありがたく使わせていただきます」
「ノンナァッ!!」
ノンナと淑女協定を交わし、友情?を育み。カチューシャを適当にはぐらかした所で真澄達はプラウダ高校を後にしていく。
「じゃあね〜。ピロシキ〜」
「До свидания」
ノンナにそう言われて見送られた彼女達はそのままヘリポートのある場所まで向かう。
「んで、ピロシキってなんなの?」
「さあ?私には分かりかねます」
そこで思わず気になってしまった事をダージリンに聞いていたが、結局分からずじまいでそのまま二人はヘリポートに到着した。
するとそこで
「あら、R5なの?」
「ええ、ウチの新車ですよ」
そう言い真澄の乗ってきたヘリを見て彼女はやや驚いた様子を見せていた。
「ヘリを個人所有だなんて、羨ましいわね」
「そうかしら?」
彼女はそう答えると、ダージリンは提案を持ちかけてくる。
「いかがかしら?ぜひ我が校にコメットを寄付などは?」
「はははっ、だったらチャリオティアでも寄付いたしますよ」
そこで真澄は戦後戦車扱いで使えない戦車を持ち出すとダージリンは苦笑していた。
「使えない戦車であれば意味ないわよ」
そう言い彼女は聖グロ所属のヘリコプターの迎えを待っていると、そこで彼女は提案してきた。
「ついでですし、乗せてってもらえるかしら?」
「良いので?そちらにも迎えがくるはずでは?」
すると彼女は一言。
「ダージリンのファーストフラッシュ缶一つで如何?」
「……学園艦まで?」
「ええ、よろしく頼むわ」
まるでタクシーだと思いながら彼女は後ろに乗り込むダージリンを見た。