知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第五二射

プラウダからの帰り、急遽ダージリンを載せて聖グロの学園艦に寄り道することとなった真澄はそこでヘリポートに着艦する。

 

「やあ蜜柑ちゃん」

「だから蜜柑ちゃんじゃありませんってば……」

 

そこで片手に紅茶缶を持って出てきたオレンジペコにお馴染みの挨拶を入れると、そこで同乗したダージリンが聞く。

 

「この後は?」

「少し休憩したら大洗に戻るわ」

 

真澄はそう答えるとダージリンはここぞと言わんばかりにヘリポートにティーセットを持ち出した。

 

「生憎と今日は淹れる気無いわよ」

「流石にフライトで疲れている貴方に頼むような無理強いは致しませんわ」

 

彼女はそう答えると、真澄を席に誘った。

日本の法律上、連続フライトの合間には休憩を入れなければならないので、その時間を有意義に使っていた。

 

「紅茶は何にいたしますか?」

「アールグレイでお願い」

 

そう言うとダージリンの顔が少し曇っていた。

 

「どうかした?」

「ああ、いえ。その名前を聞くと昔を思い出すものですから……」

 

そう言うと形容し難い複雑な表情を浮かべていた。この人、過去にアールグレイ関係で何があった?

 

「それで、どうだったかしら?プラウダに行った感想は」

「まあ、噂では聞いていたけどまさかあの子が戦車道部の隊長やっていたとは思わなんだ」

「私も、あなたとカチューシャの関係には驚いたわ」

 

そう言いダージリンは紅茶を一口飲んだ後に茶菓子のクッキーを食べる。

 

「ええ、何せあの身長差ですからね。初めて会った時も『お兄さん』って言われましたよ」

 

そう言うとそこでダージリンはふと思った。

 

「そういえば真澄さん、随分と髪を伸ばされましたわね。前はもっと短髪でしたのに……」

「まあ、戦車道やめてからなんか色々とめんどくさくなっちゃってね。髪の毛もこの通りよ」

 

そう言い自分の腰辺りまで伸びた髪を触っていた。

思えば久々に会った時なんかは今よりもっと酷い隈もあり、試合中も片手に一升瓶やシガレット菓子を持っていたのでぱっと見……

 

「パチンコに入り浸る人見たいね」

「おいっ」

 

思わず溢れてしまったダージリンにそう言うと、そこで横にいたオレンジペコですらも少し吐き出していた。

 

「それって、所謂パチカス、ヤニカスと言うものでは?」

「酷い言われようだ」

 

真澄は思わずそう溢してしまうとダージリンがそこで言う。

 

「ですが、あなたの場合はどちらかというとやさぐれと言う方が正しいでしょうね」

「はっ、あたしゃ所詮やさぐれかよ」

 

何処か不貞腐れている様子の真澄にダージリンは聞いた。

 

「でもあのような自家用機を持っているということは、それなりの財力があると言う事……」

「いやぁ、土地転がしと会社で一発当てただけよ」

 

真澄はそう答えるとオレンジペコが言う。

 

「おまけに多くの言語も話せる……」

「おかげで友人からビクトル・ポウトってあだ名されたよ」

「「あはははははっ!」」

 

思わずダージリンたちは笑ってしまった。

 

「あたしゃ死の商人じゃないってんだ」

「そのあだ名をつけた人、なかなか良いセンスがあると思いません?ねえペコ?」

「そ、そうですね……」

 

話をふられ、やや返答に困るオレンジペコ。正直、冗談でも答えずらいと思っていると、ダージリンは飲みながら言う。

「でもカチューシャの言っていた言葉には賛同できるわ」

「え?」

 

真澄が首を傾げるとダージリンは言った。

 

「あなたが悪事をする時は意図的だってところ」

「ひどいなぁ、確信犯じゃないか」

「でも真澄さん、悪いことをする時が一番輝いていましたからね……」

 

オレンジペコがそう言うと真澄はやや悪い笑みを浮かべて答えた。

 

「あら、だったら蜜柑ちゃんにいだずらしてあげようか?」

「やめて下さい。冗談に聞こえないですよ!」

 

少しだけ強めに反論しながらオレンジペコの反応を見てダージリンたちは楽しんでいた。

 

「所で、カチューシャの黒歴史、教えてもらえるかしら?」

「え?あっ、うーん…どうしよっかなぁ……」

 

そこで真澄はどうしようかと思っていた。少なくともノンナのは淑女協定であくまでも等価交換ということでカチューシャの黒歴史を暴露することを約束していた。なお本人に言うと割と真面目に冬の日本海かベーリング海のカニ漁に投げ飛ばされそうなので口外無用が前提ではあるが……。

 

「紅茶缶二つで如何?」

「いやぁ、四つ」

「分かりました。ペコ、真澄さんに追加の紅茶缶を」

「はい」

 

よっぽど知りたかったのか、ダージリンは紅茶缶を惜しみなく投入すると真澄はダージリンに簡単に明かしていた。

 

 

 

 

 

「ーーなるほど、それは確かい面白い情報でしたわ」

 

話を聞いたダージリンは満足そうな表情を浮かべ、うっかり聞いてしまったオレンジペコは顔を真っ赤にして何も言わなくなってしまった。

 

「またこれが可愛いでしょう?」

「ええそうね。普段の彼女からは見られない光景ね」

 

彼女はそう言うと真澄は時計を見て席を立った。

 

「さて、そろそろ帰りますかね」

「燃料は大丈夫?」

「中に予備があるから大丈夫な筈」

 

そう答えると、そこでオレンジペコが言った。

 

「こちらで補給しておきました」

「あら、ありがとう」

「いえ、ダージリン様をお送りしてくれたお礼です」

 

コックピットに乗りながらオレンジペコに真澄は感謝すると、そのまま二人はヘリポートから離れていく。

 

「じゃあまた、どっかの試合場で」

「はい、またお会いしましょう」

 

そう言うと真澄はエンジンの回転数を上げるとそのまま離陸して行った。

そしてそんな離陸して行った真澄のヘリを見ながらダージリンが溢す。

 

「結局、連絡は来なかったわね」

「仕方ありません」

 

オレンジペコもそう言うと、ダージリンは少し真剣な眼差しで言った。

 

「流石の大洗の会長さんも、警察庁の大熊を相手には手こずりますか……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、東京の黒田邸では角谷が訪れていた。

 

「……」

 

そして反対側には巌が両手に資料を持って内容を読んでいた。

 

「ご協力頂けないでしょうか?」

「……」

 

角谷は制服姿で巌と対談をしていた。

 

元々角谷と巌の対談は清靖の話し合いもあってこの日に行われる事が決まっており、内容は二年前の真澄のいじめに関する報告であった。

傍には真澄の母親の清子が座っており、角谷から提示された証拠品を見ていた。

 

「これらの資料からも分かる通り、黒田真澄のいじめに関する情報は全て偽造されたものであると我々は確信しています」

 

角谷はそう始めに言うと、そこで念を押すように巌に言う。

 

「当時のアリバイも大勢の人が証言してくれました。そして……」

 

彼女はそこで一通の封筒を取り出す。中身は今までに角谷がアポを取ってもらってきた多くの生徒たちの署名だった。

 

「これほどの人数が彼女の除名処分撤回を求めています。そこで黒田真澄の保護者であるあなたにもお話をさせていただきました」

「……難しい話だな」

 

まず初めに巌は話を聞いた後に答える。

 

「事件が起こったのは千葉県での話だ。東京管内で起こった話ならまだしも……」

「警察庁は国家公安委員会の警察行政を管轄する機関であり、その効力は全国区です」

 

角谷は巌の小手先の話を断ち切ると、巌はそこで渋い表情を浮かべる。

 

「しかし、二年も前の事件だ。それを事件と何ら関係のないあなたが掘り返すのは……」

「この事件は明らかな冤罪です。これを益々見過ごしている事が世間に漏れた場合、警察の捜査能力に疑問を抱かれる原因となります」

 

角谷はそこで強く巌に面と向かって意見を言う。その姿は熊と対峙する蛇のようだった。

 

「それに私は彼女が現在所属している学園の生徒会長です。生徒の問題を解決するのは生徒会長の役割です」

 

角谷はそう言うと強気な姿勢で巌と対峙する。すると巌はそんな彼女に言う。

 

「この証拠が偽物である可能性はないのか?」

「あり得ません。複数の証言者から事情を聞いております」

 

角谷はそう答えると、今までダージリンやケイなどから聞いた証言を纏めた書類に指をやった。

 

「……分かった」

 

そしてその書類を見た巌は頷くと、角谷の表情が一瞬だけ緩やかなものとなった。

 

「しかし、」

 

するとそんな彼女に巌は言う。

 

「黒田真澄が戦車道の除名処分が撤回されたとしても、戦車道はやらせるな」

「巌さん…!」

 

思わず横で聞いていた清子が厳に目を向けてしまう。その目は少し厳しいものだった。

 

「それは……どうしてですか?」

 

そんな角谷の疑問に巌は言う。

 

「無論、彼女に戦車道をやらせないためだが?」

「……それは出来ません」

 

自分はあくまでも生徒会長。生徒を縛る権限を持ち合わせているわけではないし、そもそもここに来たのは真澄に戦車道をやらせるためなのだから。

 

「ならば協力はできないな」

 

そこで巌はキッパリと角谷に言うと、彼女は言う。

 

「ならは貴方は、彼女が一生。冤罪による罪を背負っていけというのですか?」

「…真澄が疑われるような事をしなければ良かっただけの話だ」

 

その時、一瞬だが警官としての正義感か、はたまた親の感情か、彼の表情が険しいものとなった。するとその時、

 

「もう辞めなよ、父さん」

 

部屋にお茶を汲んで戻ってきた清靖が言う。

 

「清靖……」

「どういう事だ?」

 

巌が聞くと、清靖は言った。

 

「そこまでして父さんは姉さんの邪魔をするの?」

「何?」

 

すると彼は角谷がいるにも関わらずお構いなしに言った。

 

「姉さんは戦車道の除名撤回をされたら確実にやるよ。それをわざわざ他の人を巻き込んでまで押さえつけないでよ」

「何だと?」

「清靖、辞めなさい」

 

慌てて彼が何を言おうとしたのかを悟り、清子は静止させるも彼は言った。

 

「母さんだめだよ、父さんは知らないから強気でいられるんだ。だからまだ姉さんを押さえ付けられるんだ」

「貴方、真澄との約束を忘れたの?」

「だからって黙って見てろって言うの?無理だよ、そんな事」

「……」

 

修羅場となった自宅の一室で清靖はコップを置くと叫んでしまう。

 

「父さん覚えている?姉さんが戦車道を除名された日の事」

「……」

 

巌はそこで黙り込んでしまう。あの後、真澄に話をしようとしたが。あろうことが彼女は階段から転げ落ちて病院送りにあっていた。

 

「父さん、姉さんは階段から転げ落ちたと思っているけど。違うよ」

「……何だと?」

 

思わず巌は清靖を見てしまった。

 

「姉さんから言われてたから今まで黙ってたけど……。戦車道を辞めさせられた後、姉さんは父さんが除名させたと知ってなかったら」

 

清靖はつい言ってしまった。今まで禁句にしていた真澄との約束を、破ってその言葉を漏らした。

 

 

 

「姉さん、自殺なんてしなかったよ……」

 

 

 

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