知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第五四射

角谷が黒田邸を訪れた翌日、大洗女子学園のFAXにある一枚の用紙が送られてきた。

 

「会長、戦車道連盟よりお手紙です」

 

小山がそう言って送られてきた紙を見ると、そこで角谷は緊張しながらその内容を読むと。次第に口角が上がっていた。

 

「これなら、次は……」

 

角谷はそう溢すと、生徒会室を軽い足取りで後にしていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

準決勝が近づいてきたその日、戦車格納庫では真澄や榎本達が集まっていた。

 

「おぉ、懐かしい迷彩」

「二年前を思い出すわね」

 

そう言い、目の前の短十二糎自走砲を見る。塗装は土地色と草色と枯草色の三色で塗装された後期迷彩色で塗装されていた。

 

「装備は間に合わなかったけどね……」

「でも許可が落ちただけまだマシよ」

 

真澄の言葉に榎本がそう返す。

 

「今度あるか見に行くわ」

「ええ、頼んだわ」

 

そう言い次に真澄達はみほ達の乗るⅣ号を見ていた。

みほ達の乗るⅣ号は先の探索で発見した四八口径七五ミリ砲を搭載していた。これでF2っぽい改造を果たしていた。細かく言うと砲塔は変わっていないので、正面の装甲圧は三〇ミリのまんまなのだが……。ただ砲弾はこれでⅢ突と共有することができた。

 

「長砲身付けたついでに、外観も変えておきました」

「F2ぽく見えますね」

「そうでしょ?砲身やその他のコンポーネントがF2仕様になってて、バランスも良くなっています」

「ありがとうございました。自動車部の皆さん」

 

みほが自動車部のメンバーにお礼を言うとナカジマは満足げに答える。

 

「いえいえ。まぁ、大変だったけどすごくやり甲斐がありました」

 

この前、武部達が見つけた戦車を引き上げたばかりだと言うのに元気な人達だと思う真澄。その引き上げた車種を見た時に思わず苦笑してしまったのは良い思い出である。

 

「(珍しい車両だからレストアし終えた後にお披露目だな)」

 

そう思うと次に彼女は倉庫に並んだ一両の戦車を見る。それは若草色に塗装されたあの池から引き上げたルノーB1bisがレストアを完了し、新品同然で佇んでいた。

 

「砲身が変わって、新しい戦車が一両」

「そこそこ、戦力の補強が出来たな」

 

それを見て河嶋と小山がそう言うと、みほが聞いた。

 

「あ、あの……ルノーに乗るチームは?」

 

そんなみほの問いに小山が答えた。

 

「それなら、新たに補充要員が入りましたので紹介します」

「おーい、出ていいぞー」

 

そして河嶋が呼ぶと、そこに三人のおかっぱ頭の生徒が降りてきた。

 

「「「「げっ!」」」」

 

それを見て顔を顰める榎本達。そう、風紀委員会(本部)だ。機動隊とはまた別であり、昔ながらの古臭い連中と陰で揶揄しているあの風紀委員会だ。

 

「今日から参加する事になりました。風紀委員の園みどり子、金春希美、後藤モヨ子です。よろしくお願いします」

 

丁寧なお辞儀をすると風紀委員三人はお辞儀をし、その三人の隣に角谷が立った。

 

「略してそど子とその仲間達だ。いろいろ教えてやってね〜」

「会長!名前を略さないで下さい!!」

 

角谷に名前を略され、その上あだ名で呼ばれたのが癪に触って園は角谷にそう言う。

 

「ルノーを任せようと思うからさー、何チームにしよっか。隊長?」

 

そんな園の言葉を気にせず角谷は、みほの方を向きそう聞くとみほはB1bis戦車を見て言う。

 

「B1bisってカモっぽくないですか?」

 

自分の感性でみほがそう言うと角谷は頷いた。

 

「じょあカモにけってーい」

「カモですか!?」

 

角谷の言葉にみどり子は声を上げる。あのー、時間がないとはいえもうちょっと意見を聞いてあげても良いのでは?

 

「戦車の操縦は冷泉さん、指導してあげてね」

 

そこで小山が冷泉を見ながらそういうと、獣を見るような驚いた様子で園は驚いていた。

 

「私が冷泉さんに!?」

「わかった」

 

確かに、冷泉は運転が上手いので適任だろう。彼女もその点不満はない様子だった。

 

「成績がいいからっていい気にならないでよね!」

「じゃあ自分で教本を見て練習するんだな」

「なに無責任なこと言ってるの! ちゃんとわかりやすく懇切丁寧に教えなさいよ!」

「はいはい」

「はいは一回でいいのよ!」

「は~い」

 

どことなく、鼠と猫の出てくるカートゥーンアニメを彷彿とさせるようなやり取りに少し微笑ましくも思えてしまう。

 

「いいか!腰抜けども!次はいよいよ準決勝!しかも相手は去年の優勝校プラウダ高校だ。これからの練習は更に厳しくいく!絶対に勝つぞ、負けたら終わりなんだからな!」

 

するとそこで河嶋が次のプラウダ戦に向けて力強くそう言う。

 

「どうしてですか?」

「負けても次があるじゃないですか?」

「相手は去年の優勝校だし」

「そうそう胸を借りるつもりで」

 

一年生メンバーがそう言う。ごもっとな意見だ。そもそも今のところ負け知らずの我が戦車道部は少し調子に乗っている部分も見られるので、一度負けた時の敗北感を味合わせなければならないと思っていた。

 

「それではダメなんだ!!」

 

しかし河嶋の一言で全体が静まり返る。河嶋の様子から見るに勝たなければ後がないような。そんな雰囲気を感じ取っていた。

 

「勝たなきゃダメなんだよね」

 

いつも陽気な角谷も真剣な表情でそう言い、格納庫内に静寂が支配した。やはり生徒会は自分たちに何か隠しているようだ。

 

「西住、指揮」

「あ……はい!では、練習開始します!」

「「「「はい!」」」」

 

そう言い、準決勝に向けて訓練が始まった。するとその時、角谷はみほと真澄を呼び止めた。

 

「西住ちゃん、黒田ちゃん」

「はい?」「なんでしょう?」

 

呼び止められた二人は同時に角谷の顔を見た。

 

「後で、大事な話があるから生徒会室に来て」

「……はい、分かりました?」「……了解」

 

そう答えるとみほは戦車に。真澄は倉庫の補給物資を確認していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、練習が終わったみほと休憩していた真澄は生徒会室に呼ばれた。

 

「ったく、私は外で放置かよ」

 

雪の降る中、一人ずつ話したいと言うことで野外に放置プレイされている真澄は思わずそう愚痴をこぼしてしまう。聖グロの時とはえらい違いだ。

 

「もう北緯五十度超えたのか……」

 

地図アプリを起動して今の学園艦の居場所を見ながらそう溢す。緯度的にはちょうど樺太の真ん中より上あたりの場所だからとんでもなく寒い。そんな場所に野外放置させるあの干し芋会長は鬼だ。

と言うより、わざわざ廊下があると言うのになんであの会長はわざわざ外にほっぽりだしたんだよ。バカじゃないのか?

 

「あの…真澄さん……」

 

すると生徒会室からみほが出てきて声をかけた。

 

「ああ、終わった?」

「うん、角谷会長が真澄さんを呼んでって……」

「ありがとう…後で干し芋を全部海に投げ捨ててやる……」

「あはは……」

 

みほは思わず苦笑してしまっていると、そのまま真澄は生徒会室に入って行った。

 

「黒田真澄、失礼します」

「おー、寒いところお疲れさん」

「…外に放置させたのは誰だよ……」

 

思わず炬燵を囲んでいる角谷達を睨みつけると、鼻の赤くなった真澄はソファに座った。

 

「黒田ちゃんもこっち来なよ。暖かいよ」

「……」

「悪かったって。でも人に聞かれたくない話だったんだよ」

 

角谷はそう弁明すると、真澄は一旦信用する事にしていた。

 

「こっち来なよ。温かいし」

「……はぁ」

 

角谷に言われ、卓上に鍋の置かれたあんこう鍋を見ながら真澄は軽くため息をついて着ていたコートを脱ぐと、そのまま炬燵に入っていた。

 

「それで?お話とは?」

 

そう聞くと、小山や河嶋が話しかけてきた。

 

「まあまあ、ずはアンコウ鍋でも食べて体を温めようよ」

「会長の作るアンコウ鍋は絶品なのよ」

「……」

 

確かに、この会長。料理全般うまいよな。この前の水辺でもBBQの焼き担当をしていたが、かぼちゃが最高に良いタイミングで焼き上がっていた。あれ結構ギャンブルなのに。

 

少なくとも料理の腕は信用できると思い、わざわざ準備したのだろう箸や取り皿を手に取る。

 

「熱燗できます?」

「え?」

「はっ?!」

「うーん、ちょっとそれは出来無いかな」

 

角谷はそう答えると、真澄は仕方ないかと思いながら鍋を嗜んでいた。

 

「それでさ、西住ちゃんとの出会いって?」

「小学生の頃です。もともと母と彼女の母が交流があって、私は剣道大会の帰りでした」

「剣道をやっていたの?」

「ええ、中学に入った後も何度か大会には出ていました。まあ、高校に入ってからは滅多にやらなくなりましたが……」

 

彼女はそう答えると、煮られたあんこうを口にする。

 

「おお、このどぶ汁いいですね」

「そう?」

「ええ、肝がよく溶けていて……会長、料亭でもいけるんじゃ無いんです?」

「えへへ、そうかなぁ」

 

煽られている角谷は嬉しげにそう言う。

曲がりなりにも目の前にいるのは良家の御令嬢。それなりに充実した生活を送っていると容易に想像できるためにそんな回答を受けて小山達も嬉しげにしていた。

 

 

 

するとそこで角谷は真澄に一枚の封筒を手渡した。

 

「なんですか、これ?」

 

そこで真澄はその出された封筒に首を傾げると、そこで河嶋や小山の表情が少しだけ険しくなった。そして角谷はその中身を伝えた。

 

「君の除名処分撤回が正式に行われる事となった」

「……はい?」

 

その言葉に真澄はピタリと動きがとまった。

 

「日本戦車道連盟の諸印もある。当時、君の虐めに関する偽造証拠を制作した人物。君を除名処分にした人たちにも大小の処分が下される事になった」

「……」

 

角谷の話を聞き、動いていた箸が完全に止まる真澄。彼女は角谷の目をしっかりを見ると、そこで箸を置き。納得した様子を浮かべた。

 

「なるほど…裏で動いていたのは貴方でしたか……」

 

そこで彼女はなぜ清靖が自殺の一件を溢してしまったのか瞬時に頭が回った。

 

「道理で口が硬めの清靖が親父に言ったわけだ」

「君の自殺未遂の話かい?」

「「っ?!」」「……」

 

角谷の言葉に小山達は目を見開いて驚き、真澄は角谷の顔を少し睨んで見ていた。

 

「ええ、そこまでご存知とは。……家にでも行きました?」

「うん、少し前にね」

 

彼女はそう言うと、真澄はそんな封筒を角谷の元に戻しながら言った。

 

「悪いですけど、戦車に乗る気はありませんよ」

「えっ?!」「なっ!!」

 

その反応に河嶋達は驚いた声が漏れてしまう。すると角谷はやはりかと言った表情で真澄を見ていた。

 

「どう言う事?!」

「黒田!お前は戦車道に乗れ!乗る運命だ!」

「河嶋は黙ってろ」

「っ!!」

 

いきなり河嶋を呼び捨てにし、その上ドスの効いた声で真澄が言うと河嶋はすっかり勢いを無くしてそのまま倒れ込んでしまった。

 

「桃ちゃんっ!!」

 

思わず小山が駆け寄るも反応がなく、よく見ると気絶していた。

 

「っ!!」

 

そして小山は真澄が今までで一番怒気を孕んで角谷を見ている事を感じ取っていた。

そして角谷は目線で『部屋から出てほしい』と訴え、小山はその通りにしていた。

 

「どう言うつもりだ」

 

小山達が出て行った後、角谷を見続けていた真澄が問いかけた。

 

「君には必ず戦車に乗ってもらう。これは決定事項だ」

「言っただろう?私は乗る気がないと。どうやってここまで事を動かせた」

 

並の人間であれば気圧されてしまうその気配に、角谷自身も()()()()()でなければここまで動くことはなかっただろう。なんとか飛びそうになりそうな意識を保ちながら彼女は気を振り絞って言う。

 

「ダージリンやケイなど、当時の状況を知る人達から署名を募って。その上、君のお父さんを説得した」

「へぇ、随分とお御所じゃありませんか。どうやって親父を説得したのか聞きたいものです」

 

真澄はガスコンロの火を落とすと、角谷は正直に答えた。

 

「君の弟が手伝ってくれた」

「ほほう。家族を巻き込んで、あんたは何をしたいんだ?」

 

その問いに角谷は答えた。

 

「ーーこの学園を守るため」

「?」

 

そこで首を傾げると、角谷は炬燵を抜け出して真澄を見て頭を下げた。

 

「この学校を守るために。君の力が必要なんだ」

「……」

 

その今まででは見せた事のない、真面目な表情で彼女は言った。

 

「頼む、この大会だけでいい」

「……はぁ、理由を言ってください。返答次第です」

 

普段から飄々としている彼女がここまで迫られた様子で必死に頭を下げているのを見て、彼女は懐からソーダシガレットを取り出しながら言う。

それを受け、角谷はみほにまで隠したある重大な話を真澄にした。こうでもしないと彼女の助力は得られないと言う決断だった。

 

「……実はーーーー」

 

 

 

 

 

「ーーーは?」

 

()()を聞き、真澄は咥えようとしていたソーダシガレットの手が止まってしまった。そしてそのまま真澄は言う。

 

「そんな馬鹿なーーー」

「……」

 

しかし角谷の様子が変わる事なく、それを受けて真澄は目を見開いて彼女を見た。

 

「本当なんですか?」

「嘘であればどれほど良かったことか……」

 

彼女はそう言うと、真澄は取り出したシガレットを箱に戻して眉間に指を当てた。

 

「……」

 

緊縛する空気の中、真澄はしばらく考えた後に角谷を見た。

 

 

 

 

 

「「……」」

 

そしてそんな二人の会話を生徒会室の外で小山と河嶋が不安そうに見ていた。

聞き耳を立てれば途端にまずいと二人は感じていたので、あえて離れた場所からその時を待っていた。

すると部屋から角谷と真澄が出ると、そのまま真澄はこちらに顔を見せることなく帰路についていた。

 

「「会長!!」」

 

そこで二人は角谷に話し合いの結果を聞くと、彼女は非常に安堵を混ぜた笑顔で親指を立てていた。

 

「「っ!!」」

 

その瞬間、生徒会の三人は大喜びで角谷を抱いていた。

 

「あら?あららら?」

「「会長!!」」

 

その時、力が抜けて座り込んでしまった角谷を見て二人は心配してしまった。

 

「怖かったんだね。腰抜けちゃったや……二人とも手伝ってくれる?」

「「はいっ!!」」

 

彼女はそう答えると、そのまま小山達に介護して貰って生徒会室に入れられていた。

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