知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第五七射

その日、大洗の戦車倉庫では試合会場が極寒の大地と言うことで相応の準備が進められていた。

 

「カイロ大量に詰め込まないと……」

「暖房つけられないかな?」

「この前改造してコンセントはつけてもらったけど……」

 

段ボールいっぱいのマ○マカイロを運び、他の暖房器具も検討する榎本達。

 

「長ズボン履こ」

「ついでにゲートルも巻こう」

「格好まんま昔と同じじゃないですか」

「私、ゲートルの巻き方よく知らないんだけど」

 

四人はそう話していると、戦車にいつもの補給品を詰め込む真澄が近付くと彼女は言った。

 

「念の為、鍋と食材買ってきて」

「何するの?」

「今回寒いから長期戦になるかもしれないでしょう?」

「まあ、プラウダ戦は早いか長いかの二択ですもんね」

 

伊藤がそう言うと、真澄は簡単なメモ用紙に書いて榎本に渡した。

 

「今から農業科と水産科の子に頼んでこれをもらってきてくれる?」

「ん、分かったわ」

「他は調理器具ね」

「「「了解!」」」

 

気のせいでは無く、気分の高い榎本たちはそう返すとゾロゾロと倉庫を後にした。

無理もない、二年越しでやっと真澄の冤罪が晴れたのだ。今回から試合に参加する事となった真澄はそのまま榎本から車長と副隊長の権限を貰っていた。

 

「でもまだ本気で復帰…と言うわけじゃないんだよね」

「ええ、だから戦車に文字を入れていないし、刀も帽子もしていない……」

 

倉庫を出て榎本と大隈がそう話す。

いくら除名処分撤回がされたとは言え、真澄自身は戦車道連盟に対して疑念をまだ抱いており。完全復帰と言うわけにもいかなかった。ただ、戦車に乗れる権限があるだけでも今は喜ぶべきだ。

 

 

 

 

 

その頃、戦車倉庫では生徒達が盛り上がった様子で話し合っていた。

 

「タイツ二枚重ねにしよっか?」

「ネックウォーマーもしたほうがいいよね」

「それより、リップ色のついたやつしたほうがよくない?」

「準決勝ってギャラリー多いだろうしね」

「チークとかいれちゃう?」

 

そう言い楽しそうに話す一年たち。

 

「どうだ」

 

そう言いながら時代劇のカツラを装着する左衛門佐。

 

「私はこれだ」

 

そう言い月桂樹の冠を被るカエサル。

 

「あなた達、メイク禁止!仮装も禁止!」

「いちいちうるさいぜよ……」

 

そう言い風紀委員として園はみんなに注意するが、おりょうが嫌そうに言う。

 

「これは授業の一環なのよ!校則は守りなさい!」

 

そう言い彼女は校則を守る様促す。するとエルヴィンが園の肩を掴み振り向かせた。

 

「自分の人生は自分で演出する」

「何言ってるのよ!」

 

エルヴィンがドヤ顔でロンメル元帥の名言を言うが、園は当然知るはずも無くツッコミを入れる。

 

「まあまあ、園風紀委員長。血圧あがっちゃいますよ」

 

真澄がそう言うと、そこで園はカッとなって彼女に詰め寄った。

 

「そう言う貴方達も!どうして風紀委員という立場なのに髪型を守らないの!」

「だってうちら機動隊ですもん」

 

真澄はそう答えると、周りの人間は少し訝しんだ目で見ており、宇津木が言った。

 

「先輩、ほんとに風紀委員できるんです?」

「あら、その気になれば貴方達を矯正局にぶち込めるのよ?」

 

そう言うと一年生達から文句が飛んだ。

 

「横暴だー」

「きゃー、怖ーい」

「権力の無駄遣いだー!」

 

そう言うと、そこで園は呆れたように真澄を見ながらいう。

 

「でも、あなたたちが不良狩りをしていたお陰で確かに上部分の治安は良くなったわ。ただ船底は……」

「え?アソコを制圧しろって?そりゃ無理な話だ」

「どうしてよ!」

 

園はやや腹を立てた様子で言うと、そこで真澄は答える。

 

「大量の人員がいる上に下は構造が複雑なんだ。文句ならお銀に言いな。制圧しようものならベトナム戦争みたいになっちまう」

 

目に見えてわかる泥沼に突っ込む馬鹿はいないと言うと彼女は懐からシガレット菓子を取り出して咥えていた。

 

「今度は結構みんな見に来ますよ」

「戦車にバレー部員募集って書いて貼っておこうよ」

「いいね!」

 

バレー部は八九式にスローガンや部員募集の紙を貼ろうとし、戦車を宣伝カーにしようとしていた。

 

「アンツィオ校に勝ってから、みんな盛り上がってますね」

「クラスのみんなも期待しているし、頑張んないと!」

「次は新三郎も母を連れて見に来ると言っています」

 

みんな盛り上がりながらそう言うが、緊張感が無さすぎる。

 

『おいお前ら!』

 

するとそこで倉庫に一発の怒声が轟いた。その声に全員が驚いて振り向くと、そこには真澄が拡声器片方にこちらを見ていた。

 

『今から補給品の確認をする。足りないものが確認しろ!雪原で素っ裸になって飛び込みたくなかったらな』

 

俗にいう矛盾脱衣と言うものだが、それは本当の極限状態で起こる代物なわけで、少なくとも戦車道の試合で起こる可能性はほぼ無いだろう。

 

「素っ裸で雪原?」

「何を言っているぜよ?」

 

思わず大野やおりょうが首を傾げるとエルヴィンやみほがどういう理由かを教えた。

 

「俗にいう矛盾脱衣と呼ばれる行為だ」

「凍死者が発見される時、何故か服を脱いじゃうの」

「ええ、何それ!」

「裸で死ぬなど…一生の恥でござる」

 

そう教えると、凍死と聞いて震える二人にみほは言った。

 

「大丈夫だよ。あれは真澄さんの脅し文句だから……」

「少なくとも試合中はそうなる前に対処してくれる」

 

そう言うとホッとした二人であった。

すると、そこでみほ達は今回支給される補給物資の中身を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、『黒田の玉手箱』と誰かがあだ名した補給物資を受け取ったみほはそれらを戦車に積んだ後。真澄と作戦会議を開いていた。

 

「白が七両に、黒が十五両……」

 

今回の地図の上に碁石を起きながら真澄は少し渋い顔を浮かべる。

 

「戦力差が……」

「それに相手はT-34/76に85……」

「それにKV-2にIS-2重戦車。戦力的には厳しいです」

 

みほはそう言いプラウダの編成を口にする。

 

「特にKV-2とIS-2ね。装填速度は遅くとも主砲口径でまとめて薙ぎ払える火力が向こうにはある」

 

前者は一五二ミリ、後者は一二二ミリの砲弾を発射する。この口径に耐えられる戦車は大洗側には存在していなかった。と言うより、ほぼほぼ耐えれる戦車もいないだろう。

 

「だから一番の手として、この二両を足止めさせている間に本隊を叩く」

「そうだね。プラウダは一度引き込んでからの反撃が得意だから慎重にいかないと……」

 

そう話していると、みほはふと笑っていた。

 

「どうした?」

「いや、真澄さんとこうやって作戦をするのも久しぶりだなって……」

「……そうね」

 

この度、名誉回復もされる運びとなった真澄は今回から戦車道に参加する事となる。今までのマネージャーとしてではなく、選手として。

 

「お陰で引き継ぎの仕事が大忙しだったけれども……」

 

そう言い真澄は現在戦車に不凍液を入れている後方係の生徒を見た。彼女達は灰色のツナギを着ており、腕には大洗の校章が印刷されていた。

 

「でも、真澄さんが戦車道できるようになって…私は嬉しいな」

 

みほは真澄を見ながら嬉しそうに話すと、真澄も満更でもない表情でみほを見ていた。

 

「(昔からこういうところは変わらない…常夫さんによく似ているんだな……)」

 

見事にまほはしほに似ているが……。ある意味でそれも良いのかもしれない。

 

「ねぇ、みほちゃん」

「?」

「今の戦車道は、楽しい?」

 

真澄がそう聞くと、みほは少し首を傾げた様子で聞き返した。

 

「どうしたの?」

「…いや、少し気になってね。みほちゃん、前よりも楽しそうに見えたから」

 

真澄はそう言うと懐からソーダシガレットを取り出して咥えた。

 

「いるかい?」

「え?ああ、大丈夫。……ただ」

「?」

 

そこでみほは真澄の問いかけに思い出しながら答えた。

 

「ここに転校してきて…真澄さんや他の人と出会って……戦車道が楽しいって思えてきたなって……ちょっと考えちゃった」

「……」

 

そんなみほの返答に真澄は静かに聞いていた。

 

「だから、戦車道も続けたいって思えるようになった気がする」

「……そうかい」

 

そこで少し真澄は微笑むと、少し嬉しげに地図に目線を戻した。

 

「それじゃ、しっかり作戦を練らんといかんな」

「うん」

 

そう頷くと二人は今度の試合の作戦を練っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「んで、こうして私の知らないところで散々動いたようじゃないか」

 

イヤホンを付けながら真澄は電話をする。相手はダージリンだった。

 

『ええ、あなたの才能はこのまま埋もれる訳には行きませんもの』

「おかげで厄介なことになりそうだよ。如何してくれる?」

 

真澄はそう言うと、ダージリンは余裕そうに答えた。

 

『連盟からの情報公開要求はこちら抑えましょうか?』

「出来ると思うかい?」

『すでに連盟は世界大会用に大学選抜チームを編成しました。すでに訓練も始まっている以上、貴方に影響が及ぶ可能性は低いでしょう』

「ええ、だと良いけれど……」

 

真澄はそう言い片手に熱燗を持つ、勿論ノンアルである。

そこでダージリンは真澄に言う。

 

『今度の試合、貴女の戦いぶりを楽しみにしていますわ』

「ふう…刀と帽子は持ち込まんよ」

『それでもです。既に世間の関心はいじめの偽造に向いていますけど、私たちは貴方自身に関心が向いておりますわ』

「そうなるように情報操作したのはそっちだろうに……」

 

主に報道関係者等の邪魔が入らないように……真澄が万全の体制で試合に臨めるようにダージリンが手を回したのだろうと容易に推察できた。

 

「相変わらず情報収集がお早い事で」

『ふふふっ、貴方ほどでもありませんわ』

 

ダージリンは態とらしく答えると、電話を切っていた。

 

「……ふぅ、」

 

電話が切れ、そこで真澄は大きくため息をつくとそこで台所から雪の降るベランダに切った大根を入れたジップロックを持って榎本が出てきた。

 

「誰と電話?」

「ダージリンだ」

「ああ、お礼の電話ね」

「どちらかと言うと嫌味の電話だな」

 

彼女はそう答えると、そこで榎本が聞いた。

 

「それで、何隠してるの?」

「?」

 

そこで榎本は少し笑う。

 

「隠したって無駄よ。どれだけの付き合いだと思っているの?」

「……ははっ、相変わらずだ」

 

そこで真澄は頭に手を当てて少し笑うと榎本を見ながら言った。

 

「実はなーーーー」

 

そこで真澄から話を聞いた榎本は目を見開いて驚いていた。

 

「嘘でしょう?」

「だから私の除名処分撤回に奔走したらしい」

「だとしらあの干し芋が戦車道始めた理由にも納得がいくわね」

 

そこで榎本は納得した上で少し深刻な表情を見せていた。




Bappa Shotaさんと言う方の動画を見て感動してしまった。
知らない人がいたらぜひ見てほしい。本当のリアルな国際問題がノーカットで送られているので深く考えさせられます。
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