知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第五射

「すごい!これは海軍短十二糎自走砲ですよ!!」

 

とてもめずらいし車種に秋山は『こんなレア車がここに居たなんて』と言って神を拝めるかのように跪いた。

 

「どんな車両なの?」

 

そこで武部は号泣する秋山を他所に聞くと、真澄が答えた。

 

「大戦末期に日本軍が九七式中戦車を改造した作った自走砲だ。あまりにも珍しすぎるから私も驚いているよ」

「へぇーー?」

 

いまいち分かっていない武部にみほは苦笑していると、真澄が聞いた。

 

「んで、そっちの方はどう?」

「あっ、それがみんなの分見つかったって」

「……まじか」

 

一日で全員分の戦車が見つかった事実に思わず真澄は目を見開いて驚いてしまった。

 

「バレー部の人たちが崖の洞窟にあった八九式中戦車甲型。

歴女の皆さんが水中でⅢ号突撃砲F型。

そして一年生の皆んながウサギ小屋でM3中戦車リーを見つけたの」

「洞窟って、あの命綱必須の?」

 

どうやってあそこまで行ったんだよという驚きと、そこまでの運送方法に首を傾げながら真澄は目の前の短十二糎自走砲を見た。

 

「元々この倉庫に眠っていたのを見つけていたの」

「ずっと中に置かれていたせいか、状態もとても良くてね」

「燃料入れたらそのまま多分動くよ」

 

大久保達が戦車を見ながらそう答えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、戦車道倉庫の前に昨日見つけた戦車たちが並んでいた。

 

「八九式中戦車甲型、38t軽戦車、M3中戦車リー、Ⅲ号突撃砲F型、Ⅳ号中戦車Ⅾ型、そして海軍短十二糎自走砲……どう振り分けますか会長?」

「見つけたもんが見つけた戦車に乗ればいいんじゃない?」

「え?そんな適当でいいんですか?」

「いいの、いいの。そのほうがいちいち話し合って決めるよりずっと効率いいから」

 

角谷の暴論に思わず真澄は反論してしまいそうになるが、今の現状では最も合理的かとも思った。どうせ会長の思いつきで始めたことだ。すぐに諦めることになるだろう。

 

こうして真澄を除いた榎本達は短十二糎自走砲を洗車し始めた。戦車だけに……。

 

「なんでこんなレア車があるのやら」

「普通、誰かが買いそうなものだけどね」

 

そう言いながら伊藤と大隈は車内の埃を拭き取る。比較的状態が良好だからか、他の車両のように水を大量にかける必要もなさそうだった。

ちなみに今日は全員が体操服姿だった。

 

「がっちりしてますねぇ」

「良いアタックが出来そうです」

 

八九式中戦車を見るバレー部。何故バレー部なのにこんなところに居るんだ?そう言えば廃部になるとか言ってたか。

あの会長の事だ、戦車道取ったらバレー部復活とか言ってたんだろう。相変わらず悪い人間だ。

 

「砲塔が回らないな」

「象みたいぜよ」

「ぱおーん」

「たわけ!Ⅲ突は冬戦争でロシアの猛攻を打ち返した凄い戦車なのだ!!フィンランド人に謝りなさい」

「「「すいません」」」

 

何処が北かも分からず歴女の三人は頭を下げる。ちなみに杭を打つようで悪いが、Ⅲ突が活躍したのはその後の継続戦争だぞ。あとその時はソ連な。

 

「大砲が二つ付いてる」

「大きくて強そう…」

 

一年生達はそう呟く。確かに、七五ミリ砲と三七ミリの鏡餅の様な砲配置は実に美味そうだ。じゃなくて、実に面白い。

 

「うわっ…ぬめぬめしてる!?」

 

武部がⅣ号の装甲を指先でなぞって油汚れの感触を味わい気味悪がっている。まあこれだけ長い期間放置したらそうなる訳で……

するとみほは慣れた手つきでⅣ号に登るとキューポラを開けるが、すごい異臭なのだろう。思わず鼻を摘んでしまっていた。

 

「うっ…、やっぱり、中の水抜きをして、サビ取りもしないと、後古い塗装も剥がして…」

 

そう言い、みほは清掃する場所を的確に指示する。

 

「どう?」

「色々とやることが多いです」

 

真澄の問いにみほがそう答える。あくまでも戦車道のマネージャーと言うことで今まで一度も戦車に触っている姿を見たことがない真澄はパソコンを持って彼女に伝えた。

 

「取り敢えず部品と必要資材の注文をやっておいたわ。夕方に届くから、掃除が終わったらあとはこちらで整備しておく」

「分かった」

 

こうして、中を見た後に本格的な清掃が始まった。

 

シャーーッ!

 

「きゃあっ!もう沙織さん!もう~つ~め~た~い~」

「だ、誰ですか!?」

 

ホースから思い切り水をぶっかけられ、五十鈴はまるで何処かの怪談話に出てきそうな貞子と化す。

 

「高松城を水攻めじゃ!!」

「ルビコンを渡れ!!」

「ペリーの黒船来襲ぜよ」

「戦車と水と言えば、ノルマンディーのDD戦車でしょ」

「「「それだ」」」

 

歴女は楽しそうでなにより。

 

「もうびしょ濡れ」

「恵みの雨だー!!」

「ブラ透けちゃうよ~」

 

まさに女子高生らしく恥じらいの無い言い方。うむ、青春だ。

 

「どう?調子は?」

「真澄が居ないからイマイチ」

「乗れる?」

「まぁ、一応は……」

 

少々やる気にかかる様子の榎本達は自分たちの乗機となる短十二糎自走砲を見る。

 

「いったい会長は何を企んでいるのやら」

 

そう言い生徒会トリオが乗る事となった38tをみると、そこでは小山一人が水着姿で淡々と掃除をしていた。あんたヤバいっすよ、人よすぎ。文句言わずに一人で掃除なんて……あとメロンでっか。

 

 

 

 

 

そんなこんなであっという間に時は過ぎ、空は藍色に変わっていた。

 

「みんなご苦労だった。あとの整備は自動車部の部員と機動隊隊員に今晩中にやらせる。今日は早く家に帰ってゆっくり休むがいい」

 

後ろには綺麗になった戦車達を見ながら河嶋が言う。その横で小山はブラシを杖代わりにくたくたになっていた。お疲れ様です南無三。

 

「お疲れ様」

「真澄さんも。色々お疲れ様です」

「私は所詮事務仕事だよ」

 

真澄とみほがそう話していると、武部と秋山が恐る恐る話しかけてきた。

 

「大丈夫なの?その人、学校の不良団のボスだよ?」

「不良狩り最強の人ですよ?」

 

そう話す二人に真澄は答える。

 

「大丈夫よ。少なくとも私がやる気にならない限り問題は起こさないわ」

 

そう言うと慌てた様子で校庭にスケバン姿の生徒が走って真澄の元にやってきた。まだ機動隊編成から数日しか経っていないということで不良グループだった名乗りがまだあった。

 

「姉御!大変です!!」

「どうした?」

「お銀の下っ端がシマを荒らしに……」

「ったくあの呑んだくれ海賊め。自分の部下くらい纏めろよ」

 

そう愚痴るとその部下は聞いてくる。

 

「いかがなさいます?」

「叩き潰して。重葉、博子。行って」

「おっしゃ任せろ!」

「やってやらぁ!!」

 

飛び出して楽しげに彼女らは校門を後にする。

 

「えっと……」

「ああ、気にしなくて良いわ。アホがアホな事しただけだから」

「は、はぁ……」

 

みほなただ首を傾げたまま真澄を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「とりあえず至急で必要な物は……」

 

放課後、必要な部品購入の為に真澄は学園艦に存在する『戦車倶楽部大洗女子学園店』に入る。

清掃の終わった戦車達の部品も一部販売しているこの店に真澄は店主に訓練用の砲弾の注文を取りに来ていた。

 

今頃格納庫では自動車部が戦車の整備をしており、機動隊の隊員達も戦車道をするために必要な作業を行っているだろう。それこそ戦車服とか。

マネージャーとして真澄はあちこちに奔走していたのだ。

 

「すみません、生徒会の命で来ました」

「はいはい、伺っています」

 

店の店員と明日から使う砲弾の話をしていると、店に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「ここって戦車の店?」

「へ~こんな店があったんだ~」

「私初めてです」

 

おーおー、おまけに知り合いジャマイカ。武部と五十鈴、あと秋山、それにみほ。

 

「実は私、いつも放課後はここに通っているんですよ~♪」

 

聞いているととんでもない戦車好きである秋山。まあ、趣味の人間はそりゃ気になるわよなと言う。

 

「あれ?真澄さん」

「やあ、さっきぶりね」

「どうしてここへ?」

「明日から使う砲弾の調達」

「成程!!そういう事ですか!」

 

秋山は納得した様子で頷く。すると店の中を見ていた武部達は感心した様子で言う。

 

「それにしても凄い品揃えですね」

「でも戦車ってどれも同じに見える」

 

そんな武部の呟きに秋山は思わず反論してしまう。

 

「ち、違います!全然違うんですよ!」

 

そう言うと彼女は熱く戦車のことを語りだす。

 

「どの子もみんな個性っというか特徴があって、動かす人にも変わるんですよ!」

 

まあ、武部気持ちは分からんでもない。私も初めて戦車を見た時にⅢ号戦車とⅣ号戦車はサイズが違うだけと言ってみほの母親に裁かれた経験があった。

 

「華道と同じなんですね」

 

華道が得意な五十鈴の言うことだから多分、そうなんだろう。

正直昔華道はやってたけど、花はシロツメクサとたんぽぽくらいじゃないと違いがわからない。

 

「うんうん。女の子もそれぞれの良さがあるしね。目指せモテ道!」

 

武部は一体何を目指しているのか。ハーレムでも作る気か?

 

「噛み合っているのかな?」

「さあ?」

 

そんな彼女達に思わずみほと真澄は苦笑してしまっていた。

そして、秋山はそのまま店にあるティーガーⅠをモチーフのアーケードゲームをやり始め。それを武部は後ろから見ていた。

 

「アクティブで楽しそうです」

「でも顔は怪我したくないなー」

「大丈夫です。試合では実弾も使いますけど、十分に安全に配慮されてますから」

 

大会公認の砲弾は安全100%を謳っているが、それでも当たった時の衝撃はやばいわけで。ヘルメットを被っていた方が安全というものだ。

 

「楽しそうでなにより」

「そうだね」

「……良い友人に出会ったわね」

「うん」

 

真澄とみほはそう話していると、テレビのニュースがある話題を持ってきた。

 

『ーー次は戦車道の話題です。高校生の大会で昨年MVPに選ばれて国際強化選手になった西住まほ選手にインタビューしてみました』

 

そう言い現れたのはみほによく似た少女だった。そりゃそうだ。テレビに映る少女は今横に立つ少女の実姉なのだから。

 

「あっ……」

 

それを見てみほは一瞬表情が曇った。それを見て真澄は只事ではないと察した。彼女に一体何があったのか?

 

『戦車道の勝利の秘訣とはなんですか?』

 

アナウンサーがまほにマイクを当ててインタビューすると、彼女はカメラに目を向けながら答える。

 

『あきらめないこと。そしてどんな状況でも……逃げ出さないことですね』

 

その目は何処か戸惑っているように見えた。やはり、彼女の実家で何か問題があったのだろう。

 

「大丈夫?」

「うん…」

 

しかしその表情は晴れない。私が追放されてから一体何があったのか……。

 

「戦車道、辞めたら?」

「……大丈夫」

 

そんな真澄の問いかけにみほは自分に嘘をつくように答えた。

そんな彼女を見て一抹の不安を抱えながら彼女は言う。

 

「……じゃあ、私はこれで。そろそろ戻んないといけないから」

「うん、また明日」

 

そう言うと真澄は店を後にして行った。

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