知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第六一射

「『降伏しなさい、全員土下座すれば許してやる』だそうです」

 

生徒の要求にみほ達は驚く。

 

「なんだと!?……ナッツ‼︎」

「それともう一つ。『黒田真澄をこちらに渡せ。素人集団にあの人は不相応だ』だそうです」

「えっ!?」

 

伝来の言葉にみほは驚くと伝来の子は言う。

 

「隊長は、心が広いので三時間待ってやると仰っています。それと降伏しなければ今度は容赦しないと……では、失礼します」

 

そう言い終えると、二人は揃って一礼をすると、これまた揃って回れ右をして出て行った。

それを見届けたメンバーの表情は怒りで染まっていた。

 

「誰が土下座なんか!」

「全員自分より身長低くしたいんだな」

 

磯部と河嶋がそう叫ぶ。

 

「徹底抗戦だ!」

「戦い抜きましょう!

 

エルヴィンと澤も言葉を続けるが、みほの表情は良くなかった。

 

「でも、こんなに囲まれていてては……一斉に攻撃されたら怪我人が出るかも知れない……みんなが危険になるくらいなら……」

 

みんなが徹底抗戦を唱える中、みほは躊躇していた。

戦車道の競技に使用されているカーボンによって安全は考慮されているが絶対と言う訳ではない。それはみほも良く知っている。

 

「でも、私はみんなで戦車道を続けたい、真澄さんとも最後まで……でも」

 

プラウダの条件を飲んで降伏すれば、誰も危険に晒されず怪我人が出る可能性は無くなる。しかし、要求を飲むと真澄は強制的にプラウダに行く事になる。

 

二度と会えなくなるかもしれないのが嫌だった。

 

今まで自分を励ましてくれたりして、少しだけ姉の様に慕っていた。

 

真澄を差し出すか、怪我人を出す可能性を考慮して抗戦するか。

 

その二つを天秤にかけていると河嶋が叫ぶ。

 

「降伏なんてあり得ない!絶対に負ける訳にはいかんっ!徹底抗戦だ!」

「で、でも……」

「勝つんだ!!絶対に勝つんだ!!勝たないとダメなんだ!!我々にはもう……勝つ以外選択は残されていないだ!」

「どうしてそんなに……さっきの戦闘でも分かるじゃないですか?」

 

そこでみほは珍しく河嶋に噛み付いた。

 

「初めて出場してここまで来ただけでも凄いと思います!?戦車道は戦争じゃありません、これ以上は怪我人が出るかも知れません」

 

蘇るのは去年の全国大会でのあの景色。もうあんな光景は見たくはなかった。

 

「怪我人を出してまで戦ったりして……そこに価値なんて無いと思います。勝ち負けより大事な物がある筈です」

「勝つ以外の何が大事なんだ!」

 

みほの言葉に耳を貸す事なく、河嶋は更に叫ぶ。

 

「私…この学校に来て、みんなと出会って……初めて戦車道の楽しさを知りました。この学校も戦車道も大好きに成りました!!だから……」

 

そう言い掛けると、みほは少しの間を空けて言葉を続ける。

 

「その気持ちを大事にしたまま、この大会を終わりたいんです」

「何を言っている……負けたら…我が校は……っ!」

「っ!?止めて桃ちゃん!」

「止めろ河嶋!!それ以上言うな!!」

 

小山と角谷が、珍しく声を荒げて言うが……。

 

「負けたら、廃校になる。……そうでしょ?」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

思わず背後を振り向くとそこには真澄と榎本が立っていた。

すると榎本の言葉に全員が驚愕する。

 

「学校が……なくなる?」

「ど、どう言う事ですか?」

「榎本ちゃん…どうして知っているの?」

 

角谷がそう聞くと、彼女は答えた。

 

「真澄から聞きました。元々怪しいとは思っていましたが、まさかこんな事情があったとはね……」

 

真澄の除名処分撤回に奔走し、戦車に乗ることを拒否した真澄には苦渋の決断で事前に彼女に学園が廃校になる話をした。

 

「本当なんですか会長?」

 

みほが振り返りながら聴くと、角谷はゆっくりと頷いた。

 

「榎本ちゃん言う通り。この全国大会で優勝しなければ……

 

 

 

我が校は廃校になる」

 

 

 

そう角谷が言うとメンバー全員に衝撃が走った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数ヶ月前

 

「廃校?」

 

呼び出しを受けた角谷達はその話を受けて首を傾げた。

 

「学園艦は維持費も運営費も掛かりますので。全体数を見直し、統廃合する事に決定しました。特に成果の無い学校から廃止します」

 

『文部科学省 学園艦教育局』と銘打たれたその部屋で生徒会トリオは呼び出しを受けていた。そして文科省の眼鏡掛けた役人から無感情で彼女達に大洗女子学園を廃校にすると言うのだ。

 

「つまり……私達の学校が無くなると言う事ですか?」

「納得出来ない!!」

「今、納得出来なかったとしても本年度中に納得して頂ければこちらとしては結構です」

「じゃあ来年度には……」

「はい」

「急すぎる!!」

「大洗女子学園は近年生徒数も減少してますし、目立った活動もありません。昔は戦車道が盛んだった様ですが……」

「ん〜、じゃあ……戦車道やろっか?」

 

文部科学省の役人から告げられた廃校宣言を前に、大洗女子学園生徒会長角谷杏は答える。

 

「「えぇ!?」」

「戦車道をですか!?」

 

まさかの言葉に驚く河嶋と小山は驚いた。

 

「まさか優勝校を廃校にしないよね〜?」

 

角谷は役人にそう言ったのだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「文科省から学園艦の維持運営コストの関係で、大洗女子学園を廃校だって言われちゃってね……」

「だけど、戦車道の全国大会で優勝したら考え直すって、会長が言質を取ったの……」

「それで戦車道を復活させたんですか……」

 

理由を聞いたみほは、納得した様に呟く。

 

「戦車道をやれば助成金も出るって聞いてたし、それに学園艦の運営費にも回せるしね」

「相変わらず無茶をしますね」

 

思わず榎本が呆れてしまっていた。

 

「じゃあ、世界大会がどうとか言うのは嘘だったんですか!?」

「そ、それは本当だ。嘘ではない」

 

澤が驚いてそう訊くと河嶋が答える

 

「でも、そんなのでいきなり優勝しろとか無理ですよぉ!」

 

河嶋が答えると、澤が声を上げる。

 

「いやぁ~、昔は結構盛んだったらしいから。もうちょっと良さそうな戦車があるかと思ってたんだけど……予算が無くて、良いのは皆売っちゃったらしいんだよねぇ~」

 

角谷からの衝撃的発言に、一同が一瞬だけ押し黙る。

 

「じゃあ、今此処にあるのは!?」

「そう、全部売れ残ったヤツ」

「はぁ……」

 

しれっとそう答えた角谷に真澄は思わず髪を掻いた。

 

「それでは、優勝など到底不可能では……?」

「だが、そうするしか無かったんだ……古くて何の実績も無い、平凡な学校が生き残るには……」

 

エルヴィンが言うと桃が肩を落として言う。

 

「無謀だったかもしれないけどさぁ……あと一年。泣いて学校生活送るよりも、希望を持ちたかったんだよ」

 

河嶋に続いて、角谷も弱々しい笑みを浮かべながら言う。

 

「皆……黙ってて、ごめんなさい」

 

そう言って小山が頭を下げた。

 

「そんな……じゃあ、西住殿を勧誘したのは……」

「うん。少しでも優勝出来る可能性を……廃校を回避出来る可能性を大きくしたかったんだよ。

「真澄の除名処分撤回に走ったのも」

「そう、真澄ちゃんの実力があれば、強くなると思ったから。……二人ともごめんね」

 

そう言うとみほは微妙そうな表情を浮かべ、それを真澄は静かに聞いていた。

 

「バレー部復活どころか……学校が無くなるなんて」

「無条件降伏……」

「この学校が無くなったら私達、バラバラになるんでしょうか……」

「そんなのやだよ!!」

 

五十鈴の漏らした言葉に武部が声を上げて答える。

自分達は学生だ、廃校になればおそらく各高校に編入する事になるだろう。

だが、全員が都合良く同じ高校に編入するのは無理だ。少なくともこのチームは確実に無くなる。

 

「単位習得は夢のまた夢……か」

 

冷泉が空を仰いでそう呟き、皆の表情は絶望に満ちた顔をしており。一年生達は泣いていた。

 

「何しみったれた顔してんだよ」

 

そこで真澄が呆れたような目で彼女達を見ていた。

 

「いいかい?ここまで上がって来れたのは何でだい?今まで戦ってきた相手を思い出せ。聖グロリアーナ、サンダース、アンツィオ……名だたる高校を倒して我々は今、準決勝と言うこの場所に登ってきた」

 

その言葉はとても力強く、かつ人の耳に良く響く言葉だった。

 

「それに、現時点で我々の車両の損失はゼロ。これは数の少ない我々にとっては大きなアドバンテージだ!」

 

彼女の言葉に誰もが耳を傾けていた。

 

「一回戦のサンダースを思いだせ。

性能や数で圧倒的に劣っていた我々が勝てたのは何故だ?

そこには我々にあった希望の心があったからだ!」

 

彼女の演説は心を惹かれるものであり、聞く者達に失いかけていた()()を思いださせる。

 

「絶望とは愚者の取る選択だ。

抗え!抗う事で我々はその真価を発揮する!」

 

かつて、巨大な権力によって人生の楽しみ(戦車道)を奪われていた彼女だから言える。とても生々しくも溶岩の如く熱せられた感情はみほをも圧倒させた。

 

「愚かにも向こうは三時間も猶予を与えた。これは我々にとって最大のチャンスだ。この時間を我々は有効活用しなければならない。我々を舐め腐る敵のケツを蹴り上げてやれ!」

 

彼女はそう言うと、次にみほを見ながら叫んだ。

 

「最後まで希望を捨てないのが、大洗の戦車道じゃ無いのか?」

 

そう問いかけると、みほはそこでゆっくりと頷いた後に言った。

 

「……真澄さんの言うとおり、まだ試合は終わっていません。まだ負けたわけではありません」

「西住ちゃん……」

「隊長……」

「来年も皆と戦車道をやりたい…その気持ちは同じな筈です!」

 

みほはそこでそう言うと、そこで彼女の言葉に答える声が一つ。

 

「そうです!私達はまだ負けてません!私も、西住殿と同じ気持ちです!」

「そうだよ……とことんやろうよ!諦めたら終わりじゃん、戦車も恋も!!」

「うん」

 

みほの言葉にあんこうチームの秋山、武部、五十鈴、冷泉が言うと、他の各チームのメンバーも顔を上げる。

その表情は先程までの暗い表情と打って変わって前を見据えていた。

 

「会長さん、降伏はしません。最後まで戦い抜きます。ただし、みんなが怪我しないよう冷静に判断しながら最後まで戦い抜きます!」

「分かったよ。西住ちゃん……」

 

みほがそう言うと角谷はそう言って頷く。そう、まだ試合は終わっていないのだ。

 

「修理を続けて下さい。Ⅲ突は足周り。M3は副砲。

寒さでエンジンが掛かりにくくなっている車両はエンジンルームを温めて下さい。時間はありませんが落ち着いて」

「「「「「はい!」」」」」

 

みほは各チームに修理するように指示を出す。

自動車部の生徒達から直伝された修理術を披露する時。そして河嶋は目から溢れ出る涙を拭いながら……。

 

「……我々は、作戦会議だ!」

 

そう言い、すぐに作戦会議を始める。幸いにもプラウダは猶予として三時間もの時間をくれた。残された時間で大洗の劣勢を覆す逆転の策を練れば良い。

 

「さぁっ!今の間にも出来ることはあるわよ。敵の偵察や作戦立案。色々分担してこなすわよ」

「「「「「はい!」」」」」

 

真澄は手を叩いて鼓舞をすると、そこで彼女はその内心である事を思っていた。

 

「(カチューシャ、貴方には無くて。みほちゃんにしか無いものがある。その壁を越えられない限り、貴方に勝ち目はないわ)」

 

 

 

ーーーそれが特に、伝統に固執している者であればある程にね。

 

 

 

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