知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第六二射

「直りそう?」

「何とか、動くと思うけど……」

 

アヒルさんチームは八九式のエンジンの調子を見ていた。

 

「よし、これで籠城せずにすみそうだ……」

「文明開化は近いっ!!」

 

カバさんチームでは、破壊されたⅢ突の右側の後輪を左衛門左とおりょうの二人が取り付ける。

一方のウサギさんチームは壊れた七五ミリ砲を見ていた。

 

「流石にこれは、直せないよね?」

「かわいそう……」

「包帯巻いとく?

「意味ないから」

 

七五ミリ砲はどうにもならなそうだった。固定砲塔とは言え火力が高い砲を失うのは大きいが、旋回出来る三七ミリ砲が使えるだけでもまだマシな部類だろう。

 

「回りますね」

「えぇ」

「砲塔回ったね」

「修理したからな」

 

Ⅳ号も砲撃によって旋回不能だった砲塔が旋回した。旋回装置が損傷していたのだが軽微だったようですぐに直せた。

 

「問題はこの包囲網をどうやって突破するかだな」

「敵の正確な位置が分かればいいんだけど」

 

みほと生徒会メンバーは地図を広げて今後の作戦を練る。

 

「偵察を出しましょう……でも誰を出すか……」

 

みほが誰を偵察に出すかを考えていると……。

 

「西住殿、偵察ならお任せ下さい!!」

 

そこで秋山が偵察役を買って出てくれた。

 

「優花里さん……ありがとう。でも…一人じゃ危険かも」

「だったら、私も行こう」

「エルヴィン殿、よろしいのですか?」

「もちろんだ、グデーリアン」

 

そう言い、お互いに楽しんでいる様子の二人を見て微笑むみほ。

 

「この広さだともう一チーム必要ですね」

 

そして彼女はそこでこのだだっ広い雪原を見ながらそう呟くと、そこで真澄が一言。

 

「だったらそど子、冷泉と行って来なよ」

「私が冷泉さんと!?」

 

真澄の提案に思わず園は驚いた表情を浮かべていた。

 

「確か二人共視力が2.0あったし。仲も良いしね」

 

そこでみほが納得した様子で頷くと、そこで園は反論した。

 

「仲良くなんてありません!それと、そど子って呼ばないで下さい!」

「文句言っている暇があるなら行くぞ、そど子」

 

そんな叫ぶ彼女を横目に冷泉は出て行こうとした。

 

「何よ!あんたなんて冷泉麻子だかられま子の癖に!」

「はいはい、わかったから行くぞそど子」

「待ちなさいよ!だから、そど子って呼ばないで!」

 

そんな仲の良い言い合いをしている二人の関係を見てみほと真澄は笑っていた。

 

「なんか、昔のエリカさんと真澄さんみたい」

「え、そう?」

 

そこで真澄が首を傾げると、みほは懐かしげに言う。

 

「昔、真澄さんとタイマンで試合をした時。私、全然勝てなかったな……」

「ああ、そうだったわね……」

 

そこでみほは懐かしげにそう溢していた。

 

「真澄さん、なぜか車内で音楽を流している事が多かったよね」

「ああ、癖でね」

 

彼女はそう答えると、みほは真澄に言った。

 

「ねえ、今度また試合をお願いしてもいい?」

「……ええ、良いわよ」

 

そんなみほの要求に真澄は軽く微笑むと、そのまま建物を出て行こうとした。

 

「どこに行くの?」

「ちょっと忘れ物」

 

彼女はそう答えると、雪の中に消えていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻、観客席の丘陵地からダージリンとオレンジペコが観戦していた。

 

「どうして、プラウダは攻撃しないでしょう?」

「プラウダの隊長は楽しんでるのよ。この状況を……彼女は彼是と搾取するのが大好きだもの。プライドをね……」

 

そう言って、ダージリンは紅茶を飲もうとティーカップを口に近づけて紅茶を飲みながら試合を見守る。

 

「(我々に無くて、彼女達にあるもの…それは恐らく……)」

 

真澄曰く、大洗の勝ち筋が見える理由。それは何たるかを、ダージリンは薄々感じつつあった。

 

 

 

 

 

別の観客席では西住しほとまほが観戦していた。

 

「帰るわ。こんな試合見るのは時間の無駄よ」

 

そう言って立ち上がって帰ろうとするしほ。

 

「待ってください」

「まほ?」

「まだ試合は終わってません」

 

そこで真顔でまほはしほに言うと、二人の横に誰かが座った。

 

「そうですよ。まだ試合は続いているんですから。見なきゃもったいないです」

「「っ!?」」

 

大きな巨漢の向こう、一人の青年がサングラスを外しながら言う。

側から見れば女性が卒倒してしまいそうな顔の整った好青年と、その横に座るまるで熊のような男を見てまほ達は驚いた目をしていた。

 

「……巌さん」

「清靖……」

 

そこでそれぞれがその者の名を呟くと、そこで清靖が挨拶をした。

 

「お久しぶりです。まほさん、いつぶりでしょうか?」

「……中学生の時以来だ」

 

まほがそう答えると、清靖は『もうそんな経ちますか』と懐かしげに答え、貫禄のありそうな表情で話しかけてきた。

 

「確かに、今の状況では側から見れば絶望的でしょう。

しかし、せっかく姉が二年ぶりに戦車に乗ったんです。僕としてはしっかり見て欲しいものですよ」

「……」

 

するとそこで、巌が口を開いた。

 

「試合の放棄は愚者の行う事。貴方も人の母親ならば、子の面倒を見るべきだろう?」

「……分かりました」

 

しほはそう答えると、静かに試合を見ていた。その横で清靖は『どの口が言うかと』喉までつっかえていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、プラウダの野営地では。

移動用として用意されていたのであろう軍用スノーモービルRF-8の操縦席に、毛布を被せながら座っているカチューシャがボルシチを食べていた。

 

「それで降伏の条件として。土下座に加えてウチの草むしりと麦踏み、ジャガイモ掘りを三ヶ月やらせましょうか?」

 

捉え方によってはジュネーヴ条約に違反しそうな事を言いながら、カチューシャはボルシチを口に運んでいく。

意地悪く笑みを浮かべるカチューシャにノンナがハンカチを取り出しながら言う。

 

「それはそうと、口が汚れてますよ」

「知ってるわよ!」

 

そう言ってカチューシャはハンカチを受け取って口を拭く。

 

「ところでカチューシャ、真澄さんをプラウダに転校させた後は。どうなさるのですか?」

「そうね、戦車に乗れるのなら肩車をしてもらうために私の戦車に乗せるわ!」

「そうですか……」

 

そこでノンナは納得半分、殺意半分で頷くとそこでクラーラが報告を入れた。

 

「『偵察を行なっていますがやはり他に戦車は見つからないそうです』」

「『そう……マップの端の方にいるのかしら?』」

「『分かりません。何処かで偽装をして隠れているかもしれませんが。吹雪始めたと言うこともあってこれ以上の偵察は難しいそうです』」

「『では、捜索はまた後になりますか……』」

「ちょっと貴方達!日本語で話しなさいよ!!」

 

そこですかさず、テンプレとなったツッコミをカチューシャがかけると。彼女はボルシチを食べ終えていた。

 

「ふう、ご馳走様。食べたら眠くなっちゃったわ」

 

そう言いながら、カチューシャはRF-8に寝そべって毛布を布団代わりに被る。

 

「降伏の時間に猶予を与えたのは、お腹空いて眠かったからですね?」

「違うわ!カチューシャの心が広いからよ!シベリア平原の様にね!」

「広くても寒そうです」

「うるさいわね。おやすみ」

 

からかう様に言うノンナにそう言い返すと、カチューシャは会話を打ち切って寝てしまう。そんなカチューシャを見てノンナは微笑ましく見て、コサックの子守唄を聴かせていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、建物に立て篭もった大洗チームでは。

 

「戦車が冷えるので素手で触らない様にして下さい」

「手の空いた者は暖を取れ!」

 

真澄の補給品に入っていた缶詰やレトルト品を温めて配っていた。

 

「スープ配ります」

「こんなに天気が荒れていたら、偵察に出たみんなは……」

 

みほはそう言って心配していた。

試合再開までまだまだ時間があり、体が冷える事から戦車の修理を一通り終えたチームから暖をとっていた。

すると、廃教会の出入り口から偵察に出ていた秋山とエルヴィンが『雪の進軍』を歌いながら戻って来た。その顔はとても嬉しそうだった。

 

「只今帰還しました」

 

続く様にもう一つの偵察チームの冷泉とそど子が走って帰って来た。こっちは疲れている様子だった。

 

「こちらも偵察終わりました」

 

偵察チームが帰って来て、早速みほは偵察チームの情報をもとに地図に敵の配置を記していく。

 

「凄い……あの大雪の中で、こんなに詳細に配置図が出来るなんて……」

「いや〜、敵の位置が完全に分かっちゃったね〜」

「皆さん、お疲れ様でした!これで作戦が立てやすくなりました。ありがとうございます!!」

「みんなっ、でかしたぞっ」

 

正直、偵察でここまで細やかに出来るとは思っておらず。みほも少し安堵した様子を見せていた。そして当の偵察チームは、毛布に包まりながらスープを飲んでいた。

 

「雪の進軍は楽しかったです!普段できない事が出来て新鮮でした!ね!」

「うむ、なかなか楽しかった」

 

秋山とエルヴィンの二人は、普段出来ない雪中偵察を楽しんでいた。

 

「そ、そう。無事で良かったです。冷泉さん達も……」

 

みほは苦笑いを浮かべながらそう言って冷泉とそど子に声を掛ける。

 

「敵に見つかってあちこち逃げ回ったのが帰って良かったな」

「っ!何言ってるの!!見つかったのも作戦よ!!」

「はいはい」

「はいは一度!」

 

どうやら冷泉とそど子は偵察の道中敵に見つかってあちこち逃げ回っていた様だったが、そど子はそれも作戦だと見栄を張っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

その頃、荷物を取りに廃村を抜けた真澄と榎本は、そこで枯れた木々の中に白いカモネットを装備して側からでは見えないように隠されていた短十二糎自走砲を見た。エンジンを切っており、雪も被せているので双眼鏡では視認は難しいだろう。

 

「よう、終わった?」

 

するとそこで、待機していた大久保が両手に湯気の出ている緑茶を飲みながら聞いてきた。

 

「いや、全然」

「本番はこれからよ」

 

その問いに二人はそう答えると、戦車に括り付けられていた荷物を外していた。

 

「偵察は?」

「目の前を通り過ぎていったよ」

「あの子達、節穴じゃないかって思っちゃった」

 

そこで伊藤が少し呆れた様子で顔を覗かせていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一方、観客席の丘では、モニターを眺めているオレンジペコとダージリン。アナウンスでは試合を続行するかを協議している事が伝えられる。

 

『只今、試合を続行するかどうか協議しております。繰り返します……』

「ますます、大洗女子に不利ですね。敵に四方を囲まれこの悪天候、きっと戦意も」

「それはどうかしら?」

 

とプラウダに包囲され、更にはこの悪天候で大洗の不利をオレンジペコは危惧する一方で、ダージリンはどこか余裕そうな顔をしていた。

 

「(この程度、軍師にとっては生ぬるいものでしょう?)」

 

彼女は楽しげに問いかけていた。

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