知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第六四射

どうしたって試合に緊張はつきものだ。その緊張をほぐすには、皆でトランス状態になるのが一番。

徐に立ち上がったみほを皆が見た。

 

「みぽりん?」

「みほさん?」

「西住殿?」

「西住さん……?」

 

そして彼女は真面目な顔で踊り出す。

 

 

 

 

 

あんこう踊りを

 

 

 

 

 

「み、みぽりん!?」

「にっ西住殿っ!?どうしたんですか?」

 

引っ込み思案で、聖グロリアーナで初めてあんこう踊りの内容を知った時真っ赤にして恥ずかしがっていた時とは違い。今は自ら率先して、しかも一人で踊っている。

そんな彼女に武部と秋山は驚愕で目を見開いていた。

 

「みんなも歌って下さい!私が踊りますから」

「逆効果だぞ!おい!?」

 

河嶋がツッコミを入れるが、みほは真剣だった。

 

「あの、恥ずかしがりのみほさんが……」

「みんなを盛り上げようと……」

「微妙に間違っているってるわよ」

 

この瞬間、みんなの為に動く。みほを前にみんな先までのやる気の無さを戒めていた。

 

「わっ私も踊りますっ!」

「わたしも!」

「わたくしもやります!」

「仕方ないな……」

 

秋山に釣られて武部、五十鈴、冷泉とあんこうチームが加わり、いつの間にか…

 

「ウム!」

「是非も無しっ!」

 

カバさんチーム、

 

「規則違反ね……」

「まったく戦車道の全国大会で……」

 

カモさんチーム、

 

「訳分からないよー」

「あんこうラリー!」

「つないでいきましょうっ!!」

「我々もっ!」

 

アヒルさんチーム、

 

「ここは踊るしかっ!」

「アイーッ!!」

 

ウサギさんチーム、生徒会と次々と大洗チーム全員があんこう踊りを踊っていた。

こういう時はおかしくとも楽しむのが一番だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……」

「お嬢……」

 

その頃の観客席エリアでは彼女等の踊りが盛大にモニターで流れており。百合は頭を抱え、新三郎は驚きのあまり声が出なくなっていた。

 

「……」

「……」

 

しほやまほは黙って見ていたが、しほは少し顔を引き攣っている。その横では……

 

「ああ…これは……」

「はははっ!みんなトランス状態なっていますね」

 

巌は軽く頭を抱え、清靖は面白がって見ていた。

 

「……」

「あらあら……これは正にハラショーですわ……」

 

小高い丘陵の上では、唖然としているオレンジペコの隣で、ダージリンがそう言っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その頃、場所は戻って廃教会では大洗メンバーが全員であんこう踊りを踊り、半ばお祭り騒ぎになっていた。

その時の彼女たちは先程まで意気消沈していたその姿はもうなく、とても楽しそうに踊っていた。

 

「あっ……あのっ!」

「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

そこへ突然大きな声が割り込んで来る。

水を注された一行が踊りを中断して声を主の方へと向くと、三時間前にカチューシャからの伝令として、降伏を勧告しに来たプラウダの生徒の一人が入り口に立っていた。

 

「誰?」

「ああ、黒田達は知らないだろうな……まぁ、彼女は見ての通り。プラウダチームの一人だ。恐らく、勧告の返事を聞きに来たんだろう」

「プラウダの……」

 

プラウダの生徒が訪ねて来た事に疑問に思った真澄達が首を傾げたので、河嶋が説明に納得の表情を浮かべるとプラウダの生徒は聞いた。

 

「もう直ぐタイムリミットです。降伏は?」

「しません。最後まで戦います」

 

そう聞かれると、みほは間を空けることなく言い返した。

 

「それと、カチューシャさんに伝えてください」

「何でしょう」

「仲間は絶対に渡さないと……」

 

試合前のおどおどした雰囲気とはうって変わって強めの口調で大声で言ったみほに、プラウダの生徒は目を見開くが、直ぐに表情を戻した。

 

「…………分かりました。では、そのように伝えておきます」

 

そう言って、プラウダの生徒がプラウダの野営地に戻ろうとした時だった。

 

「君。ちょっと君達の隊長に伝言をお願いしても良いかね?」

「はい……」

 

その生徒に声をかけた真澄はカチューシャに伝言を頼んだ。

 

「『今夜は一緒に踊りましょう』とね」

「……分かりました。そのようにお伝えいたします」

 

そう答えると、プラウダの生徒は去って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

プラウダの野営地

 

「……で、土下座?」

 

そろそろ降伏勧告から三時間、睡眠を取っていたカチューシャはノンナに起こされまだ少し寝ぼけている。

 

「いえ、降伏はしないそうです」

「ふーん、そう……待った甲斐がないわね」

 

だが、ノンナからのその報告に面白くなさそうに目をこするとすぐに気持ちを切り替えた。

 

「それじゃ、さっさと片付けてお家に帰るわよ」

「では……」

「ちゃんとあいつらに伝えたはずよ、降伏しなければ今度は容赦しないって」

 

プラウダ側からすれば勝てた状況で敢えて見逃してあげたのだ、これ以上は、あのフラッグ車と短十二糎自走砲以外を全滅させる宣言を守るため必要はない。

 

「さっさとフラッグ車やっつけて終わりにしてやるんだから」

 

ならばここからは本気だ、大洗のフラッグ車を狙い撃ちにしてやる。

 

「向こうは我々を偵察していた様ですが編成に変更は?」

「必要ないわ、敢えて包囲網の中に緩い所作ってあげたんだから、奴等はきっとそこをついてくる」

 

この三時間の間に大洗がこちらを偵察に来る事くらいはカチューシャも予想していた。その為の罠は用意してある。

 

「ついたら挟んでおしまいね」

「上手くいけばいいんですが」

「カチューシャの立てた作戦が失敗する訳ないじゃない!それに第二の策でフラッグ車狙いに来ても隠れているかーべーたんがちゃんと始末してくれる」

 

フラッグ車の護衛にはKV-2を設置した。先程たった一発の砲撃で大洗を窮地へと追いやった重戦車だ。

 

「用意周到な偉大なカチューシャ戦術を前にして、敵の泣きべそをかく姿が目に浮かぶわ」

 

意地悪く微笑むカチューシャだがふと気になったのかノンナに尋ねた。

 

「マスーミャは?」

「仲間は絶対に渡さないと……」

「そう、なら勝ってから貰うわよ。ノンナ!」

 

そう言うとノンナが思い出したようにカチューシャに言う。

 

「あぁ、そういえばその黒田真澄から伝言だそうです」

「?」

「『今夜は一緒に踊りましょう』だそうです」

「ふーん、一丁前なこと言っちゃって。それじゃ、お望み通り一切容赦しないから、行くわよ!」

 

そしてカチューシャの号令でプラウダ戦車は動き始める。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

みほが、考案した『ところてん作戦』の概要はこう。

先ず、偵察に出た二チームからの情報を纏った結果から、プラウダの包囲網には、一ヶ所だけ防御が緩くなっている場所が存在しているが分かった。

 

 

 

だが、それは戦力不足の理由ではなく、『大洗チームを嵌める為の罠』だ。

 

 

 

それからの展開を予想すると、その防御が緩くなっている場所から脱出しようとした場合、別の場所で待機していた予備戦力が駆けつけて攻撃を仕掛けてくる。

そうすれば、足止めを喰らっている内に本隊が到着し、再び包囲されると言う結末を辿る。

 

早めに決着を付けようと、フラッグ車を叩きに向かっても、恐らく同じ結果が待っているだろう。

 

その為、防御が緩くなっているその場所には行かず、敢えて、包囲網の中では最も戦力が集まっている、敵の本隊……つまり、カチューシャが居る本陣へと突撃し、それに戸惑っている間に強行突破するのである。

 

その後、大洗側の戦車数両で敵の気を引いている間に主力が反転して廃村地帯へと舞い戻り、プラウダのフラッグ車を撃破すると言う作戦である。

 

そして別行動中の短十二糎はそのカチューシャ本隊の攪乱を目的としていた。

 

「……以上が『ところてん作戦』の内容です。では戦車に乗り込んで下さい」

『『『『『はいっ!』』』』』

 

みほの一声でメンバーが続々と戦車に乗り込んでいく。そして丘の上に戦車を止めていた真澄達は後片付けを終えて自分達の戦車の元へと走って向かって行く。

 

「さて、行きますか」

「ええ」

 

そう言い、真澄達が教会を出ようとした時。角谷から声をかけられた。

 

「黒田ちゃん」

「何でしょうか?」

 

私は角谷会長に聞くと、会長はこう言う。

 

「ありがとね。こんな私たちを信じてくれて……」

 

何時もの時のような掴み所の分からない雰囲気が消えて。若干しおらしさを感じさせるような声色で言って頭を下げた。

そんな会長を見て私は少し笑う。

 

「いえ、むしろ感謝をしていますよ。私は」

「え?」

 

そこで真澄は満足げな表情を浮かべて言う。

 

「私はもう公式の戦車道をやるつもりはありませんでした。

何せつまらなかったですからね。正直、こんな危機的状況でもなかったら乗っていなかったでしょう……」

 

彼女はそう言うと、横で榎本も軽く頷いていた。

 

「ですがこの試合、私はとても楽しく思えます。こんな試合ができるとは思いませんでした……その点は感謝していますよ」

「……そっか」

 

角谷はそう答えると、そこで真澄は改めて角谷を見て言った。

 

「でも、貴方がみほちゃんを脅迫して戦車道に加入させたことは今でも恨んでいることをお忘れなく」

「おお、怖いね〜」

 

そう答えると、彼女達はそのまま雪原の中に消えて行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

角谷が教会に戻り、みほ達が『ところてん作戦』を開始しようとしていた。全車輌のエンジン音が響く中、

 

「……本当に良いんですか?」

「ええ」

「任せて」

 

角谷はそう答えると、みほ達は心配そうに見ていた。

 

「でも……」

「さあ、行くよ!」

「はい」

 

そして皆が乗り込む中、角谷が言う。

 

「西住ちゃん」

「え?」

 

Ⅳ号に乗るみほに角谷が話しかけた。

 

「私らをここまで、連れて来てくれてありがとね」

 

今まで見せた事もない優しい笑みでそう言う角谷。

 

「皆さん……それでは、これから敵包囲網を一気に突破する『ところてん作戦』を開始します!パンツァーフォー!!」

 

そして号令と共に大洗チームは出撃した。

 

 

 

 

 

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