知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第六六射

その頃、試合会場では……

 

「何やってるのよ、あんな低スペック集団相手に!全車で包囲!!」

『こちらフラッグ車、フラッグ車もっすか?』

「アホか!あんたは冬眠中のヒグマ並みに大人しくしてなさい!」

 

逃げる大洗とそれを追うプラウダの状況は依然として続いており、カチューシャは無線に向かって怒鳴り散らしていた。

 

「麻子さん、二時が手薄です!一気に振り切ってこの低地を抜け出す事は可能ですか?」

「了解、多少きつめに行くぞ」

 

みほの質問に、冷泉が即座に答える。

 

「大丈夫です、やって下さい!沙織さん、他の戦車に伝えて!」

「わ、分かった!」

 

そう答え、武部は戦車に通信を入れた。

 

「あんこう二時展開します!フェイント入って。難易度高いです、頑張って付いてきて下さい!」

『了解ぜよ』

『大丈夫?』

『大丈夫!』

 

そこで返事を聞いた。

 

『マッチポイントには、まだ早い!気を引き締めて行くぞ!』

『『『おおーーッ!!』』』

『頑張るのよ、ゴモヨ!』

『分かってるよ、そど子』

 

武部の指示に、其々のチームメンバーから返事が次々と返され、大洗本隊は急激な方向転換を行う。あんこうチームを先頭に大洗の各チームがきちんとそれに続く、無茶な行軍ではあるが遅れるチームも出て来ない。

 

「何なの、チマチマ軽戦車みたいに逃げ回って」

 

その頃、追撃していたプラウダ本隊では、先頭を走るT-34/85のキューポラから様子を見ていたカチューシャが逃げる大洗にイラつきながら呟いた。追いかけるプラウダだが、夜戦という事もあり大洗の戦車を見失う事もある。

 

「機銃曳光弾!主砲勿体無いから使っちゃダメ!」

 

無線に向かってそう叫ぶと、牽制と相手戦車の位置を把握する為、T-34の車両が一斉に曳光弾を撃ちまくる。

 

 

 

 

 

その瞬間、プラウダの戦車から機銃音が鳴り響いた。大洗の戦車に向かって撃っていないのを見る限り、元から当てるつもりは微塵も無く、あくまでも照明弾としての使用だった。だがそれは、大洗にとっても相手の戦車を把握するチャンスでもあった。

 

「っ!?」

 

自分達の遥か上から飛んで行く曳光弾の軌跡を視野に捉えたみほは、直様カモさんチームの園に通信を入れた。

 

「見えたぞ」

「カモさん、追いかけて来ているのは何両ですか?」

『えっと……全部で六台です!』

 

その通信に間を入れず、園から返事が返される。

 

「フラッグ車は、いますか?」

『見当たりません』

 

その報告を聞いたみほは、すぐに喉元のマイクで指示を送る。

 

「カバさん、あんこうと一緒に坂を登り終えた直後に敵をやり過ごして下さい。主力が居ないうちに敵のフラッグ車を叩きます」

『心得た!』

 

みほがカバさんチームに通信を入れると、エルヴィンから返事を返される。このまま逃げていても最後には捕まってしまうだろう。それならば、こちらの数を割いてでも主力を相手のフラッグ車に向けた方が良い。

 

「ウサギさんとカモさんは、アヒルさんを守りつつ逃げて下さい。この暗さに紛れる為、出来るだけ撃ち返さないで!」

『はい!!』

 

作戦を伝えると、大洗の戦車は丘を上って行く。Ⅳ号とⅢ突は、その丘を上り終えた直後に曲がって、両サイドの陰に隠れる。残りの三両は前進して行き、後からプラウダ本隊がやって来ると、両サイドに隠れた二両に気付く事なく、フラッグ車である八九式を追って行く。

 

「追え追えーーッ!!」

 

フラッグ車を追い、撃破する事に躍起に成っているカチューシャがそう叫ぶが、違和感を覚えたノンナが声を掛けた。

 

「二両程見当たりませんが?それに……」

「そんな細かい事どうでも良いから!永久凍土の果てまで追い掛けなさい!!」

 

ノンナは見失ったⅣ号、Ⅲ突の他にあの戦車の中に一番警戒するべき短十二糎の姿がいまだに見えない事に気づきカチューシャに注意しようとしたが、カチューシャは完全に頭に血が昇って冷静さを失い、その忠告を意に介さず、ただフラッグ車を追い回せと叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

プラウダ本隊をやり過ごした事を確認したⅣ号とⅢ突は丘の陰から出て行く。

 

「冷泉さん、戦車前進!村へ戻ります」

「了解」

 

フラッグ車を撃つべく再び廃村へと戻って行く。みほはキューポラの上に立ち、周囲を見渡すと直ぐに車内に戻り、秋山に声を掛けた。

 

「優花里さん、もう一度偵察に出てくれる」

「はい、喜んでっ!」

 

そう答えるや否や、砲塔横の装填手のハッチを開けると、走行中のⅣ号から勢い良く飛び降りて着地すると、みほ達に手を振り廃村エリアを見渡した。

 

「何処か、高い所……っ!!」

 

その時、少なくても廃村エリア一帯を見渡せそうな建物を視界に捉え、秋山はその建物へ駆け寄り大急ぎで階段を登り始める。

 

 

 

 

 

そして、大洗側のフラッグ車を撃つ為の準備は順調だった。だが、プラウダ側もただ追い掛けっ子を続けるはずが無い。

 

「よくもっ!ポンコツ戦車の分際でこの偉大なカチューシャ戦術をコケにしてくれたわねっ!」

『遅れてすみません、IS-2、只今帰参です!』

 

作戦が上手くいかない事に苛立ちを募らせるカチューシャに最高戦力が到着した。そう、現在プラウダ戦車隊では高い火力を誇り、猛獣殺しの異名を持つ一二二ミリ戦車砲を搭載した重戦車。IS-2ことスターリン重戦車が本隊に合流したのだ。

 

「来たぁ!!ノンナ、代わりなさい!」

「はい」

 

待ち望んでいた味方の到着に、カチューシャは歓喜の声を上げ、ノンナに搭乗車輌への移動を指示する。

プラウダの砲手であるノンナと破壊力のあるIS-2、この両者が合わさる事により最強の戦車が誕生した。

 

カチューシャの指示通り、IS-2に乗り移ったノンナは砲手の席に座ってスコープを覗くと直ぐ様引き金を引く。

轟音と共に放たれた一二二ミリ砲弾は八九式の直ぐ隣に着弾し、八九式は大きく揺れる。

 

「「「「うわぁぁぁあああっ!!?」」」」

 

その大きな振動に車内は軽く混乱する。

 

「な、何なのよアレは!?反則よ!校則違反よ!」

 

IS-2の威力を間近に見たみどり子がそう叫ぶ。

 

「あわわわわわっ!!?どうしよう~~!?」

 

その振動が伝わったのか、M3操縦手の阪口が悲鳴に近い声を上げる。

 

「私達の事は良いから、アヒルさんを守ろう!」

「そうだよ桂利奈ちゃん!頑張って!」

「っ!!よっしゃーーっ!!」

 

そんな阪口を大野と宇津木が励ますと阪口は力強く答え、八九式を守れるように自らの車体を盾にするのであった。

 

 

 

 

 

一二二ミリ砲を乗せたIS-2が現れ、大洗の三両は激しい猛攻にさらされる。

 

「何なのよ、あれ!反則よ!校則違反よ!アヒルさんチームジグザグに逃げましょう!」

『了解!』

 

だがこのまま逃げ続けるのは時間の問題であった。M3はノンナの射撃でエンジン部分をやられて行動不能となってしまった。

 

『皆さん、無事ですか!?』

「「「「大丈夫でーす!!」」」」

「眼鏡割れちゃったけど、大丈夫です!」

 

そしてカモさんチームがアヒルさんチームの援護に回る。

 

「カモさん、アヒルさんをお願いします!」

『了解したわ!』

 

澤がカモさんチームに通信を入れると、園から力強い返事が返された。

 

「ゴモヨ、パゾミ!風紀委員の腕の見せ所よ!」

「「はい!」」

 

後藤はB1を八九式の真後ろについて新しい盾になった。

 

 

 

 

 

一方、カチューシャ率いるプラウダ本隊にも通信が入っていた。

 

『カチューシャ隊長!此方フラッグ、発見されちゃいました!どうしましょう!?』

 

廃村エリアでずっと待機していたプラウダのフラッグ車の車長が口調に若干の田舎訛りを含ませながら、切羽詰まった様な声色で叫んでいた。

 

『そちらに、合流しても良いですか!?てか合流させて下さい!』

「いいえ!単独で広い雪原に出たら、いい的に成るだけよ!!」

 

そこでカチューシャが叫ぶと、ノンナが言った。

 

『ほんの少しの時間さえ頂けたら、必ず仕留めて見せます』

「と言うわけだから、外に出ずにチャカチャカ逃げ回って時間稼ぎして!頼れる同志の前に引き摺り出したって良いんだから!」

 

ノンナの言葉を聞いたカチューシャはフラッグ車にそう指示を送る。彼女はノンナの実力を信頼している。

カチューシャがそう言うと強制的に通信を切られる。そう、プラウダのフラッグ車にはKV-2を護衛に付けている、そう簡単にはやられない筈だ。

 

 

 

 

 

カチューシャからの通信を受けたプラウダのフラッグ車は廃村の中を逃げ回る。

車長はとある別の戦車の車長に通信を入れると、T-34/76が通り過ぎた後に巨大な砲塔を持つ戦車KV-2重戦車が現れ、先へは行かせないとばかりに街道の真ん中に躍り出て仁王立ちしていた。まさに街道上の怪物とでも言える様相だった。

 

「来た、ギガントだ!」

「大丈夫!初速は遅いから、落ち着いて避けて!」

 

エルヴィンの言葉にみほはそう返す。

主砲の一五二ミリ砲に当たればどんな戦車でもひとたまりもない。だかKV-2はその砲弾の大きさの為、次弾の装填には時間がかかる。

その直後にKV-2が発砲するが、みほの言葉通り、初速の遅さ故に軽々と避けられる。

 

「停止!」

 

みほの指示でⅣ号と三突が横一列で停車する。

 

「KV-2は、次の装填まで時間があるから落ち着いて!」

「はい」

 

みほの言葉にそう返し、五十鈴はスコープを覗いて照準を合わせようとする。

 

「最も装甲が弱い所を狙って……」

『こちらカバさんチーム!何時でも撃てるぞ!』

 

五十鈴とエルヴィンから、そんな声が飛ぶ。

 

「撃て!」

 

その指示と共に二両の主砲が火を噴き、二つの砲弾はKV-2に真っ直ぐ叩き込まれて行動不能にした。

ソ連戦車は下部が弱いので、そこを狙えば良かった。

 

「追撃します!」

 

みほ達は、再びフラッグ車を撃破する為に追撃を開始する。これで残るはフラッグ車だけだ。

 

 

 

 

 

「後一つ……」

 

ノンナは照準器で盾となってフラッグ車を守っているB1を照準に収めると、そこで引き金を引いて最後の盾を破壊した。

 

『カモチーム撃破されました!アヒルさんチームの皆さん、健闘を祈る!!』

「あとはアヒルさんだけだよ!!」

「……うん」

 

だが向こうもウサギさんチームとカモさんチームがやられ、これでフラッグ車の防衛は居なくなってしまった。

 

「……」

「どうしたのみぽりん?」

「ううん……なんでもない」

 

みほはそう言い、フラッグ車に攻撃をし続ける。しかしみほは丘上から一瞬だけ一両の戦車が見えた気がした。

 

 

 

そして一瞬だけ、風の中に鉄の咆哮のような声が混じっているようにも聞こえた。

 

 

 

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