知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第六八射

『試合終了!大洗女子学園の勝利!』

 

アナウンスと共に観客席から歓声が巻き起こる。

 

『『『『『ウォォォォォォォオオオオ!!』』』』』

 

それは大洗がプラウダのフラッグ車を倒して準決勝を制したからだ。

 

「「勝った!」」

「「「「バンザーイッ!!」」」」

「よくやったぞーっ!!」

 

多くのチームが勝利に沸いていた。

 

「やりましたね!」

「すごーい!やったねーみぽりーん!」

「西住殿、すごいです!やりましたね!」

「優花里さん、喜びすぎ!」

 

あんこうチームのみんなもⅣ号から降りて抱き合ったり、涙を流して勝利を喜んだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてその様子を見ていたしほ達はしずかにその画面を見ていた。

 

「みほさんのいるチームが勝ちましたね」

 

清靖がそう聞くと、しほは答えた。

 

「あの子が勝てたのは相手が油断していたからよ」

「あれは違う……」

 

そこで先に巌が口を開いて断言した。

 

「あれは実力がある者の目をしている。……まほさん、君はどう感じた?」

 

そこで珍しく巌がまほに話をふると、彼女ははっきりとした口調で言った。

 

「みほには実力があります。みほはマニュアルにとらわれず臨機応変に対処する力があります。そして真澄も同じく……今回の戦いはみほの判断とそして、心を合わせたチームの勝利です」

「それは邪道よ…」

 

しほがそう答えると、清靖が言った。

 

「そうでしょうか?…確かに、西住流の戦い方にはそぐわないでしょう。でも、戦車道が全員西住流などの流派に所属しているわけではないのは。あなたもよくご存知のはずです」

「……」

 

それを具に経験してきた彼女は思わず言葉に詰まってしまう。

 

「まあ、邪道か正道が勝つかは今度の試合でわかる話です。みほさんが勝つことになれば、他のうるさい連中も黙ることでしょう」

「……まほ。決勝戦では王者の戦い方を見せつけなさい」

「はい、西住流の名にかけて……必ず、叩き潰します」

 

そう答える、まほの目は西住流の教え子。そして、次期師範候補としての目をしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、会場では。カチューシャが呆然と立っていた。いまだに負けたことが信じられなかったのだ。そして、負けたのだと自覚をすると不意に涙が溢れてきた。

 

「……くっ!……うぅ………!!」

 

その事実を知ると悔しさがこみ上げ、我慢できずにカチューシャは涙する。

 

「どうぞ……」

 

その時、何時の間にかIS-2から乗り移ってきたノンナがハンカチを差し出す。

 

「な、泣いてないわよ!」

 

そう言って強がりながら、カチューシャは差し出されたハンカチで鼻をかんでいた

 

「しかし、酷くやられたわ……」

 

そう言い、見たのは大勢の乗員が降りている。撃破されたプラウダに車両達。その中にはノンナのIS-2も含まれていた。それはまるで、怪獣が通り過ぎた後のようだった。

キル比で言うと〇対七。圧倒的壊滅だった。

 

「あんなに楽しんでいた戦い。初めてだったな……」

 

負けたのに、これほど清々しい事はなかった。

それどころか、あんなにも戦車道というものを楽しんでいる彼女の目に違うものを感じていた。

 

「カチューシャ?」

「なんでもないわ!それより行くわよノンナ!」

 

そう言いカチューシャはノンナを連れてどこかへと向かうのだった……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「勝ったの?」

「何とかね……」

「何とか?」

 

短十二糎のキューポラから顔を出している真澄の返答に伊藤が首を傾げると、そこで大久保が苦笑する。

 

「趣味悪いですよ。音楽に合わせて攻撃なんて……」

「でもタイミングはバッチリでしょう?」

「まぁ……そうかもしれませんが」

 

彼女はそう答えると、懐かしげに榎本は言う。

 

「はははっ、最初の頃。こんな感じで好きな音楽流していなかった?」

「ええ、初めは変な車長だなと思っていたけど……」

「いやぁ、久々ね。こんな感覚も」

 

大隈や大久保がそう溢すと、後から入ってきた組の伊藤が溢す。

 

「でも一つ言えるのは……」

「「「「とても楽しかった」」」」

 

四人が同時に言うと、お互いに笑っていた。

 

「戦車道は楽しくやらないとね」

「ええ、そうね」

 

真澄の意見に榎本も頷いていた。すると、みほが近づいてきた。

 

「真澄さん」

「やあ、みほちゃん」

 

試合が終わってから一時間経っているにも関わらず歓声の声は止まない。そりゃそうだ、側から見れば無名の高校が昨年の優勝校に勝利したのだから。半ば下剋上のような話だ。

 

「うまく考えたわね。戦車を誘導だなんて」

「そんな…私は……」

 

そこで相変わらずなみほの肩を軽く持って言った。

 

「自信持ちなさい。ほら、胸張りなさいよ。あんた意外と胸でかいんだし」

「ちょ、ちょっと?!真澄さん!?」

 

そう言い、真澄とみほが軽く戯れているとそこに話しかけてくる人物が一人。

 

「せっかく包囲網の一部を緩くして、そこに引き付けてぶっ叩くつもりだったのに。まさか正面突破されるとは思わなかったわ」

 

そう言いながらやって来た三人はカチューシャとノンナ、そしてクラーラだった。

悔しながらも、健闘を讃えにきた彼女にみほは答えた。

 

「私もです」

「……え?」

 

みほの返答にカチューシャは驚いていた。

 

「あそこで一気に攻撃されてたら……負けてたかも」

「それはどうかしら、もしかしたら……と、とにかく、あなた達なかなかのもんよ。言っとくけど、悔しくなんてないんだからね!」

 

圧倒的ツンデレ台詞に、大洗のメンバーは唖然とした表情を浮かべる。

 

「ノンナ!」

「はい」

 

それを余所に、カチューシャはノンナの肩車から降りてみほの前に立つと、無言で右手を差し出した。

 

「あっ……」

 

その行動に一瞬戸惑いを見せたみほだが、やがてその表情に笑みを浮かべて右手を取り、握手を交わした。

 

「決勝戦、私たちも見に行くわ。カチューシャをガッカリさせないでよね?優勝しなかったら、許さないんだから」

「っ!はいっ!」

 

その激励に、みほはしっかりとした返事を返した。するとカチューシャは真澄を見て言う。

 

「マスーミャ」

「?」

「肩車」

「……はいよ」

 

その一言で真澄は何をしたいのか納得すると、そこでくるりと背中を向いて屈んだ。

するとカチューシャは一旦ノンナから降りるとそのまま真澄の背中によじ登った。

 

「相変わらず上りにくいわね」

「そうかい?」

「ええ、ノンナの方が乗りやすいわ」

「よっこらせ」

 

少し重そうにしつつも、彼女は立ち上がると思わず溢した。

 

「重くなった?」

「っ!!なんてこと言うのよ!!」

 

思わず顔を真っ赤に開いて言う彼女に真澄が続いていう。

 

身長が伸びたんじゃなくて?(体重が増えただけだろうけど)

「なんか違う言葉が聞こえたのは気のせい?」

「キノセイキノセイ」

 

彼女はそう答えると、カチューシャは真澄の肩車をした後に降りた。あとノンナさん、こっちを殺すような目で見ないで。

 

「やっぱりノンナの方が乗りやすくて良いわね」

「おや、肩車要員はクビですかい?」

「ええ、そうね。ノンナが一番だわ」

 

カチューシャがはっきりとそう言うと、後ろでノンナが目を輝かせていた。

 

「マスーミャ、今度こそは私が勝つから」

「ええ、その時をよろしく」

 

そう言うと、カチューシャはノンナに肩車をして貰って帰って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

試合後、真澄はそこで後方係の仕事に就こうとしたら……

 

『姐……マネージャーはもう選手ですから。後は全部我々にお任せください!』

 

と言われてしまい、真澄は試合後に手持ち無沙汰になってしまっていた。

 

「……こう言う時、何をすればいいんだ?」

 

すでに手遅れな彼女は撤収中の会場で呆然とベンチに座っていると、声をかけられる。

 

「真澄さん」

「?」

 

声をかけられた方を向くと、そこには千代と、彼女その場でウズウズしている愛里寿がいた。

 

「ああ、千代さん。それに愛里寿ちゃんも……」

「真澄……お姐ちゃん」

 

そこで少し待ちきれない様子の彼女に真澄や千代は少し微笑むと、真澄は手招きをした。

 

「さっきの試合?」

「うん、色々と聞きたいから」

「ふふっ、じゃあ愛里寿。私はヘリポートで待っているから。時間までに来るのよ」

「うん」

 

そこで千代は愛里寿に言うと、真澄も時間を確認して頷いていた。

 

「んで、私があそこまでの大立ち回りできる理由を聞きたいんだろう?」

「……うん」

 

真澄の予言が的中すると、そこで真澄は少し考えた後に軽く頭を掻いて答える。

 

「戦車道ってね、()()()()が一番なのよ」

「楽しむ?」

 

思わず愛里寿は首を傾げると、そこで真澄は頷く。

 

「そう、『楽しむ事』戦車道はあくまでもスポーツ。

乙女の嗜みって言ったってね、日本は欧州みたいに貴族の遊びだったり、アメリカみたいなエンターテインメントじゃないの」

 

そう言い、彼女は自分なりの戦車道を語る。

 

「私が強いわけじゃない。私を支えてくれる人が強いだけ。だって私自身は砲撃の腕も、操縦の腕もへっぽこだもの」

「……」

 

彼女はシガレットを取り出しながらそう語る。

 

「戦車道は遊びの一環、人生は楽しんだもの勝ち。私は捻くれ者だから、そういう()()()()()()生き方が好きなだけよ」

「普通じゃない……生き方」

 

そこで愛里寿は真澄の言葉を胸に刻もうとすると、そこで彼女が言った。

 

「少なくとも、あたしの生き方は真似しないほうがいいわ。喧嘩三昧の毎日になっちゃうもの」

「……」

 

喧嘩三昧と聞いて愛里寿の脳裏には真澄が拳を握って相手を殴っている姿が容易に想像できてしまった。

 

「私って戦車道よりも強襲戦車競技(タンカスロン)の方が向いてるってよく言われるのよね〜」

「それは……」

 

そうかもしれないと、愛里寿は少し申し訳無いが思ってしまった。

 

「まあでも、私は『楽しむ戦車道』をモットーにしている。負けても楽しめるくらい満足のいく戦いをするの」

「……」

「元々『sports』と言う言葉の語源は古フランス語の『desporter』から来ているの。意味は<気晴らしをする、楽しむ>。

…つまり、スポーツという言葉そのものが楽しむと言う意味を持っている」

 

彼女はそう答えると、愛里寿は納得した様子で真澄を見ていた。

 

「戦車道を政府がスポーツ競技の一つとして認めるのならば、私はただ言葉の通りに楽しむだけ。それだけよ」

 

彼女は愛里寿の疑問にそう答えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

帰りのヘリの中で、愛里寿はそんな真澄の話を楽しげに話していた。

それを聞いた千代は

 

「そう……いい話が聞けてよかったわね」

「うんっ!」

 

愛里寿は満足げにそう答えると、千代は内心微笑ましかった。

 

「(先輩と同じことを……あの子も言うようになったのね)」

 

そう思い、千代はかつて二〇対一の非対称の殲滅戦でボロ負けした時に、その一の方に乗っていた車長が語っていた事と同じ話をしていると思っていた。

 

「(清子先輩、あなたの意思は……娘さんがしっかり受け継いでいますよ)」

 

 

 

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