知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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新年明けましておめでとうございます。


第六九射

いよいよ決勝戦まで駒を進めることに成功した大洗女子学園戦車道部。

その戦車倉庫では戦車道履修生が集合していた。

無理もない、これは学園の存続を賭けた戦いだ。すでに後方係の子もこの事は口外無用で周知の事実となっており、その面構えは緊張したものだった。

 

「次はいよいよ決勝戦だ。相手は黒森峰女学園!」

 

河嶋が言うとメンバーの中に緊張が走る。特にみほの表情は今までより引き締まる。

 

「全校の期待が掛かってるから頑張ってよ〜」

 

如何にも軽い調子で、角谷が言う。

 

「本日は全員戦車の整備に当たれ!」

『『『『『『はい!』』』』』

 

そう返事を返し、メンバーは戦車の整備を始めた。

 

 

 

 

 

そして生徒会トリオと隊長のみほ。そして準決勝より副隊長の任を受けた真澄が生徒会室にて作戦会議を開いていた。

 

「決勝戦に出れる車両は二〇両。おそらく出場車両はティーガー、パンター、ヤークトパンター……」

「そこにティーガーⅡ、ヤークトティーガーにエレファント……泣きっ面に蜂ね」

「これじゃあ、あまりにも戦力差が……」

 

思わずみほですらそう溢してしまう。そりゃそうだ、向こうはデリケートな足だが高性能なドイツ戦車。おまけに練度も折り紙付き。

対するこちらは戦車の質も練度、物量も全て劣っている。……こう考えると、ドイツ戦車ってサラブレッドみたいだな。足弱いし。

 

「どこかで戦車たたき売りしていませんかね?」

 

思わず小山がそう溢してしまうと、角谷も渋めの様子で言う。

 

「いろんな部活が義援金を集めて出してくれたけど、戦車は無理かもね……」

「その分は今ある戦車の補強…または改造に回すしかありませんね会長」

 

実を言うと、戦車を購入する方法はある。しかしそれでは大洗の戦車道に手を貸したことになり、後々厄介なことになる。

 

「(私のポケットマネーを出すのは不味いからなぁ……)」

 

そりゃ最近は儲かってはいるさ、大洗のおかげで。でもここで手を出すわけにはいかんのだよ。

 

「そう言えば、この前見つかった八八ミリはまだか?」

 

八八ミリとは、前に榎本たちが船内で見つけたあの車両だ。

確か自動車部が一回吊り上げの時に落っことして少し壊れたと聞いていたが……。多分物量で直したんだな。幸いにも整備員は多くいるわけだし。

ただ車両自体はとんでもなくニッチな代物だ。自分も思わずそれを見た時は吹き出し、慌てて秋山には隠した代物だ。

 

「散らばったパーツを自動車部の人たちが組み立てていると思うけど……」

「そうか!あれさえあればこの戦況を打破できるはずだ!!」

 

河嶋が自信満々に言うと。丁度、小山のポケットから電話が鳴った。

 

「あっ……電話、はい」

 

小山はそれを受けとると短く言葉を交わして、静かに電話を切ると笑顔を見せた。

 

「レストア、終了です!!」

「よしっ!!」

 

小山の嬉しそうな言葉に河嶋先輩も嬉しそうに言う。そして真澄達はその戦車のもとへと向かった。

 

「あっ、秋山にも連絡入れとこ」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「すごーい!」

 

現場に到着すると、そこにはすでに秋山と榎本の姿があった。榎本、お前は呼んだ覚えないのだが……。

 

「優花里が興奮しているから見に来たのよ」

「ああ、なるほど」

 

そこで真澄は納得すると、その横でみほは話していないのに会話が成立している事実に驚いていた。

 

「これ!レア戦車なんですよね!!」

 

秋山は嬉しそうにそう言う。確かに彼女の言う通りレストアが完了した戦車はレアな珍しい戦車だった。少なくともここにいる全員が初めてみた代物だった。

 

「ポルシェティーガー……」

「マニアにはたまらない一品です〜!」

 

そう言うと秋山達は戦車を見ていた。ポルシェティーガー……VK4501 (P)はかの名車や迷車、珍車を送り出してきたフェルディナント・ポルシェ氏が開発した戦車で、世界初?の機構を備えた画期的な戦車である。

あのVK4501(H)、所謂普段我々が知っているあのティーガーⅠ戦車と呼ぶ車両と競争試験を行った戦車である。 

 

「まぁ、地面にめり込んだり……」

 

秋山がそう言うとポルシェティーガーは土煙を立てて地面を掘り始める。

 

「加熱して……」

 

すると今度は車体後部から黒煙が上がる。

 

「炎上したり……」

 

すると黒煙が上がっていた所から火が上がる。するとボンッ!と音を立ててポルシェティーガーが壊れた。

 

「壊れやすいのが難点ですが…」

 

秋山がそう言うとキューポラからオレンジ色のナッパ服を着たナカジマさんが出てきた。

 

そう、この戦車最大の特徴であるハイブリット方式。本来の戦車であればエンジンの回転数で直接戦車を動かす所を、この戦車はエンジンがモーターを介して発電し、その発電した電気を使って走行する画期的なシステムを備えていた。

ぶっちゃけて言うとプリ○スに似た機構で動く戦車と言うことだ。こう言うと実にエコっぽく聞こえるだろう?

 

ちなみに壊れやすいのは別に電装系の技術面での問題では無い、むしろ細かい歯車などを多く多用するトランスミッションを必要としない構造故にギアチェンジを必要とせず。むしろ乗員からは好評だったと言う。

 

主な問題点としては六五トンと言う、M1エイブラムスより重い重量にまさかの四五トン級戦車の足回りをそのままくっつけたと言う目に見えてわかる重量オーバーによる激しい足回りの損耗や、中のモーターに貴重な戦略物資である銅を大量に使う事。

 

また戦車の整備の際に内燃機関だけでなく、電装系の装備も必要になることなどが挙げられる。

あと左右の履帯で別々のモーターを動かす為、まっすぐに進むのが難しいと言う欠点もある。あとはエネルギー効率の問題で急斜面を登るのも苦手だ。

あとの問題はモーターから漏れ出る電磁波がモロに無線機に悪影響を与えることだ。

 

「あちゃ〜、ま〜たやっちゃった〜。おーい、ホシノー!消火器消化器〜!」

 

そう言うと涼しい顔でナカジマ達は消化器を持ち出して消化を始めた。

 

「戦車とは呼びたく無い戦車だよね……」

 

そう会長が言うと秋山が弁護する。

 

「でも!主砲の八八ミリ砲の威力は絶大!装甲だって前面百ミリと、重戦車にふさわしいスペックですから!!」

「事実、こいつの砲塔を少し改修したのがティーガーⅠの砲塔になっているしね」

 

ちなみにコイツの車両は後に先ほど真澄の言っていたエレファントと呼ばれる戦車に改造を受ける事となる。

コイツはもったいないお化けが生んだマジもんのお化け的性能を持つ戦車であるので、またいつか話そう。

 

「もっと他に戦車は無いんでしょうか……」

 

小山は本気で困った表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『大洗女子学園の皆様!皆様の風紀を守る、皆様に愛されている、皆様の風紀委員です!!』

 

九五式小型貨物乗用車に乗りながら園がメガホンを片手に呼びかける。

 

『戦車を見かけたら速やかにお知らせ下さい!!』

 

園の部下である風紀委員会本部の生徒を使った物量作戦を展開していた。その様子はさながら選挙カーだった。

 

 

 

 

 

一方、一年生チームは学園裏の駐車場を捜索していた。

 

『戦車を見かけた方はご一報下さい!』

 

澤がメガホン片手にそう言うと、横で大野達が茶化していた。

 

「御不要の戦車回収しまーす」

「違うじょ〜」

「言ってみたくなるじゃない」

「本当バカだな〜、あやは〜」

「ひどーい、よりによって優季ちゃんに言われた!」

 

そう言い、廃品回収みたいなノリでふざけながら戦車を探していた。それ故にすぐ側に未発見の戦車が放置されているのに気づかずに行ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「とりあえず義援金でヘッツァー改造キット買ったから、これを38tに取り付けよう!!」

 

角谷さんが自信満々にそう言う。ポルシェ・ティーガーのレストアから翌日。

今の38tの三七ミリ砲では威力不足なため、駆逐戦車ヘッツァーに改造しようというのだ。まあヘッツァーも元をたどれば38tの改造だから問題はないはずなんだが……。

 

「結構無理矢理よね……」

 

横で小山さんが苦笑する。改造キットなんだからそれは仕方ない。だが、ご先祖とはいえ転輪の大きさも違う上にシャーシも違う。なので魔改造にも程があった。

 

「行ける?」

「なんとかやってみます」

 

真澄が整備係にそう聞くと、聞かれた生徒は頷いて答えた。

このヘッツァーの主砲は四八口径七五ミリ対戦車砲……そう、Ⅳ号やⅢ突と同じ主砲を備えているのだ。これで砲弾の共有化や、砲性能の共通化ができる。

 

「会長、じゃあ使わない三七ミリ砲弾は売ってもいいですか?」

「うん。もうヘッツァーから変わる事ないだろうしね」

 

角谷がそう答えると、真澄は補給係の生徒に目を向けて作業を行わせていた。

 

「あとはⅣ号にシュルツェンを取り付けますか?」

「いいねそれ!」

 

そう話し合う中、真澄は一人倉庫を後にする。

 

「どこに行くの?」

 

すると、そんな彼女に榎本が聞く。

 

「ちょっと買い物」

「どこに?」

 

榎本は少し楽しげに聞くと、真澄は答えた。

 

「せんしゃ倶楽部本店」

「おお!あそこね」

 

そこで榎本は納得した表情を浮かべると、倉庫を出て行った真澄にみほが声をかけた。

 

「あれ?真澄さん、どこに行くの?」

「ちょっと買い物だってさ」

「へぇ……」

 

みほはそこで真澄の買い物に少しだけ興味が湧いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「えっ!?ここには無いの?」

 

学園艦から態々ヘリを飛ばして訪れたせんしゃ倶楽部本店で、思わず真澄は驚いた声をあげてしまう。

すると店主はやや申し訳なさそうな表情で言った。

 

「生憎と、その装備……それも連盟公認の物となると取り寄せなきゃならないね」

「…まじかぁ……」

 

どのくらい時間が掛かるのかと聞くと、最低でも半年と言われてしまった。

 

「強襲戦車競技用のならあるんだけどね……」

「あぁ……そりゃダメだな」

 

非公式・非公認の戦車競技である強襲戦車競技ではあらゆる規制が外され。最悪、ヴィーゼル空挺戦闘車すら出ることが出来る。

 

「最近は強襲戦車競技も人気が出てきているのは君もよく知っているだろうけどね」

「流石に非公認品は不味いよなぁ……」

 

そう言い、困っているとそこでふと陽気な声が聞こえてきた。

 

「おやぁ?そこに居るのは噂の選手じゃないかい?」

「ああ、本当だ」

「珍しいお客じゃないか。こんな日に」

 

その声のした方を振り向くと、そこには三人のツナギを着た老婆が立っていた。

その三人を見た真澄は陽気に答える。

 

「うわ、婆’sじゃないですか!お久しぶりです」

 

そう言い、真澄はその三人の老婆に挨拶をする。彼女達は古代零、佐伯薫、滝沢聖と言い、このせんしゃ倶楽部本店の地下にある強襲戦車競技の工廠で整備員として働いている人たちだった。

 

「いやぁ、まさかこの若娘が戦車道に帰るとは思わなんだ」

「ひっひっひっ、おかげで部品も届きにくくなりそうだ」

 

古代と滝沢がそう言うと、真澄は陽気に言う。

 

「婆ちゃん、そんなこと言わなくてもちゃんと物は届けるってば」

 

そう彼女は言うと、そこで佐伯が言う。

 

「それじゃあ、ゴムパッド付きの履帯を注文されてくれ」

「はいはい、毎度あり〜」

 

彼女はそう言うと、嬉しげにメモを取っていた。

 

 

 

そう、彼女は戦車強襲競技に使われる部品の仕入れ業者を行っていたのだ。

彼女は土地転がしで得た利益で輸送機と、それら仕入れた部品を運ぶ会社を父に極秘で設立しており、そこには母や清靖も絡んでいた。

だからこそ、懐は非常に暖かく。戦車を買えるほどの資金を持ち合わせていたのだ。

 

「ところで、真澄ちゃん」

「なんでしょう?」

 

するとそこで古代が真澄に問いかけた。

 

「今日は何をしに来たんだい?」

「ああ、ちょっと欲しい装備があったんだけど。在庫がないらしくてね……」

「ほう?どんな物だい?」

 

興味深げに彼女が聞くと、真澄はその装備の名前を呟いた。

 

「ーーって奴なんだけど」

「なるほど……」

 

そこでそれを聞いた滝沢が顎に手を当てて考えていた。

 

「……それなら一つ。心当たりがあるわ」

「え?」

 

思わず真澄は驚いた目を向けると、彼女は記憶を掘り起こしていた。

 

「公式戦でも使える品質で、その装備なら……」

「どっ、どこにあるか分かりますか?!」

 

思わず前のめりになって彼女は聞いてしまうと、滝沢は彼女に三本の指を出した。

 

「三日だ。出所を聞かない代わりに、ここに持って来てあげる」

「本当ですか!」

 

パァッと顔の明るくなった真澄に滝沢達は笑いながら答えた。

 

「せっかく贔屓にしてもらってる問屋の頼みだ。断るわけには行くまいよ」

「ありがとうございます!」

 

そこで真澄は頭を下げると、三日後に取りに来る約束をして店を後にして行った。

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