真澄が買い物に出かけた頃、大洗の戦車倉庫では。ある一人の生徒はみほと榎本に話しかけていた。
「あ、あの……西住さん?」
「「?」」
振り返ると、そこには瓶底メガネをかけた長髪の生徒が立っており。その顔には榎本は見覚えがあった。
「あれ?君って……」
そこで榎本は前に真澄から聞いた戦車道履修希望者の生徒だったと思い出す。
「猫田さん?履修希望者の」
「えっ?僕のこと知っているの?」
「もちろん、前に真澄から聞いていたしね。みほちゃんは?」
「同じクラスメイトなの」
「ああ、なるほどね」
榎本が聞くと、そこで猫田ことねこにゃーは聞いた。
「えっと、黒田さんは?」
「真澄なら買い物に出かけちゃったよ」
そう言うと、猫田は少しがっかりした様子を見せつつもみほ達を見ながら言った。
「その……僕も今から戦車道取れないかな?」
「え?」
思わず話に驚くみほ。
「是非、協力したいんだけど……操縦はね、慣れてるから……」
「本当!?ありがとう!」
みほが大喜びで彼女を見ると、そこで重要な問題ができてしまった。
「あ、でも……もう何処を探しても戦車が余ってないの」
「え?あの戦車は使わないの?」
申し訳なさそうにみほは言うが、ねこにゃーはそんな事を言う。
「あの戦車?」
「学園裏の駐車場に放置されてたんだけど……」
「……ゑ?」
思わず目が点になって榎本は聞いてしまう。
「ごめん、ちょっとそこに案内してもらえる?」
思わず真顔で聞いてしまうと、ねこにゃーは快く頷いて先導きってくれた。おかしい、あそこは一年生が調査したはずだぞ。
みほ達がねこにゃーに案内されながら戦車があると言う駐車場までやって来た。
意外なことに今までの森や山や船の中ではなく、今回は駐車場であった。
「こんな所に三式中戦車が」
「日本戦車か」
「オァーッ!ナツカシノテイコクリクグンサンシキチュウセンシャー!?」
そこで伊藤がふざけてうる○やつらのセリフを叫んでいた。しかもちゃっかり声も千○繁さんに寄せてるし……。
「あれ?これ使えるんですか!?」
「ずっと置きっぱなしになってたから、使えないんだと思ってました…………」
「おいおい……」
そんな一年生の反応に思わず榎本達は苦笑してしまう。
「これレストアできなかったら、あんた達の戦車も動いていないわよ」
「あ、そっか!」
そこで大野が納得した様子を浮かべており、もはやため息すら出てこなかった。
「壊れていても、自動車部と整備係が直してくれるから。今度からはきちんと報告しなさいね」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
そう答えると、そこで榎本は改めてその戦車を眺めていた。
三式中戦車
かつて、日本帝国陸軍が開発した中戦車である。
主砲は九〇式野砲を搭載し、口径は七五ミリ最高速度は時速三九キロと中々に快調である。ただし、日本戦車特有の装甲の薄さも継承しており、戦時中の繋ぎ的意味合いも含めた急造戦車という事もあって対戦車用の戦車だというのに戦車同士の正面切手の撃ち合いは苦手というジレンマ持ち。
だから本来は頭出しの運用で、一撃離脱戦法が最も好ましい。
「ポルシェティーガーは、自動車部の皆さんに乗ってもらうとして……」
「まぁ……他に選択肢はないわね」
と言うより、あんなゲテモノ戦車をまともに扱えるの未来が見えるのが自動車部しかいない。
「コーナリングは任せて」
「ドリフト!ドリフト!」
「戦車じゃ無理でしょ」
そうだとも、ポルシェ・ティーガーの弱点は足回りなんだ。ただでさえ損耗が激しいと言うのにドリフトなんてやった暁には履帯がぶっ壊れるぞ。
「してみたいんだけどなぁ〜」
「ミューが低い場所でモーメントを利用すれば出来なくもないけど、雨が降ればなお良いね〜」
「アクセルバックはどうかな?」
「ラリーのローカルテクニックだねぇ」
ナカジマ達のそんな意見にもはや何かの呪文にしか聞こえないその発言に思わずみほも苦笑してしまっていた。
そして二人の目線はホースで水を流すねこにゃーに移っていた。
「こっちは?」
「はい。もう仲間を呼んでますから、もうじき来るかと……」
「仲間?」
そう言い、指差した先には二人の生徒。
「「うわぁーっ!カッコいいーっ!」」
ショートヘアで、桃の眼帯を付けた生徒と。そばかすおさげの少女。どちらも大洗の制服を身にまとっていた。
「彼女達が??」
「はい。みんなオンラインの戦車ゲームしてる仲間です」
ネットゲームの戦車ゲームでのフレンドだという。
「あ、僕ねこにゃーです」
「あ、貴女が!?ももがーです!」
「私、ぴよたんです」
そう言い、ゲーム内での名前なのだろう。三人はお互いに初めて会ったような……ん?
「おおっ!ももがーにぴよたんさん!リアルでは初めまして」
「本物の戦車を動かせるなんて、マジでヤバイー!」
「……まじかよ」
思わず榎本はそう溢してしまうと、そこで彼女達を見て唖然となっていた。
ちなみに新しく入ったメンバーのチーム名は、ポルシェティーガーの自動車部はレオポンさんチーム。ねこにゃー達のネトゲ仲間チームはアリクイさんチームとなった。
三日後、日に日に決勝戦が近づいてくる中。学園艦は決勝戦に合わせて大洗港に到着していた。
「行ってくるわ」
「あっ、例の荷物?」
「ええ、取りに行ってくるわ」
真澄がそう答えると、靴を履いて彼女は家を出ていく。
「なんの荷物?」
「ヘリで行くのか?」
「いや、電車で良いや。私だったら手持ちで運べるし」
「……」
真澄なら運べる。それ即ちまあまあ重い荷物ということだ。
「(なんの荷物を頼んだのやら……)」
榎本はそこで半分呆れながらも、学園艦を出ていく真澄を見送っていた。
「おお……っ!」
そしてせんしゃ倶楽部本店に訪れた真澄はそこで置かれた荷物を見て、目を輝かせていた。
「ちゃーんと、連盟の認可品さ」
「ありがとうございます!」
滝沢がそう言うと、真澄は頭を下げた。すると彼女はそんな真澄を見て言った。
「お題は亀百のどら焼きも追加で頼むわよ」
「はい、お任せください!」
彼女はそう答えると、そのまま嬉しそうにその荷物を肩に背負って代金を払って領収書をもらうとせっせかと店を後にしていた。
そして布に包まれた細長い荷物を持って彼女は電車を乗り継いで大洗まで帰ってきた。
「よし、これで良い火力強化ができる……」
ホクホク顔で街を歩く彼女は、そこでふと。嫌な声を聞いた。
『ーーーーッ!』
『ーーーーッ!!』
何やら言い合っている様子で、そしてその声の内。片方は聞いたことがある声だった。
『なんなんですか!あなた達は!!』
そこで澤の力強い声がしっかりと聞こえていた。
学園艦が到着し、街に出た澤達は。そこで柄の悪い男子生徒に絡まれていた。
「良いだろう?ちょっと金が足りなくて、貸して欲しいだけなんだからさ」
「お金なら、貸しませんよ……」
そんな男子生徒六人組は一年生チームを見ていた。そんな中、先頭に立つ澤はそう答えると。その男子生徒達はそんな彼女達を見て言った。
「ああ、そうかい。貸してくんねえなら……分らせてやるだけだよなあ!!」
「っ!!」
「梓ちゃん!!」
そう言い、その生徒は澤を首元から掴もうとした。その時、
ゴンッ!「ぐはっ!!」
重々しい音と共に、一人の生徒が何かが後頭部に当たってそのまま地面に倒れてしまった。
「きゃっ!!」
思わずそこで澤が驚いた声をあげてしまうと、そこで一人の女性の声が聞こえた。
「あー、ごめん。ぶつかっちゃったかい?」
「ああ?」
男子生徒がその声のした方を見ると、そこには肩に一本の何かを担いだ一人の女生徒が立っていた。
「っ!!黒田先輩!!」
思わずその人を見た大野が目を見開いて驚いていると、一人の男子生徒がメンチを切って近づいてきた。
「おいおい、なんだてめっ」ゴキッ「ぎゃあっ!?」
一瞬でその生徒の腕を曲げると、その生徒は痛みのあまりに倒れてしまった。
「やめときなって……」
「「「「「「っ!!」」」」」」
そこで呆れたように真澄はその倒れた男子生徒を見下すと、そこで他の男子生徒の照準が真澄に切り替わった。
「「うらぁっ!!」」
そこで男子生徒達は各々拳を握って真澄に殴りかかっているが、彼女はそれをものともせず。片手に荷物を持っている状態だと言うのに、簡単に一人の生徒を一本背負いで地面に叩きつけたり、蹴りを入れた足を掴んで上に放り投げて体勢を崩させて倒したりしていた。
「あのさあっ!!」
そんなチンビラ以下の打撃を軽く避けながら真澄は文句をこぼす。
「もうっ!!」
そこで殴ってきた二人の生徒の腕を殴った勢いで絡ませた後に、側頭部を突き。ビリヤードのように隣の生徒にも頭突きを喰らわせると、そのまま二人は脳震盪を起こして地面に倒れてしまった。
「ひっ!!」
思わずへたり込んでいた澤達は悲鳴をあげてしまう。
「だーからやめとけって言ったのに……」
そう言うと、地面にへたり込んでいる三人の生徒が突然現れた真澄に近づく。
「この尼っ!!」ドゴンッ「ぐぁぁ……」
一人に真正面からパンチを喰らわせ、後続の二人の殴ってきた拳をそのまま持っていた荷物にぶつけると、バキッと言う嫌な音と共に彼らは悲鳴をあげた。
「「ぎやぁぁあ……!!」」
そして真澄の背後からどこから持ち出したのか角棒を持ち出した生徒を後ろ足で蹴り飛ばすと、そのまま脱落した。
「無理だって……」
そしてそのまま拳を潰されて悲鳴をあげる一人の生徒の顔面に膝蹴りを喰らわすと、また一人脱落した。
するとそこで、最初に殴られた生徒がガンガンする頭を支えながら真澄から距離をとっていた。
「あの尼……!!」
そして真澄は殴りかかった二人の男子生徒の内、片方のベルトを一瞬で外すと、そのまま無理のごとく生徒の足に絡めさせて、そのままベルトを引っ張り上げると、その足はベルトを抜かれた生徒の股間に命中していた。
「ぐあぁ……!!」
「あ痛ぁ〜」
そしてそのまま彼女はそんな二人の間を下から思い切り蹴り上げた。
「よいしょお〜!」
そしてそのまま空中に飛んで背中から地面にダイブした二人の生徒はそのまま気絶してしまった。
「うらぁぁあああっ!!」
「っ!先輩危ない!!」
すると、残った一人が片手にナイフを持って真澄に近づくと。そこで真澄は持っていた細長い荷物を、まるで槍のように突き出し、突かれた男子生徒はそのまま派手にくの字に吹っ飛んでいき、背中で壁と熱っついキスをしていた。
「あーあー、ガキがこんなもん使っちゃってまぁ……」
ナイフだと言うのに、彼女は慣れた様子で生徒の落としたナイフを離れた場所に蹴り飛ばす。
「没収だ」
そう言うと、彼女は携帯を取り出して匿名通報ダイヤルで電話をかけた。
「ああ、もしもし!暴行現場です!直ぐに来て下さい!!」
いかにも切迫した雰囲気を出した後に、住所を伝え終えるとそのまま電話を切って澤達を見ていた。
「さあ、うちに帰ろう」
「「「「……」」」」
しかし澤達は唖然とした様子で真澄を見ており、彼女はそこでしくったと思った。
「(ああ、これ泣かれて逃げられる奴だ)」
そう思ったのも束の間、真澄は途端に涙目になった澤達から抱きつかれた。
「「「「「先輩ーっ!!」」」」」
「What’s?!」
まさかの反応に驚きながらも、真澄は彼女達をあやしながら安全な場所である学園艦に戻って行った。