知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第七六射

試合会場にて両チームの全員が整列し、そこで大洗と黒森峰の隊長と副隊長が一歩前に出ていた。

 

『両チーム隊長、副隊長。前へ!』

 

蝶野のアナウンスで、黒森峰からはまほとエリカ。大洗からはみほと河嶋、そして真澄が前に出た。

 

「…やっと、帰ってきたわね」

「…ふっ」

 

そこで軍帽に帯刀までしている真澄を見てエリカが話しかける。

 

「試合後、覚悟しなさい」

「…ああ、そうだな。楽しみにしている」

 

そこでエリカは次にみほを見て何とも言えない表情を浮かべていた。それはあの時に守れなかった時の贖罪か後悔か…。

 

「本日の審判を務める蝶野亜美です。両チーム共、今日は頑張ってね」

 

するとそんな我々の間に蝶野が立つとそう言い、そのまま元いたところに戻ると号令がかかった。

 

「一同、礼!」

『『『『『よろしくお願いします!』』』』』

「では試合開始地点に移動。お互いの健闘を祈るわ」

 

そう言うと、そこでみほの肩を軽く真澄が撫でた。

 

「そう気張らなくていい。いつも通りで行こう」

「そうだね…」

 

そこでみほは一瞬だけエリカ達を見ていた。

 

「隊長、真澄の相手は私がしてもいいですか?」

「…あまり勧めはしないぞ」

「大丈夫です」

 

まほの言葉にエリカは強い眼差しを向けると、そこで彼女も短く頷いた。

 

「分かった、頼むぞ。彼女は二年前よりも格段に強くなっている」

「はいっ!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「西住、私達も戻ろう…っと、どうやらお前に客が居るみたいだな」

「え?」

 

みほが振り向いた先、そこには黒森峰のパンツァージャケットを着た、一人の茶髪の少女が立っていた。

 

「では西住。用が済んだら戻ってこい。私は先に行かせてもらう」

 

桃はそう言い残すと挨拶をした丘から去って行く。残されたみほと少女は顔を合わせた。

 

「「……」」

 

しかし、お互いに顔を合わせたのはいいものの。どう話せばいいかわからなくなってしまい、最初に口を開いたのは少女の方だった。

 

「あの時は…本当にありがとう」

「赤星さん…」

 

彼女の名前は赤星小梅。昨年度の決勝戦で川に水没したⅢ号戦車の搭乗員の一人だった。

彼女は涙ぐみながらみほに感謝と謝罪の言葉を連ねる。

 

「ずっと、お礼を言えないままだったのが、気掛かりだったの…みほさんが黒森峰から転校しちゃって、もう会えないんじゃないかとすら思ってた…でも!」

 

赤星は嬉しそうな顔をしながらみほに言った。

 

「みほさんが戦車道辞めてなくて、本当に良かった!」

 

そのことに一瞬みほは目を見開いて驚いた後、そんな彼女に微笑みながら答える。

 

 

 

「私は、辞めないよ」

 

 

 

そう言うと、みほ後ろから武部達に呼ばれる。

 

「みぽりーん」

「そろそろ行きましょーっ!」

「うん!」

 

そう答えると、みほは赤星を見ながら軽く手を振る。

 

「今日はお互い全力で頑張ろうね」

「っ!はいっ!!」

 

あの後、みほへの申し訳なさから忠死するかの如く彼女以外のⅢ号戦車の乗員は黒森峰を去っていた。

 

赤星は一人残った所を、去年の大会の敗退の原因を作ったとして陰で言われていたのを、この一年耐え続けていた。みほの行った事が間違って居なかったと思わせる為に。

 

そしてみほが転校先の学校で大活躍しているのを見ており、それを見た時。赤星はとても嬉しかった。そして、今目の前で彼女の意思を言われ。彼女はどこか救われたような気がしていた。

 

「小梅」

「はい」

 

そこで彼女はエリカに呼ばれると、そこでエリカから言われる。

 

「良かったわね」

「っ…はい……」

 

目元から涙をこぼしながら彼女はハンカチを取り出していた。

かく言うエリカ自身も、みほが戦車道を続けてくれていた事にとても嬉しかった。

 

「(どうしてでしょうね。昔の私なら、もう少し違う言葉をかけていたと言うのに…)」

 

多分、彼女のことを最も理解している人物から散々教えてもらったからなのだろう。彼女は自分にみほとまほの間に立って二人のサポート役を担わせた。つくづく腹が立つ話だが、事実。その役をしていたおかげで二人の利点の欠点が見えるようになった気がした。

 

だから二年前の大会ではみほに自由な戦車道を任せたら、まさかのあの結果だ。正直勝敗は関係なかった。

 

曲がりなりにも人の気持ちを理解する能力ができたお陰で、Ⅲ号戦車の元乗員達の安否確認や、彼女達にみほの特集の組まれた月刊戦車道を送る事となったが。これで彼女達が救われると信じていた。

 

「(確かに、みほは西住流とあまりにも違う)」

 

だからこそ、今回は恐ろしい事になるだろう。ただでさえ、西住流の時もあの姉妹は阿吽の呼吸で最強の名を頂いていた。

自分が今のまほの支えではあるが。今でも、みほ程の完璧な支えができるとは言えない。

 

「だけど、負ける気は無いわよ…」

 

そう溢すと、エリカは最後のブリーフィングに向かって行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「これで救われるかな?」

「ええ、そうだと願いたいわね」

 

短十二糎の横で荷物を積む榎本に真澄が答える。近くではみほが最後のブリーフィングを行っていた。

 

「黒森峰はどの戦車も重武装です。相手は恐らく、火力に物を言わせて一気に攻めてきます。その前に有利な場所に移動して長期戦に持ち込みましょう!」

 

そこでみほは地図を広げながら指示を出す。

 

「相手との開始地点から離れていますので、すぐには遭遇することはないと思います。試合開始と同時に速やかに二〇七地点に移動してください」

 

そう言い、みほは力強く答える。

今回の作戦で出てくるだろう戦車はみほとあらかた想定しており、ドイツ戦車の諸元も当然叩き込ませていた。この中で最も火力があるのはポルシェティーガーと短十二糎だろう。いざとなれば、我々が前面に出る必要があった。

 

「この試合が我々の正念場です。気を引き締めて頑張りましょう!では各チーム、戦車に乗り込んでください!」

『『『『『はいっ!』』』』』

 

学校廃校を掛けたこの戦いを前に、皆は力強く答える。

窮鼠猫を噛む。追い詰められた生徒達の士気は今まででダントツで高かった。

 

「さて、我々も行こうか」

「はい」

「おうよ」

「了解」

「行きましょう」

 

そこで砲塔にチームのパーソナルマークの他に、『義』の一文字の書かれた自分の戦車を見ていた。

 

 

 

 

 

自分たちの相手は恐らくお姉ちゃんになる。

何となくだが、だけど確信をもって言える。

お姉ちゃんの実力は一番自分が分かっている。

 

「…頑張ろうね」

 

ふとⅣ号に手を置きながら呟くと武部、五十鈴、秋山、冷泉が私の手に手を重ねた。

 

「…みんな」

 

みんなで少しだけ微笑む。そうだ、戦うのは私だけじゃない。

 

「行こう!!」

「「「「おーーーっ!!」」」」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、黒森峰側では。

 

「大洗の短十二糎自走砲の威力は未知数だ。装甲は無いに等しいが、攻撃力は無類と思っていい」

 

まほはそう答えると、他の生徒達も彼女を知っているが故にそれでも少し警戒をしていた。

 

「前回のプラウダ戦では、あの短十二糎自走砲は性能差があるにも関わらずT-34を六両を一方的に壊滅させた。発見した場合は、無理な交戦は避けるように」

 

注意喚起を呼びかけ、彼女が指揮のみの人間では無いと言うのを認識していた。

 

「三年前もコテンパンにされましたからね…」

「あの時はⅢ号を主力だったけどね」

 

そう言い、エリカと赤星はそう話していた。思い出すのは知波単学園との練習試合だ。

初めはいつもの突撃馬鹿の集団で簡単に倒していたが、たった五台の九七式が本隊を強襲。一気に戦局が傾いて、最終的には引き分けという形でタイマンでの試合で勝利していた。

その時、その五台の戦車を指揮していたのが真澄だった。

 

「これより決勝戦だ。相手は初めて対するチームだが、決して油断はするな」

 

戦車に乗りながらまほはそう語る。無論、誰が相手であろうと手抜きはしない。それが強豪校である黒森峰であればそこだ。

 

まほは既に黒森峰の同窓会から圧がかかっている事をエリカは知っていた。反吐が出るような話だが、こんな大会で弱小校相手に負けるような無様な結果を見せるなと、まほとエリカは言われていた。

それが尚更、去年の敗退の原因を作った人物が率いるチームならば…。

 

「馬鹿みたい…」

 

たかが高校生の戦車道の面子で、そこまで口を出すのかと疑問に思ってしまう。

今だからこそわかる、真澄がなぜ同窓会を老害委員会と酷評していたのかが……。

そして、西住の名を持つ者達に掛かる重圧というものが……どれほどの過酷さを持ち合わせているのかも。

 

『まずは迅速に行動をせよ。グデーリアンは言った『厚い皮膚より早い足』と…』

 

そして、無線でまほはそう言うと、そこで照明弾が打ち上げられる。

 

「行くぞ」

 

そして、照明弾が打ち上がって弾けるとアナウンスが飛んだ。

 

『試合開始!』

 

ここに、運命の決勝戦が始まった。

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