「お待たせ~!カメさんチーム、只今合流~」
川を渡り終え、その先の森の中でヘッツァーと合流した。
この頃には完全にM3は復活しており、すぐにでも戦闘が可能だった。ワイヤーを回収し、そのまま大洗部隊は目的地へと進撃を再開した。
「大洗の連中逃げてばかり…どこへ向かう気?」
「おそらくは、市街地…」
双眼鏡を覗いてそう呟くエリカにまほは地図を見て、大洗チームの目指す場所を予測していた。
そして橋に到着した大洗部隊はそこで橋の前で止まった。
「この橋を渡ります。レオポンさんは最後に…」
そう言うわけで車重の最も重いポルシェティーガーを最後に大洗チームは橋を渡る。いかにもボロいその見た目に崩れないかとヒヤヒヤするが、ポルシェティーガー以外は全員が順調に渡れた。
「橋?…戦ってるより逃げてる方が多いんじゃないの?」
エリカは偵察に向かわせていたⅢ号からの通信でそう呟く。ポルシェティーガーが慎重に進んで行き、橋の真ん中辺りに差し掛かったその時。
「此処が腕の見せ所!!」
ツチヤはそう言うと、何やら操作して操縦捍を前に倒す。
すると、ポルシェティーガーのエンジン部分からジェットエンジンのような音が響き、次の瞬間には車体前部を軽く浮かせて急発進した。
ドスン!と音と立てて浮き上がった車体前部が橋に叩きつけられ、戦車が橋を渡りきった頃には、橋の真ん中が壊されていた。凄まじい速度で走り去っていくポルシェティーガーに追い越されたみほは半ば唖然となってしまっていた。
「橋が…」
「ハハハ…流石の車重……」
「だけどこれで時間稼ぎができます」
苦笑しながら真澄達も落ちた橋を見てそう話していた。
「橋が!?」
その頃の黒森峰チームでは、偵察に出したⅢ号戦車の車長から大洗チームのポルシェティーガーが橋を破壊した事を知らされ、エリカが驚いていた。
普通、橋を壊すなら渡りきってから主砲を撃ち込んで木っ端微塵にしてしまえば良いと思っていたが……。と言うか、それしか方法は無いと思っていた。
だが、レオポンは加速する時の勢いと車重を利用して橋を破壊してしまっていた。元々の予定では破壊される前のⅢ号戦車が妨害するはずだった。
「…分かった、橋は迂回して追う。お前は先回りしろ!!」
エリカはそう指示を出し、Ⅲ号戦車の車長から伝えられた事をまほへと話すのであった。
「橋を通過後…道沿いに北西へ移動、市街地に入って下さい。そこで黒森峰を迎え撃ちます!」
そう指示し、大洗チームは道沿いを通って市街地を目指した。
「大分時間を稼げた、これで市街地戦に持ち込める」
廃墟となった市街地を確認しながらみほはそう呟くと、街中に入り。聖グロリアーナの時と同様に市街地線で決着をつける予定だった。
すると、建物の影から一両のダークイエローの戦車が姿を表した。Ⅲ号J型だった。
「Ⅲ号だよ。H型かな?それともJ型かな?……って、一目見ただけで戦車の車種分かっちゃう私ってどうなの…?」
一人ツッコミを入れている武部を置いて、一行は速度を上げた。
「Ⅲ号なら、突破出来ます。後続が来る前に撃破しましょう」
『『『『『『はい!』』』』』
そう言うと、大洗部隊は全戦車で追撃をかけ始める。
「これで十九両…」
「あと一両だけね」
短十二糎の中でそう話す。このⅢ号を合わせて十九両の戦車が確認されており。残り一両の所在は不明だった。
「偵察?」
「いや、どちらかと言うと誘因ね」
そう言うと、真澄は無線を手に取る。
「全員、Ⅲ号の動きに注意。何か誘因しているようだわ」
『『『『『了解!』』』』』
なまじ機動力のあるⅢ号戦車は大洗部隊の攻撃を避けながらある団地の合間の道路を抜け、B1を先頭に袋小路に追い込んだ。
「よぉーし、追い詰めたわよ!」
園がそう言い、後ろを向いていたⅢ号にそう言って主砲をうとうとした時。そこで地面が小刻みに揺れ始め、Ⅲ号の前を巨大な物陰が現れる。
三色迷彩に施されたそれに思わず園も首を傾げていた。
「壁?…門?」
そして履帯の音を重々しく奏でながら、その物の全容が明らかとなった。
「戦車ぁっ?!」
そう、現れたのは何と超巨大な戦車だったのだ。
「マウスです…!!」
するとその戦車を見て秋山が呆然とした様子を見せながらも、興奮した目で見ていた。
「動いている所。初めて見ました…」
そう言うと、そのマウスと呼ばれた戦車…Ⅷ号戦車マウスは砲塔を向けるも、砲身が団地の壁につっかえ。少し戻すとバックして改めて砲塔を向けていた。
「…まじかよ」
「当たったらひとたまりも無いですよ!!」
思わず真澄は苦笑し、伊藤は慌てた様子で言った。
「来ちゃった…マウス」
その戦車を見て思わずカチューシャも絶望したような目を向けていた。
「地上最大の…超重戦車…」
これには思わずダージリンも顔が青ざめていた。
Ⅷ号戦車マウス。
全長約十メートル、全幅約三.六メートル、全高約三.六メートル。重量約一八八トンを誇るまさにドイツの科学力を集結させたような戦車だった。
主砲には全周旋回可能な四四口径一二八ミリ砲を搭載し、同軸副砲として三六.五口径七五ミリ砲を搭載。最大装甲圧は二四〇ミリ。とてもじゃないがまともな戦車でこいつを倒すことは不可能だった。
『た、退却してください!!』
みほが無線でそう叫んだ瞬間、マウスが発砲。放たれた砲弾がヘッツァーの至近に着弾すると、その衝撃波でヘッツァーが軽く浮いていた、
「や~ら~れ~た~!」
「やられてません!」
「ただ死角に着弾しただけです!」
思わず角谷はその衝撃波で思わずそう呟いてしまうと、小山と河嶋がそう答える。しかし、それでも威力が凄まじいことに変わり無かった。
「どっちにしろ、凄いパワーだねぇ~……」
少なくともヘッツァー程度では至近弾ですらこの有様と言う事実に冷や汗がどっと噴き出てしまった。
「このっ…!!デッカいからって良い気にならないでよ!」
園はそう叫ぶと、装填していた四七ミリ砲の引き金に指をかけた。
「こうしてやるわ!」
そう言うと、主砲と副砲をそれぞれ発射するが。敢えなく弾かれる。マウスにとってみれば、これくらいの攻撃など蚊が刺した程度以下だろう。
そして仕返しと言わんばかりに砲の仰角が下がり、B1に狙いを定める。そして一二八ミリ砲が火を吹き、ほぼ至近距離で砲撃を喰らったB1はそのまま派手に横転しながら撃破された。
「撃て!」
「はいっ!!」
咄嗟に真澄は短十二糎の一二〇ミリ主砲と三七ミリ副砲を発射するが、車体正面の二〇〇ミリ装甲相手にはとても厳しいものがあった。
「カモさんチーム、怪我はありませんか!?」
『そど子、無事です!』
『ゴモヨ、元気です!』
『パゾ美、大丈夫でーす』
『皆、ゴメンね!』
武部が確認を入れると、全員の安否を確認してホッとしていた。
「おのれ!!カモさんチームの仇ぃっ!!」
左衛門佐がそう言いながら引き金を引くもののやはり効果は無く、逆に反撃されて横倒しになり、そのまま撃破されてしまう。
「二両撃破された…これで残り六両」
横倒しになったⅢ突の傍を通り過ぎようとするマウスを見ながら、みほはそう呟いていた。
その頃、市街地の二両を除いてもまだ十五両を残している黒森峰本隊はパンツァーカイルを成して市街地に向かっていた。
「二両撃破しました」
マウスからの報告を聞き、まほは大洗の残存車両を呟く。
「あと六両…」
「こちらは十五両残っています」
「フラッグ車を潰さねば意味はない」
エリカの言葉にまほはそう言い返していた。
「我等の…」
「歴史に…」
「今…」
「…幕が降りた」
白旗を上げるⅢ突の横をマウスが通りすぎる。
「何よ!あんな図体して何がマウスよ!?」
引っくり返されたB1の中で、園がそう叫ぶ。
「残念です」
「無念です」
園に続き、他の風紀委員の二人もそう呟く。
『冷泉さん、後は頼んだわよ!約束は守るから!』
「おぉ!!」
園は無線を繋いでそう叫び、それを聞いた冷泉は目を輝かせた。
「副砲だ!主砲の装填中に撃たれたら敵わん!」
「了解!」
真澄はその場凌ぎで一旦停車すると、榴弾を装填して主砲横の七五ミリ副砲を狙う。
「発射!」
「っ!」
大久保が引き金を引くと、防楯に命中した七五ミリ砲は見事に破壊されていた。
「後退!」
「了解!」
そして即刻、五〇〇馬力近くある出力を活かして殺人級の後退速度を叩き出していた。
「さすがマウス…大洗女子学園は正念場ですね」
「正念場を乗り切るのは勇猛さじゃないわ」
オレンジペコの言葉にダージリンさんはモニターを眺めながら静かに呟いた。
「冷静な計算の上にたった…捨て身の精神よ」
「…はい」
相手の超重量による速度差を活かしてとにかく大洗部隊は撤退を続けていた。とにかくマウスを叩こうと車長達は躍起になっていた。
「何をしてるんだ、早く叩き潰せ!図体だけがデカいウスノロだぞ!」
ヘッツァーの七五ミリ砲弾を装填しながら河嶋はそう叫ぶ。
「砲身を狙ってください!」
みほがそんな指示を出している最中、マウスの後ろでは先ほどのⅢ号戦車が挑発するように蛇行運転をしていた。
「お前達の火力でマウスの装甲が抜けるものか!!あっ〜はっはっはっ!!」ドドドンッ!!
Ⅲ号戦車の車長が高笑いするものの、大洗チームのマウスへの砲撃の流れ弾を複数喰らい。そのまま撃破を示す白旗が飛び出す。
「市街地で決着をつけるならやっぱりマウスと戦うしかない。ぐずぐずしてると主力が追いついちゃう…」
黒森峰の本隊とマウス。その両方を相手にする前にここでマウスは倒しておかなければならない。
「マウスすごいですね!前も後ろもどこも抜けません!!」
「いくらなんでも反則だよっ!」
武部は自前で書き記していた戦車でーたと書かれたノートに目を通す。
そこにはマウスについて書かれたページもあった。一回戦のサンダースとの試合が終わってから書き始めたこのノートも今では沢山のページが出来ていた。そのノートを見て思わず叫ぶ。
「いくら何でも大き過ぎ…こんなんじゃ戦車が乗っかりそうな戦車だよ!!」
「っ…!!」
武部のその言葉にみほは前方のマウス、その回転する砲塔へと目をやった。
「ありがとう沙織さん!!」
「…へっ?」