知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第八二射

武部の一言で一つ閃いたみほはすぐさま無線に手をとる。

 

「カメさん、アヒルさん。少々無茶な作戦ですが今から指示通りに動いて下さい!!」

『わかりました』

『なんでもするよー!!』

 

返ってくる返事に少しだけ罪悪感も出てしまう。これからする事が危険な作戦であるのは、みほ自身が一番分かっていた。

 

「ちょっと負担をかけてしまいますが…」

『今さらなんだ!いいからさっさと言えっ!!』

 

興奮して周りが見えなくなっている河嶋に、この時はその言葉に感謝をしつつ、みほはマウス討伐に向けての作戦を説明した。

そしてその情報は真澄にも共有されたが…

 

「ヤバいよ、君…」

 

それを聞いていた他の四人も苦笑気味な表情を浮かべていた。

 

『でもそれ以外に道は無い』

「…まぁ、最悪あのデカブツを試合が終わるまでおちょくる算段だったけど…」

『それでもいずれは無理が来る』

「…」

 

真澄の意見にみほはやや強めに反論すると、彼女は軽くため息を吐いた。

 

「まぁ、君に賭けてみるさ。なぁ、隊長?」

 

 

 

 

 

市街地を我が物顔で進軍するマウス。その途中、通りの交差点の向こうで大洗戦車隊残存車両全車が横一列に並んでいた。

 

そして方向転換したマウスを相手に残った大洗の隊列が一斉に突撃を始める。

マウスから砲撃が飛ぶか軽々と回避し、ヘッツァーが一目散に突撃する。

 

「まさかこんな作戦とは…」

「やるしかないよ桃ちゃん!」

「燃えるねぇ~!」

 

河嶋が先ほどの自分の言葉を後悔し、小山がそんな彼女を操縦しながら励ます。

砲身を下げ、どんどんヘッツァーは加速していき。そして…

 

ドゴォンッ!!

 

マウスの車体の下の滑り込むように車体をぶつけていた。そしてどんどん車体は深く刺さり、車体が浮き上がってマウスのバランスがやや悪くなった。

回っていた履帯も止まり、車体は前進を止めた。

 

「何だっ…!?」

 

その衝撃にマウスの搭乗員が思わず驚いた声が漏れてしまう。そしてマウスの側面にM3、ポルシェティーガー、短十二糎の三両がマウスの横に出て砲身を向けていた。

 

「撃てるモンなら…」

「撃ってみやがれ!」

 

砲塔を回転させながら山郷と大野が叫ぶと、

 

「おりゃあ!」

 

大野は足元のボタンを踏んで機関銃を発射し、各車両がマウスの側面に射撃を加えて注意を向ける。

もちろんこの程度の砲撃でマウスを倒すことはできないので所詮は揺動。

そして砲撃にマウスは砲塔をM3達のいる三時方向に旋回を始めた。

 

「キタキタ!」

「逃げろ〜!」

 

直後にマウスが発砲するが、至近距離すぎて外れてしまい。その隙にM3とポルシェティーガーは退避した。

其処へアヒルさんチームの八九式が全速力で突進していた。

 

「さぁ行くよ!」

「「「はい!」」」

 

磯部の掛け声に、他の三人が返事を返す。

 

「「「「そぉーれっ!!」」」」

 

そして何と八九式はヘッツァーを踏み越えてマウスの車体上面に乗り上げた。乗り上げた八九式はヌルヌルと車体上面を動き回り、横を向いたままの砲塔の隣に引っ付く。

その時の衝撃は当然マウスの車内にも伝わっており、彼女達は何が起こったのか全く理解できなかった。

 

「良し」

 

そして車両の位置を確認し、みほに連絡する。

 

「ブロック完了しました!」

「了解、頑張ってなんとか踏みとどまってください!」

 

そしてみほはキューポラから顔を覗かせて無線を繋げる。

 

「クマさん!」

「了解っ」

 

そして短十二糎もマウスの後ろを回って土手の方に移動した。

その間、マウス砲塔から車長が顔を覗かせて八九式に怒鳴り散らしていた。

 

「おい軽戦車!そこを退け!!」

「いやです、それに八九式は軽戦車じゃないし」

「中戦車だし」

 

忍に煽られ、キレた車長は砲塔を動かそうとする。

 

「くそぉ!!振り落としてやる!!」

 

車内に戻り、砲塔を回し始めた。

 

「こんのぉ!」

「なんの!」

 

この状況で、マウスを止めることに成功したのだ。

だがそうしている内にもマウスの車重に加えて八九式の車体がのし掛かるヘッツァーからは、押し潰されてあちこちが壊れていくような音が鳴り響く。

 

「落盤だぁ〜!!」

「車内ってコーティングで守られてる筈じゃあ…」

「マウスは例外なのかもねぇ〜」

 

少なくとも一般的な戦車はこんな使い方をしない上に、コーティングはあくまでも一瞬の圧力を和らげるだけであり、断続的な圧力に耐えられる構造にはなっていなかった。

なおこの試合以降、コーティング材の基準が厳しくなったとかならなかったとか…。

 

そして二手に分かれて土手を登り、仰角を付けたⅣ号と短十二糎。

 

「「後ろのスリットを狙え(ってください)!!」」

「はい」「了解!」

 

そして二両は照準を合わせた。

 

「もう駄目だあぁーー!! 」

「もう持ちこたえられないよぉ!!」

 

ヘッツァーの中で河嶋と小山が恐怖のあまり叫ぶ。

 

「根性で押せ!」

「はい!」

 

八九式では磯部と佐々木が車両を押していた。

 

「気持ちはわかるけど意味ないですから!」

 

上も下もとにかく大騒ぎだ。そんな中、みほと真澄は冷静に号令を出す。

 

「「撃てっ!!」」

 

同時に五十鈴と大久保が引き金を引き、二発の砲弾がスリットに叩き込まれた。

そして後部の機関部にほぼ垂直で叩き込まれた砲弾は大爆発を引き起こし、力を失ったように地面にへばり付くと、その巨体が頽れて上面から白旗が上がった。

 

「「「「うおおぉおぉおおおお!!」」」」

 

その光景を見ていた観客席から驚きと歓声が響いた。そりゃそうだ、こんな大物を倒したのだから。

 

「奥さん!お嬢がやりました!!」

 

そう新三郎も言い、百合も少しだけ嬉しそうに見ていた。

 

「すごい!マウスを仕留めました!!」

「私達も今度やろうかしら、マークⅥで」

 

興奮して叫ぶオレンジペコとは対照的にダージリンは落ち着いているような様子を見せているものの、マグカップを置いた事によって空いた右手は固く握られ、彼女も先程の光景に興奮しているのが窺えた。

 

「ひゅ〜」

「…」

 

そんな景色に清子と千代は感心した眼差しを向けていた。

 

「凄い…あんな方法があるんだ……」

 

その間に挟まれた愛里寿は驚き以上に感動していた。あのマウスの倒し方、そしてそれを瞬時に考えたと思われる西住みほという少女に。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「マウスが…っ!?市街地へ急げ!!」

 

黒煙上がる市街地と、報告を聞いて市街地外縁に突入したエリカは仰天していた。なにせ無敵の矛と盾を持つ戦車がやられたのだ、驚かないはずがない。

 

『黒森峰、あと三分で到着します!』

 

偵察に出ていた澤が双眼鏡を使って確認した敵部隊の動きを報告する。いよいよ、最終決戦の始まりを告げる合図だった。

 

「分かりました、みなさん。次の行動に移ってください!」

『はい!』

『ほーい』

 

みほからの指示に、他のチームから次々と返事が返される。未だにマウスの下敷きになっているカメさんチームのヘッツァーもゆっくりと後退してマウスの下から出る。

 

「カメさんチームボロボロだね…」

「うーん…でも何とか動いてますね…」

 

そんな状態に武部と秋山も心配する中、ヘッツァーが着地の衝撃でドスンと大きな音を立てるマウスを他所にみほ達に続こうとしたのだが。エンジン部分から何かが派手に壊れたような大きな音を立てながらヘッツァーは速度を落としていく。

 

「あっ!?冷泉さん、戦車停止して下さい!」

「どうした?」

 

みほが後ろを振り向き驚くと、冷泉に即座に戦車を止める様指示する。

 

「西住殿?…あっ!ヘッツァーが!?」

「カメさんチームが…」

 

突然の事に秋山は、装填手用ハッチから顔を出すとヘッツァー完全に動きを止めてしまい。エンジンからは黒煙が上がり、遂には行動不能を示す白旗が飛び出した。

 

「ふぅ…良くやってくれたな、此処まで…」

 

先に車外に顔を出した河嶋が、その上面装甲を撫でながらそう呟いた。

 

「うん」

「我々の役目は、終わりだな」

 

その後、小山と角谷も出てきてそう言った。

 

「西住隊長!」

 

小山と角谷の呟きにそう返し、河嶋はⅣ号から降りたみほに声をかけた。

 

「すみません……」

「謝る必要無いよ!」

「良い作戦だった!」

 

申し訳なさそうに言うみほを、小山と角谷が励ます。

 

「後は、任せたよ!!」

「頼むぞ!」

「ファイト!」

「はい…!!」

 

最後に言った生徒会の三人にみほはそう返してⅣ号に乗り込み、前進の指示を出した。

それに従って、他の車両も追従し始め。最後に真澄達の短十二糎が走り出す時、

 

「真澄ちゃん!」

 

角谷がキューポラから顔を覗かせていた真澄に声をかけると、彼女はシガレットを咥えながら振り返った。

 

「何か?」

 

聞き返すと、角谷は少し大声で言う。

 

「西住ちゃんの事…任せたよ」

 

角谷の意図をすぐに感じ、真澄は薄く笑みを見せ

 

「…ええ、忠誠は尽くしますよ」

 

そう言うと右手を出して親指を上げてサムズアップするとそのまま走り出していった。

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