知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第八三射

「こちらは五両です。相手はまだ十四両。ですがフラッグ車はどちらも一両です」

 

市街地を進む中、みほは最後の作戦を伝える。

 

「向こうの狙いは、フラッグ車である私たちあんこうチームです」

 

この試合はフラッグ戦。特定の一両を破壊すれば試合が終了する為、

 

「ですので、皆さんはできる限り戦力の分散に努めてくだい」

 

彼女は市街地のゲリラ戦を展開する様命じる。但し攻撃は補助程度であり、あくまでも敵の分散が優先。

 

『みんな、敵を挑発するよ!』

『『『はいっ!』』』

 

磯部に他の三人も威勢よく答え、

 

「あんこうは敵フラッグとの一対一の機会を伺います。レオポンチームの協力が不可欠です!」

『心得た!』

『燃えるねぇ~!』

 

事前に作戦を知っていたレオポンさんチームではやる気に溢れる様子があった。

 

「前方はもちろんですが、特に後方のヤークトティーガー。特にエレファントなども十分注意してください」

 

するとそこで澤は無線に手をやってみほに聞いた。

 

『隊長、後続の方。任せてもらって良いですか?』

「よろしくお願いします」

 

即答したみほにウサギさんチームは少し嬉しそうに声を上げた。

 

『『『『よっしゃー!!』』』』

『やるぞー!!

 

そして最後にみほは横を走る短十二糎を見る。

 

「くまさんチームの攻撃力は未知数です。ですので市街地で敵を発見した際、積極的な攻勢に打っても構いません」

『了解…』

 

しかしそこで真澄はある前提を持ってくる。

 

『だけど向こうの副隊長にカチあったら、悪いけどそっちに協力できないかもよ』

「分かっています」

『うん、良い返事だ…』

 

そう言い無線が切れると、みほは下の仲間達に伝える。

 

「麻子さん、袋小路に気を付けて相手を撹乱して下さい」

「OK」

「沙織さん、互いの位置の把握情報を密にして下さい」

「了解!」

「華さん、優花里さん、HS0017地点までは極力発砲を避けて下さい」

「「はい!」」

 

確認を終え、みほは号令を発す。

 

「それではこれより、最後の作戦『ふらふら作戦』を開始します!!」

『『『『『『はい!』』』』』』』』

 

正真正銘、最後の戦いが幕を開けた。

 

土手下の道を走っていた大洗戦車隊、T字路をまっすぐ進むとちょうど側面から黒森峰本隊が姿を現した。

 

「敵発見!」

 

フラッグ車含めた四両を視認し、それを追いかけるように黒森峰の戦車は砲撃を始める。

 

ッ!ッ!

 

八九式と短十二糎。

 

「あんまり無駄撃ちするなよ〜」

「わぁかってるって」

 

搭載弾薬が少ない短十二糎。威力は申し分ないが、継戦能力の低さは問題であった。

 

そして細い路地の住宅街に進入すると、幅の大きいティーガーⅡは二列縦隊からファスナーの様に交互に入っていく。

住宅街の道を右に左に曲がり続け、八九式、短十二糎、ポルシェティーガーが酔っ払い運転の如く蛇行運転をかましていた。

 

「之字運動を徹底的に。なるべくフラッグを隠すよ」

『はいっ!』

『了解』

 

そして蛇行運転をし、そのせいで照準が定まらない様子にエリカは

 

「…ッ、邪魔よ!」

 

軽く愚痴っていた。

そして曲がり角でⅣ号は右折し、ポルシェティーガーと八九式、短十二糎はそのまま直進する。

そしてその直ぐ後ろに居る先頭以外のティーガーⅡは右折してⅣ号を追い始める。

 

「此方あんこう、448ジャンクションを左折します。レオポンさん、クマさんは373地点を左折。アヒルさんは右折してください」

 

後続の黒森峰戦車隊は発見した大洗側の戦車を殲滅するために移動する。

 

「373の先、あと三つ直進」

「はい!」

 

すると左右に分かれた戦車隊は戦力差に余裕を持って追いかける。

 

「攻撃三倍の法則ね〜」

「でも数足りてないじゃん」

「んじゃ、勝機有りってとこね」

 

ポルシェティーガーと共に進む真澄は後続の黒森峰の車両を確認する。

 

「…ふーん」

 

そしてその中、先頭のティーガーⅡを視認していた。

 

 

 

 

 

「最後尾発見。あや、準備いい?」

「オッケー」

 

そしてある場所ではウサギさんチームが攻勢を仕掛けた。

最後尾を走っていたエレファントとヤークトティーガーの間に滑り込むように交差点から飛び出した。

 

「っ!?」

 

いきなり真正面に出てきたM3リーに困惑した表情を浮かべると、直後に37ミリ砲が発射。正面装甲板を弾いた。

 

「このぉっ!!」

 

それに腹をたて、すぐさま追いかけ始めるエレファント。

そして全周旋回出来る副砲が発射され、挑発するように蛇行す中、再び発砲する。

放たれた砲弾はエレファントを掠めていき、お返しとばかりに八八ミリ砲が火を吹き、砲弾はM3リーの上を掠めて近くの地面を抉った。

 

「怒ってる怒ってる!」

 

地面を粉砕する音が響き、山郷が溢す。

 

「桂利奈ちゃん、次右折ね!」

「あい!」

「その次も次も次も右折!」

「あいあいあーい!」

 

宇津木から立て続けに出される指示に阪口も連続で返事を返す。

 

「昨日、徹夜で考えた作戦を実行する時が来たよ!名付けて!」

「「「「「「戦略大作戦!!」」」」」」

 

そんなやり取りを交わしながらM3はエレファントを上回る機動力を活かして路地を走り回り、終いにはエレファントの真後ろに回り込んでいた。

 

「回り込まれた!信地旋回!」

 

回り込まれた事に気づいたエレファントの車長が叫び、操縦手は大急ぎで方向転換させようとするものの、先述の通り、エレファントは巨大な戦車だ。

路地をまっすぐ進むのがやっとの状態で方向転換など出来る筈も無く、車体前部の右側と後部の左側がコンクリートの壁にぶつかり、全く身動きが取れなくなっていた。

 

そしてそんな状態で至近距離から一斉に発射するも、正面が黒焦げるだけで撃破には至らなかった。

 

このエレファント重駆逐戦車はポルシェティーガーの車体を流用して作られ、主砲には71口径88ミリ砲を装備したカッチカチ駆逐戦車であった。

 

「固すぎる……ッ!」

「ゼロ距離で倒せないなんてもう無理じゃない」

「…ん?」

 

正面も無理、背後からでも無理な状況に諦めかけていた時。一人ポンポンと大野の肩を叩く者が居た。これまで何1つとして言葉を発しなかった少女、丸山紗希だった。

 

「薬莢、捨てる所…」

 

小さな声で、紗希はエレファントの背面装甲中心部にある薬莢投棄用のハッチを指差した。

 

「すごい!紗希ちゃん天才!」

 

それは考え付かなかったとばかりに、あやが声を上げた。

 

「よぉーし、せーので撃とう!」

「わかった」

 

あやとあゆみはそう打ち合わせをして、二つの砲口をハッチに向ける。

 

「「「「「「せぇ~のぉ~でっ!!!」」」」」」

 

そして、同時に放たれた砲弾は狙い通りに命中し、エレファントはハッチから黒煙を上げ、次の瞬間には撃破を示す白旗が飛び出した。

 

『此方エレファント!M3にやられました…!!』

「なっ!?…何やってんのよ!!」

 

エレファント撃破を確認し、次の戦車を撃破せんとばかりにM3がその場を後にした頃。

黒森峰本隊にはエレファントの車長からの戦況報告のための通信が入っていた。

あの重戦車が何回りも小さく、火力も防護力も格下な戦車にやられるとは思わなかったのか、エリカが声を荒くして叫ぶ。他の戦車の乗員からも、予想外の事態に少々慌て出すような声が次々に上がる。

 

「フラッグ車だけを狙え」

 

自らの視線の先で逃げ回るⅣ号の背面装甲を睨みながら、まほは無線機に向かって叫んだ。

 

 

 

 

 

その頃、ある場所では八九式と短十二糎がタンクチェイスを繰り広げていた。

八九式の主砲の威力は今居る黒森峰の戦車からすれば豆鉄砲にしかならないが、それでも執拗に撃っていた。

 

「挑発に乗るな、落ち着け!」

 

車長が仲間の乗員に向かって言うが、八九式はエリカの乗るティーガーⅡの側面に体当たりを仕掛け、二両の間で火花が散る。

直後に発砲、砲塔側面を正面から弾き返す。

 

「こんのォォ~~ッ!!八九式の癖にィィィッ!!」

 

体当たりを仕掛けてきた八九式に大人気なく怒り、そのまま押し返そうとするもののアッサリと避けられたティーガーⅡは、八九式を挟んで走っていたパンターにぶつかる。

そうしている内にも八九式は列から出て短い坂を上ると、そのまま並走しながら主砲を撃つ。

他の戦車は反撃するものの、八九式は急ブレーキで軽々と避け、さらに急加速して引き離していく。

 

「やーいやーい!」

「待ァてェェェェエエエエエッ!!」

 

聞こえない筈のやり取りを交わしながら、八九式と黒森峰戦車隊のタンクチェイスは続いていた。

 

 

 

 

 

「ヒュ〜」

 

ポルシェティーガーと途中で分かれ、後ろに付いてくるティーガーⅡを視認する。

 

「追いかけているのは?」

 

大隈が聞いてくると、真澄は

 

「ティーガーⅡ、パンター二両、ラング一両」

「上…等…!!」

 

直後、斉射が飛び。周囲に着弾する。

 

「さて、ちょっくらやりますか…」

「あんまり怒らせると不味いんでねーの?」

 

榎本がやや不安げに聞くと、真澄は笑みを浮かべる。

 

「怒ったら最高だな」

 

そう言うとキューポラを開けて後ろのティーガーⅡを見た。

 

「あれに乗っているのがエリカなら…

 

 

 

ん?」

 

照準器で短十二糎を見ていたエリカ車の砲手は首を傾げる。

 

「副隊長」

「何?」

 

エレファントやマウスをやられ、少々ご立腹のエリカはやや苛立った様子で聞いた。

 

「敵の車長が顔を覗かせてこちらを見ています」

「はぁ?」

 

エリカは首を傾げながらペリスコープを覗くと、そこでは確かに真澄が顔を覗かせて手を動かしていた。

 

「手話…?」

 

それがなんなのかはエリカは薄ぼんやりと理解できたが、彼女は何を言っているのか理解できなかった。

 

「あっ、私手話できますよ?」

 

すると無線手の少女が手を上げると、エリカは聞いた。

 

「なんて言っている?」

「えっと…」

 

そこて彼女も前方の真澄の手話を読んだ。

 

「わ・に・は・ま・だ・す・き・か。です…」

「っーーー!!あの野郎!!!」

 

直後、エリカの顔は真っ赤になった。

 

「追いなさい!必ず撃破するのよ!!」

「どっ、どうしたんですかいきなり?!」

「良いから!必ず潰しなさい!!ほら!操縦手!」

 

エリカは目の前を蛇行運転する短十二糎にもう攻撃を始めながら速度を上げる。

 

「ウヒョ〜、ヤベェな」

「火に油じゃなくてダイナマイト落としたんじゃないの?」

 

効果覿面な事態に真澄達は笑い、エリカ以外の乗員はどう言う事だと首を傾げていた。

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