知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第八四射

「撃て!」

 

その頃、ウサギさんチームはヤークトティーガーに遭遇し、背後に回り込んで攻撃を仕掛けていた。放たれた二発の砲弾は戦闘室の背面に着弾し、ヤークトティーガーはそのまま加速して距離を取ろうとする。

 

「逃げたぞ!」

「追えぇ!!」

 

それを追おうと阪口はM3リーの速度を一気に上げ、照準器越しでヤークトティーガーは交差点を右折して姿を消した。

 

「!?停止ッ!!」

「っ!?うぬぬぅぅううっ!!」

 

逃げるヤークトティーガーを追いかけるウサギさんチームだが、曲がり角の手前で敵の思惑に気付いた澤の声に阪口が慌てて急ブレーキをかけた。

M3リーはギリギリの所で停車、その前面装甲をヤークトティーガーの砲撃がかすめた。待ち伏せが失敗したヤークトティーガーだが、そのままM3に追撃するべく動き出す。

こうなると攻守は完全に逆転し、狭い路地で逃げ場の無いウサギさんチームは後退しながらヤークトティーガーの砲身を向けられる事になる。

 

「ちょっと!一二八ミリ超怖いんですけど!!」

「桂利奈ちゃん、そこまでまっすぐバックね」

「でもどうするこれ!?」

 

自身に向かってくるヤークトティーガーの砲身に車内は大慌て、狭い路地で今度はこっちの逃げ場が無くなった。

 

「あっ!そうだ!くっつけば良いんだ!!」

「すご〜い桂利奈ちゃん!頭いい!」

 

とりあえずこちらからヤークトティーガーに接近する事で砲身の内側へと潜り込む。こうなるとヤークト側も砲撃を撃つ事が出来ない。

 

「あっ!離れていくよ!!」

「させるかぁ!!」

「今度は押されてる!!」

 

圧倒的に重量差のある二両、このまま突撃されればヘッツァーの如く重量でエンストを起こす可能性があった。

 

「一年ナメんなっ!!」

「ナメんなっ!!」

 

そう言いそれぞれの砲を撃つと相手がキレたのか踏み潰す勢いでM3に体当たりする。

 

「おっわ!怖いー!」

 

ヤークトティーガーが離れれば追いかけ、逆にこちらに向かってくれば速度を調整し、二両はそのままズルズルと進んでいく。

 

「この後ろの方、ちょっとヤバイかもぉ」

「何が!」

 

地図を見ていた宇津木はこの先には道が無い。このまま進めば用水路に落ちる事になる。

 

「ヤークト、西住隊長達の所に向かわせちゃいけない」

 

それは作戦会議時にも聞かされた、大洗が勝利する為の作戦における重要なポイント。高火力を持つヤークトティーガーがあんこうチームの所へ向かって猛威を振るえば、その作戦が成功する事はないだろう。

 

「ここでやっつけよう!!」

「わかった、うっちゃるのね」

「どうやって!?」

 

もうそろそろこの路地を抜ける、それならーー。

 

「合図で左に曲がって!一か八かだけど!!」

 

澤は後方を確認し、冷静にタイミングを計りながらその瞬間を狙う。

 

「はいっ!!」

 

その合図と共にM3は一気にヤークトティーガーから離脱。だがその隙を見逃すはずもなく、ヤークトの砲撃はM3に直撃し、転がりながら白旗が上がった。

 

「っ!しまった!!」

 

だがヤークトティーガーは止まりきれず、その勢いのままガードレールを破り、砲身から用水路に落下。

そのまま砲身を根元からへし折って横転し、ヤークトからも白旗が上がる。ウサギさんチームは相打ちという形で、ヤークトティーガーとエレファントの撃破を成し遂げた。

 

 

 

 

 

「すいません、ウサギチームやられました…ごめんなさい」

 

リタイアが決まったウサギチームが最後の報告をいれる。

 

「あとは先輩達、よろしくお願いします!!」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

生き残ったチームに後を託すと伝えると、武部が無線でウサギさんチームの安否を確認する。

 

「みんなけがしてない!?」

 

武部は撃破されたウサギさんチームの安否を確認すると、

 

『梓、大丈夫です!』

『あや、元気で〜す』

『優希、無事でぇ〜す』

『桂利奈、絶好!』

『あゆみも平気です!紗希も大丈夫って言っています!』

 

無線の奥から聞こえて来る一年生達の元気な声に彼女はほっとしていた。

 

 

 

「よくやってくれたよ。君達」

 

武部の直後、真澄はウサギさんチームに無線を繋ぐ。

回収車が到着するまでは無線が使えるので、二人は話していた。

 

「エレファントとヤークトティーガーの撃破、お疲れさん」

『ですが先輩…』

「良いさ良いさ、あとは年上に任せな」

 

シガレットを咥えながら真澄は澤達に言う。

 

「勝ち筋は、すでに見えている」

『よろしくお願いします。黒田副隊長』

 

直後、エリカ車の砲撃が近くに着弾し、車内が大きく揺れた。

 

「さて、そろそろお暇しますか」

「HS0017まで五分くらいかな」

「OK」

 

軽く頷くと、真澄はあるスイッチを入れた。

 

「っ!煙幕!!」

 

直後、車体後部から凄まじく濃い緑色の煙幕が吹き出し、エリカ車の視界は緑に染まった。

 

「待ーてーっ!」

「また会うってばよ!じゃあな〜!ガハハハハ…!!」

 

キューポラから体を出す勢いで煙幕の先を見るエリカに、真澄は盛大に笑いながら消えていった。

 

 

 

 

 

まほの駆るティーガーとのタンクチェイスをしていたみほ達あんこうチームは、最後の行動に出ようとしていた。

 

「まもなくHS地点!レオポンさん、今何処に居ますか?!」

『此方レオポン。HS入りました」

「0017に移動してください!」

『はーい』

 

ナカジマがそう返事を返すと、ツチヤはポルシェティーガーの速度を上げて土手を上りきり、みほに指示された場所へと移動した。

そしてⅣ号とティーガーが建物の入り口に入った瞬間、ツチヤは方向転換させてポルシェティーガーで入り口を塞ぎ、まほの援護をしようとしていたのであろう他の黒森峰戦車の前に立ちはだかった。

 

「えっ?!」

 

合流したエリカはそれに驚いていると、直後にポルシェティーガーが発砲した。

 

 

 

レオポンチームが入り口を塞いでいる間、その建物の中央広場と思わしき場所へとやって来た姉妹は、各々の愛車のキューポラから上半身を乗り出し、互いの敵を見据えた。

 

今此処で、西住姉妹による壮絶な一騎討ちが行われようとしているのだ。

 

「西住流に逃げると言う道は無い。…こうなったら、此処で決着をつけるしか無いな」

「…」

 

黒森峰チーム隊長として…西住流次期師範としての威厳を持って言う姉に、みほは威圧されるような気分に襲われるものの、決心を固めて言い返した。

 

「…受けてたちます」

 

みほの表情も少し鋭くなった。

 

 

 

「ここから先は行かせないよ!」

 

ホシノはそう言いながら、装填を終えたポルシェティーガーの主砲の引き金を引くのであった。

発射された砲弾は一両のラング撃破し、それを受けてエリカがキューポラから顔を覗かして叫んだ。

 

「何やってんのよ、失敗兵器相手に!?隊長、我々が行くまで待っていて下さい!!」

 

ポルシェティーガーは()()()()()()()()()()()()戦車。それを知っているエリカからすれば、たった一両の出来損ない戦車に完全な戦車が苦戦させられていると思ってしまうのだろう。

 

 

 

しかしそんなエリカの無線はまほ耳に届いてはいたものの、その要望に応える様子はなかった。

 

外の喧騒が嘘の様に静寂な空気。

 

初夏の風が吹き込み、二両の戦車が相対する。

 

直後、まほの乗るティーガーⅠが動き。それに合わせるようにⅣ号も反対に走り始める。

広場中央のモニュメントを中心に一周し、校舎の道に入って後ろから追いかけるティーガーⅠを確認する。

 

「右に旋回してください」

 

角を曲がり、狭い一本道を進んで砲撃が来るのを待つ。

 

「なるべくティーガーに車体を晒さないで。できればジグザグに動いてください」

「難しい注文だな…」

 

そう言いつつクラッチ操作と巧みなハンドル捌きで注文通りに仕事をこなしている冷泉。

このⅣ号の整地での最高時速は38キロ、対するティーガーⅠは40キロ。ただし装甲と火力は後者の方が上であるのでタイマンでの戦闘ならば圧倒的にティーガーが有利である。

 

にも関わらず互角で戦えるのは冷泉の操縦技術あってのものと言えた。

 

「お姉ちゃんなら…」

 

どう仕掛けてくるのか。

いまだに一度も発砲をしていない上に、今までの戦闘でも発砲した回数は数える程度。つまり弾薬もまだ多く残っている。

 

限られた通路を細かく曲がりながら二台の戦車が戦闘を行うのは、かつてのN天堂の作ったゲームを彷彿とさせている。

 

すると追撃の途中、ティーガーⅠは砲身を回転させ、発砲。

その音はみほの耳にも届き、その弾種まで把握した。

 

「榴弾…」

 

まほの発砲、そして榴弾を撃った事に何かしらの策があると推測。すぐに命令を出す。

 

「止まってください!」

 

その先では校舎の壁が崩落し、道が塞がっていた。

 

「後退して下さい!」

 

そして車両をバックさせていると、直後に虎の鳴き声のように轟くエンジン音を聞き、すぐにみほは何がくるかを予測した。

 

「全速後退!」

 

急加速し、その直後にティーガーⅠの車体側面に激突。ティーガーⅠも発報をするが、砲塔側面の装甲板を吹き飛ばしただけで終わり。直後にⅣ号は逃走を始める。

 

「このままだとジリ貧だぞ」

 

冷泉が呟くと、みほは

 

「華さん。できるだけ撃って下さい」

「え?」

「命中を狙って欲しいですが、相手は西住流。圧倒的な火力と短期決戦を求めています。相手の攻勢に呑まれない様にして下さい」

「はいっ」

 

五十鈴は頷くと、砲塔を回して照準をティーガーⅠに向けていた。

その間もティーガーⅠの砲撃でシュルツェンが弾き飛ばされていた。

 

 

 

 

 

その頃八九式はティーガーⅡ、パンター二両に追われ。八九式は発砲するも、正面で弾かれ、お返しに88ミリの砲撃が飛んでくる。

 

「くそーっ!」

「もっと火力を…」

 

ダメダメな火力に磯部は悔しがり、佐々木が照準器を覗き込みながら汗をかいていた。

 

一方ポルシェティーガーも激しい攻撃を加えられており、一発撃てば十発が帰ってくる様な勢いで猛攻を受けていた。

 

「なかなか…」

 

これにはナカジマ達も冷や汗を垂らすほかなかった。

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