知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第八五射

あらゆる場所で激戦が起こっているこの状況だが、時間の経過と共に徐々に質の高い黒森峰の方が優勢になる。

 

「弾は?」

「もう殆どありません!!」

 

三両の戦車相手に逃げ回っていた八九式は、この時遂に砲弾が命中して盛大に横転する。

 

「くそーっ!!」

《大洗女子学園、八九式中戦車。走行不能!》

 

白旗が上がり、審判の判定を受けると戦線から脱落した。

 

 

 

学校の入り口を封鎖していたレオポンチームもそろそろ限界が近づいてくる。

ソーセージを切る角度と呼ばれる装甲圧が最大限の角度で弁慶の仁王立ちの如く塞がっていた彼の戦車はラング・パンター・ティーガーⅡと泣きっ面に蜂のような状態で砲撃を喰らい、ポルシェティーガーは砲撃を一発放つと直後に帰ってきた無数の砲撃により、ついに沈黙した。

 

「あちゃー、まぁ仕方ないけど…」

《大洗女子学園、ポルシェティーガー。走行不能!》

 

審判による判断が下され、ポルシェティーガーは戦線を離脱した。

 

「あとは頼んだよ。目標数は達成した」

 

ナカジマは無線に手を当てると、返答があった。

 

『…了解、お疲れ様です』

 

これで残る大洗側の戦車は二両となった。

 

 

 

 

 

「突撃!中央広場へ急げ!」

 

ポルシェティーガーを撃破したエリカ達一行はそのまま中央広場へ行こうとしていた。

しかし中央広場への入り口は、たった今撃破されたポルシェティーガーが塞いでいる場所の一つしか無い。

 

『副隊長!ポルシェティーガーが邪魔で通れません!』

「あーもう!回収車、急いで!」

「「ゆっくりで良いよ~」」

 

声を荒げるエリカの声が聞こえていたのか、ナカジマ達が声をハモらせて言った。

 

「くっ!こうしている間にも隊長が…!」

 

ポルシェティーガーの奥でタイマンを張っている事に軽く歯噛みする。

 

「あとは二両…」

 

その時、エリカは一瞬言葉に詰まった。

大洗戦車隊の残る戦車は二両、一両は今まほとタイマンで戦っており。もう一両は…

 

「赤星!聞こえる?!」

『はい!』

 

八九式を追撃していた部隊に居る赤星に無線を取ると、エリカは聞いた。

 

「そっちに短十二糎は見つけた?」

『いえ、こっちはまだ見つけられていません』

「じゃあどこに…」

 

乗っている車長の性格から逃げたとはあり得ない、おそらくどこかに隠れているはずだが…

 

「やあやあ副隊長さん」

 

するとポルシェティーガーのキューポラからナカジマが顔を覗かせていた。

撃破された車両から出てきた彼女達はエリカの耳に届く様な声で言う。

 

「うちの隠れた車両の場所を知りたいなら、一つ諺を教えよう」

 

するとナカジマは軽くウインクをして言った。

 

「灯台下暗しってね」

 

その直後、エリカの横にいたヤークトパンターとパンターの右側面が爆発、白旗が上がった。残ったのはティーガーⅡとラングの二両のみ。

崩壊した体育館の中、一両の戦車が硝煙を昇らせていた。

 

「なっ…!!」

「じゃっ、私たちはこれで〜」

 

ナカジマはそのままおとなしくキューポラの中に隠れると、エリカは不適な笑みを見せた。

 

「やっと現れたわね…」

 

二門の砲を持ち、先手で二両を撃破した短十二糎自走砲のキューポラ。エリカを見つける一人の女が立っていた。

 

 

 

 

 

その頃、校舎内ではティーガーⅠが発砲、Ⅳ号の側を掠めていた。

砲塔を後ろに回し、Ⅳ号も砲撃を返すが、命中せず。

 

九十度回り、ティーガーⅠは直進。一本道をずらしている間に砲塔を回して通りが見えた瞬間に双方発砲。

急停車と急加速で回避し、お互いすれ違う場面ではティーガーが発砲し、Ⅳ号は避けていた。

 

そして先ほどの通りでⅣ号が発砲すると、その砲弾はティーガーの左前方に着眼するが。撃破には至らなかった。

そして次の通りに出ると、その瞬間にお返しと言わんばかりに88ミリの砲弾が前方を掠めて着弾。土煙をあげた。

 

そして再び中央広場に出た瞬間にお互い発砲し、お互いに外れた。

そしてほぼ最初の位置に戻ると、お互いに顔を見合わせていた。

 

 

 

 

 

『副隊長、どうしますか?!』

 

側面からの短十二糎の襲撃に一人が聞くと、エリカはすぐさま指示を出す。

 

「ラングはこのまま前進して隊長の援護!ティーガー、パンター二両はついてきなさい!」

 

直後、短十二糎のいた体育館に砲撃が飛んでいくが。奥に消えたその車両は命中しなかった。

 

「市街地に逃げ込んだか…」

 

そして合流したエリカ含めた四両はそのまま短十二糎の逃げた市街地に追跡を開始する。

 

「砲塔、各方向に回して」

『『『了解』』』

 

追撃する四両の戦車はエリカの指示で砲塔を正面、右、左、後ろと砲塔を回した状態で進む。

 

「怪しい部分があったら報告。エンジン音を少しも聞き逃さないで」

 

エリカはそう言い、三両は頷くと市街地のビル群を進む。

 

「どこに消えたの…」

 

エリカはペリスコープで周囲を見ながらぼやく。

 

「(さっきヤークトパンターを撃ったのは正面火力を減らすため…)」

 

敢えて撃破可能だったはずで、なおかつあの中では最も危険であるはずの自分の車両を撃たなかった事にエリカは燃える。

 

「良いわ、真正面から叩き潰してやる…!!」

 

ティーガーⅡ二両、パンター二両、計四両の車列はそれぞれ90度ずつ旋回角度をつけて警戒しながら前進している。

 

「…」

 

短十二糎自走砲の破壊力は既に把握している。ただ実車と違い、あの車両には副砲が備わっていた。

おそらく37ミリ砲で、至近で側面ならばパンターすら撃破可能の代物。

 

「一体何処から仕入れて来たのよ…」

 

タンカスロンでもあるまいしと軽く溢すと、前進する車列はいつ来るか分からない攻撃に備えていた。

 

 

 

 

 

「黒森峰は一体どうしたのでしょうか?」

 

そんな様子を前にオレンジペコは口に出すと、ダージリンは紅茶を一口傾けた後に言う。

 

「同郷の誼故の避けられない争い…とでも言いましょうか」

「え…?」

 

オレンジペコはダージリンに首を傾げていると、彼女は言う。

 

「でも、あれじゃあまだ不十分」

 

するとその直後、最後尾を進んでいたティーガーⅡが至近距離の側面攻撃で撃破された。

 

「なっ…?!」

「人間の有効視野角は約70度、でもあの車列は四両で討伐に向かった」

 

驚くオレンジペコの横、ダージリンは落ち着いた表情でカップを傾ける。

 

「最低でも、必要な視野角が60度になる六両は必要だったわね」

「え?でも黒森峰の残存数は…」

 

オレンジペコはそこで唖然となり、直後に顔が青ざめた。

 

「今の黒森峰の残存車両数は九両、うち三両は市街地の反対側、一両は大洗の隊長さんとタイマン勝負中で実質動かせる五両」

「まっ、まさか…」

 

オレンジペコはダージリンにやや震えながら聞く。そしてダージリンは頷いた。

 

「えぇ、恐らく討伐に向かった車両は全滅する事でしょう」

 

そしてその予定を最初から組んでいたであろう真澄の作戦、そして大洗と言う特異的な環境が生み出した作戦系統にダージリンもそこはかとない畏怖を覚えていた。

 

「ですが、」

 

しかしダージリンはカップを置き、手を膝の上で置いてから言う。

 

「それもみほさんが黒森峰の隊長さんの一騎討ちを制さなければ意味が無い」

 

そう、この試合はフラッグ戦。敵のフラッグ車を倒す事で勝敗が決する。敵フラッグ車との対決は相手に対し一両是も数が多ければ有利になる。

 

「真澄さんの、みほさんに対する絶対的な信頼がなければ到底できない作戦でしょう」

 

それほどに信頼を置き、彼女に全てを託した。

 

「羨ましく思うほどですわ」

 

ダージリンはそう言い、しれっと黒森峰の主戦力を抜き、エリカの戦力配分を間違わせた采配に感動すら覚えていた。

 

 

 

 

 

『副隊長申し訳ありません!』

「くそっ、何処から撃ってきたの?!」

 

街道を走っていた車列、最後尾のティーガーⅡから爆炎と白旗が上がってやや混乱していた。

 

『見つけた!八時方向!』

『撃て撃てっ!!』

 

ッ!

 

パンターの一両が建物の裏を進む影を見つけると、そこに向けて即座に発砲したが建物のガラスを貫通して終わった。

 

「チッ、いつもながら小賢しい!」

 

エリカはそこで無線に叫ぶ。

 

「見えた方角に見え次第発砲!建物ごと撃て!」

 

直後、建物の影から一両の車両が飛び出して発砲。エリカの履帯が吹き飛んだ。

 

「っ!しまった!!」

 

一列に並んで組んでいた車列。その先頭を進んでいたエリカの車は接近してくる一両の戦車に向けて発砲するも、華麗に交わされ砲塔旋回を行いながら砲身を下げるも仰角が限界を迎え、その隙に側面に入り込まれた。

 

「っ…!!」

「王手っ!」

 

直後、至近距離で発射された120ミリの砲弾はティーガーⅡの側面に命中し、そのまま力を失ったように砲身が下がると、車体から白旗が上がった。

 

「撃てっ!」

 

直後、砲身旋回が終わったエリカの後ろのパンターが砲撃を行うと命中。元々紙装甲の短十二糎は白旗が上がった。

 

「いってぇ…」

 

撃破された車体から真澄は顔を覗かせると、エリカが上から見下ろす。

 

「やってくれたわね」

 

エリカの車両と真澄の車両で道は完全に塞がれ、間に挟まれた二両のパンターは動くことができなくなっていた。

 

「そう思っただけで十分さ」

 

撃破された車両に挟まれ、動けなくなった二両のパンター。それでもエリカは言う。

 

「街の別動隊が向かっているわよ」

「なぁに、それまでには決着が付くさ」

「あら、つかないと思っているわよ?」

 

八九式によってかなり遠くまで連れて行かれた黒森峰の別動隊は、ほぼ市街地のを対角線で移動する必要があり、それまでにみほとまほの姉妹対決は決着しているだろう。

 

「それに、ラングがポルシェティーガーを乗り越えたとて、あの二人の戦場には辿り着かんさ」

「っ!まさか…!!」

 

直後、エリカ車の無線から悲鳴に近い通信が入った。

 

『副隊長!建物が崩壊していて通れません!!』

 

苦労してポルシェティーガーを乗り越えた先、ラングの車長は絶望していた。

そこでは校舎が崩落し、巨大バリケードと化した嘗ての校庭があった。

 

「…悪魔め」

「どうとでも言えばいいさ」

 

シガレットを咥え、空を見上げる真澄。

 

「まぁ、お互い気長に待とうや。どうせ回収車はしばらく来ないんだ」

 

そして聞こえるはずもない75ミリ砲と88ミリ砲の砲声を聞きながら溢す。

 

「あとは勝利の女神の投げた賽の目の気分次第だ」

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