宴会場で始まった隠し芸大会。半分ほどのチームが終わり、落差激しい場の盛り上がり具合で風邪をひきそうになる。
今残ったのはカバさんチーム、あんこうチーム、かめさんチーム、くまさんチームである。
「未来は見ない、過去を見る!浪漫求めて成りきって!カバさんチーム!!」
そして小山の紹介が終わって幕が上ると、そこではドレスに身を包んだカバさんチームの面々。
ピアノを弾いているエルヴィン、その隣の椅子に腰掛けるおりょう、鼻に洗濯バサミをつけている左衛門左、そしてその隣に並び立つカエサル。
彼女達はそこで即興劇が始まる。
「そんな事したって、鼻は高くならないわよ、エイミー」
「そんな事ないわ、ジョー」
鼻を洗濯バサミで挟んでいるので少し鼻声の左衛門左にカエサルが言う。
「エイミーは今のままでも可愛いわ」
「ベスは優しいのね」
「メグお姉様の方がお優しいわ」
今度はピアノを弾いているエルヴィンと椅子に座っているおりょうが返す。
「若草物語だぁ!」
「何それ~?」
そこで澤が元ネタに気づくとも、大野は元ネタが分からないので首を傾げる。
「え?これ歴史ネタじゃね?」
「ま、まあまだ…」
真澄は少し嫌な予感がし始めたが、まだ言い訳が効くと思って劇を見つめる。
「ああっ!?」
するとエルヴィンが地面に倒れ込む。
「べス!」
「如何したのべス!しっかりしてっ!!」
「早くベッドへ!」
直後に幕が下がって、再び上ると、そこではベッドに横たわるエルヴィンとそれを囲う他のメンバー。
「お願いべス。助かって」
「私良い子になるから!」
「ああ、お父様が居て下さったら…」
「お父様は一八六一年から始まった南北戦争で、立派に戦っていらっしゃるのよ」
「南軍がサムター要塞を砲撃したのが切っ掛けだったのよね」
「歴史ネタ禁止と言ったろー!」
そしてその劇を見ていた河嶋がついに我慢ならなくなってツッコミをかける。
「分かってます分かってます」
「ああ!お父様が居て下さったら…」
そんな河嶋を軽くあしらって彼女らは続ける。
「お父様は立派に戦ってらっしゃるのよ」
「戦争が長引くからいけないんだわ!」
「第一次ブルランの戦いの戦いで、南軍が激しく抵抗するから!」
「ロバート・エドワード・リーは、アメリカ史上屈指の名将だから!」
「お前達~」
河嶋が少しイライラし始める。
「分かってます分かってます」
そして再度適当に流してから続行。
「苦しい…」
「しっかりしなさい、べス!」
「死なないでぇ!私良い子になるから!!」
「リンカーンが大統領に就任したら戦争は終わる!」
「そうしたら、お父様が帰っていらっしゃるわ!」
「でもリンカーンは、ロバート・エドワード・リー将軍が降伏した6日後に暗殺されてしまう!」
「フォード劇場でね…」
「ボックス席に座っていたところをデリンジャーピストルで撃たれたの!」
「一八六五年の事よ」
「その年は日本でも色々有ったわ。雷門が焼けたり、長崎で蒸気機関車が走ったり…」
「お前等!歴史禁止だと言っただろう!!退場っ!!」
河嶋はそこでステージに乱入するとカバさんチームに失格を宣告。理由は得意の歴史ネタをてんこ盛りに使用したためである。
「それでは皆さんお待ちかね!まさかの戦い繰り広げ、戦車道史に新たなページを刻んだ優勝の立役者!」
そして幕が上がり、そこでは壇上に立つあんこうチームの五人。
「野行き、森行く!オリーブドラブッ!!」
「海は任せろ…ネイビーブルー」
「黒い森行く…ジャーマングレーッ!」
「砂漠に咲く花!デザートピンクッ!!」
「錆から守る!オキサイドレッドッ!!」
全員がヒーロースーツにもを包んでおり、どこぞの戦隊モノのポーズを取る。
「五人の力で戦車が動くっ!」
「「「「「我等!パンツァーファイブッ!!」」」」」
カシャっとスポットライトが当てられて背景にあんこうチームのマークと『5P』の文字が浮かび上がる。
「「ガーハッハッハッハッ!!」」
するとホタテとカジキの着ぐるみを纏う小山と河嶋が現れる。
「あー!あそこに敵がーっ!!」
「悪の組織!生徒会だぁっ!!」
そこで五十鈴と秋山が反応する。やや前者は棒読みであった。
「大洗は我々が支配した!」
「此処は悪の本拠地になるのよー」
またも棒読み気味に台詞を言い放つ河嶋と小山。
「そうはさせない!」
「私達がお前達を倒す!」
「行くわよ!生徒会ッ!!」
「正義の拳を受けてみろっ!!」
「行くぞっ!」
そんな二人に果敢に立ち向かう五人。
「ウェ〜イ」
「良いぞ良いぞ〜!」
「やれやれ〜」
真澄達も乗って声援を送って軽く戦闘をする。
「うわ~ん」
「クソーッ!」
そして倒れる小山と河嶋。
「パンツァーファイブ!このあんこう怪人が相手だーっ!!」
すると上からリフトに乗って角谷があんこうの着ぐるみを見て登場する。
「今度はお前等が鍋になる番だぞ…」
「トオォーッ!!」
「アーレーッ!?」
しかし登場した直後にワイヤーに吊るされたみほが横からキックをかましてリフトから突き落とされた。
「あんこう倒せっ!!」
『『『『あんこう倒せっ!!』』』』
そこで声援が上がって盛り上がってくる。
「む…むむむむ!…うがーっ!そうはいかない!!おりゃーっ!!」
「「「「キャーッ!?」」」」
それにムッとなった角谷は対峙する五人にドロップキック。
「会長!!」
「段取りが違いますっ!!」
「やられる筈だろう」
手順が違うことに秋山、五十鈴、冷泉から文句の声が出る。
「煩ーいっ!大洗は…あんこうが守るっ!!」
『『『『おぉ〜っ!』』』』
なぜかヒーローものなのに怪人側が正義側になるよく分からない状況になってあんこうチームは終わった。
「さて次は、悪知恵猿知恵働かし、花も嵐も踏み越えて、どんな苦境も乗り切った、御存じ生徒会・カメさんチーム」
生徒会トリオが出ると言うことで代役で五十鈴がウグイス嬢を行う。
すると幕が上がってステージには着替えた生徒会トリオが現れる。
「え?いつの間に着替えたの?」
「舞台屋もびっくりの早着替えですね…」
真澄はそこでバレエの衣装に身を包む三人に早着替えレベルの高さを見せられる。
「生徒会は『白鳥の湖』ですね。此処でバレエに詳しいバレー部の佐々木さんに解説をお願いしたいと思います」
そこでバトンを渡された佐々木が解説を加える。
「これはオデットが小山さん、王子が会長と言った配役ですね」
そこで角谷がポーズを決めた小山を持ち上げる。
「見事なリフトが決まりました!」
すると今度は河嶋が現れる。
「恋敵役の黒鳥が河嶋さんですが、この次が見せ場です!」
解説と同時、河嶋はステージの上で回り始める。見事な回転を決める。
「コレは素晴らしい!三二回転フェッテ!軸足が全然ブレずに見事に決まりました!!」
そしてピタッと回転を止めると、無事に生徒会トリオのバレエが終わった。
「おぉ〜」
それには見ていた全員が拍手を送った。
「もう生徒会じゃなくてバレエ部に改称したほうがいいんじゃないんです?」
「言えてる」
大久保に大隈が頷くと、そこで彼女達は立ち上がって。
自分たちの準備に取り掛かった。
「その姿はまさしく一騎当千!数多の敵を蹴散らす最強の武人。恐れ知らずの名将とその家臣、くまさんチーム!」
そこで幕が上ると、そこでは長上下を羽織る真澄と大隈。
「へへへっ、如何でございやしょうか?」
手揉でお伺いを立てる大隈に、真澄はまんじゅう箱に下に隠されてある小判を手に取って笑みを見せる。
「うわっ」
「すっごい悪役。すっごい悪役だよこれ」
その邪悪な笑みに阪口と宇津木が言う。
「ふむ、善きに計らう」
「へい」
すると会場の襖がパンッ!と音を立てて開かれ、そこに同じく着物を纏った榎本が現れる。
「そのような狼藉、我が見逃すと思うたか?」
「誰だ貴様!?」
真澄はそこで模造刀の日本刀に手をかけると、丁髷の被り物をする榎本は返す。
「余の顔を見忘れたか?」
「…っ!?」
そこで一瞬間を開けた真澄が目を見開く。
「う、上様…!!」
そこで慌てて土下座に入り、それを追うように土下座をする大隈。
「黒田新之助。お主は銭に目が眩み、己の職務を放棄するその狼藉。潔く腹を切れぃっ!」
ちょっと雑さが目立つセリフだが、雰囲気がモロに出ていた。
「ここで死ねばただの黒田新之助」
そこで真澄が声を張りあげる。マイクなしで宴会場に彼女の声が響き渡る。
「曲者だぁ!であえ!であえぃ!」
すると直後、宴会場の襖が全部開くとそこから侍姿の整備班・輜重班含めた多数のエキストラが登場&模造刀抜刀。
「え?え?」
「なになになに?!」
それに左右を見るみほや武部。
「斬れぃ!斬り捨てぃ!」
真澄もそこで模造刀を抜くと、数人が襲いかかって榎本が抜いた日本刀で簡単に切り捨てる。
「うおっ!」
「ぐあぁっ!」
そして模造刀を両手に握った榎本はカチャっと言う音を鳴らすと、黒衣姿の生徒がラジカセのボタンを入れると『○陣のテーマ』が流れる。
デーンデーンデーン
そしてお馴染みのテーマ曲が流れると、そこからは日本刀を使った見事な殺陣が行われる。
「トゥ!」
「ヘァァアア!!」
そして上からクノイチ、忍の姿になった伊藤と大久保が降りてくると持っていた短刀、日本刀で近くの二人を切り捨てる。
「ぬぁああ!」
「でやぁああっ!」
そこで模造刀を振るエキストラに、見事な刀捌きであっという間に切り捨てる榎本。
「グハァ」
「がぁあ…」
そしてだんだんと人が消えてゆくと、最後真澄と榎本が一騎討ち。
「っ!」
「ふあぁあっ!」
そこで模造刀同士でやり合う真澄と榎本。
「「「「「おぉ〜!!」」」」」
その迫真の演技にみほ達から拍手が上がる。
そして鍔迫り合いをした直後、榎本は強く押し込み、その反動で真澄の腹を刺す動作をする。
「成敗っ!」
「うっ…!!」
そしてそのまま地面に倒れ込むと、榎本は模造刀を鞘に戻る。それと同時に音楽が止まる。
「失格」
『『『『『えぇ〜っ!!??』』』』』
そして直後の角谷の言葉に全員が声を上げる。
「お前達!チーム以外の生徒を使うなと言っただろう!?」
「「「「「あっ」」」」」
よりにもよって河嶋に指摘されたことで全員がハッとなった。
「そんな〜」
「せっかく演劇部に頼んで借りてきたのに〜」
そこで残念がる整備班の面々だったが、各々片付けを始めた。
「それでは、結果を発表する!」
河嶋が告げるとドラムロールが始まり、幾つものスポットライトの光が床を照らす。
「第三位は……ウサギチーム!」
河嶋が発表をすると、スポットライトがウサギチームの面々を照らした。
『『『やったぁー!!』』』
彼女達は無事に商品を獲得し、喜ぶ。
「続いて二位…あんこうチーム!」
「わーいっ!!」
武部とみほが笑顔になり、秋山と五十鈴がハイタッチを交わす。
「では、第一位!栄えある優勝は…生徒会チーム!!」
『『『『『えぇ〜っ!!』』』』』
河嶋の結果発表に部員達からブーイングが飛んだ。
「会長、一位の賞品は?」
「一位の賞品は…十万円相当の」
すると再びドラムロールが始まり最後にシンバルの音が鳴り響くと、下がっていた垂れ幕が上がり秘密とされていた優勝商品が姿を現した。
「最高級の干し芋一年分!万歳!!やったな河嶋!」
『『『『『えぇ…』』』』』
「はぁ…」
さっきと違い、全員が微妙な表情を浮かべる。
河嶋もため息をついていた。まあ、腐らないうちに頑張って食べ尽くしてね。
「よ〜し、みんな行くぞ!!」
「せーの!」
「「「「「万歳ッ!!!」」」」」
そして最後に全員がBANZAI!!をすると宴会は終わりを迎えた。