知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第九二射

夏休みも順調に進み、少しした頃。

八月の終わりに行われるエキシビジョンマッチに向けた訓練を行なっていた。

 

「撃て!」

 

真澄の号令の後、短十二糎自走砲(クマさんチーム)から砲撃が響く。

発射された十二センチ口径の砲弾はそのまま大洗の演習場に着弾をすると土煙を上げる。

 

「撃て!」

 

直後、隣にいた八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)も砲撃を行う。

 

「発射!」

 

そして三式中戦車(アリクイさんチーム)も発砲。今回チームを組んだのは全員が日本戦車。

何気に大洗女子学園戦車道部所属の中でもドイツと同数を故郷に持つ戦車。

今度行われるエキシビジョンマッチの組む相手は知波単学園。かつて、真澄達が所属していた学校である。

 

「続けて第二射!撃てぇ!」

 

ッ!ッ!ッ!

 

少なくとも中等部三年間で骨の髄まで知波単式の教育を叩き込まれてきた五人は、そこで知波単学園のチームになりきってみほ率いる大洗戦車道チームとの合同戦をイメージしていた。

 

「全車、突撃せよ!」

 

真澄の指示で今度はしっかりとクラッチの操作方法を覚えたアリクイさんチームも順調に進撃を行う。

決勝戦で早々に退場して以降、三人はまず筋力の増強から始まり、同じ日本戦車の運用で慣れているクマさんやアヒルさんチームの手解きを受けて操縦は手慣れていた。

 

「なんか、すごく生き生きしてない?」

 

その様子を見ていたあんこうチームで、武部が無線で豪快に叫ぶ真澄に少し眉をひそませていた。

 

「まぁ、知波単ってそう言う学校だから…」

「よく知らないのですが…黒田殿の元いた学校ですよね?」

「そうだよ」

 

みほはそこで中等部の試合をふと思い出す。

あの時も彼女はこんな感じだったか、と思いながら全速力で突撃をしていく真澄たちを見た。

 

「…ねえ、大丈夫だと思う?」

 

その時、短十二糎の車内で大隈が聞く。

 

「何が?」

 

その質問に伊藤が首を傾げる。

 

「ほら、昔みたいに突撃馬鹿に戻ってないかって話」

「「「あぁ〜」」」

 

その懸念に聞いていた大久保も納得し、同時に不安になる。

 

「だ、大丈夫じゃない?」

「でも西が率いているのよ?ちょっと押しに負けてそうというか…」

 

多くの生徒が出ていく中で、唯一知波短に残った生徒。

実は決勝戦が終わった後に、彼女を通して話があった『知波単に戻ってきてくれないか?』と。確かに揉め事でいなくなったとはいえ、元々は知波単学園の生徒。しかもそこの生徒が高校生大会で優勝したとなれば勧誘して迎え入れたいと思うのは理解できた。だが真澄はそれを断り、榎本たちも同様であった。理由は『もうちょっと大洗で仕事をしたいから』、大洗での生活をまだしたいと言う理由で断っていた。

 

「ていうか、」

「今帰ったら確実に辻先輩と殴り合いの喧嘩するって」

「「それな〜」」

 

絶望的なまでに仲の悪い先輩と大喧嘩する姿が見えることで榎本たち四人は言う。

 

「おい、聞こえているわよ」

 

真澄は否定はしないが、それを遠慮なく言った榎本達に一言申した。

 

 

 

そして練習を終えた時、大洗戦車道部にとある依頼が舞い込んできた。

 

「え?大洗商店街の?」

「はい、できれば出て欲しいと…」

 

支援班の生徒が少し難しい表情をする。

 

「うーん…」

 

飛び込んできたのは、今度行われる大洗八朔祭で奉納戦車試合をするから戦車一両を出してくれないか?と言う依頼だった。

しかもできれば十トン以下の重量の戦車が良いという、最近流行りの強襲戦車競技(タンカスロン)と同じルールでの試合だ。これでは出られる戦車も限られる。

田舎によくあるガバガバスケジューリングである。…この試合の一週間後にエキシヴィジョンぞ?

 

「いけると思う?」

「一応は…ですが模擬戦の一週間後にエキシビジョンです。体力と精神的な問題があります」

 

一応地元の商店街。そこからの依頼ということでお断りを入れるのも難しい。

 

「一応、みんなに通達して。行ける人がいたら出るって感じで、どう?」

「わかりました。全員にメールを送っておきますね」

 

そして戦車道部員全員に一斉メールで配信を行う。すると速攻でメールが返ってきた。

 

『私たちにやらせて下さい!』

 

返してきたのはバレー部(アヒルさんチーム)だった。彼女たちは運動部らしいタフな体力と、部長に鍛え上げられた精神力で、隔週になるこの試合に出るといった。

確かに彼女たちの戦車なら、後ろの橇を外せば十トン以下に重量は抑えられる。

 

「大丈夫?」

「はい!任せて下さい!」

 

格納庫で磯部が真澄に言う。彼女たちは試合に出ることを速攻で承諾していた。

 

「…怪我だけはしないでよ?」

「はい!もちろんです!」

 

真澄も磯部たちの熱意に押されて試合出場を承諾した。

まあ体力バ…常に全力でいける彼女たちならなんとかなるかと思っての判断であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

出場することを商店街にも伝え、正式に試合が行われることが決まると、そこで彼女達は試合のための準備を進める。

 

「ぶっつけ本番だけど、行ける?」

 

倉庫で橇を外す下準備を行なっている途中、真澄は磯部達に聞いた。

なにせ話が唐突な上に、いきなりのぶっつけ本番である。強襲戦車競技(タンカスロン)形式とはいえ、作戦も何もあったものではない。

 

「大丈夫です!」

「射撃の腕には自信があります!」

 

河西と佐々木が自信ありげに答えると、話を聞いていた榎本達も流石に苦笑していた。

 

「さ、さすがね…」

「体力には自信がありますから」

 

問題ないと近藤が答えると、早速彼女達は陸上に下された。

明日に向けての最後の確認のためである。

 

「「「「行ってきま〜す!」」」」

「気をつけて〜」

「怪我すんなよ〜」

 

大洗の桟橋を走っていく八九式と、それについていくレオポンチームを見送り、みほと真澄は軽く吐息する。

 

「大丈夫かな〜」

「大丈夫だと思うよ?アヒルさんチームなら」

 

みほは見送ったアヒルさんチームにやや不安を覚える。

 

「ビーチバレーの勘違いしていないといいが…」

「あー、それは…」

 

そこで試合前のビーチバレー大会を楽しみにウキウキとしていたバレー部。あの磯部のことだ、途中でこんがらがっていそうなのが少し不安であった。

 

「まあ良いか。多分勝てるでしょ」

「ら、楽観的〜」

 

半ば投げやりに言い放った真澄にみほも少し表情を引き攣らせた。

 

「じゃ、これからどうする?」

「そうだね〜」

 

そして二人は今回行われる大洗八朔祭に赴く。

 

「まあこう言うのはまずベタに屋台巡りでもしましょうか」

「そうだね」

 

みほは白いワンピースに帽子を被り、サンダルを履いている。

真澄は下に白シャツを着た上でアロハに半ズボン、下はサンダルで髪は上げていた。いわゆる男装風の格好をしていた。

今日は二人で祭りを巡ろうと約束をしていたのだ。真澄はこの格好なので、決勝戦などの前髪をおろした時とは違う爽やかな印象があった。

またアンツィオの時とも違い、髪を短くバッサリ落としていたことで初めて見る印象があった。

 

「う、羨ましい限りです」

 

その様子を後ろから見ていた秋山が羨ましそうに見ていたのを尻目に二人は大洗の街に繰り出した。

 

 

 

大洗商店街の祭りに繰り出した二人は、そこで色々と屋台を巡っていた。

 

「んは〜、この玉せん美味」

「美味しい」

 

玉せんから始まりシベリア、お好み焼き、焼きそばetc…みほの知名度もあって色々と商店街のおいちゃんおばちゃん達からおまけやらなんやらで腹ファ膨れてくる。

 

「ぐふっ、結構くるね」

「でも美味しい」

 

腹も結構膨れてきた頃、真澄はいつものシガレット菓子を口に咥えて街を練り歩く。

 

「次どうする?」

「うーん…あっ!」

 

そこでみほが精肉店で売られている串カツに目がいく。

 

「これとかどう?」

「串カツか〜」

 

いいな、と思った。真澄はそこでみほとともに店に並ぶ。

 

「二度漬けしたら殺されるかな?」

「そんな、大阪じゃないんだし…」

 

みほは真澄の意見にやや苦笑気味に店の外で立っていると、遠くからキャタピラの音が耳に入る。

 

「「?」」

 

履帯の音に二人は反応して首を傾げる。

 

「この音は?」

「四気筒ディーゼル。珍しい音だね〜」

「じゃあ、日本戦車?」

「そうかもね〜」

 

戦車にディーゼルエンジンを積むのは日本戦車の特徴であり、その音を一瞬で判断した二人は道路の方を見ると、そこにはテケ車(九七式軽装甲車)が道路を走っていた。

 

「あ、軽戦車」

「…じゃなくて、一応軽装甲車ね」

 

珍しい車両に軽く感嘆した様子で装甲車を見ると、みほはそこで道路に出て誘導を行う。

 

「オーラーイ、オーラーイ」

 

そして精肉店のそばの空き地に装甲車を誘導すると、そこで降りてきた三人は軽く頭を下げた後に店に入った。

 

「サクサクね」

「美味しい」

 

そして串カツを店の外でモリモリ食べる真澄とみほ。

 

「あっ、さっきは誘導。ありがとう」

 

するとそこで同じように串カツを注文していた女子高校生が声をかけてきた。

 

「そういたしまして」

 

みほは彼女にそう返すと、テケ車(九七式軽装甲車)を見て真澄が一言。

 

こいつ(九七式軽装甲車)か、なんて珍しい」

「えへへ、ありがとう」

 

軽く遠巻きに履帯や塗装を見る真澄。車体はえんじに近い色合いで塗装され、砲塔側面には百足の塗装がされており、そのマーキングにどこかで見覚えがある気がした。

 

「この後の奉納試合に出るの?」

「そうなんです」

 

そこで金髪の女子高校生が頷いた。

 

「ほほぅ、頑張ってね〜」

 

真澄はそこで敵の戦車を見て脳裏に車両の詳細がよぎった。

 

「じゃあ、良い夏祭りを」

 

みは串カツを食べ終えていたが、真澄はそこで言う。

 

「ちょいちょい、口にソース」

「あわわ…!」

 

そこで真澄の出したハンカチにみほは慌てて口元についていたソースを拭うと、その仕草に女子高校生は笑みを浮かべていた。

 

「んじゃ、行くわよ〜」

「あぁ、ちょっと待って〜」

 

そして真澄に誘導される形でみほは軽く手を振ってから別れた。

 

 

 

「う〜む…」

 

その二人を見ていた頭に赤いはちまきをした少女が少し唸る。

 

「あの御仁等、まさか…」

「どうしたの姫?」

 

そこで首を傾げた栗毛の少女にはちまき少女は言う。

 

「…いや、人違いだろう。私は人の顔を覚えるのは苦手だからな」

 

そこで商店街の奥に消えた二人を見て言う。

 

「あの大洗女子の西住みほ殿と黒田真澄殿が、あんなにのどかな訳がない」

 

彼女はそう結論付けて別人であると判断していた。

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