知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第九三射

大洗商店街からの要望で、磯前神社での奉納戦車戦を行うこととなり、そこの調整に大洗戦車道部の後方要員が苦労しながら準備を行う。

 

「えーっと?今回の相手は…」

テケ車(九七式軽装甲車)よ。確か個人での出場」

「商店街の方は?」

「新型ペイント弾で派手にやって良いそうですよ」

「おお、大盤振る舞い」

 

今回の試合は強襲戦車競技(タンカスロン)形式ということで、見物客もお構いなしに砲撃が飛んでくる。観客の安全の担保はされなかった。

 

「こっち側は?』

「いつでも行けるそうでーす!」

 

そこで八九式中戦車甲型(アヒルさんチーム)も準備が万端である報告を受けると、そこで商店街の人たちから言われる。

 

「今日はよろしくお願いします」

「わかりました」

「派手にやりましょう」

 

そう意気込み、彼女達は着々と試合の準備を行う。

 

 

 

その頃、大洗文化センターの前では多くの歓声が響いていた。

 

「すごい盛り上がりだな!」

「そりゃそうだよ!」

 

そこで出場するテケ車(九七式軽装甲車)の前で鶴姫しずかと松風鈴は言う。

 

「相手があのバレー部(アヒルさんチーム)なんだよ!」

 

彼女達は今回の大洗で行われる試合で、自分達の対戦相手となるチームにやや興奮していた。

 

「ふははは!ようこそ大洗へ!」

 

そこで彼女達は二人に言う。

 

「まずは我らバレーボール部が相手だ!」

 

八九式の前で磯部が叫ぶ。

 

「西住隊長に会いたければ、まず我らを倒すことね!」

「そうです、全国大会優勝の隊長と見えるにはそれなりの手順が必要です」

 

近藤と佐々木が続くように言うと、そこで鶴姫と松風は突っ込む。

 

「いやその前に」

「なんで水着?」

「そこ?!」

 

実際、彼女達は戦車道の試合のはずなのに水着を纏っていた。

 

「あっ、すみません…」

「うちの主将がビーチバレーと間違えたらしくて…」

 

その理由を近藤と佐々木が説明し、周りが一瞬ざわついた。

そしてそこで着替えようとした時、なぜか対戦相手が着替えるというハプニングが起こったりして大騒ぎになったりしていた。

海なし県から訪れた彼女達は、この後海に泳ぎに行く予定だったらしく、下には水着を着ていたのが幸いしていた。

 

「しかし、八九式中戦車は十二トン。強襲戦車競技(タンカスロン)にはいささか重いのではないか?」

 

十トン以下の重量の戦車で行われる試合に疑問をしていると、そこで自動車部(レオポンチーム)が出てくる。

 

「心配御無用!」

 

そこで彼女達は目の前で橇や円匙、機関銃などのその他もろもろの装備品を取っ払う作業を行なってこれをクリアした。

 

「これで八九式は中戦車じゃないしー」

「軽戦車だし!」

 

マウスの時とは逆の台詞を言うと、見事に強襲戦車競技(タンカスロン)の唯一の試合規則をクリアした。

そして各々自分の車両に乗り込むと、エンジンをかけた。

 

『それでは奉納戦車試合。五分後に戦闘開始ーー!!』

 

直後、太鼓の音が一発鳴り響く。そしてその音に合わせて二台の戦車が飛び出していく。

 

そこでまずは両者が離れる時間を作る。

そして司令所で三連信号拳銃を持った生徒が赤色の照明弾を打ち上げる準備を行う。

 

ルールはどちらかのペイント弾が命中するまで。その間、何を壊しても問題なかった。

そして司令所から空に向かって信号弾が打ち上げられると、試合が始まった。

 

「さて、試合はどうなると思う?」

 

その様子を上から見下ろしていた榎本が聞く。

 

「そうね…」

 

そこで大洗の地図に二つの碁石を置く真澄は考える。

 

「火力は57ミリと37ミリ、圧倒的じゃない?」

 

砲手の大久保が聞くと、真澄は答える。

 

「今回の試合は強襲戦車競技(タンカスロン)だ。一発でも当たれば勝負がつく。それは差にならない」

「じゃあ装甲も?」

「ああ、今回は意味無いな」

 

大隈の問いに頷く。町中には試合の状況を見るための監視員とドローンが展開しており、状況は逐一無線に送られていた。

 

『射点が分からん…!一旦後退!』

 

双方の無線、百足さんチーム(九七式軽装甲車)アヒルさんチーム(八九式中戦車甲型)のやり取りを耳にする。

 

『キャプテン、サーブ外したみたいです』

『構わん!相手にプレッシャーは与えた!』

『引き続きBクイックいくよ!』

『はいっ!』

 

先手を打ったのは八九式の様子だ。そしてその襲撃に九七式は混乱している様子。と同時に、砲声が大洗の街に響く。

 

「今回の範囲は狭い住宅地と商店街のみだ…」

 

移動をしながら発砲を行う八九式の攻撃に九七式は今のところ逃げていた。

 

『家屋の中をくり抜いて射撃…?!』

 

無線の状況から八九式は建物ごと砲撃を行い、攻撃を仕掛けた。

場所からして、角の建物を貫通したのだろう。

 

「壊して良いとはいえ…躊躇が無いな」

「当たってもペイント弾ですからね」

 

そこで双眼鏡を使って見ていると、

 

「あっ、ここに居たのですね!」

 

ハシゴを登った秋山がそこで地図を開いている真澄達を見た。

 

「おー、みんな来たね〜」

 

そこで秋山に続いて他のあんこうチームの面々も上がってきた。彼女達は先にアウトレットに寄り道をしてこっちにきていた。

 

「今どんな状況なの?」

 

武部が聞いてくると、戦況を詳細に把握していた榎本が言う。

 

「圧倒的にこっちが推している状況ね」

「どうぞ、無線」

 

そこで双方の使う車内用の無線を差し出す伊藤。

 

「腕前の次元が完全に違うわね」

「なるほど…」

 

そこで五十鈴が地図を一瞥した後に理解したように数回頷く。

 

「当然であります!」

 

それには秋山も頷く。

 

「アヒルさんチームはあの八九式で、対プラウダ、対黒森峰、そして対アンツィオ!最も動き回り、最も弾を当ててきたチーム!」

「うん、私もそう思うよゆかりさん」

 

上から見ていたみほは頷く。

 

「アヒルさんチームは大洗女子で、最も練度の高いベストチームだって!」

 

彼のチームは、バレー部という運動部で鍛え上げられた元々のポテンシャルの高さがうまく戦車道にマッチしており、今まで数多くの試合でも活躍した名チームであることに違いなかった。

 

「でもよくよく考えると、IS-2とかパンター、虎Ⅱの砲撃から逃げる八九式って…ちょっとシュールよね」

 

真澄が言うと、誰もが頷く。

 

八九式も登場した頃は世界最強と謳われるほどの性能を有していたが、時代においていかれた悲しき戦車でもあった。

そもそもな話、日本戦戦車全体に言えるのが、第二次世界大戦時の戦車の恐竜的進化に追いつけていなかったと言う事実だ。

九七式改でイメージをするなら、ジ○改でグリ○ス戦役末期を戦えと言われるようなものだ。無理があろうとございます、という話である。旧砲塔ならそれがジ○になる。もっと無理な話だ。

 

「おまけにマウスも止めちゃうってのがね…」

「ほんとそう」

 

そして現在、八九式は九七式を追いかけており、砲撃も容赦なく行われている。

 

「うわっ」

「こりゃあすげぇ…」

 

砲撃を行い、同時に何ぶっ壊しても商店街持ちということで八九式は遠慮なく市街地を破壊しながら暴走していた。

 

「これ来週までに修理間に合う?」

「さぁ?」

「最悪、そのままブルーシートじゃない?」

「えぇ…」

 

実際、一部の家は修理が間に合わないくらいの損害を受けてブルーシートで一週間以上過ごす羽目になる損害であった。

 

『民家を突っ切る!』

『あわわ、日本のお家って弾除けにもなんないよー!』

 

木造住宅ばかりの日本家屋は、容易に砲弾が貫通してしまい、過貫通を起こす始末。盾の代わりにもならない。

ムカデ狩りが行われている現状、逃げている九七式は民家を破壊しながら縦断し、八九式の攻撃を避けていた。

 

『なぜ、先回りされている?!』

 

しかしそこで、民家のコンクリートブロックを突き破って現れた八九式に驚愕した。

 

『敵は月の井酒造店裏手を櫻井神社方面へ!』

『よし!先回りだ!』

『『『了解!』』』

 

大洗出身である彼女達は、圧倒的な地の利を生かして徐々に追い詰めていく。

 

『忍!ここで止めて!三、二、一、今!』

 

その砲撃は道路を走る九七式の目の前に着弾した。

 

『あの子達…私たちが来るのを見越して射撃している?!どんな修羅場を括ったらあんなになるの?』

 

その腕前と技術力に九七式操縦手の松風は戦慄する。

これで春から乗ったばかりのアマチュア?ありえない、少なくとも何年も乗ってきたプロを相手にしているようにしか思えなかった。

 

「まあ、そりゃあ122ミリの砲弾避けたり、88ミリと75ミリの砲弾の嵐を潜り抜けたらね…」

「いやでも鍛え上げられるでしょうよ」

「今度訓練内容に入れてみる?」

「え?なにその地獄?」

 

そんな事を話すクマさんチームをよそに真澄はみほと地図を見ている。

 

「これからどう動くと思う?」

「相手はまだ慣れていない感じがする…から」

 

真澄に問いかけにみほは九七式の動きに拭えない新米の匂いを感じ取る。

 

「でも乗っている人が多分優秀だから…」

「…そろそろ動く?」

「うん、多分…」

 

すると無線で九七式の車長の鶴姫が言う。

 

『ーー頃合いだな』

 

すると九七式は角を建物を破壊しながら走り出す。

 

『三十六計ーー逃げるにしかず!』

 

エンジンを全開で回し、全力で今いる住宅街からの逃亡を図る九七式。

 

『あ!逃げ出した!』

『待てーっ!」

 

そこで八九式も対応して追撃を行う。

そしてこの試合、他校の生徒達も観戦に来ており、地の利のある大洗女子に対して、どのような戦法でいくのかを見に来ていた。

 

「…」

 

市街地を駆け抜けていく九七式を双眼鏡で見た榎本はニヤッと笑う。

 

「真澄」

「ん?」

 

そこで彼女は軽く真澄を手招きする。

 

「もう一発、かましてくれそうよ?」

 

そこでまだ余裕の残っている車長の顔を見た。

 

 

 

そして大洗の市街地を爆走する九七式。

 

「市街地を抜けた!」

「神社で建て直しをーー!」

 

そこで神社の境内につながる道を爆走する途中、鶴姫達はドクンッと、心拍数が上がる気配を感じた。

咄嗟にその方を見上げると、ホテルの屋上からこちらを見下ろしている姿を見た。

 

「あれが…」

「西住…みほ…さん!」

 

一瞬操縦から目を離してしまったが、すぐに松風は視線を前に戻る。

 

「…っと!」

 

そこで操縦桿をしっかりと握り直すと、そのまま坂を駆け上がって行った。

 

「ヒュ〜」

「あれが試合相手ですか…」

 

爆走して行った九七式を見送って、それに思わず見ていた面々が呟く。

 

「百足さんチーム…」

「明らかにこっち意識してそうよね」

 

そんな事を言いながら爆走て行った車両を見送った。

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