知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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正直、短十二糎自走砲の情報が少なすぎて、最近乗員が多いんじゃね?と思うようになってきた(もう遅い)。
劇場版は一部、漫画版の方と織り交ぜて投稿するつもりです。


劇場版
第九五射


夏の大洗女子学園の全国大会優勝。

これは日本戦車道の歴史においても快挙と呼べる行為である。

 

誰が思うだろう?春に復活したばかりの弱小校が、名だたる名門校を打ち破り、全国優勝を果たす。

壮大な下剋上、壮大なシンデレラストーリー。こう言う話は、多くの人を魅了し、同時に多くの人を引き寄せる。実に素晴らしい物語だ。

報道記者や作家というのはそういう簡単に感動を覚えるストーリーというものは大好物である。

 

「撃て!」

 

命令の直後、車体全体を巨大な振動が襲う。

 

「ほら!四キロの砲弾を喰らいな!二.五キロの炸薬よ!」

 

装填手の榎本が装薬込みの砲弾をまとめて装填する。その顔は少々怒り調子であった。

 

「わー炸薬たっぷりだ」

「コンニャロ〜、これでも喰らえ!」

 

そこで車体で37ミリ砲の操砲を行う伊藤は、四苦八苦していた。

 

「クソゥ、何で無線手なのにこんな忙しいのよ!」

 

そこで装填を終えると、引き金が発射される。車体に取り付けられた対戦車砲のせいで車内の弾薬箱が圧迫、自分の居場所が死ぬほど狭くなってしまっていた。

 

「…やっぱ狭い」

「そりゃそうでしょうよ!」

 

大久保が一言言うと、隣で榎本が言う。

 

「そりゃチハ改のクソ狭砲塔にこの無駄にデカい(身長175cm)人間(真澄)を余計に乗せてっから狭いでしょうよ!」

「お?私の悪口か?いつでもいいぞ私は?」

 

真澄はぼやく榎本に言うと、直後に振動が訪れる。

 

「うおっと…これなら戦闘室の広いホニⅢ(三式砲戦車)に改造してみたいもんですね」

「割と冗談にならないわね…」

「それより先に短二十糎自走砲に改造する方が早いわよ」

 

新砲塔のチハ改(九七式中戦車)に無理やり高角砲(短十二糎砲)を装備した本車両。そこ砲塔に三人が乗り込んでいる現状は、下手な満員電車よりも酷い状況である。

そして今出てきた戦車は全て九七式中戦車からの改造品であるので、理論上改造が可能である。

 

「ひ、広い戦闘室…」

 

操縦手の大隈が悪魔の囁きを聞いたように呟くと、真澄が言う。

 

「そんなに広いやつが欲しいなら、四式中戦車でも注文したら?」

「はははっ、そりゃきついっすよ」

 

うちらいつも万年金欠の部活動ですよ?と大隈が苦笑する。

 

「じゃあ現状で我慢しなさい。少なくともこの試合が終わった時の開放感は最高よ?」

「そりゃあ最底辺みたいな場所での操縦ですからね!ここは!」

 

そこで大隈は怒鳴ると、前方のゴルフ場の窪地に隠れている聖グロリアーナ女学院所属のマチルダⅡとチャーチルMk.Ⅶを見る。

 

 

 

「茶柱が立ったわ」

 

その時、ダージリンは紅茶のカップの真ん中に浮いてきた小さな茶柱を前に呟く。

 

「イギリスのこんな言い伝えを知っている?」

 

そして彼女は広い車内の中、優雅に隣に座っていたオレンジペコに話を振る。

 

「茶柱が立つと、素敵な訪問者が現れる」

 

その格言にオレンジペコは言う。

 

「お言葉ですがもう現れています。素敵かどうかはさておき…」

 

彼女はそこで揺れるチャーチルの車体に少し表情を曇らせていた。

外では無数の砲撃が現在隠れているゴルフ場の白い窪地、俗にバンカーと呼ばれる場所に固まっているマチルダⅡ三両とチャーチルMk.Ⅶ一両。そこに無数の砲弾が着弾し、軽い土煙が上がる。

状況としては、聖グロリアーナ女学院の戦車隊は包囲下にあった。

 

バンカーの周りはⅣ号戦車(あんこうチーム)を筆頭に大洗女子学園戦車道部の車両が七両、そして今回の連合相手である知波単学園の戦車である九七式中戦車の新旧砲塔装備が六両。四両の聖グロリアーナの戦車を包囲していた。

その状況を上空を飛ぶ審判機(銀河)が映像を撮影していた。

 

観戦スタジアムと化した大洗マリンタワー前の広場では、多くの大洗女子学園生徒達や地元住民達が設置された大型パネルを見ながら観戦を楽しんでいた。会場の入り口の横断幕では『大洗女子学園優勝記念エキシビジョンマッチ』と印刷されたものが掲げられていた。

今日行われているのは全国大会で優勝を飾った大洗女子学園は、大会公式試合のエキシビジョンマッチとして大洗女子学園・知波単学園対プラウダ高校・聖グロリアーナ女学院の連合チーム同士の試合を行なっていた。

 

「いくら親善試合とは言え、油断しすぎたのでは?」

 

オレンジペコが現状の戦況の悪さに一つ苦言を呈した。

 

「この包囲網は、スコーンを割る様に簡単には砕けません」

 

その意見に同乗する金髪の乗員のアッサムも同調する。

 

「落ち着きなさい?『如何なる時も優雅』それが、聖グロリアーナの戦車道よ」

 

そんな二人に諭すようにダージリンはいつも通りの様子で返し、前を向いていた。

 

 

 

その映像を、大洗マリンタワーからは少し離れた場所で三人の少女達が観戦をしていた。

 

「…」

 

一人はチューリップハットをかぶり、カンテラを持っている特徴的な少女。

 

「エキシビションって、なんかかっこいいね〜」

 

その隣で白髪の少女が呟く。

 

「かっこいい…それは戦車道にとって大切なことかな?」

 

少女にカンテラを持っていた少女は謎かけのように聞き返す。

 

「え~じゃあ、ミカは何で戦車道をやってるの?」

「戦車道は人生の大切な全ての事が詰まってるんだよ。でも、殆どの人がそれに気づかないんだ」

 

その問いにミカの返答を聞いて、少女アキは首を傾げる。

 

「何よそれ〜」

 

その顔は理解できないと言う表情をしていた。

 

 

 

「ほとんど応戦してこないね?相手はなんだか余裕だよ」

 

その様子を、ハッチを開けて直接見ていた武部が一言。確かに側から見ると状況を楽観視しているようにも見えてしまう。

 

「きっと紅茶飲んでいるんですよ!」

 

同様にその状況を見ていた秋山がハッチから顔を出していう。

紅茶ジャンキーな彼女達からすればその様子が容易に想像ができてしまった。

 

「私達は緑茶でも淹れます?」

「ミルクセーキが良い!」

 

対抗するように五十鈴が緑茶を淹れることを提案すると、冷泉が顔を覗かせて飲み物を注文する。

 

「卵も牛乳も、クーラーボックスの中に入れてきましたから。作れますよ?」

「おぉ…!!」

「すごいです!」

 

材料が揃っており、なおかつクーラーボックス付きと言うことにどことなく家にいるような空気感が若干出てくる。

 

「…で、どうするみぽりん?」

「発砲をやめてください」

 

武部が聞くと、みほは首元のタコマイクを抑えて指示を出す。

 

「別働隊がこちらに到達するにはまだ時間があります。今のうちにゆっくり前進して、包囲の輪を狭くしていきます。安全な地形を確保しつつ、近距離での確実な撃破を目指しましょう」

『かしこまりました』

 

その指示に少し前方で発砲をしていた新砲塔の九七式中戦車に乗っていた少女が答える。

 

「時間はあるので慎重に。パンツァー・フォー!」

 

そこでみほが指示を出すと、大洗の戦車は一斉に前進を始める。が、知波単学園の戦車は一両として動こうとしなかった。

そして前進をしない戦車にみほは困惑気味にⅣ号戦車を停車しままの九七式中戦車の真横にとめる。

 

「あ、あの…」

「西住隊長、『ぱんつぁー・ふぉー』って何です?」

 

その時、知波単学園側の隊長である西絹代はみほに先ほどの言葉の意味を聞いた。

 

「え?あぁ、『戦車前進』って事です」

 

みほはやや困惑気味に答えると、表情をパアッと明るくして理解した顔をした。

 

「なるほど!そう言う意味ですか、勉強になりました!」

 

その無線を聞いていた河嶋は思わずため息を吐いた。

 

「大丈夫か、知波単学園は?」

「ちょっと変わっているよね」

「でもみんな真面目そうだし、勇敢だから…」

 

すると直後、割り込むように無線が入る。

 

『馬鹿者ぉ!』

「っ!?」

 

つんざくように耳に響く軽い真澄の怒号は、一瞬河嶋を含め数名の生徒達の背筋を伸ばさせる。

 

『隊長たるもの、英語を覚えろと教えたはずだろうが!』

『はっ!大変申し訳ありません!!』

 

西も昔の記憶が蘇って誰もいないのに背筋をピンと伸ばし切って前方を見た。

 

「と言うより、パンツァー・フォーはドイツ語では?」

「それ言っちゃ多分ダメだよ」

 

五十鈴の指摘に武部がかき消すように言う。

その様子に、一体向こうで何をしていたのかと疑問に思うみほ達であったが、西は気を取り直して無線を手に取った。

 

「戦車前進!」

『戦車前進!』

『『『戦車前進!』』』

 

その号令に合わせて知波単学園側の戦車六両も前進を開始する。

それを受け、若干安堵した様子で息を吐くと、そこでみほは再びタコマイクに手を当てる。

 

「では、もう一度…パンツァー・フォー!」

 

そして再度号令をかけると、全車両が一斉に前進を開始する。

 

 

 

「『Wars bring scars(戦いは傷跡をもたらす)』人はなぜ、そうまでして戦うのかしら?」

「勝利し、目的を遂げるためかと」

 

その問いかけにオレンジペコが答える。

 

「あら、随分と即物的ね」

「それと達成の方法を持たないで戦うことは、自身の立場を危うくします」

 

オレンジペコは短くダージリンの問いかけに答える。

 

「今の我々のように、まあ手厳しい。さすがはみほさん。うまくプラウダと分断されてしまいました」

「改めて言いますが、油断しすぎかと…」

 

オレンジペコは敵が接近している状況で少しダージリンの余裕さにジト目を向けたくなる。

 

「ここでしか咲かない花がある」

 

その時、砲手のアッサムが言った。

 

「件の大洗廃校騒ぎのとき、生徒のひとりがそんなことを口にしてたそうです」

 

彼女は五十鈴が口にした言葉の意味を想像する。

 

「仲間の大切な場所を守るため。

あちらの隊長はさしずめそんな凛たる一輪ではないのかと」

 

そこで照準器の外にいるであろう、今年の優勝校の立役者を想像する。

その少々あどけなさが残っていた頃の顔を思い出すと、ダージリンは目を閉じてそっと小さく笑みを作った。

 

 

 

「前車停止!」

 

みほの一声で全ての車両が停車をすると、そこで一斉に他の大洗所属の各戦車長から無線が入る。

 

『アヒルチーム攻撃準備完了!』

『うさぎチーム、準備OKです』

『大丈夫だにゃー』

『砲撃準備よし』

『射撃準備完了!』

『始めちゃっていいよ〜』

 

包囲していた各車両からの連絡を受け、みほは別働隊に確認をとった。

 

「大洗・知波単連合の攻撃部隊の準備整いました。守備隊の状況は如何なってますか?』

「ジワジワ来てるよー。え〜っと…」

 

その質問にナカジマが足元にいるホシノを見た。

 

「あと五分ってとこかな?」

「あと五分だって」

 

ホシノの返答にナカジマはそのままみほに伝える。

現在、レオポンさんチーム(ポルシェティーガー)率いる別働隊は他の大洗所属の戦車と知波単学園の戦車二両を率いて坂を登ろうとするプラウダ高校部隊を押さえ込んでいた。

 

「でも、どっちにしてもそんなには保たないからね~」

『了解』

 

そこで確認を終えると、みほはタコマイクに手を当てる。

 

「すぅ…攻撃開始!」

 

直後、一斉に包囲網に参加した全車から砲撃が開始された。

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