鉄の雨がダンジョン内に降り注ぐ。
モンスター達はソレを認識しようとする瞬間、もしくはした瞬間に既に肉塊になっていたのだ。
もし彼らに心なんてものがあるのならこう言っているのだろう。
(なんだあの人間は!?)
(知らないよ!あんな武器ィ!!)
(ぎゃああああ!!!)
しかして悲しいかな、彼らに心なんて上等な物は持ち合わせていないのだ。
Q.僕達は何のために産まれたのですか?
A.我が祖国の尊い礎になってもらう為です。^ ^
そしてそれはモンスターだけではなく冒険者もそうだった。
長めの探索終わりにヘトヘトになった所で大統領がブーストを吹かしながら突っ込んできたら何を思うだろうか?
「も、モンスターだ!?新種だ!」
「戦闘準備!!」
「む、私の邪魔をするのか…テロリスト共め!」
そう言い剣や盾を構えどももう遅い。
それより早く引き金は引かれているのだ。
無数に飛んでくる弾丸に身体の何割かが弾けるように消し去り、トドメは既に刺されているのだがついでと言わんばかりにロケットランチャーがその遺体を消し炭にする。
いかなる冒険者であれど科学と暴力と大統領の三拍子が揃ってしまえば塵芥に等しいのだった。
「うぉぉおおおお!!」
大統領は理解していた。
この地はアメリカではない事を。
この地に生きる人間はアメリカを知らない事を。
この地には人々の暮らしを脅かすモンスターが蔓延って居ることを。
ならばアメリカ合衆国大統領として何をするべきか!
そう!!アメリカは健在!という事を世に知らしめる事である。
幸い共に信じ、頼りあえる友人もいる。
アメリカとはその地の名だけではなかったのだ。
その心の在り方なのだった。
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「あああああぁぁぁぁ!!!!」
ナイフを振る、振るう、震う。
筋肉の繊維がプチプチと嫌な音を立てる。
それでもナイフを振るうのを辞めない、辞められない。
「簡単だよ。弱い自分を何度も殺すんだよ」
あの時の621の顔は無表情ではあったが。その目の奥には悲しみの感情が強く読み取れた。
きっとあの人は僕みたいに弱かったのだろう。何度も何度も挫折を味わってきたのだろう。何人もの大切な人の死を目の当たりにしたのだろう。
きっと僕にそんな思いをして欲しくないからそう言ったのだろう。
迫り来る影のようなモンスターを狩って狩って狩りまくる。
あの返り血を恥と思わないような強さが…あの人混みを針の穴を通すような足さばきができる速さが…王のような貫禄を出したカリスマが…強さを手に入れても弱者を気にかける優しさが…僕には無い全てが…欲しい!
そうして僕はガムシャラに戦っていたが暫くすると周りのモンスターは居なくなっていた。
「ま、まだ…だ」
そうして先に進もうとすると頬の横を何かがチュン…と掠めた。
「え?」
疲れから来る倦怠感とか、目眩とかその他諸々の全てが吹き飛んだ。頬から垂れる血が、全身が、警告を放っている。後方の闇から歩いてくるのは僕なんかが戦っていい相手ではない。
逃げる?また?何回逃げるんだ?命の為に無様を晒すのか?でも…そう迷ってる内にアレは出てきた。
「ふも!」
「ほえ?」
それは人間大のネズミ?のような生き物?だった。
兎に角?が付きまくるソレの持つインパクトに戸惑うも全身の五感がソレの持つ情報を集めようとしている。
「ふも!ふもももっふ!ふもも〜」
「はぁ…」
「ふも〜〜!!!」
手に持つ武器から光と爆音と有り得ない速度の何かが放たれる。本能が全力で警鐘を鳴らしたお陰で咄嗟に身を伏せた為なんとか躱せた。
「ふも!!」
謎の生物が指差す方向を見ると壁に文字が刻まれていた。
「ボン太くん…?」
「ふもっふ〜」
満足そうに頷くボン太くんはその後僕と戦いまくった。恩恵を得た人間の動きとは思えない程の有り得ない機動力で僕の視界から消えたと思ったら後頭部を殴られたり…ひたすら爆弾を投げられたりと散々ボコボコにされた。唯一の救いは命までは取られなかったと言う事だった。でもしかし、一瞬でも気を抜こうものなら爆破に巻き込まれたり、放たれた凶弾は身体を掠めたりと僕が可能な限り躱せるように手加減されていた。
ボン太くんの特訓?が終わる頃には彼の言葉を理解出来るようになっていた。
「ふもっふ!(まだ足んぞこのウジ虫め!!だが、これまでの努力を否定するつもりは毛頭ない!今日の自分を誇りに思え!!だが明日はもっと上を目指せる筈だ!)」
「サー!ありがとうございました!!教官!」
ボロボロの更に上を行くグログロになった僕はヨロヨロと半ば意識を失いながらダンジョンから出た。
朝日は既に登り始めて、神様を待たせてしまった事を心の中で謝りながらホームへと戻る。
「ベル君…!」
ホームに着いた頃にはもう足に力は入らなくなり神様に抱き抱えられるようになった。
遅くなってすみません。
1人にさせてすみません。
頭の中には色々な謝罪の言葉が駆け巡るが僕は心の中に強く宿る言葉を吐き出した。
「神様…僕、もっと強くなりたいです」
そう言い残した僕は全身に力が入らなくなるのを感じ取った。
神様にズルズルと引き摺らせてしまっている感触と薄らとしか開かない瞼に映るボン太くん教官に看取られながら意識を手放した。
後悔はしてないよ