透き通る世界には放射線が無いから寝る 作:キングサクシャ
ゴジラ覚醒
気分が良かった。まるで温かい春の陽気の中でふわふわの布団に包まれているかのような心地よさ。
いつからこうしていたのだろうか、いつまでこうしているのだろうか。そんな考えが過ることもあったが、そういった考えは決まって心地良さの中に消えていった。
最早自分が何者であったかのすらも溶けてしまって、それを恐れる心すらも溶け切った。
ああ、気分が良い。本当に気分が良い。
だから――今この瞬間、俺の心地良さを邪魔する騒がしい上の奴らに激しい怒りを覚えた。
人が良い気分の時に上で騒がしくしやがって、全くクソ野郎が居たもんだ。
心の底からの怒りと、邪魔なクソ野郎を殺せとうるさい本能に身を任せ、大きく口を開き騒音の主へと向けた。それと同時に背中に熱が宿り、喉奥から何かが溢れる。
ふと、目が開いた。それと同時に俺という自我が心地良さの中から析出する。
どうやら俺が居た場所は水晶か何かで出来た洞窟だったようで、ギョロリと周囲を見渡せば周囲はキラキラと輝いている。
ふと目を正面に向けた。自分の真正面の天井に映っていたのは大きな尾を生やし、その尾から背中に続く大量の棘を青く光らせて、オマケに大きく開けた口の奥から青い光を漏らす巨大な化け物。
なるほどな、つまり俺って――
『ゴジラじゃねぇええええええかあああああああああああああああ!!!!』
そんな叫びと共に、怒りの放射熱線が洞窟の天井をそこに映る俺の像ごと貫いた。
広大な砂漠のど真ん中で、梔子ユメは絶望していた。
既に体力は底を尽き、銃も盾も満足に握ることは出来ない。
自身の目の前で大口を開ける白蛇を前にして、このまま自分は何の抵抗も出来ずに死んでいくに違いないと、そうユメは確信していた。
「また迷惑かけちゃうな……ごめんね、ホシノちゃん」
最期の瞬間、目を閉じて思い浮かべたのは自身の唯一の後輩。また迷惑をかけてしまうと、自分よりも後輩のことをユメは気にかけていた。
――故に、荒ぶる神の化身は彼女の前に現れる。
「ッ!!」
最初にユメが認識したのは文字通り地を割る程の地響きだった。唐突なそれに思わず目を開けば、先程まで彼女を殺めようとしていたはずの白蛇が身を捩じらせ、何かを避けようとしているように見えた。
次にユメが認識したのは砂漠の地面からただ一筋、天まで伸びる青い光。それは白蛇の腹部分を掠めて抉り取り、空に僅かに散っていたいくつかの雲を余波のみで消し飛ばした。
「……へ?」
フッっと消え去った青い光の残した大穴を見て唖然とするユメを放って、白蛇は逃走は不可能と判断したのか自身の持てる全ての火力をその大穴へと投射した。
「わっ! わわわッ!?」
その圧倒的火力は余波のみでユメを軽く飛ばすほどであり、それを見たユメは白蛇が先程まで自分相手に本気を出してすらいなかったと知った。
そして、その白蛇の本気の火力を突っ切って巨大な黒が白蛇の首に嚙みついた。
「あ、あれって……恐竜!?」
砂煙と爆炎の中を突っ切って現れたのは巨大な黒い恐竜だった。それは一直線に白蛇の首へと噛みつき体格差をモノともせずに振り回していた。
『GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!』
白蛇から口を離した巨大な黒い恐竜は、何かが軋むような巨大な鳴き声を出しながら両腕で白蛇の口をこじ開ける。
抵抗する白蛇を難なく押さえつける巨大な黒い恐竜は、その巨大な尾の先から背中にかけて生えた棘を青く光らせる。
『GOGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』
「ええぇッ!?」
そして、こじ開けた白蛇の口へと先程の青い光を吐き出した。
そのあまりの残虐ファイトに思わずと言った様子でユメが声を上げたが、当然それでその残虐ファイトが止まる訳も無く。結局白蛇の動きが止まってようやく巨大な黒い恐竜は青い光を吐き出すのを止めた。
巨大な黒い恐竜が白蛇から手を放し、脱力して動かないそれを踏みつけて大口を空に向ける。
『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!』
勝利の咆哮は空気を揺らし、あまりの熱でガラス化していた大穴周辺の大地を砕いた。
10秒ほど咆哮を続けた巨大な黒い恐竜は、やがて口を閉じて訝し気に周囲を見渡す。
「あ」
『GA』
そして、ユメと巨大な黒い恐竜の目が合った。
ヤッベェやっちまった。自分がゴジラになってたことへの混乱と睡眠(?)を邪魔された怒りでよく解らん怪獣をぶっ飛ばして気持ちよくなってるとこをあろうことか少女に見られてた。
気分はカラオケで気持ちよく歌ってる時に店員が入って来た時のモノに近い。妙な恥ずかしさを感じる。
正直今にでも逃げたしたい気分だが、ふと目の前の少女が負傷していることに気付いた。
ふむ……ゴジラとなった俺から見てもこの砂漠は広大で、その砂漠で足を怪我した1人の少女を放っておくとどうなるか……
『これ見捨てたら死ぬな??』
「ひぃん……」
俺に食われるとでも思っているのか、目を閉じてプルプルと震えている少女。ちょっとこれを見捨てるのは一般的に考えても目覚めが悪いかなって。
しかし如何せん怖がられている。これじゃあ助けようと思ったって助けることは出来ない。
いや、むしろ俺以外にも怪獣が居るこんな砂漠に来られないようにちょっと脅かしてみるのも良いかもしれない。その方がこの少女の為にもなるだろう。
『てなわけで、ちょっといただきます』
パクリと地面にへたり込んでいた少女を口に入れて、さて近くの街へと向かって走る。
こんだけ人間みたいに走れるってことは俺はモンスターバースのゴジラなんだろうな、なんてしょうもない事を考えながらね。
巨大な体ってのは便利なもので2桁キロメートルだってあっという間に駆け抜けてしまった。これが力か……
そんなくだらない考えは置いておいてと。前傾姿勢になり頭を下げて、ペッと口の中から少女を吐き出す。目を回しているし多少怪我は悪化したかもしれないがまぁ、ここまで連れてくれば無事に帰れるだろう。
……帰れるよな?
やけに人の居ない街。俺が来たから逃げたのかと思ったが、この寂れ具合を見るにそもそも人が居なかったのではないか?
そうなるともうちょっと街の真ん中……人が居るところに運んだ方が良いかもしれない。
そう思い再び少女を口に入れようと口を開け――
「ユメ先輩から離れろ!!!!」
『イッてェ!?!?!?!?』
突如右目に走った鋭い痛みに思わず体を起こし見えない右側へと尾を振った。咄嗟に尾の軌道を上に逸らしたので下手人にこそ当たらなかっただろうが結構な量の建物を吹き飛ばした気がする。
まぁ、さっき見た感じ近くに人間は居なかったから大丈夫なはずだ。
問題は俺の右目を撃った下手人。
さっきの発言的にこの少女の後輩なのだろうから……後輩ちゃんと呼ぼう。その後輩ちゃんの手に握られているのはショットガンで、それで仮にもゴジラである俺の目をぶち抜いたことにちょっとした恐怖を覚える。
『とはいえ迎えが来たようなもんだし、もう一回口に含む必要はなさそうで良かった』
俺だって今はちょっとゴジラだが、これでも華の男子高生。推定同年代の異性を口に含む趣味も性癖もない思春期なのでちょっと恥ずかしいのだ。
てなわけでクルリと砂漠方面へと振り返り、行きとは違いゆっくりと歩く。これが砂漠じゃなくて海だったらゴジラらしく海に泳ぎながら消えていくなんてことが出来たんだがね。
『はぁ……にしたってあの痛み、夢じゃねぇよなぁ』
ゆっくり歩いているとはいえこの歩幅だ、すぐに彼女達からは離れることが出来た。そこでふとこれから俺はどうすればいいのだろうという考えが浮かぶ。
『ま、なるようになるか』
とりあえず熱線吐いて疲れたことだし不貞寝しよう。そう考えてガラス化した砂漠のど真ん中、俺が寝ていた場所へと続く穴に飛び降りた――あれ、穴の近くに放っておいたあの白い奴の死体どこ行った……!?
主人公:気が付けばゴジラになってた新参ゴジラフリーク。履修作品が最近の物ばかり。この度ギャレゴジをちょっとシンゴジに寄せた感じのゴジラになった。放射能が全然ないのですぐに疲れて寝るが、体長100mと小柄なので割とすぐに起きる。
梔子ユメ:砂漠で死にかけてたらヌトヌトにされた
小鳥遊ホシノ:爆音と空を貫く青い光を見て砂漠に向かったら先輩が食われかけてた。
白い奴:再生能力があって助かった。敗因はゲロビを出せなかった事。
本編への関わり
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多め
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そこそこ
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少なめ
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最低限