透き通る世界には放射線が無いから寝る   作:キングサクシャ

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ショッキングな描写注意


怪獣襲来

「たいくつだね」

 

 いつの間にやらアビドスの校舎の上に腰かけて、足をプラプラとつまらなそうに揺らす少女が居た。

 

 彼女の目に映るのは、普段よりも勢いづいたヘルメット団を相手に多少の苦戦がありつつも、途中から先生の指揮によって圧倒し始めるアビドス生という何とも王道な展開。

 

「王道は良い。ゴジラも基本は王道」

 

 けれど、王道ばかりじゃないからゴジラは面白い。多少の外しがあってこその面白さ。現実でも多少の外しがあってこそ面白いというもの。

 

 故に少女が少しだけ、王道から外してやろうと腕を上げる。

 

「だから頑張ってね、先生」

 

 ところでアビドス高等学校は、その位置関係からかそこそこの頻度で樹海からセルヴァムと呼ばれる翼竜型の怪獣が襲来する。しかし、普段襲来するそれらは大した知能を持たない精々がデコイ程度の存在で、特段命令せずとも本能のままに動くただの獣。

 

 それでは先生の、彼女達の為にならない。だから今回はしっかりと自分の指揮下に置いてある個体の内2体をしっかりと自分の意思を反映させて差し向ける。

 

「今日は私の誕生日って訳じゃ無いけど、プレゼントには勝利をお願い」

 

 そう言って少女は腕を下ろした。それと同時に空で何かが煌いて、そしていつの間にやら少女は消え去った。

 

 

 


 

 

 

「いや~皆お疲れ~」

 

 ヘルメット団が尻尾を巻いて逃げ出すのを見送って、さてひと段落だとホシノは口を開く。

 

「にしても、先生のおかげで助かったよ」

”いやいや、私のおかげだなんてとても言えないよ”

 

 多少の苦戦はあったものの結果だけ見れば圧勝。先生の指揮も的確であり少なくとも能力は信頼するに値するとホシノは判断した。ちょっとばかし謙遜が過ぎるかもしれないと付け加えつつ。

 

 こうして戦闘が終わった事による安堵と僅かながらに先生に心を許したことによって生じた僅かな油断。それによってホシノは普段なら気付けたはずのソレに気付くことが出来なかった。

 

 誰かが走る音が聞こえた。皆がそちらの方向に目を向ければ1人の生徒――制服を見るにミレニアムの生徒だろうか――が今しがた戦闘を終えたアビドス生の元へと走っていた。

 

”あれ、あの子は……?”

「ん、MONARCHの子」

 

 余りに必死の形相で走っているモノだから皆が面食らい、思わず彼女の方を見て静止する。

 

 それがいけなかった。

 

「皆さん! 伏せ――」

 

 叫び声が途絶える。グシャリと、赤が飛び散った。

 

「ヒッ……!」

 

 漏れ出た悲鳴は誰のものだったか。先程まで1人の生徒であった血肉が散乱し、それを踏みにじるようにして巨大な黒い翼竜のような”怪獣”が立っている。

 

 その黒い体はゴジラの様な質感で、背鰭を伴う尾の先に絡まった青いリボンが目を引く。

 

『GYURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 

 血に濡れたその姿は言うなれば”リボン付きの死神”。その死神へとMONARCHが割り振った識別名は”Mobius1”。かつて樹海へと踏み入った調査隊を壊滅させ、その際に犠牲になった生徒のリボンを携えた特別凶悪なセルヴァム。それが、アビドス生達へと牙を剥く。

 

「皆! 目を狙って!!」

 

 セルヴァムとの戦闘経験が豊富な方であるホシノは、後輩に指示を出しながら自身もショットガンを発砲。続けて指示を受けた後輩らも次々に発砲する。

 

 しかし、圧倒的な機動力がウリのMobius1はそれを飛び上がる事で悠々と回避し、僅かに当たった弾はその外殻に弾かれる。

 

 そうして高度を上げたMobius1は彼女達の上空で旋回飛行に入る。

 

「うへ、次の獲物を見定めてるね……」

 

 ホシノが言い終わるや否や、Mobius1は一瞬彼女達に背を向けた後に背面飛行からのピッチを上げて急降下しながらの反転――航空機においてスプリットSと呼ばれる軌道で加速しつつ反転する。

 

「狙いは……私ってとこかな」

 

 翼を畳んで空気抵抗を減らし、矢のような格好でMobius1はホシノへと飛来する。

 

 一切の回避行動をせずに一直線に飛ぶMobius1に対して大量の弾丸が命中するが、大半が弾かれて明後日の方向に跳んでいく。

 

「ホシノ先輩!!」

「大丈……夫ッ!!」

 

 衝突の直前、ホシノは横にローリングをすることによって間一髪でMobius1を回避し、無防備な横顔へとスラグ弾を発射する。

 

 近距離で巨大な銃弾が寸分違わず目の位置に命中した。にもかかわらずMobius1は何の傷を負う事もなく再び空へと舞い上がった。

 

”あの怪獣、狙いを着けてからは目を閉じてる。自分の弱点を理解してるんだ”

「さすが、識別名付きだね……皆、自分が狙われてると思ったらとにかく動き回って。そうすれば捕まることはないと思う」

「ん、分かった」

 

 これでお互いに千日手。両方の攻撃が両方に有効打を与えられない状態。

 

 しかしこの状況はMobius1が圧倒的に有利な状況だ。なにせ生物として睡眠や食事を頻繁に摂らなければならない彼女等に対して最低限のそれらで生存できるMobius1の方が持久戦は有利。

 

 とは、弱者の考えだ。

 

『GURURURURURURURURURU――GURAAAAAAAAAAAッ!!』

 

 再びの突撃、次の狙いもホシノだ。

 

 回避行動無しの愚直な突撃。先程よりも速度が落ちたその突撃には先程よりも大量の弾丸が命中し、弾かれる。

 

「このぉっ!!」

『GAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』

 

 衝突の直前、ホシノが再び横に避けようとした瞬間にMobius1は自身の翼を地面へと突き刺し強引に急旋回を行う。

 

 方向転換した先に居るのは、直前に声を上げ今も発砲を続けるセリカだ。

 

「ッこいつ音に反応して――!!」

「セリカちゃん!!」

 

 ノノミの悲鳴が上がるがもう遅く、金属の牙がセリカを穿ち、金属の足が踏みつけ――

 

『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 

 ――ることなく、鮮血が宙を舞った。

 

「ふふっ……どんな、もんよ……!!」

 

 顔に空いた穴から血と弾丸が零れだすMobius1を見て不敵に笑うのは、自身も浅くはない傷を負ったセリカである。

 

 彼女は噛みつかれた瞬間に予備のマガジンをMobius1の口に突っ込み、それに対して発砲。暴発させその勢いのまま追撃をかわしたのだ。

 

”セリカ! 下がって!!”

「うるさい! まだまだ……行けるっての!!」

 

 弾薬の少ないマガジンを投げ飛ばし、予備のマガジンをセット。至近距離故に狙うことなど必要ないとフルオートでの射撃をMobius1へと浴びせた。

 

 口内での爆発により空いた顔の大穴に複数の弾丸が命中し、1発命中するたびにMobius1の体が震え、大量の血肉が弾け飛ぶ。

 

 マガジンが空になる。弾丸が途切れる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 セリカの荒い息の音だけが周囲に響く。全員の視線が動きを止め、地に倒れ伏したMobius1へと向けられている。

 

「倒したんでしょうか……?」

 

 ノノミが呟いたその瞬間、Mobius1の顔に空いていたはずの大穴が一瞬にして塞がり、閉じられていた目が開きギョロリと周囲を見渡した。

 

”みんな警戒し――て……!?”

 

 先生が言い終わるころにはMobius1は空高くへと舞い上がり、そのまま高速でどこかへと去って行った。

 

「お、追い払ったの……? ってイタタタタタタ!!??」

「セリカちゃん!?」

「緊張が途切れてアドレナリンが切れたんだと思う……ほら、私の方に掴まってセリカ」

「うぅ、ありがとうございますシロコ先輩……」

 

 浅くはない傷を負ったセリカをシロコが運ぶ。

 

”とりあえず、私達も戻ろうか”

「はい☆」

「セリカちゃんの手当てもしないとですしね……セリカちゃん大丈夫でしょうか」

 

 その2人を追って先生とアヤネ、ノノミも校舎の中へと戻る。

 

 そして、校庭に残ったホシノだけが先程Mobius1によって命を絶たれた生徒が散乱していた()()の場所を一瞥し、先程まで校舎の上からこちらを見ていた視線の正体を察する。

 

「うへ、まだ赦してくれないよね」

 

 そんな事を呟いて、ホシノも校舎の中へと入って行った。




ホシノ:どうして私達だけが認識できるのか。

セリカ:派手に血が出た割には怪我は浅かったし跡も残りそうにないから一安心。

その他アビドス廃校対策委員:セリカは心配だったしMobius1の相手は大変だった。

”先生”:奇襲に対して十全の結果を出せずにセリカにけがをさせてしまったことを悔いている。

Mobius1:マジで大変だった。無茶振りはやめてほしい。

本編への関わり

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