透き通る世界には放射線が無いから寝る   作:キングサクシャ

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初投稿である


重い奴

「いやねぇ、確かにこちらの生徒に大いに非がある。それは認めるとも」

 

 レトロな雰囲気と現代的な雰囲気が歪に混ざる映画館。その一角に存在する小さなフードコートでジャンクフードとコーラをつまみながら、金狐の少女はむすっとした顔で少年に文句を吐き出す。

 

「確かに君は理性的だった。映像記録を見る限りでもうちの生徒はもちろん、先生やアビドスの生徒達にも危害が加わらないような立ち回りをしている」

 

 どこからか取り出したタブレットに樹海から現れるゴジラの映像を映しながら少女は続ける。

 

「そんな君に対して、背中から、不意打ちで、砲撃を叩き込んだのは、確かにうちの生徒だ……それも私の派閥のね」

 

 あぁ、当然それに関しては謝罪しよう。申し訳なく思っているよ。そう言う少女の顔はとても謝罪の気持ちがあるようには――僅かには有りそうだが、だがまぁそこまであるようには見えない。

 

 それもそうだろうな、と少年は納得している。

 

「だがね、だがねぇ……いや、流石にこれは無いだろう……?」

 

 少女の操作によりタブレットの画面がビナーと肉弾戦を行うゴジラの映像から何かの資料に変わる。

 

「何と書いてあるか読んでやろうじゃないか。”強力なEMP攻撃らしき物により現地の個人所有のスマートフォンや電子辞書を含む電子機器全てと、それらと接続していたトリニティ本校の複数の設備が復旧不能な損害を負った”だ……これに対して、何か言うことはあるかい?」

 

 明らかにキレている少女をまっすぐと見据えた少年は、胸を張り答える。

 

「むしゃくしゃしてやった。ザマァミロって思ってる」

「よし、殴らせてくれ」

 

 少女が言うや否や、少年の体が数m吹き飛び映画のチラシが置いてある棚へと着弾した。

 

 

 


 

 

 

「イテテテ……」

 

 地面に対して逆さまになってしまった体を戻す。いやぁ、自称病弱貧弱の割にずいぶんと良いモン(パンチ)を持ってんじゃねぇか。現実だったら死んでてもおかしくないぞこれ。

 

「はぁ……ほら、座るといい」

「お前なぁ……ったく」

 

 すました顔でそんな事を宣う百合園に文句の一つでも言ってやりたいところだが。俺がやりすぎた結果なのはその通りなので何も言わない。我慢出来る俺、とっても偉いね。

 

 百合園の目の前。さっきまで俺が座ってた椅子を戻してから座りなおす。

 

「いやさ、俺も頑張った方なんだぜ? お前も一緒に見たんだから知ってるだろ、あの紅い塵が出てた理由」

「知っているとも、シンギュラ・ポイントのアレだろう?」

「そう、アレ。あの時の衝撃でウルティマの成分をずいぶん強く出しちまったんだよ」

 

 百合園の手からタブレットを受け取り、再び俺の映像へと戻す。映像の個所は俺が背中を撃たれてから4分。紅塵が噴出し始めたところだ。

 

「こんとき、俺の意識が落ちかけてた。その間に終局直前まで行っちまってたんだぜ? これで俺の意識がハッキリするのがもうちょっと遅ければ……ぞっとしねぇな」

「……なるほど。映像を見てマズいと思っていたが、まさかそこまでだったか」

「そそ。んで、意識が戻った後に咄嗟にウルティマの要素をアースの方に切り替えた」

 

 映像内で紅塵が大きく空に巻き上がる。そして現れるのは地に伏す白蛇と少々恰幅が良くなった俺。

 

「そっからは紅塵が拡散する前に何とか空中高くで固めて、そのままゴジラ・アースの荷電粒子砲で綺麗さっぱり焼き払った――その余波で、周囲の電子機器が死んじまった訳だな」

 

 映像では空へと巻き上がり、直上で固まった紅塵をぶち抜く俺の姿が映り――そこで映像は途切れた。撮影機器が壊れたのだろう。

 

 自画自賛にはなるが、今思い返しても最適解だった気がする。物理法則すら大きく歪めてしまいかねない紅塵をあの量一気に焼き払うのに、ゴジラ・アースの荷電粒子砲は恐らく最適だ。なにせ、50mの段階で大陸プレートやヒマラヤ山脈をぶち抜く威力なんだからな。

 

 恐らくチキって多少威力の劣るゴジラの熱線を使って居れば、あの量の紅塵を完全に焼却するのは不可能であっただろう。

 

 そうなった場合。起こるのは局所的な物理法則等の崩壊だけ……で済めばまだ良い方。

 

 残っていた量によって起こりうる最悪はSPの怪獣達の出現だ。実際にそんな事態を起こしてしまった事はないが、自分の出来ることなんて自分が一番分かっている。残った量によっては絶対にそうなっていた。

 

「てなわけで、俺の行動は正当だと主張する。お前たちの被害は――まぁ、しょうがない犠牲、コラテラルダメージって訳だな」

「そうだね、君の言うことにも一理ある」

「百理くらいあるだろ」

 

 うお、ジト目。やめてそんな目で見ないで。

 

「ただね、私には解っているんだよ」

 

 百合園がどこぞのマダオのように腕を組み、こちらを見据える。さっきまでポテトとコーラ食べてたから威厳も圧もへったくれもない。

 

 が、まぁ、バレてんだなって確信は持った。

 

「君、電磁波に多少の指向性と強弱を持たせただろう?」

「うーん、正解」

「よし、今から君を殴る」

 

 あ、ちょごめ――

 

 

 

「――さっきも見た光景だよこれ」

 

 また世界が逆さまである。俺以外の全てを逆さまにするとは……百合園、侮れない奴だ。

 

 冗談は置いておいて、また頑張って起き上がる。

 

「全く、君って奴は本当に……」

「だってさぁ、こっちが頑張って巻き込まないように。なんならあの白蛇から守ってやったってのにさぁ……背中からいきなり撃たれてそのせいであわや宇宙滅亡だぜ? ちょっとくらい八つ当たりしたって良いだろ?」

「……まぁ、そうだね」

「だろ?」

 

 お、これは勝てるか?(椅子に座りなおしながら)

 

「ただその結果全く関係ない私の精神と胃にダメージが来てるのが問題なんだ」

「それは……ごめん」

「うん。私の方も2度もぶってすまなかった」

「そうだな、親父にだってぶたれた事無いから堪えた」

 

 お互い謝罪。仲直り!

 

「それはそれとして」

「おう、急だな」

「私の記憶違いじゃなければゴジラ・アースは存在するだけで強力な放射能汚染を引き起こし、その熱線もかなりの放射線を発していた気がするのだがそこらへんは大丈夫なのか?」

「急な転換の割にいい質問だ。そうだぞ」

 

 ゴジラ・アースの歩いた後には生物は何も生きられない。そんなレベルの放射能汚染が起こるのは作中で判明していた。

 

「だが安心しろ、レジェゴジの成分をいつものように入れてたからな。自分で出した放射線は全部吸収したさ。SDGsって奴だな」

「君は一度SDGsという概念に謝るべきだと思うよ」

 

 自分で出したものを自分で取り込む、究極の自給自足です。今の俺は周囲に放射線バラまく余裕なんてないから仕方が無いね。

 

「っと、そろそろ私の方は起きなければならないようだ」

「そんな時間か、早いな楽しい時間ってのは」

「っ……君は本当に……はぁ」

 

 百合園が額に手を当ててため息をつく。なんだよ。

 

「まぁいい……そういえば、今の君は寝ている状態なのか?」

「当たり前だろうが。あんだけ消費したんだ、しばらくは大人しく溜め込むターンだぜ」

「なるほど……それならしばらくは胃を痛める心配がなくて良さそうで助かるね」

「なんだぁ、テメェ……」

 

 喧嘩か? 買うぞ喧嘩。劇場内だと勝てないけど現実だったら熱線で一発なんだからなお前なんて。

 

「おっと、ミネがうるさい。そろそろ起きるとするよ」

「あいあい」

 

 百合園が席を立つ。向かう先は映画館の出口だ。

 

「そうだ、最後に聞かなければな……」

「君は、誰だ?」

「分かりきってるだろその答え。あいにく、俺は(███)だ」

 

 振り返りもせずに映画館の出口へと百合園は向かう。全く諦めの悪いこった。

 

 

 


 

 

 

 ミネの背を見送り、ホッと一息つく。目が覚める直前に彼が--おそらくは無意識に呟いた言葉は、私にも聞こえていた。

 

「いいや、私は諦めの良い女だ」

 

 予知夢のせいか、昔から諦めるということに私は慣れていた。今もそれは変わらないだろう。

 

「ただ、それ以上に私は乙女なのさ」

 

 こっちは花の女子高生だ。初恋を諦められないのは当然だろう?

 

「目的は変わらない。彼を彼で居させなければならない」

 

 全く困ったものだ。恐らく私と大して年齢も相違ない癖に彼の覚悟は重すぎる。

 

「まぁ、やるだけやってやろうじゃないか」

 

 何も暗躍してるのは彼だけじゃない。彼の暗躍を手伝う私も、当然ちょっとした仕込みをしている。私も大概重いぞ、覚悟しろよ大バカ野郎……ってね。




彼:覚悟が重い男。割とギリギリでゴジラの本能に抗っている節がある。好きなジュースはりんごジュース、炭酸は飲めない。

百合園セイア:愛が重い女の子。花も羨む女子高生。色々と暗躍してる彼の暗躍に乗っかりつつ自分も暗躍してる。具体的には、今の彼女に表から情報が回って来ている時点でそう言う事である。

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