透き通る世界には放射線が無いから寝る 作:キングサクシャ
放射線が足りない……!!
『俺、圧倒的放射線不足……!』
昆布とか昆布とか、それと昆布とかを食べて申し訳程度に放射線を摂取して。それ以外の時間はずっと地下で寝るという生活を続けてしばらく。どうしたって放射線が足りない。
あまりにも放射線が足りないので最近はゴジラにあるまじき朝起きて夜寝るという人間っぽい生活リズムなってしまっている。
とはいえ、最近は火山の地下までトンネルを掘れたおかげでかなりマシにはなっては来ているのも事実。この星が地球かどうかは分からないが、この星のコアからのエネルギーの補給経路を確保できたのはかなりデカい。
しかし、そこまでしてもやっぱりエネルギーが……放射線が足りない。
『核爆弾とか、原子力発電所とか……なんかそんなもん無いもんかね』
恐らく俺と同じような体の構造をしているであろうモンスターバースのゴジラが、爆発的にエネルギーを補給していた2つの手段を思い出す。この2つのどちらかがあれば数年単位で活動できそうなものだ。
まぁ、あちらこちらトンネルを掘ってる時に探った感じはそんなもん無かった辺り、この世界にそんな危険物は無いのだろう。
あの白い奴といい、放射線が全然ない事といい……ちょっとこの世界おかしい気がする。
この前滅茶苦茶ミサイル攻撃を受けた辺り、そういった兵器が必要ないほど戦争が起こらない平和な世界ってワケでも無さそうなんだが。
『ようわからん世界だよ本当に』
まぁ、そんな世界だからこそ俺みたいな存在が許されているのかもしれない。
もし仮にここがモンスターバースだったとしてみよう。俺は絶対アルファタイタンになれる気がしないし、現代まで生き残ることは不可能だと断言できる。
俺が住んでた世界でだって……いや、モンスターバースゴジラならあの世界だと余裕で生き残れそうだな、
――そういや、この世界に俺以外のタイタン……怪獣って居るのか?
『今まで考えてもみてなかった可能性にぶち当たったな……』
普通に考えれば、居るだろう。生命とは生態系の中に成り立つ存在であり、それは
となればこの世界にも俺以外の怪獣が居ると断言できそうだ。
しかし、こうして無い頭必死に使って考える理性では無く、普段から俺を振り回す本能を信じるのなら。今度は逆にこの世界に俺以外のタイタンは居ないと断言できてしまう。
なんと言うか、自分が圧倒的に頂点だという確信が常に本能から湧き出てくるんだよな。王たるもの慢心せずしてうんたらかんたらってやつなんだろう、多分。
『それにもし仮に居たとしてもこんな世界じゃ俺と同じでエネルギー不足でぶっ倒れてるだろうし、そんなに心配する必要も無いな』
昆布食って火山からコアのエネルギーを引いている俺ですら人間的な生活リズムを維持してようやく体感で放射熱線5回分くらいのエネルギーを溜め込めたくらいだ。他の怪獣とかもっとエネルギー無いだろ、多分。
そう考えると安心感あるわ、やっぱり他の怪獣のことは気にする必要ないな、うん。
『となるとやっぱり目下の課題はある程度連続活動できるエネルギー源だよなぁ……』
結局話題が最初の所まで戻ってしまった。もういっそ俺の真上とかで核爆弾起爆してくれねぇかな。そしたら元気一杯になれるんだけど。
そんなクソ危ない事ことを考えていると、不意に動かしていた手に感じていた岩とか土の感触が軽くなる。おっ! っと思い軽く目の前の岩盤に体当たりをすれば、ガラリとそれが崩れて視界に光が差し込んできた。
『っと、無事にトンネル開通!』
ようやく3本目を掘り終えた。ただひとすら本能に従って穴を掘るだけの簡単なお仕事辛すぎる。毎度毎度掘ってる時暇すぎるんだよなマジで。
とはいえ今回掘った距離は体感的には俺の生息地である砂漠の中に出るくらい短い距離だっただけマシか。
火山までの掘削デスマーチは辛かった。
『さてさてどんな風景が待ってるか――うおっ眩しい!!』
最初は昼間だと言うのに地上に太陽が出来たのかと見紛うほどの閃光が世界を覆った。突如出現したその閃光に驚愕した人々は、次の瞬間には爆音と共に到達した衝撃波に体を押された。
それは自身を助けてくれた化け物へのお礼を言いに来たユメと、その行動の阻止に失敗し無事に付き添いにされたホシノ達にも襲い掛かった。
「うひゃぁ!?」
「大丈夫ですか先輩!?」
爆音に驚きそのまま衝撃波で転んだユメをホシノが引き起こす。2人の視線の先には、巨大なキノコのような煙が広大な砂漠のド真ん中に立ち昇る異様な光景が広がっている。
「なに、あれ……」
「ッ行きましょう先輩!!」
何か胸の奥にザワつくモノを感じた2人は砂漠を駆ける。その2人の頭上を”KAISER PMC”と描かれた戦闘ヘリが追い越していった。
「見えるか?」
「いや、煙が酷くて見えないな」
「こうも動きが見えないんだから死んだんだろう、ゴジラザウルスってヤツも生き物だったってワケだ」
爆心地からそこそこ離れた位置、そこには”KAISER PMC”と描かれた兵器が砲身を爆心地へと――爆心地に居るはずのゴジラザウルスへと向けていた。
戦車に装甲車に戦闘ヘリ、2脚の人型兵器。そういった兵器に乗っていないオートマタ達も対物ライフルや対戦車ミサイル等の火器をゴジラザウルスへと向けている。
「死蔵してた小型核弾頭を贅沢に5発だぞ? 死んでるに決まってる」
「そうとは言え上層部の命令は絶対だ、あと3時間は監視を続けなきゃならん」
それにしたってたかが1匹の生き物相手に核兵器5発だなんて過剰だな、とオートマタ達は話を続ける。砂漠の大蛇相手にも使わなかった核兵器、それを5発も使うだなんて上層部の基盤がいよいよ焼き付いたのかもしれないと彼等は笑った。
こうして談笑ほどに気が抜けている、それ故に彼等は気付かない。
上層部の命令でここに来る前に持たされたフィルムバッチが一切変色していない事にも、設置されたガイガーカウンターが一切の放射線を検知していない事にも。彼等は気付けなかった。
『――――――――――――』
空腹状態であった彼の体に突如供給された過剰なエネルギーは体内を回り続けることで僅かな安定状態を得る。しかし、その安定状態から焙れてしまったエネルギーは皮膚を焼き、熱エネルギーへと変換されて周囲へと放出される。
しかし、彼は欲張る。周囲の放射線すらすべて吸収し、悲鳴を上げる体なぞ無視してエネルギーを無理矢理抑え込む。
「隊長! 警備隊の連中がこっちの方に来てる2人の生徒を発見したと――」
「――おい、これは何の音だ……!?」
やがて、どこか機械的な音が周囲に響き始めた。
その音がボルテージを上げるにつれて、ゆっくりとメモリを刻むかのように青い光が煙の中で伸びていく。
「ガイガーカウンターに反応!?」
「いや、むしろなんで今まで反応しなかったんだよ!! 教えはどうなってるんだ教えは!!」
「ん……? おい、なんだよあの光ッ……!!」
「この寝坊助が!! 今すぐあの光に銃口向けて引き金に手をかけろ!!」
突如起こった異変にオートマタ達は一瞬混乱する。しかし、彼等は腐っても民間軍事会社の軍人だ。すぐさま冷静に青い光を目印に狙いを定めた。
青い光が登り切り、その光に照らされて巨大なシルエットが煙に映る。
「あれ、あの青い光……あぁッ!!」
「どうしたんですか先ぱ――」
「伏せてホシノちゃん!」
「――モガァッ!?」
巨大なシルエットの尾が煙を斬り裂き、口から青い光を覗かせたゴジラザウルスが煙から飛び出した。
『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「撃て!!」
ついに完全にゴジラザウルスを目視したオートマタ達が引き金を引いた。
APFSDSや対戦車ミサイル、対物弾に30㎜を超える機関砲にダメ押しの対空ミサイル。様々な種類の殺意を込められた大量の火薬と質量が2000mの距離を飛び越えてゴジラザウルスへと殺到する。
最初に到達したAPFSDSが顔を中心に命中し、無情にも弾かれる。次に到達した対物弾と機関砲弾も全身に命中したが、当然弾かれる。
最後に殺到したミサイルは爆発とその煙でゴジラザウルスを飲み込んだが、程なくして健在のゴジラザウルスがその中から飛び出してくる。
「ダメです! 全く受け付けません!!」
「怯むな! 2射目を叩き込んでやれ!!」
オートマタ達と兵器が2射目をゴジラザウルスへと発射する。同時にゴジラザウルスが背負う背鰭の青い光、そのボルテージが最高潮に達したことを鳴り響く音がけたたましく知らせた。
自身に向かい来る大量の火薬を前にゴジラザウルスは足を止め、地面を踏みしめて――
「避けろ――!!」
『GRUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
――2射目の砲弾やミサイルごと、自身の敵対者を薙ぎ払った。
一瞬で地上に展開していた大量の敵対者を消し炭にしたゴジラザウルスは、すぐさま空中に浮いている戦闘ヘリへと狙いを定めて放射熱線で横薙ぎする。
ヘリの背後にあった廃墟ごとヘリを両断した放射熱線は、全ての敵を消し炭にしてようやく終息した。
『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
敵対者を殲滅した上でギリギリ制御できるレベルで有り余るエネルギーに、思わずテンションが爆上がりしたゴジラザウルスは勝利の咆哮を響かせる。
「……もう、大丈夫かな」
ゴジラザウルス大暴れによって生まれた軽めの砂嵐によって、大量の砂を被ったユメとユメに庇われて軽く窒息しかけているホシノが砂を落としながら起き上がる。
「ぷはぁッ!? し、死ぬかと思いました」
「うんうん、何度見ても恐竜さんのビームは怖いよね」
死ぬかと思ったのはそっちじゃないんだよなぁ……という顔でホシノはユメを見る。
「全くもうこの人は……あれ、ユメ先輩頭にゴミが着いてますよ」
「うぇ!? あ、本当だ。これは……写真?」
起き上がって体に付いていた砂を落としていたユメは、ホシノに言われて自身のアホ毛に突き刺さっていた写真に気が付いた。それを手に取って見てみれば写っているのは背景こそ海ではあるが今と同じく咆哮を響かせているゴジラザウルスの姿。
恐らくオートマタ達が所持していたのであろうそれは、放射熱線によって大きく焼き焦げており僅かな部分しか見る事が出来ない。
「裏側、何か書いてありますね」
「えっと裏側……GODZILLA?」
ホシノの言葉に、ユメは裏側を見て書かれている言葉を読み上げる。
「ゴジラ、でしょうか」
「へぇ~ってことはあの恐竜さんってゴジラって名前だったんだ……じゃあゴジラさんにお礼しに行こうか!」
「この惨状を見てからそんな事が言えるなんてお気楽にも程が――って待ってください先輩!!」
ゴジラに向けて駆けだすホシノに追うユメ。そんな2人の声を聞いて2人に目を向けるゴジラ。
『GUUUUUUUUUUUUUU……』
当然ゴジラは明らかに困っている。前のように口の中に入れて安全な場所に吐き出そうにも今は熱線を吐いたばかりで口の中の温度はアホみたいに高い。
こんな状態で口の中に彼女達を入れれば大昔の処刑器具のようになってしまう事は想像に難くない。
『GAAAAAAAAAAAAAA……!!』
故に選ぶのは逃走! 流石に自分に敵対もしていない存在を殺すのは彼の理性が許さない! 本能も無視してええやろ判定を出しているからゴジラ的にもセーフ!
「うへっ!?」
「ひぃん!?」
走り出したゴジラは2人の頭上を跳んで避けて、そのまま核でズタボロになったトンネルに飛び込む。モンスターバース版のゴジラ特有の身体能力があっての動きである。
そうして、ゴジラはこの世界においてもゴジラという名前を受け取った記念すべき日に、2度目の逃走をキメたのだ。
██/██/██
ゲヘナ、オデュッセイア、アビドスと遠く離れた位置に出現したことから巨大不明生物は複数体存在すると推定される。連邦生徒会は正式に調査チームを編成、現在詳しい生態を調査中。
██/██/██
アビドス砂漠から様々な場所へと繋がる巨大地下トンネルを地質調査チームが発見。これにより各地で出現した巨大不明生物が同一個体である可能性が浮上。
██/██/██
正体不明勢力が巨大不明生物へ攻撃を開始。5分後に巨大不明生物を中心に半径13km、中心角60度の扇状に放たれた攻撃により全高89m以上の建造物が溶断。複数の自治区に被害。
これらの被害は正体不明勢力が保有する空中戦力への攻撃の際の余波であると推測。
██/██/██
巨大不明生物の体格や攻撃の破壊力から、例え巨大不明生物がこちらに敵意が無い場合でも危険度は非常に高いと調査チームは連邦生徒会に報告。
また、追跡調査により巨大不明生物が一個体しか存在しないことを確認。
██/██/██
被害を受けた学園を中心に複数の学園が巨大不明生物の駆除作戦に合意。連邦生徒会主導の駆除作戦を始動。
なお、アビドス学園は軍通のみの合意で作戦自体には合意せず。
██/██/██
巨大不明生物、タイタヌス・ゴジラと命名。以降ゴジラと表記。
ゴジラ:本能に言われるままにトンネル掘ってたら核攻撃受けた。眩しかった。核攻撃を受けるゴジラというテンプレを今回達成した。
カイザーPMC:本職だから普通に有能ではあった。対怪獣の戦術練ってればワンチャンあったかもしれない。砂漠のど真ん中だしビナーやってるしで躊躇なく最大火力を打ち込んだ。体裁上は自分達はやってない事になっている。
ホシノ:先輩の先パイで窒息しかけた。なんとなくゴジラが自分達を避けているような気がしている。
ユメ:恐竜さんの名前が分かって一旦満足。今回はゴジラに気付かれなかったので今度は気付かれるように何か目立つ物でも持って来ようかなって思ってる。
連邦生徒会:流石に駆除です。
本編への関わり
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多め
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そこそこ
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少なめ
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最低限