透き通る世界には放射線が無いから寝る 作:キングサクシャ
「ホ、ホシノちゃん大変!!」
学校の始業前の時間に、ユメの悲鳴にも近い声が響き渡る。
「こんな朝からなんですか先輩……」
「オアシスがッ! オアシスが湧き出て砂漠が砂漠じゃなくなっちゃったの!!」
「……は??」
朝っぱらから聞かされた衝撃的な事実にホシノは一瞬フリーズする。しかし普段から振り回されているだけはあり、すぐに再起動してユメの手を取って言う。
「どこですか連れて行ってください!!」
厄介事を回避するために逃走してちょっと不貞寝してまして、起きたら水の中に居て溺れ死ぬかと思ったでござる。
いや、寝なくても平然と活動出来るレベルまでエネルギーを蓄えられたけどさ。それはそれとして無駄遣いしたい訳では無かったんだよね。
だから今日も今日とてグッスリ寝てたらいつの間にやらインザウォーターだった訳ですよカスが。
『ふざけた寝起きドッキリだよな、マジで』
全くマジで俺にエラが無ければ即死だったんだぞこんにゃろ。
さて、この突如現れた大量の水であるがどうやら俺の巣のさらに下の帯水層から湧き出た物のようだ。
どうして急に、と聞かれれば恐らくは俺の有り余るエネルギーが原因なのだろう。
モンスターバースのタイタンには周囲の環境を自然(正確には自分の暮らしやすい環境)へと近づける能力があったはずだ。恐らくエネルギーが戻ったことでその能力が始動した結果、その能力が帯水層から大量の水を吐き出させたのだろう。
ほら、ゴジラと言えば水だし。
『まぁ、にしたってトンネル一杯の水は出すぎだろ。地上にまで溢れてるぞこれ……』
もしかしたら今までに堀ったトンネルにもこの水によって崩落している所があるかもしれない。見回りしなきゃなあとで。
『まぁとりあえずあれだ、地上の様子を見に行こう』
楽な事から終わらせようと考えて、長いトンネルを見て回るよりは垂直に上るだけの方が楽だと結論を出した俺は巣から地上へと勢い付けて浮上し始める。マイナスワンのゴジラと違ってモンスターバースのゴジラは水圧変化もへっちゃらだぜ!!
水の中に居るからかテンション高めで浮上し続けていると、ふとトンネルの壁の色が昨日とは変わっていることに気が付いた。地上に近付き明るくなるにつれて、それが今までの砂岩層では無く土っぽい物であるという事に気が付く。
これはもしかして――と思った所で俺は水面を突き破って地上へと顔を出した。
俺に巻き込まれて空へと昇った水飛沫が落ち着くのを待って、ゆっくりと周囲を見回せばトンネルを中心に半径1km程の歪な円形に広がった巨大な湖が目に入る。
それでも大分やっちまった感はあったが、ダメ押しと言わんばかりにその湖の周囲には緑豊かな草原がそれなりの広さに広がっている。
『やっべぇ、すっごい緑化してる……』
脳裏に急激な環境変化による生物への影響とかがスゥっと過るがもうこれは不可抗力だよねと自分に言い訳して体を湖へと沈める。
軽く俺が悠々と泳げるほどの水深がある湖を泳ぎながらしっかり周囲を探索する。知識が無い俺でも、俺以外の生物こそ今は居ないがこの湖周辺の植物も土もハリボテなどでは無くしっかりとした物であることは分かった。
いやぁ、にしてもあれだな。やらかしておいてなんだけどこれはこれで結構俺暮らしやすくなるな。トンネルの中歩くよりも泳いだ方が早いし、なんか水中って居心地が良いからマジで助かる。
『いよっこらせと』
周囲の探索を終えてちょっと現実逃避したくなってきたので、身体を湖に沈めたまま頭を陸地に乗せてゆったりとした姿勢……具体的にはMUTO倒し終わったゴジラみたいな姿勢を取る。
あ~……良いなこれ。水に入ってるからかすげぇ落ち着くし、日差しがポカポカ(ゴジラ基準)して凄く眠くなる。
とりあえず、一旦気持ちよく昼寝でもするとしよう。そう俺が思った時には、便利な事にこの体は一瞬で眠りに落ちた。
「ホシノちゃん、しー……だからね!」
「行動と言動が一致してませんよ先輩!?」
「わーすっごい硬い……」
「ちょっ、先輩なに触ってるんですか……!?」
『……ん?』
目が覚めて、最初に気付いたのは誰かが話す声だった。普通の野生動物であればこの状況を滅茶苦茶危険視するのだろうが、俺は怪獣王なので余裕をもって寝起きのぽやぽやした頭で、さてこれはどういう状況だと考える。
とりあえず、目を開けて周囲を確認するべきか。
「こんなに硬かったらそりゃあミサイルなんてへっちゃらだねぇ」
「ちょ、そんなにベタベタと! 起きてたらどうするんで――」
『ん? あぁ、どうも』
目を開けて周囲を確認していると、小柄な少女と目が合った……あ(頭がハッキリする音)。
これあれか、ちょっと角度的に見えにくいけど俺に触ってるのがあの時助けた子で今俺と目が合ってる子はあの時俺の目ん玉に銃を撃った子か。
じゃあ二度寝しても別に大丈夫な案件だな、と判断した俺は再び目を閉じて呼吸を整える。そうすれば便利なこの体は再び眠りに落ちた。
「どうしたのホシノちゃん」
「い、いえ……なんでもありません」
背中に嫌な汗が流れ、肌着がその汗によってピッタリ肌に張り付いているという事実を鮮明に感じる。
ほんの一瞬だけ
「これが、ゴジラ」
この砂漠に突如として現れたこの怪物が、何ともデタラメでなんとも恐ろしい生物なのだと改めて実感した。
恐らく一夜にして現れたこのオアシスもゴジラによってもたらされたモノなのだろう。なにせ、湖の真ん中にはあの大穴が今も不気味に空いている。
本能的に一刻も早くここを離れたかった。このままここに居ては死ぬよりも辛い目に合う気すらしていた。高鳴る心音を押さえつける。
「とりあえず、オアシスが本当にあるという事は分かったので帰りましょう。その……ゴジラも今は起こされたくないでしょうし、今日も生徒会の仕事はありますから」
「うわわわっ!? ホシノちゃんってば強引!!」
早口でそうとだけ言ってユメ先輩の腕を取り、背後から突き刺さるような視線を感じながら私はオアシスを足早に走り去った。
しばらく走ってから振り返れば、オアシスからゴジラの姿が消えて居た。
その日、連邦生徒会から
ゴジラ:オアシス? 知らんけど多分俺がやった。
ユメ:助けてくれたし(多分)オアシスも作ってくれたからゴジラが大好き。駆除には大反対。
ホシノ:本当にユメ先輩を助けたとは思えないしあれだけの力を見て恐れるなという方が無理。駆除には賛成寄り。
一般アビドス生徒:「ただでさえ砂漠化がヤベェのにあんな化け物が居るとか溜まったもんじゃない! 駆除しろ駆除!!」派閥と「オアシスの発生原因である可能性がある以上利用無いしは共生するべき!!」派閥に6:4くらいで分かれている
本編への関わり
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多め
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そこそこ
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少なめ
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最低限