特殊性癖の戦国転生   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1541年 毛利元就、毛利隆元

 毛利元就···元々毛利家の次男として産まれ、幼少期は家臣に城を乗っ取られてあばら家で過ごすというとても国人衆の弟とは思えない扱いを受けていたが、そんな環境にもめげずに勉学に励み、知略を磨いたことで安芸一の知恵者と呼ばれるように成長する。

 

 そして長男の一族が次々に病死し、家督争いになった腹違いの弟を粛清し、毛利家の家督を相続する。

 

 その知略は大大名である尼子、大内の抗争を巧みに受け流し、大内従属国衆として現在に至る。

 

 一方嫡男の毛利隆元は大内家の人質として長年山口の町で生活をしていたのだが、大内義隆から大層可愛がられ、人質であったが義隆から元服時には烏帽子親に自身の名前まで与えられ、更に大内嫡男の教育と同等の教育を受けさせるように家臣に厳命したため、大内流の内政や商人との交渉等、大内の後継者になれる才を得ていた。

 

 まぁ嫡男であった私は仏門に入れられて養子の大内晴持を溺愛していたが···

 

 私は客間に入ると二人と数人の家臣が座っていた。

 

 私はその場に座ると、上座に座る元就と隆元に座りながら頭を下げた。

 

「お目通り叶い誠感謝致します。元就殿、隆元殿」

 

「なに、大内の嫡男を名乗る者が城に来ているとすればな」

 

 そこには肖像画よりも若く、覇気に溢れ出る男が座っている。

 

 毛利元就その人である。

 

 円月はそのただならぬ迫力に気負けしているが

 

「ククク、なるほど。流石毛利の全てと言われる人だ。常人ではありませんな」

 

「なに、儂など知恵が回るのみで家臣あっての毛利家だ。国人衆の頭でしか無い」

 

「ご謙遜を···初めましてですな。大内義隆が嫡男亀童丸、法名は安慈と申す」

 

「安慈! なるほどそなたが噂のか」

 

 反応したのは隆元の方であった。

 

「村々を巡り、その地の問題を解決する若い僧の名が安慈であったな。山口の町でも商人達が噂をしておった」

 

「隆元様が山口にいる間にお伺いをしたかったのですが、父上は(大内)晴持様をご溺愛されている。私が出れば大内が割れる故にご了承をいただきたく」

 

「しかし、亀童丸様は知恵遅れと聞く。それこそ言葉を話せないと聞いていたが?」

 

「仏神より民への教えを広める為に知恵を与えられたゆえ···回復したまで」

 

「なるほど···口ではどうとでも言えるがな」

 

「ご尤も。しかし、これより先、中国の地は大きく動くと占いが出たため、私も力をつけるべく動き始めた所存」

 

「大内の家督を狙うのか?」

 

「晴持様が居る間は問題ないと思われますが、彼には死相が出ております。近々死ぬ運命にあるかと」

 

「なんと無礼な!」

 

 元就が怒るが、私はさらりと流す。

 

 というより元就自身も怒るフリをすることで大内に忠誠を誓っていると家臣に見せたいのだろう。

 

「なにより私の母は父と仲がよろしく無かった為に家督を継がせたいとは思わんでしょう。大内の教育を受けてござらんし、仏門に身を置いて長いですしなぁ」

 

「その割には野心を感じるが」

 

「野心が無いよりは良いでしょうや。私の野心は太平の為に動いておりまする故に」

 

「太平···日ノ本の混乱を収める気か?」

 

「ああ、私が生きている間に収めなければ第二の元寇の気配があるのでな」

 

「元寇だと!」

 

 元就も興味を持ったらしく、私は紙と筆を借りて世界地図を描いた。

 

「仏神の知恵より世界の地図を描かせてもらった。東のこの小さな島が日ノ本、横の大きな国が明、それに次ぐこちらの西の国がオスマン(帝国)、更にこの大陸より飛び出ている国がスペインとポルトガル」

 

「明との繋がりは我が国はあるが、そんな遠くの国がこちらまで来れるとは思わんのだが?」

 

「今から二十年前、世界を一周することに成功し、世界が丸い事を証明した。そしてそれによりスペインとポルトガルは世界航路という世界を周ることのできる海図を手に入れた事を意味する。日ノ本で百年近く内乱に明け暮れていた日ノ本の造船技術では世界規模では技術の遅れが出ている」

 

「そもそも自国内で銭すらまともに製造できない国が、既に間近に迫ったポルトガルに勝てると思うか?」

 

「間近に迫った?」

 

 私は地図にバツを付ける。

 

「日ノ本と同じ中華の朝貢国であった満剌加(マレーシアのマラッカ王国)がポルトガルにより占領され、既に三十年の年月が経過している。多分隆元様なら博多商人より肌の白い異国の者が中華に訪れている話を知っているのでは?」

 

「確かに、天竺より更に向こうより人が船に乗り来ているとは聞くが」

 

「そろそろ日ノ本に目を付けるでしょうなぁ。日ノ本はこの地図に描いた広大な世界でも有数の銀の産出地故に···富を狙い異国より侵略しに来るが元寇と同じ流れかと」

 

 元寇にも諸説あるが、当時の中華王朝が日本の仏像等に使われていた黄銅を金と誤認して、伝言ゲームで黄金の国と誤解され、その黄金を確保するために中華を攻め滅ぼした元が攻めたとこの時代の人々は思っている。

 

 その為第二の元寇が迫っていると言えば、私の話しに耳を傾けざるを得ない。

 

 元就的には世界が丸いとか異国の事を知りたい知識欲もあるように見えるが、対策を考えなければならない。

 

「(大内)義隆様はこの事を?」

 

「家臣の冷泉隆豊殿には話した。その方伝いで知っているかもしれんが、義隆様は守りに入ってしまわれ、尼子を倒し、中国地方統一以上は求めておらんからなぁ」

 

「儂らに何を求めているのだ? 安慈殿は?」

 

「もし大内を継ぐことになれば毛利と血縁関係を結びたいと思っている。九州の大友からも姫君を迎え、貴族より正室をし、安芸から豊後までの抗争を無くす。民が困窮している故に五年力を蓄え、大友は肥前、肥後を、毛利は尼子を倒す事に注力してもらいたい」

 

「尼子は強大な家ぞ、簡単に申されるなぁ」

 

「なに、毛利は強くなられる。より強大にな」

 

 私は数枚の手紙と農書、そして銀の精錬について書かれた指南書、そして空手形として私が大内当主となった暁には安芸一国と石見半国を渡すと書いていた。

 

 手紙は博多商人の紹介状であり、毛利の銀の買い取りと銭や兵糧、武具の融通等の話が書かれていた。

 

「東に毛利、西を大友、そして南に島津を加え、九州と中国の地を平定する。どうだ?」

 

「なかなか良くできた妄言であるな」

 

「まぁどう思うかは元就様と隆元様次第。私は私の道に沿って動くまで」

 

 更に私は帰り際に円月が乗ってきた馬を(毛利)隆元様に献上して城から出た。

 

 

 

 

 

 

「いつ斬られるか焦りましたよ」

 

「円月すまんな。でも権威が無ければこのような芝居をしなければろくに話をすることもままならんからな」

 

「しかし、毛利とはそれほどまでの家なのか? 私にはそこらにある国衆の一つにしか見えなかったが」

 

「中国どころか日ノ本でも生粋の謀略を使うお方が毛利元就だ。家の為ならば敵を容赦なく族滅させることもするが、基本礼には礼で返してくれるお方だ。私が先手を打ったのは大内に将軍が下知を飛ばした事に関係する」

 

「将軍の下知ですか?」

 

「ああ、室町の将軍は大内に尼子討伐の下知を飛ばした。故に大内は大義を得ている状態だ。そして吉田郡山城の戦いにより尼子の求心力は大幅に低下している···あと一つ切っ掛けがあれば大内と尼子による中国地方の優劣を決める大戦が起こるぞ」

 

「なるほどその情報を掴んでいたからですか···して、その情報は?」

 

「博多商人からだ。彼らの耳の早さは侮れないからな」

 

「博多の商人なら納得です」

 

「では長門に戻ろうぞ」

 

「はい!」

 

 円月も大栗に乗せて、二人乗りで長門を目指すのだった。

 

 

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