人の思想というものは最初は儚いものだ。
それは一輪の花のように、すぐに散り行き果てて行く。
しかしそこには初めから一つの大きな筋が存在する。根のしっかりとした大樹が折れることの無いように、芯のある話も朽ち果てることはない。
長き日を、月を、年を超え、それは大きくなって行く。
2019年、その計画の根元が完成した。
防衛省の考案したそれは、人々の関心を得る新たな試みとして世の注目を集めていた。自衛隊の中には陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊が存在したが、その中にもう一つの、新たな部隊を作るというものだ。名を「宇宙自衛隊」。
当初は宇宙に散りばめられた隕石の残骸などを管理し、それらを地球や人工衛星の軌道上からそらし、守るというものだった。一部な陰謀論を唱えるものの中には中国とロシアの人工衛星が狙いだなどと言う者もいたが、それらも全ては明るみにされることなく、計画は進んで行った。なんの障害もなく、ことは順調に進んで行くと思われていた。ところが「宇宙自衛隊」が完成し、宇宙に進出することになった6年後の2025年。
NASAの人工衛星が捉えた映像の中に奇妙な物が写り込んでいた。それはモノクロの映像越しでも分かる程に光沢のある、円盤状の物体。度々テレビや雑誌で取り上げられることもある、知的生命体の乗る乗り物。「アンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト」。未確認飛行物体の事である。通称「UFO」と呼ばれるそれは、今日まで人々の空想の産物だと思われてきた。理由として、事あるごとに映像や静止画としてその姿を捉えられてはいたものの、作り物や、合成映像・写真としての物が多い事にあった。他には、地球外生命体の乗り物として認知されているにも関わらず、地球外、即ち宇宙空間で捉えられている映像が記録に残っていないことも挙げられる。
それ故に此度の宇宙空間で捉えられたUFOの映像という物は大変貴重な物となっていた。それと同時に、人類にはある一つの試練が課された。
それは、もしもこのUFOが地球に侵攻してきたらどうするか、ということ。
この話自体も古くから囁かれていた話ではあった。歴代のアメリカやロシアの大統領、日本の首相の中には地球外生命体、いわゆる宇宙人と接触を持ったことのある人物もいたとされるが、今まで人類がそれらの被害にあったという報告は噂や嘘臭いであろう物を除き、一つも無かった。
この映像が専門家に分析されると共に、各テレビ局や新聞、雑誌で大きく取り上げられた。今まで通り作り物だろうと発言する者、人類の滅亡だと騒ぐ者、今回ばかりは本物だろうと素直な関心を示す者。世間はこの映像の話題で賑わった。
表向きには世間の混乱を懸念してか、余り大事にはならなかった。