この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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このボッチな少女に素敵な旦那様を!

「じゃあ、ライムさんは正式な使い魔として登録することができたっていうことですね! おめでとうございます、ゆんゆんさん!」

 

「ありがとうございます、ウィズさん!」

 

アルカンレティアから帰ってきた翌日、私たちはギルドで使い魔の本登録を済ませた。ライムが魔王軍幹部ハンスの討伐に大きく貢献したとして、一定の功績を満たしたと認められたのだ。ライムの使い魔登録が終わった後は早速、ウィズさんのところにお礼を兼ねて、報告をしに行った。すると、ウィズさんはまるで自分のことのように喜んでくれて、嬉しかった。

 

「でも、仮登録ができたのは、ウィズさんが手伝ってくれたからですし、この本登録もバニルさんのおかげです。改めて、本当にありがとうございました!」

 

「この店の唯一のお得意様であるからな、この程度は朝飯前というものよ」

 

「そうですよ、ゆんゆんさんにはよく買い物をしてもらってますから!」

 

 なんていい人たちなんだろう……いや、人ではないんだけど。そう思いながら、ライムを抱き上げて、今度はライムと一緒にお辞儀をした。これだけ、良くしてもらったんだからライムもお礼を言わなきゃね、喋られないけど。

 

「そういえば、ライムはハンスみたいに擬態化しないの? ほら、例えば私と同じくらいの年齢の女の子になって私の隣を歩いたり、一緒にご飯を食べたり、私の話をうんうんって聞いたりできないの? ほら、友達みたいに!! どうしてもっていうなら男の子でもいいよ! とにかく人間の姿を……ぐふぅ!」

 

 顎にアッパーカットな体当たりをもらってしまった……

 

 

 

 

「うーん、ライムさんが人に擬態することはないと思いますよ?」

 

「そうなんですか? てっきり強くて賢いスライムなら、みんな使えるかと……」

 

 ウィズさんによると、基本的にスライムは何かに擬態するには、その生物を捕食する必要があるらしい。さらに、ほとんどのスライムはそれほどの知性と自我を有しておらず、人間に擬態するのは、魔王軍に所属したスライムだけとのこと。

 

「そうなんだ、じゃあライムが人間に擬態しないのは仲良くしたい証でもあるんですね!」

 

「いや、そうではないだろうな。見えづらくはあるが、この水玉にとって、人間というのは無駄に数が多いので争うのは面倒なのと、勇者のような逸材でもなければ栄養価的には旨味があるわけでもない。それならば、馬車に積まれた高級食材を狙うほうが……」

 

「すみません、もう大丈夫です……」

 

 そこは嘘でも友好的な理由であってほしかったぁ……

 

「幸薄き紅魔の娘よ。スライムの擬態に興味があるのであれば、良いモノがあるぞ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 バニルさんが言うには、ウィズさんが入荷したアイテムに擬態能力を得ることができるポーションがあるらしい。ただし、強いイメージを持たなければ上手く変身ができなくなるとのこと。

しかも、皮膚や骨格、肉体を変化させるので味わったこともない激痛が走るらしく、それでイメージが強く保てず中途半端な変身になってしまう。また、もとに戻るときにも激痛が走るらしいので、擬態をしたら一生そのままでいなければならない。

 

ウィズさんが入荷しただけあって、デメリットが重すぎる……まともに変身することすらできない。悪用される心配はなさそうだけど、少なくとも人間に扱えるわけがない。 

 

 しかも、極めつけに……

 

「あの、これ高くないですか? 一千万エリスってどう考えてもこの街で売って良い値段じゃないですよね?」

 

「すみません、実はこのポーションを作るのにかなりのコストがかかってしまったらしく、私がいつもお世話になってる職人さんも一本しか作れないと言っていて……一度、貴族の方がこのポーションの噂を聞いたらしく、訪れてくださったのですが詳細を聞けば聞くほど顔がどんどん青くなっていって、結局断られてしまったんです」

 

「当たり前ですね……」

 

 結局、ポーションを買うことはなかった。今のところ、ライムは擬態に興味がなさそうだし、手持ちがないからだ。魔王軍幹部ハンスを倒した報酬はアルカンレティアへの賠償でなくなってしまった。カズマさんは、払わなくてもいいと強くいってくれたけど、あの場にいて関係ないので払えませんというのは気が引けた。

 

「まあ、さっさと在庫処分したかったが、仕方ない。まとまった金が手に入ったときに興味があったら、また来るがよい。この値段とデメリットだ。売れることはまずないだろうからな」

 

「なんてこと言うんですか! こんなに素晴らしい商品なのに!」

 

「やかましいっ!」

 

 お店の経営って大変なんだなって思った。

その後、ウィズさんたちと別れて、宿に帰ると手紙があった。差出人はお父さん……?

 

 

 

 

「今年はマグロ食えないらしいぜ、楽しみにしてたのによぉ」

 

「頭のおかしい魔法使いが地形ごとやったって話だろ? まったくよぉ」

 

 ギルドにいる冒険者たちの声を聴きながら、俺はボソッと呟いた。

 

「0点だよ」

 

 それにめぐみんが食って掛かる

 

「はぁ!? 少なく見積もっても80点はありましたよ!!」

 

「どう見積もっても、0点なんだよ! モンスターにマグロを取られそうになったからって、爆裂魔法撃ち込みやがって! マグロごと吹っ飛んだら意味ねえだろ! そろそろ役に立つ上級魔法を覚えろよ!!」

 

「おい、仲間に対して言いすぎだぞカズマ! そんなに罵倒をしたいなら、私に向けて言え!」

 

「生臭い」

 

「ひんっ!」

 

 俺とめぐみんがいがみ合っていると、ダクネスが割って入ってきた。お前、さっそくマグロに捕食されかけてたじゃねえか!! そう思っていると、アクアが泣きついていた。

 

「ねえ、これ借金になるんじゃない!? 私もう借金は嫌よ!! カズマたちだけで返してよね!!!」

 

 全てをイラつかせる駄女神プリースト

全てをパーにする頭のおかしい魔法使い

全てが生臭いクルセイダー

 

 こんな奴らと一緒にここまで来てしまった。遠くの席では女性陣たちがこちらを見てクズマコールをする始末。そろそろ、転生系主人公なら女の子からチヤホヤされてもいいはずなんだけどなぁ。

 そんなことを思っていると、ギルドのドアが勢いよく開かれた。皆も扉を開けた人物に注目をする。そこにいたのはゆんゆんだった。頭にはライムを乗せている。そして、そのままゆんゆんは早歩きで俺たちのところまで来た。恥ずかしそうでありながら、決意を固めた表情を俺に向けている。

 

「か、カズマさん。私、カズマさんの子供が欲しい!!!」

 

ギルド内が凍り付いた。しかし、それとは対照的に俺の心は燃え上がっていた。これは、とうとう来たのではないかと……!!

 

 モテ期、入リマシタァ!

 

 

 

 

俺たちは今後の方針を話し合うために、ゆんゆんを連れて屋敷に帰った。

 

「やっぱり、俺としては最初は女の子が良いと思うんだけどな」

 

「だ、ダメです! 最初は男の子じゃないと!」

 

 ゆんゆんは以外にも自分の意見をしっかりと言う子だった。俺たちが、こうして将来設計を話し合っていると、めぐみんとダクネスが割り込んできた。

 

「なぜ、当然のように話を進めてるんですか!」

 

「そうだぞ、こいつがどんな男か知っているのか!?」

 

「正気に戻ってください! ボッチをこじらせすぎて頭がおかしくなっちゃったんですか!?」

 

 言いすぎだろ。さすがの俺でも傷つくぞ……

 

「違うわよ! 私とカズマさんが子供を作らないと、世界が救われ……」

 

 そこで俺は人差し指をゆんゆんの唇にあてる。俺はそこらの鈍感系主人公とは違う、ちゃんと察することができる男だ。ゆんゆんにこれ以上恥ずかしい思いをさせるのは野暮ってもんだ。

 

「皆まで言わなくてもいいぜ、ゆんゆん。俺たちが子づくりをしたら魔王がどうにかなって世界が救われるってことだろう、ゆんゆん。俺に任せとけ、世界を一緒に救おうじゃないか、YunYun」

 

 すると、後ろから女共が口をはさんできやがった。

 

「おまえ、あんなに討伐クエストを嫌がってたくせに!!」

 

「本当ですよ!!!」

 

「うるさぁぁぁい!!! 関係ねえ奴がごちゃごちゃ言ってくるんじゃねえよ、せっかくやってきたモテ期なんだよ! 邪魔すんな!!! っていうか、なんなの? 妬いてんの? 俺がゆんゆんとお付き合い的なことをしそうになってるから、嫉妬してんのぉ? だったらそう言えよ、ツンデレども!!」

 

「んなわけないでしょ! 知り合いが変な男に引っ掛かりそうになってたら、口の一つくらい出しますよ!!」

 

 めぐみんの言葉にダクネスもコクコクと頷いていた。よっしゃ、お前らがそのつもりだったら、俺もやってやろうじゃねえか! 舌戦だったら負けねえぞ!! と思っていると、ゆんゆんが大声を出した。

 

「……めぐみん、このままじゃ紅魔族がなくなっちゃう!!!!」

 

 この言葉で奥で遊んでいるアクアとライム以外の皆が固まった。紅魔の里がなくなる……?

 

「クリエイトウォーター! してから、ライムをここに置けば……おぉ、シミが綺麗に落ちてる。やっぱり、スライムの吸収力は半端じゃないわね、主婦の味方になるわ!!」

 

 おい、お前ら。ちょっとは空気読め。

 




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