この素晴らしい世界にスライムを! 作:履舌裏駄像
「よしよしカズマ。怖かったのね。もう大丈夫よ、大丈夫。私の魔法であなたの顔も服も綺麗さっぱり洗ってあげたから、どこにも汚れはないわよ。」
「私が、気絶している間に何が……」
アクアさんが、カズマさんを膝枕でメンタルケアをしている。それをダクネスさんが不思議そうにしていた。
私たちは、オークとの戦い……殲滅が終わった後、近くの森で休んでいた。身体はまだまだ元気だけど、精神がね……心の消耗が激しかったので、みんなで休んでいるところだった。特に、カズマさんはひどい状態だった。顔と服が血で真っ赤になった状態で狂ったように大笑いしていた。正直、めちゃくちゃ怖かったし、みんなドン引きしていた。
ちなみに、その原因になった子は私の水筒から呑気に水を飲んでいた。アルカンレティアで汲んできたのも飲み切るのではないかというくらい飲んでいた。全然、反省してる様子がない。あとでしっかりと言っておかないと。
余談だけど、どうして、ライムがこんなに水を飲んでいるのかというと、カズマさんから聞いた話によると、ライムのウォーターカッターには大量の水が必要になるらしい。それも、飛距離や発射時間が大きくなればなるほど、水の量も増えていくのだろうとのこと。
「ゆんゆんさん、感謝しています。どれくらい感謝しているかというと、この世で一番尊敬してる人は? と聞かれたら、ゆんゆん様です!!! って即答するくらい感謝しています」
「け、敬語!? それ絶対、感謝以外の感情も入ってますよね!? なんか、畏怖も交じってませんか!?」
「そりゃ、そうですよ。虐殺スライムを従えてる紅魔の少女なんて、恐れられるに決まってるじゃないですか。もしかして、カズマになにか恨みでもあったんですか?」
「ちょ、ちょっと、めぐみんまで! そんなわけないじゃない!」
「本当にすごかったわ。ゆんゆんたちには、女神の名のもとにオークジェノサイダーズの称号を授けるわ」
「私を入れないでぇぇぇ!!! ごめんなさい! 情操教育が行き届いていませんでした! 本当にごめんなさいぃぃ!!」
私は泣いた。
「まったく……そういえば、どうして皆さんがここにいるんですか? もしかして、めぐみんも里のみんなが心配になったの?」
ダクネスさんに宥めてもらって落ち着いた後、気になっていたことを尋ねた。めぐみんは、こう見えても根はやさしい子だ。きっと、里のみんなのために来たに違いない。
「ええ、心配ですよ。特にあるえが心配です。穴だらけにされたり、真っ二つにされないかが心配です。ペットは飼い主に似るとよく言いますし……」
「しないわよ! あと、ライムはペットじゃなくて、友達! まったく素直じゃないわね。本当は心配だったんでしょ? そうなんでしょ? ねえ、めぐみん?」
すると、めぐみんが急に立ち上がる。そして、カズマさんたちに、紅魔族には生まれつき、身体のどこかに刺青があること、そして、私の刺青の場所を発表しようとしてきた。
なんで、めぐみんが私の刺青の場所を知ってるのよ! もしかして、一緒に温泉に入ったとき!?
めぐみんの暴露を止めるために組み手で挑もうとする。爆裂魔法なんてネタ魔法、こんなところでは使えないから、と言うと、めぐみんはアクアさんから補助魔法をもらおうとしていた。ズルい! やっぱりめぐみんは昔からズルい!!
「おい、こっちで声が聞こえたぞ!」
私たちが言い争っていると、近くから声が聞こえてきた。急いで茂みに隠れて様子をうかがう。そこにいたのは魔王軍だった。もしかして、彼らが紅魔の里を……? そう思っていると、めぐみんが私のことを短気だからだと、非難してきた。どの口が言ってるのよ!
「いい加減にしないか、二人とも! カズマも何か言ってやれ」
「おい、ゆんゆんの刺青に関して詳しく!!!!」
「ここにいたぞ! こんなところに隠れてやがった!!」
一瞬でばれてしまった。だけど、アクアさんがストレッチをしながら私たちの前に出た。なにか秘策でもあるのかな? そして、相手をゆっくりと見回したあと
「見たところ悪魔もどきしかいないわね。下級悪魔にすらなれない悪魔崩れがなんですか、なんですかぁ? プークスクス!! あんた達みたいな雑魚なんて興味ないの! 今回は見逃してあげるから、あっちに行って、ほら、早くあっちに行って!!!」
すると、茂みや木の後ろから魔王軍が大量に現れた。あんなにたくさんいたんだ。だけど、一体一体が強いわけじゃない。これなら、私だけで十分だと思って、前に出ようとしたとき、めぐみんに止められた。
「先ほどは、よくもネタ魔法と言ってくれましたね。ここは一発、爆裂魔法のすごさを見せつけなければなりませんね!!」
え!? まさか……! 私たちの制止も効かずにめぐみんは爆裂魔法の詠唱を唱える。近くに私たちもいるのに!?
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「エクスプロージョン!!!」
轟音と衝撃波、爆風に私たちは巻き込まれた。めぐみんも同様に……
「さあ、カズマ! 今の爆裂魔法は何点ですか!」
「マイナス90点をくれてやる! お前を負ぶって逃げられるわけがねえだろ!」
まったくその通りだ。しかも、敵を全然倒せてないし! なんなら爆音でさらに魔王軍の大群が来たし!! どうするのよ、めぐみん!!! そう思ったとき、その大群の様子がおかしいことに気づいた。まるで何かから、逃げているような……そのとき、私たちの前に四人の男女が現れる。
「もう逃がさんぞ! 肉片になるがいい! 我が闇の炎によって!」
「永久に眠れ! 氷のカイナに、抱かれて!!」
「散るがいい!」
「今、生まれる!」
そうして、この人たちはライト・オブ・セイバーで蹴散らしていった。闇の炎とか氷の腕はどうしたんだろう……カズマさんも私と同じことを考えているのだろう、顔に出ている。
「だけど、その赤い目は……紅魔族!」
そう、私たちを助けてくれた人たちは紅魔の里の人たちだ。闇の炎の人はぶっころりさん、カズマさんたちがめぐみんの冒険者仲間だと確認すると、さっそく、紅魔族特有の自己紹介をしていた。
しかし、めぐみんを仲間にしているからだろう、カズマさんは慣れたように私たちと同じような自己紹介と挨拶を返した。
「外の人たちなのに、動揺一つ見せないとは! 良い仲間を持ったね、めぐみん!」
めぐみんは小さくうなずいた。嬉しさと気恥ずかしさが混ざっているようだった。ライバルのそんな光景を見られて、私も少しうれしかった。
「ところで、あっちでオークたちが惨殺されていたんだけど、何か知らないかな?」
「あっ、それはね! オークジェノサイダーズのライ……」
「わー! わー!! わー!!!」
「どういう……こと? 何が、どうなって……?」
私は、今すごい困惑していた。何が起きているのかわからなかった。なぜなら、私の目の前にいるのは……
「だから、ただの近況報告だよ! ほら、現にお父さんはピンピンしてるだろぉ? 『手紙が届くころには生きていないだろう』なんて、紅魔族の間じゃあ、普通の挨拶じゃないか! はっはっはっはっは!!」
お父さんは普通に生きていた。そもそも、紅魔の里に危機など訪れていなかったのだ。魔王軍の基地を壊滅させることもできないというのは、観光地として残そうか迷っているということだった。私たちはそれを聞いて、静かになった。
「ライム、お父さんの下あごを切り落とせない? 私たちオークジェノサイダーズでしょ?」
「ゆんゆん!?」
そんなやり取りをしていると、ピンポンパンポーンと気が抜けるような音が里中に響いた。
「魔王軍警報、魔王軍警報。現在、魔王軍幹部シルビアが1000の軍とともに進行中。手の空いてる方は迎撃をお願いいたします。繰り返します、現在……」
「せ、1000!?!?!?」
「オークたちの倍ぐらいはいるじゃないか!」
私もカズマさんたちも一緒に驚いた。だけど、お父さんは慌てる様子もなく、カズマさんたちに戦場まで見に行こうと言い出した。そして、お父さんについていくと……
「撤退を! シルビア様、あなた様だけでも撤退を!!!」
「だから、嫌だったんだぁ!!!」
そこには、魔王軍を上級魔法で蹂躙する紅魔族の人々の姿があった。
「す、すげぇ……」
「ね? ちょっと観光スポットとして使えそうでしょ?」
夜、私は自分の部屋でライムに昼のオーク戦について説教をしていた。
ライムは単独で敵陣に突っ込むことがある。それで相手を撃破できるんだったら、それに越したことはないんだと思う。実際、それでオークたちは倒せたし、カズマさんも助かった。だけど、ライムはモンスターだ。主の命令を聞かずに勝手に行動するというのは、場合によっては人間側への裏切りとされる。それに……
「あんな、むごい戦い方は人前でしちゃダメよ。カズマさんたちだけだったから良かったけど、下手したら、言いがかりをつけられて、1億エリスじゃきかないくらいの賞金をかけられちゃうかもしれないから」
説教がひと段落ついたころ、部屋のドアがノックされた。こんな夜更けに誰だろう。お母さんかな?
「はーい」
返事をしながら、ドアを開けると、そこには寝巻き姿のめぐみんがいた。
「緊急事態です! 泊めてください」
うーん………デジャブ。