この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この素晴らしい里に観光を!

 カズマです。朝起きたら、仲間たちが心なしか冷たいように感じます。普段と話し方のはずなのに、妙な距離感がある気がします。

 

「ねえ、めぐみん! せっかく来たんだし、里の観光案内をしてほしいんですけど」

 

「良いですよ、いろいろと面白いところに連れて行ってあげますよ」

 

「やったぁ! クズマさんはどうするの?」

 

「ああ、俺も一緒に行かせてもらうよ」

 

 あれ? 今、俺のこと……気のせいか! 気を取り直して、ダクネスも一緒にどうかと聞いてみると

 

「いや、私は寄るところがあるから気にしなくていい。カスマたちだけで遠慮なく楽しんできてくれ」

 

 いま、こいつなんて言った……?

 

「では、私と一緒に行くのはアクアとゲスマですね、この里には観光スポットが……」

 

「待てや、ゴラァ!!!」

 

 さすがに、俺も怒った。人のことをクズマだのカスマだの言いやがって!!!

 

「どうしたの? 寝ているめぐみんにイタズラしようとしたカズマさん」

 

「……すいませんでした」

 

 俺たちは紅魔の里の様々なところを見て回った。鍛冶屋ではアクアが岩に刺さった聖剣を引き抜こうとしたり、斧を入れると女神が出てくる噂がある泉を見たりした。めぐみん曰く、前者は1万人目でようやく抜けるように細工してあるらしく、後者は、鍛冶屋が噂を流していたらしく、斧も回収してリサイクルしているとのこと。……インチキ商売じゃねえか!

 

「この建物は何だ……?」

 

「紅魔族の天敵が眠っている謎施設です。用途も何もわからないので、大人たちがそう呼んでます」

 

「なんだそれ」

 

「その他にも、邪神が封印された墓だの、名もなき邪神が封印された土地だのがあったのですが、色々あって全部、解けてしまったのですよ」

 

 お前らの封印ザルやないかーい!!!

 

 

 その後、観光スポットではないのだが、俺たちは服屋に来た。めぐみんが替えのローブを買いたいらしい。店主の名前はチェケラさん。紅魔族随一の服屋を営んでいるとのことだ。

 

「まあ、紅魔の里に服屋はうちしかないからね」

 

 バカにしてんのか。

 

 めぐみんが店にあるローブをすべて買うと言うので、中庭のローブが干されているところに来たのだが……

 

「あれ、完全にライフルよね?」

 

「なんてものを物干しざおにしてるんだよ……」

 

 チェケラさんの言う、由緒正しい物干し竿を見て、驚いていた。

 この里、どうなってんの?

 

 

 

「そろそろ、紅魔の里の魅力が分かってきた頃でしょうし、とっておきのところに連れて行ってあげます!」

 

「とっておきのところ?」

 

 俺とアクアは首を傾げた。

 

「ようこそ、我が魔法学園……レッドプリズンへ!」

 

「よ、ようこそ」

 

 めぐみんの言うとっておきというのは、学び舎だったらしい。制服姿でかっこよくポーズをとるめぐみんの後ろには、恥ずかしそうにしているゆんゆんの姿があった。頭の上にはライムがいる。お前、そこ好きだな。

 

「めぐみん達の制服、かわいいわね!」

 

「そうでしょう、そうでしょう! 学校を案内するのですから正装に着替えるのは当然です」

 

「懐かしくなったから、着たくなっただけだろ」

 

 俺が、皮肉交じりに言った。まったく、何が学校だ。

 

「カズマって、学校のことになると、途端に辛辣よね。きっと馴染めなかった古傷が痛むのね」

 

「おい、やめろ! 俺のプライバシーに侵害するな!」

 

 そんなことを言っていると、学校の扉が急に開かれた。その向こうには人影が三つ。

 

「我が名はあるえ! 紅魔族随一の発育にして、作家を目指す者!」

「我が名はふにふら! 紅魔族随一の弟思いにして、ブラコンと呼ばれし者!」

「我が名はどどんこ! 紅魔族随一の、随一の……なんだっけ?」

 

 勢いよく、名乗りを上げた。めぐみんに聞いてみると、学校時代の同級生らしい。なかなか、個性が強そうなメンツだ。ちなみに、ふにふらさんがブラコンを名乗っているのは、カッコいい通り名が思いつかなかったらしい。

 

「あなたたちが、ゆんゆんのパーティーメンバー? 本当に実在したのね」

 

「って言うか、頭の上のはなに? 変わった帽子ね」

 

 ゆんゆんが変な声を出した。そして、次の瞬。

 

「紹介するね! この人たちが手紙で紹介してた、駆け出し冒険者の男の子とプリーストの女の子! それと、今はいないけど、やたら頑丈なお姉さんもいるんだよ! そして、この子は私の使い魔で、私の頭の上に乗るのが好きなの!! あと、めぐみんがぼっちしてたから、パーティーメンバーに入れてあげましたぁ!!!!」

 

 ……マジか。手紙で俺たちのことを仲間だと書いてたのか。俺はゆんゆんのことを可哀そうを超えて、少し怖くなってきた。

 

「ゆんゆんはパーティーじゃないけど、色々助けてもらってるわ。パーティーじゃないけど」

 

「ええ、パーティーじゃないですけど」

 

「うぇ!? め、めぐみんまで……!?」

 

 ウソがばれたことで、ゆんゆんはひどく動揺していたが、どうやら、ふにふらと、どどんこにはバレていたらしい。

最初から疑っていたが、アクセルの街に遊びに行くというカマをかけたら、全力で拒否する手紙が来たらしく、それでしばらく『いま、アルカンレティアにいる』だの『あと二日で着く』と書かれた手紙を書いて、遊んでいたらしい。メリーさんかよ……

 

「私は、ゆんゆんのことをカエルスレイヤーと呼んでるわ」

 

「なんだよ、カエルスレイヤーって」

 

「ほら、あの光の剣でカエルをバッサバッサと斬ってたじゃない」

 

 それを聞いたあるえたちが驚いた表情を見せた。レッドプリズンでは魔法を覚えると学校を卒業することになるのだが、ゆんゆんは中級魔法を覚えて卒業してしまったため、上級魔法を覚えないまま、旅に出てしまったとのことだ。紅魔族は上級魔法を最初に覚えるのが当たり前だったため、かなり変わった子として扱われたらしい。

 

「ところで、そのスライムがゆんゆんの言っていた使い魔かい? 手紙に書かれていたような活躍をしたとは思えないのだが」

 

あるえがゆんゆんの頭にいるライムをつつきながら、言った。すると、頭から降りたライムが外に出て、空に向かってウォーターカッターを撃った。

 

――グリフォンが落ちてきた。

 

「……実力は本物のようだね」

 

 

 

 夕方になり、俺たちはそれぞれの帰路につくことになった。それにしても、紅魔族って魔法以外もすごいんだな。ゆんゆんだけ特別なのかと思ったが、外れ値はめぐみんのほうだったとは……

 

「おい、いま私を見て何を思ったのか聞かせてもらおうじゃないか」

 

 何も言ってないのに、めぐみんが睨みつけてきた。勘が鋭すぎだろ。

 

「別に、ゆんゆんが中級魔法使いだったって聞いたとき、お前がちょっと動揺してた気がするなって」

 

 そう言うと、めぐみんが少し落ち込んだように見えた。そして、ぽつぽつと語りだした。

 

めぐみんのスキルポイントがあと少しで爆裂魔法を覚えられるくらいまで溜まったとき、こめっこがモンスターに襲われた。そこを、ゆんゆんが中級魔法を覚えて助けてくれたらしい。そのせいで、ゆんゆんは上級魔法を覚えられなかったのだ。

 

「まったく、おバカな子ですね。私なんかのために自分を二の次にするんですから」

 

 そう言う、めぐみんは声が上ずっていた。そこへアクアが声をかける。

 

「別にいいんじゃない? 今では立派な上級魔法使いなんだし! なんならめぐみんよりも助けてもらうことが多かったわ!」

 

「な、なにを言うのですか、アクア!」

 

 まったく、空気を読まないやつだな。

 

「それもそうだな、むしろ魔法の幅が増えたから、お前よりも魔法使いしてるしな!」

 

「おい、喧嘩を売るなら買おうじゃないか!」

 

 

 

――と、そのとき遠くで爆発音がした。

 

「な、なんだ!?」

 

 千里眼で見てみると、そこでは魔王軍と戦っているダクネスの姿があった。俺たちはすぐにそこへ向かった。

 

「よく頑張ったダクネス! 里の人を呼んできたぞ!」

 

「もう来てしまったのか!? どうなっているのだ、この旅は!! オークがメスしかいなかったり、魔王軍の幹部は女ときた! 私は何かの呪いにでもかかっているのか!?」

 

「お前は、もう黙ってろ! 良いところが台無しだから!」

 

 まったく、こいつは……

 

「全然、攻撃をしてこないから、何かと思ったけど仲間を連れてくるまでの時間稼ぎをしていたのね」

 

「そ、そうだ! その通りだ。そうだぞ……チラッ」

 

 本当にこいつは……俺は前に出る。

 

「そういうことだ、侵入しようとしたようだが、残念だったな。おとなしく帰ったほうが身のためだぜ! そいつは魔王軍幹部のバニルと渡り合った猛者だ」

 

「バニルですって!? アクセルから戻ってこないと聞いたけど、まさか……!?」

 

「そうだ、このめぐみんが止めを刺した」

 

 俺の言葉に敵は動揺し、紅魔の人々は称賛する。興が乗った俺はさらに続ける。

 

「それだけじゃない。デュラハンのベルディア、デッドリーポイズンのハンス、果ては機動要塞デストロイヤーまで俺たちの手で倒してやった!」

 

 幹部が二人も倒されたことに、驚いていた。これ、良いな。すっごい気持ちいい。もうちょっと味わいたい。

 

「あなたがリーダーね、名前を聞かせてもらえるかしら?」

 

 え? 名前? これヤバくね? ここで俺の名前を出そうものなら魔王軍の間で指名手配されて賞金とかかけられるに決まってる……!

 

「み、御剣だ! 俺の名前は御剣響也だ。覚えておけ!」

 

「ここぞというところで、ヘタレましたよ」

「紅魔族が後ろについてるから、気持ちよくなっちゃったのね」

 

 そこ、うるさい。バレるだろうが。

 

「ミツルギ……まさか、魔剣使いのミツルギに出会うなんてね。じゃあ、アレもあなたがやったのね」

 

 ん? なにが?

 

「大量のオークを一刀のうちに全滅させるなんて芸当、普通はできないもの。あなたの名前を聞いてスッキリしたわ。まさか、こんな化け物がいたなんてね……」

 

 すみません……それやった化け物、俺じゃないんです。

 

「まあ、このままお前らを倒しても、紅魔族の力を借りたみたいで腑に落ちないから見逃してやるよ」

 

「感謝するわ、ミツルギ。次あったときは決着をつけましょう。総員撤退!」

 

 そうして、シルビアたちは帰っていった。

 

「あとで、あいつにシュワシュワを奢ってやろう」

 

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