この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この素晴らしい一族に祝福を!

「やっぱり、違和感があるのよね……あのミツルギっていう男」

 

 奴らの里の近くに建てた魔王軍の基地で、私は呟いた。周りには私の部下もいる

 

「違和感ですか?」

 

 あのミツルギという男は魔剣を使ってオークたちを全滅させたと言った。実際、あのオークの死骸を見てみると、異様なほどきれいな断面をしており、抵抗をした痕跡すら見られない。死骸の積み上がり方からしても、ある一点を中心に回転切りを一瞬のうちにしたと見ていいだろう。

 

「だけど、あんな大規模な攻撃をするんだったら、神気や魔力を使った攻撃をしているはずよ」

 

 しかし、それらの残滓は一切見つからなかった。つまり、完全に物理だけを使ったってことになる。

 

「ということは、ミツルギという男はオークたちを殺してない?」

 

 そういうことになる。それか、魔剣使いを騙った誰かだったのかである。では、どうしてそんな嘘をついたのか……見栄を張ったのか、それとも

 

「何か、魔術師殺し以外に隠された兵器があったのかもしれないわね。俄然、興味が湧いてきたわ」

 

口元を歪ませる。魔術師殺しと共に手に入れることができたら、紅魔族だけじゃなく、人類共にとっての脅威になれるかもしれない。

 

「フフフ、フフフフフフフ! フハハハハハ!!!」

 

「まあ、魔王様のところに遣いを出しちゃったんですけどね『オークを絶滅せし魔剣使い現る』って……」

 

 ……それは言うな。

 

 

 

 

「まさか、こんなことになるとは……」

 

 お父さんが燃え盛る里を見下ろしながら、つぶやいた。里の中心の塔には魔術師殺しと一体化して、巨大なラミアのようになったシルビアが巻き付いていた。私たちはこの序に襲われ、里の大人たちと共にテレポートで丘まで非難してきた。

 

「族長さん! 大変だ! 本当に大変だ!!」

 

 カズマさんたちがここまで走ってきた。無事だったようだ。だけど、何かすごい焦ってるような……

 

「ゆんゆんとライムもいたか! 実は言うと、あいつの標的はお前たちなんだ!!」

 

「えぇ!? なんで私たちが!?」

 

「あいつが魔術師殺しを手にするときに、ライムがオークを全滅させた下手人だってバレちまったんだよ! それで、今のあいつの天敵になるだろうからって血眼になって探してるところだ!」

 

 その話を聞いて、里のみんなが一斉に私たちを見る。しかも、目が爛々と赤く光っている……怖い!

 

「ご、ごめんなさ……」

 

「すげえぜ、ゆんゆん! とんでもないやつを使い魔にしたんだな!!」

 

「魔法を使わずに、オークを全滅って、いったい何をしたの? その小さな体にどんな秘密が……私、気になります!」

 

「さすが、俺が育て上げた生徒だ!!!」

 

 怒られると思ったら、皆が興奮していた。みんなライムの力に興味津々みたい。それはそうと、やっぱり怖い!!

 

「いまは、あいつを何とかしないと! 本当にどうにもならないのか?」

 

 カズマさんの問いに、あるえが反応した。そして顔に手をかざしながら

 

「魔術師殺しには隠された対抗手段が…………ある!」

 

 勿体ぶりながら言った。それにお父さんが補足をする。古来より、誰にも解読できない遺跡があるのだ。

 

「あるのかよ! とにかく、めぐみんは俺たちをその遺跡とやらまで案内してくれ! ダクネスはこめっこの保護を頼む!」

 

「ああ、任せろ。命を守るのは騎士の役目だ」

 

「感謝します、ダクネス」

 

 話がまとまってきた。里のみんなは、カズマさんたちが対抗手段を見つけるまでの時間稼ぎ、そして、私たちは後方で里の子供たちを守るという作戦だった。

 

「よし、一か八かやるぞ!!」

 

 カズマさんのこの発言により、みんなのやる気がすごく上がった。

 

 

 

 

 めぐみんに案内された遺跡についたのだが……そこの壁画には、萌えキャラが描かれていた。頭おかしい……そして、その裏には日本語が書かれていた。

 

「我、ここに在りし日の記録を残す……」

 

 アクアが読み始めた。いったい何が書かれているのだろう。

 

「その日、俺の楽園に王が踏み込んできた。魔王に対抗できる新兵器を作れとのことだった」

 

 この人は、おそらくチート持ちの日本人だろう。どうやら、当時の王に良い印象を持っていなかったらしい。

 

「争いは何も生まない……と言ってみたけれど、正直、何もアイデアが思い浮かばないんだよ。魔王軍に対抗ってどうしろってんだ。そう思っていたら、女研究者に思い切りぶん殴られた。ハイヒールで人を踏みつけるような美女だが、これが案外気持ちよかったりしてwww」

 

 あれ? なんか風向きが変わったぞ?

 

「アイデアを振り絞って、新兵器作った! まあ、要は改造人間なんですけど。そしたら、こいつら俺のことをマスターって呼びながら、赤い瞳にしてほしいだの、機体番号を入れてほしいだの、色々と注文つけてきやがった。

種族名まで欲しいとか言ってきたから、適当に『紅魔族』って名付けたら、喜んでやんのwww ちなみに全員、美男美女! やっぱり見た目が良くないとやる気が出ないからね。心なしか、女の紅魔族が巨乳しかいなかったので、一人だけ貧乳にしておいた。なんか言われたけど、唯一無二だって言ったら、納得してたわ。チョロwwwwww」

 

 俺はめぐみんの耳をふさいだ。こんな、ふざけた経緯で紅魔族が生まれたと知るのはあまりにも、気の毒すぎる。特に最後のを知ったら、こいつ絶対に闇落ちするだろ! そうしていると、アクアが続きを読む

 

「以前、試作兵器として作ってみた『魔術師殺し』を天敵とか言い始めたwww しかも、これが暴走したときの抑止力が欲しいと。嫌いじゃない、そういうのは嫌いじゃない。そして、適当に作ってみたら、なんとめちゃくちゃ凄いのができた! 物干し竿ぐらいの大きさなのに、世界を滅ぼすかもしれないものだ。とりあえず、レールガン(仮)と名付けておこう。」

 

 レールガン(仮)じゃねえよ!

 

「なんか、ごめん……」

 

「お前、適当にポンポン送ってんじゃねえよ! こいつ何回やらかしてくれてんだ!!」

 

 こんなもんを、適当に扱うとか、紅魔族は頭おかしいんじゃねえかぁぁぁ!!!

 

 俺たちが急いで戻ると、そこには戦いに行こうとするゆんゆんと、それを止めるダクネスの姿があった。

 

「おお、カズマ! ちょうどいいところに! 紅魔族の足止めは失敗だ、魔術師殺しの力で魔法を封じられた!」

 

「なるほど。それで、ゆんゆんが囮になってみんなを逃がそうということですか。まったく、おバカな子ですね」

 

「なによ! だって、そうしないと皆が……」

 

「シルビアが狙っているのはライムです。あなただけが行ったとしても、すぐに魔法を使えなくされて終わるだけです」

 

 めぐみんの言葉に、ゆんゆんも黙らざるを得ない。シルビアが狙っているのは、呑気にしている小さいスライムだ。多分、あわよくば、改造して自分の手下……できなければ、殺そうとしているのだろう。

 

「ということで、ゆんゆん、ライム! あいつを引きつけてくれないか? これで一発やってやるからさ!」

 

「……はい! ライムも行くよ! シルビアを倒せたら、賞金で美味しいものをいっぱい食べられるよ!」

 

 そう言って、ゆんゆんはライムを自分の頭に乗せて走っていった。

 

「こっちは準備を進めるぞ! アクアはこいつに魔力を流してくれ!」

 

「わかったわ! いろんな魔法を使えばいいのね! ブレッシング!」

 

 あとは、絶好のチャンスを待つだけだ。頼んだぞ、ゆんゆん!

 

 

 

 

 ゆんゆんとライムによって、絶好の狙撃ポイントに来たのだが……

 

「壊れてんじゃねえか!」

 

 引き金を引いても、ビームも何も出ることはなかった。

 

「ちょっと、湿気ったクラッカーみたいになってるじゃない。私の神聖な魔力をもらっておいて、どういう了見よ!」

 

「うるさい! このままじゃ、ゆんゆんが危ないだろ!」

 

「いや、案外そうでもないぞ」

 

 ダクネスが指さすほうに従って見てみると、そこには……

 

「すみません! 今のは無かったことにしてください!!」

 

「できるかぁ!!!」

 

 追いかけっこをするシルビアとゆんゆん。

 

「捕まえ……痛っ! 何なのよ、このスライムは!!!」

 

 ゆんゆんが捕まりそうになったり、炎で焼かれそうになるたびに、ウォーターカッターや水を吐き出して、サポートをするライムの姿があった。頭の上で器用なことだ。確かに、あいつがいれば大丈夫そうか……

 

「って、そうじゃない! そのまま、こっちに来られたら作戦がパーだぞ!!」

 

 そのとき、聞き覚えのある高笑いが聞こえた。

 

「真打ち登場!!!」

 

 そのまま、めぐみんは詠唱を始める。めぐみんのお母さんは、はしたないと言っていたけど、今のところ、これしかないしなぁ……そして、詠唱が終わり、爆裂魔法を撃とうとしたところで、なくなった。レールガン(仮)にとてつもない勢いで吸われたのだ。

 

「ねえ、ピカピカしてるよ!」

 

 あまりの事態に啞然としていると、こめっこが指をさしながら言った。見ると、そこには『FULL』とディスプレイに表示されていた。

「そうか、スカだったのは壊れてたからじゃなくて、魔力不足だったんだ! こうなったら、話は早い! シルビア、俺の名を覚えておけ! あの世に行ったら幹部たちによろしくな! 俺の名は……」

 

「発射!!!」

 

 横から入ってきたこめっこが引き金を引いて、シルビアの腹に穴をあけて倒してしまった。そして、爆発をバックに名乗りを上げる。

 

「わが名はこめっこ! 紅魔族ずいいちの、ましょうの妹! 魔王軍幹部より強き者!」

 

 この強かさには俺たちは何も言えず、微笑ましい顔をするしかなくなってしまった。こりゃぁ、大物になるな!

 

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