この素晴らしい世界にスライムを! 作:履舌裏駄像
「許せません!! まさか、私が知らない間に、あんなに活躍してるとは!!」
私は今、大変怒っていた。怒りを地面にも伝えてズンズンとギルドへと歩いていく。傍らにはカズマもいる。屋敷で怠けていたので、無理やり引っ張ってきた
「しょうがないだろ? なんたって、ゆんゆんは上級魔法使いだぜ? 上級クエストだって片手間でやってのけるさ」
「だとしても、大名竹の単独討伐はおかしいですよ!」
「ダイミョウダケ? ダイミョウチクじゃなくて?」
カズマが、大名竹がなにか、わかっていないので説明する。大名竹というのは、春に出る精霊の一種である。普段は竹藪の中に潜んでおり、地中に張り巡らした地下茎からタケノコを凄まじい速さで射出して、縄張りに入った者に風穴を開けるという危険なモンスターだ。
鉄の分厚い鎧や盾をも貫く威力を持つタケノコだが、高級食材でもある。しかし、大名竹の縄張りから生還したとしても、そのトラウマからタケノコ料理を食べられなくなった人が大勢いるとのこと。
「……この世界の植物ってなんでこんなに物騒なのが多いんだよ」
それ以外にも、一撃ぐまの群れや、グリフォンの異常個体などの、危険かつ強力なモンスターを次々と討伐しているらしい。
「今では、孤高の
「行かないぞ、せっかく大金が入るんだ。わざわざ危ないことなんてしないよ。あと、その二つ名はやめてやれよ。よりにもよって、ゆんゆんに孤高はねえだろ」
まったく、仲間が同郷のぼっちに魔法使いとして追い抜かされているというのに……
「おい、めぐみん。あれはゆんゆんじゃないか? なにか揉めてるぞ?」
カズマが指すほうを見ると、そこには高級レストランのテラス席で食事をとっているゆんゆんがいた。しかし、テーブルには空の皿がたくさん重ねられており、ウェイターと何かを話していた。なにかあったのでしょうか?
「ま、またおかわりですか!? 大変申し上げにくいのですが、他のお客様もいらっしゃいますし……それに、これ以上となりますと、代金のほうもかなりの額になってしまいますよ?」
どうやら、あの積みあがった皿は、全てゆんゆんが食べたものらしい。そして、何回もおかわりするものだから、食糧も底が見えてきたとのことだ。
「なあ、ゆんゆんってあんな大食漢だっけ? って言うか、高級レストランっておかわりとかするような場所じゃねえだろ」
カズマが小声で尋ねてくる。確かにゆんゆんは、あんな大食いではなかった。まあ、難しいクエストをこなしているとお腹がすくのでしょうと思っていると、動きがあった。
ウェイターにおかわりを控えるように言われたゆんゆんは、テーブルの下から、お金がパンパンに入った大きな布袋を出して、ウェイターに押し付ける。そして、ウェイターのことを睨みつけた。結構、迫力ありますね……
「し、失礼しましたぁ! すぐに持って参ります!!」
ゆんゆんの睨みつけに恐れおののいたウェイターはお金をもって、奥へ引っ込んでしまった。私とカズマはその所業を見て、ちょっと引いた。
「よ、よお、ゆんゆん。紅魔の里では世話になったな。ちょうど、ゆんゆんの話をしてたんだ。最近は大活躍らしいな。」
「ええ、そうですね。こんなところで食事とは随分と、羽振りが良いじゃないですか。それに、今のやり取りを見てましたけど、良い子ちゃんはやめたんですか?アクセルの
ウェイターがいなくなった後、カズマの挨拶に合わせて、私も皮肉を投げかける。しかし、ゆんゆんはこちらを見ようともせずに、食事を続けていた。
「なあ、めぐみん。すごい堂々と無視されたんだけど、気のせいか?」
「いえ、気のせいじゃないと思いますよ? 調子に乗ってるんだったら、勝負でもしますか?」
そう言って、挑発をしたが、これも無視をされた。
「それ以上、無視をするんだったら実力行使に出ますよ。いいんですか?」
「おい、やめろ。チンピラアークウィザード。食事中に悪かったな。じゃあ、俺たちはそろそろ行くよ」
私の挑発を無視するならともかく、カズマの謝罪さえ無視をするとは。なかなか、肝が据わっていますね……そう思ったときだった。
「いたー!!!!!」
後ろから、大きな声がした。私たちが驚いて声の方向を見ると、そこには、息を切らしたゆんゆんがいた。
「えっ? ゆんゆんが二人!?」
「あっちが本物だとしたら、こっちは誰なんだよ……」
こ、これはどういうことなんでしょうか?
「つまり、ヒトの形をした友達欲しさに、ライムに擬態能力が得られるポーションを飲ませたら逃げられてしまったと?」
「……うん」
ギルドでゆんゆんの話を聞くと、ゆんゆんの元から逃げたライムは、主に擬態して勝手に高難易度クエストをいくつも受けていたらしい。そして、その報酬で高級レストランに使っていたとのことだ。ちなみに、ライムはすでに元の姿に戻っていた。
「じゃあ、大名竹をひとりで討伐したというのも、危険なモンスターを次々と倒していったというのは……」
「全部、ライムの仕業です……」
「そ、そうだったのか」
カズマの問いにゆんゆんが答える。つまりは、アクセルにいる孤高のジョーカーというのはライムだったわけだ。
「なんと人騒がせなんでしょう。というか、ヒトの姿にならずとも、十分強いじゃないですか、このスライム。」
「そうだ。それにどうして、ゆんゆんの姿になったんだ?」
「そ、それは……その、元々は女の子の姿になってくれたら、一緒にご飯を食べたり、遊んだりできると思ったんですけど、ポーションの効果の関係上、私以外には擬態できないらしくて……それでもいいかなって思っちゃって。」
「…………」
「…………」
私もカズマも絶句してしまった。拗らせているにもほどがある。もしも、二人のゆんゆんが食べさせあいっこしてる現場を見てしまったら、ひとり遊びを極めたのかと驚かれることになるでしょうに……
「あの、ゆんゆんさん。少しよろしいでしょうか」
「はい?」
受付のお姉さんに呼ばれて、ゆんゆんが席を離れていった。
「なあ、めぐみん。俺たちも帰らないか?」
「何を言ってるんですか。せっかく外に出たんですから爆裂魔法を撃ちに行きますよ!!」
そうして、カズマを連れて外に出た。
「お、王都にですか!?」
「はい、貴族の方からご指名のご依頼でして……」
驚いて、大きな声を出してしまう。どういうわけか、私宛に王都に住む貴族から依頼が来ているらしい。何かの間違いではないかと疑ったが、確かに私に対する依頼だと言われた。し、信じられない……
「ゆんゆんさん、謙遜も行き過ぎると嫌味になってしまいますよ? 現にあなたは魔王軍幹部二人の撃破に大きく貢献した上級魔法使いなんですから」
受付のお姉さんの言葉に、ギルドで私たちの話を聞いてた人たちもそうだそうだと盛り上がった。
「最近だと、高難易度のクエストをバンバン引き受けては達成してるって話じゃねえか! しかも、高レベル冒険者がパーティー単位で挑むのを推奨されてるやつ」
「で、でも、それは……」
横から入ってきたダストさんの言葉を否定しようとする。しかし、それに構わずリーンさんやキースさんも補足してくる。
聞けば、嫉妬で絡んできたチンピラ冒険者を三十人ほどボコボコにしたとか、街一番の荒くれ物を一発で倒したとか、彼らのお金で高級レストランの在庫を荒らしまわったとか……物騒な噂がたくさん出てきた。しかも、全部に目撃者がきっちりといるらしく、私がやったことになっていた。
「まさか、ゆんゆんがここまで、アグレッシブな子だったなんて思わなかったよ。さすが、紅魔族って感じ!!」
ライムゥゥゥゥゥ!!!!!
傍らにいる使い魔を睨みつける。しかし、件の相手は、気にする素振りすら見せなかった。
「では、この日に従者の方がいらっしゃるので、ギルドへお越しください」
「は、はい……」
そうして、王都へ仕事をしに行くことが決まった。
翌日、ギルドで食事をしているとダクネスさんに声をかけられた。なんでも、私とライムがこれから行こうとしている王都から、冒険話が好きな王女様がやってくるとのこと。そして、魔王軍幹部を倒したカズマさんたちや、私の話を聞きたいとのことだった。しかし、日程が例の貴族からの依頼と被っていた。
「大丈夫だ。なにも強制ではないからな。用事がないのなら仕方ない。私も最初は断ろうとカズマたちに提案したのだがな。参加をすると押し切られてしまったからな。」
なんか、わかる気がする。めぐみんなんて、すぐに故郷のノリで粗相とかしちゃいそうだもんね……そうして、ダクネスさんと軽い雑談をした後に別れた。
余談だけど、その後は竹藪の管理人をしているというおじいさんがやってきて、たくさんのタケノコと一緒にすごいお礼を言われた。神話のような戦いが見れたとか、冒険者を志していたあの頃を思い出せてよかったとなどなど……
「さすがは、孤高の
「すみません。それやめてください……」