この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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このぼっちにスライムな友人を!

「ここであったが百年目! さあ、我がライバルよ! 勝負しなさい!」

 

 しんとした空気が森の中に広がっていく。

 

「なんだか違う気がする。もうちょっと、こう……なんという偶然! 我がライバルよ! 今日という今日は、必ずや決着をつけて進ぜよう! あれ?」

 

 私、ゆんゆんって言います。本名です。いまは、森の中で勝負を挑む練習をしています。別に頭がおかしくなったとか、変なものを食べたとかじゃありません。ただ、私は今日こそ、あの子に勝たなければならないのです。だからこそ、こうして勝負を仕掛ける練習をしています。

 

“……ガサッ”

 

 近くに茂みから音がする。

 

「え!?なに……?」

 

 驚いて、声をあげてしまう。もう一度言うが、ここは森の中だ。冬であろうと寒さに負けずに活動をするモンスターも当然いる。

 私がいつでも魔法を打てるように構えていると、小さなスライムが出てきた。大きさは私の頭と同じくらいで、何の変哲もない、ただのスライムだった。

 

「なんだ、スライムか。あなた、どこから来たの? このへん、スライムの生息地からは離れてると思うんだけど」

 

 拍子抜けした私は、そのままスライムに対して話しかける。相手は逃げたり、敵意を見せることもなく、その場にとどまっている。小さくて少しかわいいなと思ってしまうのは仕方がないだろう。

 

「私ね、特訓を終えて、ライバルに成長を見てもらおうと思って、アクセルの街に戻ってきたんだ。ちなみにライバルの子はめぐみんっていうんだけど。やっぱり、ライバルに成長を見てもらうなら、勝負が一番それらしいじゃない? それで、勝負を挑む練習してたんだけど……」

 

 相手が人ではなかったからだろう、私はいつの間にか、自分のことをしゃべっていた。めぐみんに並ぶことができるように、特訓を頑張っていたこと、その道中で不思議なお姉さんにあったこと、めぐみんとアクセルの街に行く途中ですごく苦労したこと等々……堰を切ったように、たくさん話していた。

 

 

「それで、どどんこさんと、ふにふらさんがね! あっ、この二人は私の友達でね、ご飯をおごったり、宿題をやってあげてたりしてたの! そうだ、これまたあげるね! 私の話ばかりでお腹すいたでしょう?えーと、どこまで話したっけなぁ……」

 

 そして、気づいたら思い出話に花を咲かせていた! もちろん話してるのは私だけだったけど。ただ、このスライムさんはすごい親切で、私のつまらないであろう話を逃げずに、うんうんと聞いてくれている。実際は、特に動いてなかったけど。

 だけど、誰かと一緒に美味しいものを食べながら話すのって、とても楽しいのだと思い出すことができてすごく幸せな時間だった。食べてるのはスライムさんだけだったけど。

 

「たくさん話せて、すっきりした!」

 

 だけど、疑問も私の頭に浮かび上がる。

 どうして、私なんかの話を聞いてくれるんだろう。そう思っていると、今まで反応がなかったスライムさんがものすごい速さで茂みに隠れた。それと同時に、遠くから冒険者の声がする。

 

「ちくしょう、どこ行きやがった!」

 

「このへんにはいないのかしら」

 

「いや、確かにこの森に入っていったはずだ」

 

 二人組の男女冒険者だ。その人たちが私の姿に気が付くと、女性のほうが話しかけてきた。

 

「ねえ、あなた。このへんで頭の大きさくらいのスライムを見なかった?」

 

「え!? ええと、いえ、見てないです!」

 

 とっさに噓をついてしまった……

 その後、冒険者さんたちが行ったのを確認してから、スライムさんに声をかけると茂みから出てきた。

 

「あなた、追われてるんだよね?」

 

 スライムさんの動きが止まる。

 やはり、この子はモンスターなんだ。どんなに理性があろうと冒険者に狙われてしまう運命にある。こんなに小さくて、無害なスライムでも……人間からしたら、討伐対象に入ってしまう。

 

「ねえ、私と友達にならない?」

 

 気づいたら、私は声に出していた。

 

「あっ、これは別にそういうわけじゃなくて、ただ、私と友達になって使い魔登録をしたら、ほかの冒険者に狙われることもなくなるし、、ごはんにだって困らないし……待って!?怪しい取引みたいになってる! ごめん、今のは忘れて……」

 

 私が弁明をしていると、スライムさんがゆっくりと近づいてきて、私の目の前で止まる。もしかしたら、この子も私と友達になりたがっているのかも。そう考えた私は嬉しくなった。    

 

そっか! あなたも私と友達になりたかったのね! そうと決まれば……

 

「名前! あなたの名前を決めなくちゃね! スライムだと他人行儀な感じがするし!」

 

 そう、名前だ。野生のスライムだから名前なんてなかっただろうし、この際だから、呼び名だけでも決めておいたほうが便利だと思った。

 

「うーん、スライムだからスラちゃん?は安直すぎるか、さすがに」

 

「スライム、スライム……あっ、ライムはどう?スを外しただけ、だけどそれっぽいんじゃない?」

 

 スライムさんに、確認を取ってみると、うなずいたように見えた。

 

「よろしくね、ライム!」

 

 

 

 

「うおおおおおお!!!!!」

 

 わたくし、サトウカズマです。 今、すっごいピンチに陥ってるところです!

 

「おい、アクア! もう一回囮になってジャイアントトードをひきつけろ! 囮の数が少なすぎる! ここはもう、セナさんも囮にしてこの場を切り抜けるしかない!」

 

「嫌よ! もうカエルに食べられたくない! あんたが囮になりなさいよ!」

 

「そしたら、攻撃できるやつがいなくなるだろうが!」

 

「私は、あなたの監視をしているだけなので、囮になる必要が……」

 

 言い争いをしていると、奴の舌がものすごい速さでセナさんを連れて行った。

 

「きゃああああああ!!!!」

 

「今のうちよカズマ!まずは、あいつを仕留めて……」

 

 もう一匹のジャイアントトードがアクアを舌で絡めとり、そのまま口の中に入れる。

 

「いやああああああ!!!!!!」

 

「お、お前らああああ!!!」

 

 しかも、もう一匹が俺のところにゆっくりと迫ってくる。今までは、食事中のジャイアントトードは動かないという習性をつかって倒していたのだ。勝てるわけがない! こんなときにダクネスがいたら!

 

「もうダメだあああ!!!」

 

 ここまでかと思った、そのとき……

 

「ライト・オブ・セイバー!」

 

 光の剣がジャイアントトードたちを斬り倒した。声がしたほうを見ると、そこには赤い瞳に黒髪の……かなり成長期な少女がそこに立っていた。

 

 

 

 ジャイアントトード討伐が終わった後、俺はめぐみんを自力で歩けるように魔力を分け与えたり、アクアやセナさんを助けたりした、そして今

 

「わ、我が名はゆんゆん! アークウィザードにして、上級魔法を操るもの!やがては紅魔族の長となるもの!」

 

 ゆんゆんが恥ずかしそうにしながらも、無事に紅魔族流の名乗りを完遂するところを見届けたのだった。

 

「というわけで、めぐみん! 我がライバルよ! 私と勝負よ!」

 

「とまあ、この子はゆんゆん。族長の娘で私の自称ライバルです。こうして、よく勝負を挑んでくる困ったちゃんではありますが仲良くしてあげてください。」

 

「ちょ、ちょっと軽く流さないでよ!」

 

 見事に、めぐみんの手のひらに踊らされているが、彼女は名乗りの通り、上級魔法を使って俺たちを助けてくれたのだ。お礼を言うと、自分のライバルがカエルに負けたとなれば、自分の面目もつぶれるからということだった。

だが、俺が普通に自己紹介を返すと、自分の名前を聞いても笑わないと言って喜んでいた。なんだ普通の女の子じゃないか。

 

「ねえ、カズマさん……あれ」

 

「うわっ、なんだよお前。びっくりしたぁ」

 

 俺が、二人をほほえましく思っていると、後ろから、ねっちょりとしたアクアが低い声で話しかけていた。

ホラー映画かよと思いながら、指されたほうを見ると、どういうわけか、あのときのスライムがいるではないか。俺たちは、奴にこっそりと近づく。

 

「よお、スライム。よく俺たちの前に顔を出せたな……」

 

「さあ、スライムちゃん?いい子だから、そのまま動かずに倒されてね……」

 

 そして、あの雪辱を晴らすために戦闘態勢に入った

 

「あれ? ライム!? ちょ、ちょっとその子は……」

 

「隙あり! あなたもヌルヌルになるといいですよ! ハーハッハッハッハ!」

 

「い、いやあああ!」

 

 ちなみに、あっちはあっちで楽しんでいるようだった。

 

「あのときはよくもやってくれたな、この野郎!!!!」

 

 恨みを込めて、剣を思い切り振り下ろすが、ひらりと躱されてカウンターのタックルをみぞおちに食らってしまった。

 

「ぐっふぉぉ!!!」

 

 変な声を漏らしながら、吹っ飛んだ俺は雪の上で息苦しさと痛さでうずくまっていた。

 

「よくもカズマをやってくれたわね! 言っておくけど、私をあんなヒキニートと一緒だと思ったら、痛い目見るわよ! ゴッドレクイエム!!!!」

 

 アクアがスライムに殴り掛かる!しかし、ひらりと躱されてしまった。

 

 スライムの攻撃。突き上げるかのようなタックルをかます。すると、きれいな弧を描いたアクアが

 

「いや、ちょっ! 待って!」

 

 べしゃりと、カエルの体液があった水たまりの上に落ちていった。

 

「……うわぁ」

 

 これには俺もさすがに同情せざるを得なかった

 

「サトウカズマ、これもあなたの演技という可能性もありますので、引き続き監視はさせていただくので」

 

 そう言って、セナさんは帰っていった。この状況に一人取り残されるのは、すごく嫌なのだが……

 

「降参っていったのにぃ!」

 

「また勝ち!」

 

「びええええええ!!!!また汚されたぁぁぁ!!!」

 

 控えめに言って、地獄絵図だった。カエルの粘液に濡れてないのは俺と、あのスライムだけだ。なんなら、無傷であるという点では、あいつの一人勝ちだった。

 

「カエルくっせ」

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