この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この箱入り王女に悪友を!

「あのぅ、レベル30以下の方の参戦はちょっと……」

 

 城の近くの広場で、受付のお姉さんに遠回しに戦力外だと言われる。意気揚々と参上した俺は、すごく大恥をかいていた。

 魔王軍襲撃のアナウンスが届いたとき、当然のことながら参戦する気など毛頭なかった。実際、ダクネスから参戦しようと言われたが断固として聞かなかった。しかし、改めて考え直してみると、アイリスに良いところを見せるチャンスではないかと思った。そうであれば、ひきこもってなんていられるか、と泣いて駄々をこねるアクアを引きずってきた。

 来たのだが、結果は冒頭の通り、レベルが足りず門前払い……すごく恥ずかしい!! そんなことを思っていると、クレアがこちらへ来た。

 

「構わない、その男は数々の実績を持つものだからな」

 

 そして、助け舟を出してくれる。

 

「聞いたぜ、あのデストロイヤーを討伐したんだってな!」

「アルカンレティアでは、デッドリーポイズンのハンスも倒したって聞いたぞ! さしずめ、アクセルの勇者サトウカズマってところだな」

 

 周りの俺の過去の戦績を知っている冒険者たちからべた褒めされる。まったく、そんなに褒められても、シュワシュワしか出せないっての

 

「落ち着きたまえよ。伝説が作られるのはこれからなんだから」

 

 髪をかき上げて言うと、一気に士気が上がった。うん、やっぱり、めっちゃ気持ちいいわこれ。クレアが剣を掲げて、出撃の合図を出した。

 

「魔王軍討伐隊! 出撃!!!」

 

 

 

「あの……その、お久しぶりです。エリス様」

 

 俺は死んでしまった。エリス様との間に気まずい空気が流れる。途中までは良かったはずなのだ……途中までは。

 

 

 

 王都に向かってきている魔王軍は東西の二つに分かれていた。そして、俺たちが担当をしたのは比較的規模が小さい東の軍の相手だった。そこでは、雑魚の代名詞であるコボルトに頭をかじられているアクアを狙撃で助けたり、深追いしすぎて、大勢のコボルトにタコ殴りにされそうなところを囮スキルを使って走り回ってたダクネスに助けられたり、最後はめぐみんが敵の将軍を爆裂魔法で吹っ飛ばして終わらせた。

 

俺の戦果はプリーストにへばりついてたコボルト一匹だった。

 

 ……これはまずい。このままでは王宮暮らしの再開なんて言ってる場合じゃない、愛しの妹のアイリスにガッカリされてしまう。それだけは避けなければならない……お兄ちゃんとして、すごいところを見せなければ!!! 

俺は必死になって周りを見渡した。手柄になるものはないかと探し回っているとき、ある情報が飛び込んでくる。

 

「応援要請! 応援要請! 現在、西で魔王軍と対峙している王都軍が苦戦しているとのことです!!」

 

「なんだと!? あっちにはミツルギ殿がいたはずでは!?」

 

 クレアが驚きの声をあげる。伝令兵が言うには、あちらの将軍が魔物使いらしく、上級職パーティーでも苦戦するような強力な魔物を大量に従えているらしい凄まじいやつらしい。

 

 

「だが、こちらも怪我人が多すぎる! 応援に行かせるほどの兵力は……」

 

「では、私たちが向かおう」

 

 クレアが困っていると、ダクネスが名乗りを上げる。片手にはアクアの首根っこを掴んでいる。すると、こちらに一瞬、視線を寄越してきた。おい、まさか……

 

「私たちはいくつもの苦難を乗り越えてここにいる。めぐみんはここに置いていくしかないが、この男も最弱職ではあるが頭が回るほうですから。相手の魔物使いに劣ることはないはずです」

 

 

「い、嫌よ! あっちって、強い冒険者たちが苦戦してるところなんでしょ!? なんで私たちが、そんな危ないところに行かなきゃいけないのよ!!」

 

「そうだぞ! 相手は天下の魔剣使い様を苦戦させるような奴だぞ。冷静に言って俺らが行ってなんとかなる相手じゃねえだろ」

 

 喚くアクアに続いて、俺もダクネスに耳打ちをする。一発限りではあるが、上手くいけば盤上をひっくり返すことができる爆裂魔法使いも、魔力切れで使えない状況だ。

 

「良いのか?」

 

「え?」

 

 ダクネスが神妙な面持ちになって聞いてくる。

――何がだよ、っていうかいきなりなんだよ、怖いな。そう思っていると、ダクネスが続ける。

 

「このままでは、お前だけ武功がないままだぞ。これでは、アイリス様に良いところなしのままだが、本当にいいのか?」

 

 ――はっ!! 俺は雷を撃たれた感覚になった。そうだった、俺は功績をあげてお城暮らしに戻るためにこの戦いに参加したのだ。それなのに、ここで引いたら俺はアイリスのお兄ちゃんではなくなってしまう!!!

 

「よし考えが変わった! 早速ミツルギたちを助けに行くとしよう!!!」

 

「カズマ!!」

 

「嫌よ!! そんな危ないところ行きたくない!!!」

 

「うるせえ!! さっさと行くぞ!!! 相手の知将とやらにも興味があるしな。魔王軍幹部を相手取ってきた俺の頭脳を舐めんじゃねえぞ!!!!」

 

 泣き言をいうアクアに喝を飛ばして、俺は意気揚々と第二の戦場へと足を運んだ。

 

 

「もう倒されてますよ、敵の将軍」

 

「……は?」

 

衛生兵に言われた言葉に、俺は思わず聞き返した。どういうことだろう? 俺は応援要請があったから来たはずなのだが……

 

「それがですね、ちょっと前に討伐されたんですよ」

 

 どうやら、俺たちが応援要請の報告を受けているときに、ある冒険者が奇襲に成功して魔法で大将を丸焦げにしたとのことだ。どうやら、無駄骨だったらしいな。これで俺の戦果もなくなり、今度こそお城ぐらしさよならというわけだ。

 

「ただ、魔物使いがいなくなった今、新たなる問題として制御がきかなくなった魔物をどうするかが出てきていまして……」

 

「ファイヤーボール!!」

 

 衛生兵の話を聞いてるときに、大きな声と共に爆発音が聞こえてきた。爆裂魔法程ではないもののかなり大きな音だ。千里眼で見てみると、そこには見知った紅魔族の少女がいた。

 

「あれは、ゆんゆんじゃないか!! 魔物に囲まれてるぞ!!!」

「なんだと!?」

 

 俺たちはゆんゆんを助けるために走っていく。途中、他の冒険者に止められそうになったが振り切ってひたすら走った。

 

「とりあえず、俺は潜伏スキルでゆんゆんのところまで行ってくる。お前は囮スキルでモンスターたちの気を引いてくれ!」

 

「わかった。気をつけろよ!!」

 

 ダクネスと別れて俺はこっそりと魔物の群れに入ろうと潜伏スキルを使って近づいていく。そして、ゆんゆんの背中が見えたとき……

 

「ライム、お願い!!」

 

――俺はエリス様と向かい合っていた。

 

 要するに、ゆんゆんが魔物に囲まれていたのは作戦の一環であり、あのオークを一掃させたウォーターカッターによる大規模な広範囲攻撃に、ゆんゆんがピンチだと勘違いして突っ込んだ俺が巻き込まれてしまったのだ。あれだけ、ドヤ顔でかっこつけていたというのに、まさかのオチがフレンドリーファイヤーとは……恥ずかしぃぃぃよぉぉぉぉ!!!!!

 

 

 

 

 

「本当に、ごめんなさい!!! まさか、カズマさんがあの中にいたとは知らなくて……!!」

 

 私は、生き返ったカズマさんに全力で頭を下げた。その拍子に頭上にいたライムが地面に落ちる。ついにやってしまった……生き返りはしたけれど、ライムがついに人を殺めてしまった……!!

 

「いいよいいよ、よく確認せずに突っ込んだ俺も悪いし、潜伏まで使ってたから気づかなくて当然だよ」

 

「そうだな、私も早とちりしてしまった。ところでカズマ、上半身と下半身を真っ二つにされたようだったが、どういう感覚だったんだ? 痛かったか? 苦しかったか? あの攻撃、私の防御力をもってしても防ぎきれるかどうか……だが、意識はあるだろうな。くっ……! 私はきっと痛みと苦しみに悶えながら、醜い姿をさらすことに……ひぅん!!」

 

「お前はもう喋るな!!!」

 

ダクネスさんが早口で何かを言っていたけど、私にはわからなかった。

 その後、私は宿でクリスさんと合流して、少しお話した後に眠った。

 

 

 

 次の日、私は夜に行われる冒険者を労うための戦勝パーティーに参加することになった。王都に来てから二回目のパーティー、しかし、今回はドレスコートとかは特にないらしい。それで、日中は暇なので王都をライムと一緒に散策することにした。のんびりとした感じのアクセルの街とは違って活気にあふれていて、人がたくさんいた。魔道具店にはいってみると、どれもこれも品質が良いものばかりだった。だけど、良いものは高いというべきか、王都の仕事をいくつも受けないと買えないような値段だった。

 その後は鍛冶屋に行った。前に戦ったタカイドリ、クリスさんによるとその爪を加工してナイフや剣にできると言われたので鍛冶屋さんに頼んで、オスの爪はナイフに、メスの爪は剣にしてもらうことにした。今回はその進捗を見に来た。

 

「ごめんよ、お嬢ちゃん。ナイフはできてるんだけど、デカいほうはまだでね。爪がこれまた、とんでもない硬さでね……」

 

「い、いえ、大丈夫です! 急ぎじゃないので! それに時間がかかるかもとは聞いていましたから」

 

「そうかい? じゃあ、できたらアクセルの街に送っておくからよ!」

 

 とりあえず、ナイフだけ受け取って鍛冶屋を後にした。めぐみんに何かお土産を買ってきてあげようと思ったとき、昨日のことを思い出した。あのときは色々なことがあって気づかなかったけど、なんでカズマさんたちが王都にいたんだろう? めぐみんとは会ってないけど来てたりするのかな?

考え事をしながら歩いていると、いつの間にかお土産屋さんが見えてきた。だけど、なにか揉めている様子だった。

 

「私をだれか知らないようですね! 昨夜の魔王軍との戦いで将軍を討ち取った紅魔族随一の魔法使いのことを!!」

 

「いえ、ですから例えあなたが誰であっても値切ることはできませんよ。これが適正価格なんですから」

 

「そこをなんとか……!」

 

 知り合いだった。同じ里で育ったライバルがボッタクリでもなんでもない普通のお店で値段交渉をしていた。

 

「ねえ、何やってるの?」

「げっ、ゆんゆん……」

「こんなところで会うとは奇遇ね。それはそれとして、何やってるの!」

 

「ちょっと値段交渉を……」

「ここは、そういうお店じゃないでしょ!!!」

 

 私はめぐみんを叱りつけた。

 

 

「まったくもう、あまり人に迷惑かけちゃダメなんだからね」

 

 私たちはお土産屋さんで買ったお饅頭を食べていた。傍らにはカズマさんもいて、どこかお上品な感じで食べている。隣で同じくお饅頭を食べているライムのことが気になるのかチラチラ見ていた。そして、私と目があったとき、合点が行ったような顔をして目をキラキラさせた。

 

「ねえ、めぐみん。カズマさんどうかしたの? なんか様子が変じゃない?」

「まあ、ゆんゆんになら話しても良いでしょう。実は……」

 

 めぐみんの話によるとカズマさんの身体と知り合いの女の子の身体が入れ替わったとのこと。それで、せっかくなので社会勉強も兼ねて街を歩くことにしたとのこと。誰と入れ替わったのかは深く教えてもらえなかったけど、ところどころの所作の良さから、どこかのお嬢様かもしれないと私は推測をした。

 

「初めまして! 私はこの国の……どこにでもいる女の子のイリスです! あなたがゆんゆんさんですよね! とても強いスライムを連れている紅魔族だとお兄様から聞きました!!」

 

「そ、そうなんだ。ありがとうございます……」

 

「スライムの使い魔なんて珍しいですね。しかも、こんなに小さいのに魔王軍の幹部とも渡り合うだなんて信じられません」

 

「結構、自我が強い子だからあまり言うことは聞かないんですけどね、あはは……」

 

 どうしよう、相手が年下の子だってわかってるのに、見た目がカズマさんだからか敬語になってしまう。っていうか、その見た目でその言葉遣いはちょっと慣れないというか、気持ち悪いのでやめてほしい……身体がすごくムズムズする。その後はお店を見て回ったり、私とライムの冒険話をした。とはいっても、ほとんどカズマさんが話していたから面白味はなかったと思うけど。

 

 

「この野郎! 兄貴にぶつかっておいて謝罪もねえのかよ、コラ、アン?」

「おや、ちょうどいいですね! これから喧嘩の買い方を教えてあげますよ」

 

 いかにもな輩と喧嘩をしようとしていた。なんでこうなるかなぁ……!!

 

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