この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この盗人団に祝福を!

 アイリスと入れ替わった俺は、お城で贅沢三昧を享受した。それで俺はアイリスの王女パワーとロリボディを使ってクレアやダクネスと混浴をしようと画策した。わかっている、今からやろうとしていることはただの変態行為だ。そんなことは分かっている。しかし、男というものはバカなんだ、バカだから男なんだ…………そんなことを思っていました。

 

 なにが神器だ。こんなに早く効果が切れるなんて……

 

「エリス様ぁ!! こんな寸止めやめましょうよぉ!!!!」

 

 俺は気づけば、むさくるしい男に馬乗りで殴られていた。

 

 

「ねえ、カズマさん。私によくバカって言ってるけど、正真正銘のバカなのはカズマさんなんじゃないの?」

 

「違うんだよ! 城を歩いてるといろんな人にペコペコされるから、自分は何をしても良い存在なんだって思っちゃって……」

 

 俺は戦勝パーティーの会場でアクアに詰められていた。アイリスもあんなに怒るなんて……お兄ちゃん生きていけない。ちなみに、俺を殴っていたチンピラはめぐみんとライムがボコボコにしていた。

 

「サトウカズマ」

 

 クレアが近づいてきた。

 

「アイリス様は先にお休みになられた。これでお別れだな、せいぜいパーティーを楽しむといい…………楽しめるものならな」

 

 軽蔑の目を向けられて、耐えきれなくなった俺は涙目で宿に逃げ帰った。なんなんだあの女!! 俺も悪かったけど、むしろ俺が悪かったんだけど!! ちくしょおおおおおお!!!!

 

――こつんと窓に何か小さいものが当たる音がした。

 

 開けて覗いてみると、クリスがこっちに向かって手を振っていた。

 

 

「何度来ても答えは変わらないからな。絶対に嫌だ」

 

「まあまあ、そう言わずにさ」

 

「ちなみに一応言っておくと、身体を入れ替える神器は城にあった。だけど、あんなの危険はないと思うぞ?」

 

 そう言うと、クリスの表情から飄々としたものがなくなる。

 

「あれはね、入れ替わってる最中に相手が死ぬと、もとに戻らなくなるんだ」

 

 なに? それって使い方によればヤバいことにならないか?

 

「つまり、悪用すれば不老不死にだってなれるんだよ。若い体に入って相手を殺せばいいんだから」

 

 シャレになってねえぞ……そして、それをアイリスが持っている。

 

「急いでお偉いさん方に伝えねえと……!」

 

「やめたほうが良い。そんなものがあると知れ渡ったらどうなると思う? 間違いなく、国中の貴族が神器を狙ってくるよ」

 

 そうだよな、この国の貴族が永遠の命を前にして倫理や道徳を取るとは思えない。アイリスに危険が迫っている……

 

「しょうがねえなぁ……ちょっくら城に遊びに行こうかな」

 

 俺はいつの日かもらったバニル仮面を顔につけた。

 

 

 

 城にはすんなりと入り込むことができた。皆、パーティーに浮かれていて警備が薄くなっていたからだ。

 

「お頭、油断は禁物だぜ。城内には一応上級職の冒険者もいるんですから」

 

「わかってるよ。ところで、助手君なんか近くない?」

 

「油断は禁物ですぜ。ほら、もっと詰めて!!」

 

「わかったから……潜伏スキルがあるんだから、そんなくっつかなくても……ちょ、ちょっと……」

 

「これも世界を救うためですから!!」

 

「そのうち、女神エリス様の天罰が下るよ!!!!」

 

 見つかってしまった。お頭が大声なんて出すから!!

 

「とりあえず、足止めとして……クリエイト・ウォーター! からのフリーズ!」

 

俺は床に即席の氷床を作った。警備兵が次々と転んでいく。よし、決まった!! しかし、まだ追ってくる兵士が多い。

 

「助手君! いったんこの倉庫に逃げ込もう!!」

「お、おう!!」

 

 兵士が走っていく音を聞いて一息ついた。大変な目に遭った……そのとき、服の裾を掴まれる。掴んでいるのはお頭だ。すごく青い顔をしている。どうしたのかを聞くと向こうを指さしたので、そっちのほうを見ると……

 

――ゆんゆんが警備兵に胸に剣を突き刺しているところだった。

 

 ドクドクと口から出た液体が赤い水たまりを作る。サスペンスのような殺人現場に出くわしてしまい、自分の顔から熱が引いていくのが分かる。やばい、オークの件で耐性がついたかと思ってたけど、やっぱり大量の血を生で見るのは全然慣れない……

 

「きみ、スライム君だよね? まさかとは思うけど、ソレは君がやったの?」

 

 相手は答えない。無表情なまま俺たちのことを見ている。

 

「沈黙は肯定と捉えるよ」

 

 クリスは腰のナイフに手を添えて、臨戦態勢を取っている。俺のほうも魔法がいつでも撃てる様に手を少し前に出す。しかし、相手はライムだ。何かあれば俺たちは抵抗をしても瞬殺だ。刺激をしないようにする必要がある。

 

「なあ、ライム。俺にはお前が理由もなく人を殺すとは思えないんだ。初めて会ったときも誰も殺さなかったじゃないか。その、良かったら理由を教えてくれないかなぁ、なんて……」

 

 まさか、戦場で俺を真っ二つにしたときに殺人衝動が生まれたんじゃないだろうなぁ? と思いながら恐る恐る声をかける。するとライムはゆっくりと兵士に刺さっている剣を抜いていく。胃からせり上げる酸味を無理やり飲み込む。これはダメな奴かと思ったとき、ライムがその剣で仏さんの兜を外した。そこには、虚ろな目をした髭を生やした男の顔があった。

 

「あっ、この人ってもしかして魔王軍の幹部候補じゃないの!?」

 

「なんだって!?」

 

「手配書で見たことがあるよ。ウォルバグの信者でダーククルセイダーだよ」

 

 まさかの魔王軍のスパイだった。いつの間に紛れ込んだのか、ライムはこいつとたまたま接触して、そのまま剣を奪って殺したらしい。さすが、モンスター……容赦や慈悲なんて会ったものじゃない。って、ライムの行動にドン引きしてる場合じゃない。

 

「もしかしたら、こいつの他にも魔王軍のスパイが城内にいるんじゃないのか!? 俺の妹に危険が迫って……」

 

 そのとき、外で爆発音が聞こえた! な、なんだ!?

 倉庫の窓から千里眼で外を見ると……野菜や果物が縦横無尽に飛び回っていた。

 

「な、なんじゃこりゃああああ!!!!!」

 

 叫ぶと同時に敵感知が反応する。それと同時に何かが窓をつき破ってきて、それをライムが掴んで、握りつぶした。飛んできたのはトマトだった。どうやら、ここまで高速で飛んできたらしい。ライムは握りつぶしたそれを食べ始めた。グルメな奴め。

 

「おい、こっちの倉庫から大声が聞こえたぞ!!」

「出てこい!! お前が犯人だということは分かってるぞ!!!」

 

 やばい、気づかれた! っていうか、あの爆発の犯人だと思われてないか!?

 

「ねえ、スライム君。今から私たちと協力しない? こうなった以上、きみの武力が必要な状態なんだ。それに、君はスパイだったとはいえ警備兵を殺してるから逮捕されると厄介なことになるんじゃない? 主にゆんゆんがだけど……」

 

 ライムは少し考えるそぶりをした後、光ったかと思うと、服装が全然違うものになっていた。黒装束に真っ黒な仮面をつけており、フードの中が真っ暗な闇に埋もれているようだった。なんか、妙に慣れてるな。

 

「スライム君っていうのもアレだし、ブラッキー君って呼ぶことにするよ」

 

「いや、全員黒っぽい恰好なんですけど」

 

 そうして、ライムもといブラッキーが仲間になった。

 さっそく、扉の向こうにいる兵士たちを蹴散らしてもらうことにする。俺たちが両側から扉を開けた瞬間、ブラッキーは床がめり込むほどの踏み込みをして、鉄山靠で兵士どもをぶっ飛ばした。お前、八極拳が使えたのか……

 

「とりあえず、まずは走りながら状況を整理していこう」

 

「了解だぜ、お頭」

 

 推測交じりではあるが、状況を整理すると三つの勢力に分けることができた。

まずは城内を警備する兵士と冒険者たち

次に俺たち義賊

最後に魔王軍のスパイだ。

おそらく、先の戦争で城内に入り込んだスパイが食料庫を爆破した。中にはたくさんの高級食材が魔法で眠らされていたとのことだ。その高級食材が大暴れしているため、城内は混乱状態となっている。そして、その事件を城の人間は俺たちがやったことだと思っている。やっぱり、この世界頭おかしいな

 

「目標は神器の回収、そこは変わらないよ。だけど、私たちが爆破をしたと思われている以上、兵士や冒険者はもっと苛烈に追ってくると思うよ。それに高級食材も襲ってくるだろうから、そこはもうブラッキー君に任せるしかないね。アルダープ邸のときの分まで食べちゃっていいよ!!」

 

 ん? アルダープ邸のとき? そういえば、お頭って俺の他に仲間がいたよな。血も涙もないような奴で、屋敷の壁とか塀をぶち壊した化け物みたいなやつ……前を走るブラッキーを見て色々と納得をした。

 

 

 そうこうしているうちにアイリスの部屋がある最上階までやってきた。おそらく、食材の討伐に冒険者たちが駆り出されているせいか、警備が手薄になっていた。中庭を突っ切っていく。

 

「ライトニングストライク!!」

 

 雲すらないのに上から雷が落ちてきた。しかし、ブラッキーが剣でそれを受け止める。粉々に折れてしまったが、俺たちは丸焦げにならずに済んだ。だが、問題は俺たちの前にいる冒険者だ。

 

「わ、我が名はゆんゆん! 紅魔族の上級魔法使いにして、やがて長となるもの!! おとなしく捕まりなさい! さもなくば、私の魔法が……」

 

 相手の警告も待たずにブラッキーが凄まじい速さでゆんゆんに肉薄する。ゆんゆんは咄嗟に反応できない。そして、みぞおちに抉るようなアッパーを決めた。

 

「……ぅぐぉ」

 

 ゆんゆんは聞いたこともないようなうめき声を出しながら、身体をくの字に曲げる。ブラッキーはすかさず、後頭部に肘を落として完全に意識を奪った。一瞬の出来事だった。

 

「や、やりやがった!!! 自分の主人に躊躇なく手を上げやがったぞコイツ!!!」

「な、何してんのさ!! いまのはバインドとかで良かったやつじゃん! 頭をぶん殴ってたけど後遺症とかないよね! 大丈夫だよね!!」

 

 俺たちがゆんゆんは大丈夫なのかと騒いでいると兵士や冒険者がぞろぞろと集まってくる。とりあえず、ゆんゆんを柱にもたれかかるように座らせて、先へ進もうとしたとき、ブラッキーが消えた。

 

「な、なんだ!?」

「助手君、あれ!!」

 

 お頭が指したほうを見ると、巨大なかぼちゃがとんでもない速さでライムを轢いていった。うーん、因果応報……

 

「よし、ブラッキー君のことは置いていこう。彼ならなんとかするでしょ!」

 

 こっちも大概だな……

 

 

「ワイヤートラップ!! これでこっちには追ってこれないはずだよ」

「おぉ!」

 

 俺はお頭の盗賊らしいスキルに感心する。だけど、それがあるなら、もっと早く使って欲しかったな。何はともあれ、アイリスの部屋に通ずる踊り場に侵入することができた。

 

「自ら退路を断つとはな! 賊め、城をめちゃくちゃにしおって……!!」

 

 クレアの恨みが込もった声が響き渡る。どうやら待ち伏せされていたらしい。

 

「まずいね、囲まれてる。ブラッキー君もいないし、この人数を相手するのは……脱出しないと」

 

「待ってくれ! 明日には王都を追い出されるから今日中に何とかしたいんだよ!!」

「きみって、そんな熱血だったっけ!?」

 

 言われて気が付いた。俺ってこんなに熱くなるタイプだっけ? いや、もっとクールなはずだ。落ち着け……落ち着いて考えるんだ。アクセルの帰れば遊んで暮らせるんだ。だから、今脱出しても……そのとき、アイリスとの思い出が蘇った。

 

「お頭。俺、たった今から本気出すわ」

 

 襲い掛かってきた、クレアの渾身の攻撃をかわしてドレインタッチで生命力を奪う。それを皮切りに襲ってくる兵士たちにあらゆるスキルや魔法を使って無双した。

 仮面の力なのかすごく調子が良い。絶好調である! 実に絶好調である!!

 

「バインド! クリエイトウォーターからのフリーズ! またバインド! ドレインタッチ! フハハハハハ!!! 愉快愉快!!!」

 

「ライトニン……」

「させぬわ! ソゲキ!!」

 

 弓でレインの杖の魔石を打ち抜く。これで魔法が使いにくくなるだろう。実に気分が良い、まるで主人公にでもなったような気分だ。

 

「苦戦しているようですね」

 

ワイヤートラップが破られる。視線を向けると奥から、いけ好かない魔剣野郎が出てきやがった。

 

「彼の相手は、僕がします」

「クレアさんたちは少年の相手をお願い致します」

 

 そう言って、奴は髪をかき上げる。イケメンである! 実にイケメンである! 気に入らん!!

 

「ミツルギ殿! しかし、暴れ狂う食材のほうは良いのですか?」

 

「それは他の冒険者に任せてあります。盗賊団の一人が食材たちと戦っているようですから、少し卑怯ではありますが、戦い終わって疲れたところを捕まえます」

 

「……ねえ、私ってそんなに男っぽいかな?」

 

 体型がスレンダーだからですかね? それはそうと俺はミツルギと一騎打ちをすることになった。我輩に戦いを挑むとは……俺はスティールの構えを取る。

 

「それは窃盗スキルの構えだね。悪いが僕はある男に負けて以来、スティール対策をしているのさ!」

 

 迫ってきたミツルギに、俺はスティールと叫ぶ。しかし、俺の手には何も握られていない。

 

「無駄だよ! って、あれ? け、剣が……!」

「スティールと見せかけてのFreezeソードマスターと正面からやりあうわけがないだろ馬鹿め! さらに、Freeze!」

 

 俺は床を凍らせて、ミツルギを滑らせた。そして、あおむけの状態で俺の前に来た奴にクリエイトウォーターで水を大量に飲ませた後にフリーズで気道を塞ぐ。

 

「その男をさっさと看病するが吉である!! ではさらばだ!!!」

 

 俺は高笑いしながら踊り場を後にした。順調! 順調!!そのままの勢いでアイリスの部屋まで走り、扉を開ける。すると、そこにはダクネスが立っていた。

 

「そこまでだ、侵入者よ。国を守り、民を守ることこそが私の役m……」

 

 扉を閉める。まずい、本当にまずい……

 

「ど、どうしよう助手君!」

「こら、閉めるな! 貴様らの狙いはなんだ……」

 

ダクネスと目が合ってしまった。相手からの反応を察するに完全にバレたと言っていいだろう。どうしよう……本当にどうしよう…………そんなことを思っているとアイリスが姿を見せた。手にはレイピアを持っている。

 

「賊たちよ。よくぞここまでたどり着きました。私も勇者の血を受け入れてきた王族の一人。この指輪にかけて、あなたたちを……」

 

「下がっていてください! あなたたちの相手はこの私が……」

 

 めぐみんがアイリスの言葉を遮る。しかし、俺たちの姿を見た瞬間に腰を抜かしてへたり込んだ。

 

「か、カッコよすぎます……どうしましょう! 黒装束に仮面なんてわかっているにもほどがあります!!」

 

 奥には泥酔したアクアもいる。どうやら、俺の仲間がオールスターで集合していたようだ。何やってんだよお前ら……

 

「アイリス様ぁ!! ご無事ですかぁ!!!」

 

 クレアたちも後ろから来やがった。このままじゃ挟み撃ちだ! そう思ったとき、遠くから何かがものすごい勢いで飛んできた。凄まじい、轟音と共に砂煙が立ち込める。

 

「うぅ……な、なんだアレは…………にん、げん で は 勝て、ない……」

 

飛んできたのは、まさかの人だった。兜の中からくぐもった声が聞こえた。飛んできたほうに目を向けると……

 

「な、なんじゃありゃぁぁああああああ!!!!!!」

 

 そこには巨大な、巨大な野菜と果物でできたゴーレムが立っていた。

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