この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この素晴らしい紅魔の少女にダンジョンを!

寒さが和らぎはじめ、冒険にはいかずとも、お酒を飲む人で賑わっているギルドの酒場。その隅っこで私はチビチビとご飯を食べていた。ちなみに、ライムはお水を十杯ぐらい飲んでいる。

 

「誰も話しかけてこない……」

 

 ライムが十一杯目の水を飲み始めたのを視界の端で捉えながら、独り言をつぶやいた。めぐみん達は、ちょっと遠いところのダンジョンに仕事をしに行っており今日はいない。そして、私も特にやることがないため、ギルドで誰か話しかけてこないか待ってみるけど、結局誰も来ることはなかった。

 さてと、私はご飯が食べ終わり、ライムも水を飲み終わったみたいなのでウィズさんのお店で買い物でもしようかと思ったとき。

 

「ねえ、君だよね? あの馬車狩りのスライムを従えた魔法使いっていうのは」

 

銀髪の女の子が話しかけてきた。あまりしゃべったことがない人だ。

 

「そうですけど、あなたは?」

 

「ああ、名乗らずにごめんね、私はクリス。盗賊をやってるよ。それで、君は?」

 

 尋ねられてしまった。やっぱり、恥ずかしいけど……

 

「わ、我が名はゆんゆん! アークウィザードにして上級魔法を操る者!」

 

 ギルドの中が静まり返る。皆の目線が私に集まってきて、顔が熱くなった。

 

「やっぱり紅魔族の子か! よろしくね、ゆんゆん!」

 

 あれ? 私の名前を聞いても笑わない人だ……!

 

「ねえ、ゆんゆん、よかったら手伝ってほしい仕事があるんだけどいいかな? 最近見つかった中級のダンジョンになるんだけど」

 

 しかも、パーティーに誘ってくれるなんて……!

 

「よろこんで!」

 

 

 

「そこ、踏んだら罠が発動するから気を付けて」

 

「は、はい!」

 

 ダンジョンに潜るのは、初めてだった。だけど、クリスさんは慣れているようで、的確に指示をくれる。ちなみにライムはどういうわけか、自分で罠や魔法のトラップを避けていた。本当にどうやってるんだろう……後でウィズさんに聞いてみよう。

 

「ゆんゆん、気を付けて! ガーゴイルだよ!」

 

 そんなこんなで、ダンジョンを進んでいくと、ガーゴイルが二体現れた。里にいた頃を思い出す。あのときは何もできなかったけど、今は違う。

 

「ファイアーボール!」

 

飛び上がる前に、翼を中級魔法で攻撃する。そして、飛べなくなったガーゴイルとの距離を一気に詰める。相手は太い腕を振るってくるが、それを躱して一閃

 

「ライト・オブ・セイバー!」

 

光の剣で斬り捨てた。もう一体はライムが相手をしている。

 

 飛び上がったがガーゴイルはライムを狙い、急降下しながら爪で攻撃をする。しかし、ライムはそれを簡単に躱して、思い切り体当たりをした。

いくら小さいといえど、高級食材を食べてレベルを上げ続け、腕利きの冒険者を相手にしてきたスライムだ。ただの体当たりであろうと、本気を出せばかなりの威力になる。

 

 ものすごい音を立ててガーゴイルは壁にめり込み、動かなくなった。

 

「君たち、すごいね」

 

ガーゴイルをあっという間に倒した私たちを見て、クリスさんは褒めてくれた。

 

 

「やっぱり、君たちを連れてきて正解だったよ! さすがにアレを一人で対処するっていうのは無理があったからね」

 

 通路を歩いているとき、クリスさんがまた褒めてくれた。そんなに言われてしまうと照れてしまう。

 

「いえ、そんなことないですよ。私よりもすごい人はいますから」

 

「謙遜しちゃって」

 

クリスさんがいたずらっぽい笑みを浮かべる。

 そうやって、話していると前を進んでいたライムが止まった。

 

「ライム、どうかしたの?」

 

壁を気にしているようだった。すると、真剣な顔になったクリスさんが何かを探し始めた。

 

そして

 

「見つけた……!」

 

そう言うと、壁の一部分に手をかざした。すると、壁が動いて下りの階段が現れた。

 

「隠し通路だね。これは私たちしか見つけてないから、中にお宝があったら私たちだけのものだよ!」

 

 お宝! その響きに思わずワクワクしてしまう。どんなものがあるのかを楽しみにしながら階段を下りて行き……

 

「あのゴーレム、魔法が全く通じないんですけど……」

 

めちゃくちゃ苦戦していた

 

 どうしよう、どうしよう、どうしよう! 魔法が全部弾かれるよ! 攻撃魔法に対する抵抗力が高すぎる! ライムの体当たりも効かないし。ここは、いったん退くしか……そう提案しようとしたとき、クリスさんが私たちの前に出る。

 

「やっぱり、ここは先輩の力を見せておかないとね」

 

「クリスさん?」

 

そして、クリスさんが手を前にあげる。

 

「スティール!」

 

 窃盗スキルを使ったクリスさんの手には何かが握られている。すると、ゴーレムは行動を停止した。

 

「ざっと、こんなもんだね」

 

 クリスさんは窃盗スキルを使い、ゴーレムの核を盗んだのだ。

 やっぱり、何度もダンジョンを潜っているベテランはやっぱりすごい。私はそう思った。

 その後、私たちはダンジョンの奥まで進んで行くと部屋があり、その中に宝箱があった。

 

「やりましたね、クリスさん!」

 

「そうだね、さあ宝箱を開けるよ……おーい、スライム君はこっち来なくていいの?」

 

ライムは部屋の入り口部分のところで適当にぶらついていた。

 

「まあ、やっぱりモンスターだから、そういうのに興味はないか」

 

そして、私たちは気持ちを高ぶらせながら、宝箱を開けた。

 

 

 

 

「すると、中にはたくさんのトリュフがあって、襲い掛かられたと……」

 

「はい……」

 

 そして、ことの顛末をウィズさんに話した。トリュフは矢のような速さで飛び、石でできた壁や柱をえぐる威力で体当たりをする危険な高級食材だ。

 宝箱の中にはそのトリュフがこれでもかと敷き詰められており、それが一斉に飛び出して私たちに襲い掛かっていたのだ。

 私たちは命からがら、その部屋から逃げ出したのだ。一匹を除いて……

 

「ねえ、ライム。一応聞いておくけど、箱の中身を知ってたから、隠し通路を見つけたわけじゃないよね? 宝箱から一番離れた場所にいたけど違うよね? 私たちが部屋から逃げたあと、しばらくしてから出てきたけど、違うよね!? 戦った形跡があった上に、トリュフがみんな、いなくなってたけど違うよね!?!? ねえ、ライム!?」

 

「あはは……」

 

 今更になって、バニルさんの言っていたことが少しわかった気がした。理性があっても魔物はどこまで行っても魔物。力があるのならルールや道徳に縛られることなく、やりたいこと、食べたいものに迷わず進み、なんなら、人間さえ利用する。

今日はその一端が垣間見えた気がするダンジョン攻略だった。

 

「ところで、どうしてライムは罠のスイッチを的確に避けたり、隠し通路があるってわかったんだろう」

 

「基本的にスライムは目や鼻、耳といった器官がない分、全身を使って遠くにある食べ物や生物の場所を感知しますから、おそらく、その応用を使って、身体に感じた違和感から、罠や隠し通路を割り出したのでしょう」

 

 じゃあ、やっぱり箱の中身知ってたじゃん!

 

 

 

 夜、ギルドに晩ご飯を食べに行くと、すごく騒がしかった。窓からのぞいてみると、その中心にはカズマさんたちがいた。なんでも、みんなにお酒を奢ってパーティ状態になっているらしい。

 正直に言うと、こういう大騒ぎしてる場所は苦手だった。このままじゃ、めぐみんにも話しかけられないと思っていると

 

「中、入らないの?」

 

「クリスさん!」

 

 クリスさんが話しかけてきた。なんでもカズマさんが奢ってくれるということを聞きつけたらしく、やってきたのだ。

 

「ダンジョン攻略、残念だったけどすごく楽しかったよ!ありがとうね、ゆんゆん」

 

「そんな、私もすごく楽しかったです!」

 

「ふふっ、じゃあ、これからも楽しまなきゃね」

 

 そう言うと、クリスさんはそう言った後に、女神のような柔らかく笑いかけてくれた、そして、ギルドの中へと入っていった。

 

 クリスさんに背中を押されて、私もギルドに入ってシュワシュワを両手いっぱい頼んでめぐみんのもとに向かった。

 

「奇遇ね、めぐみん! 今日はこれで勝負よ!」

 

すると、たくさんのシュワシュワを見て、目を輝かせた。

 

「いいでしょう! 受けて立ちますよ!」

 

 そう言ったとたんに、男の人が飛んできてシュワシュワがすべて地面にぶちまけられてしまった。

 その後、めぐみんがシュワシュワを飲もうとするたびに『子供にはまだ早い』とすべて横取りされてしまい、ぶちぎれためぐみんが冒険者に喧嘩を吹っ掛けに行ったり、ライムが、ちょっかいを出してきた冒険者をぶっ飛ばしたりして、すごい騒ぎになっていた。でも……

 

 

そんなギルドを見て、私は冒険者らしくて好きだなと思った。

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