この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この素晴らしい悪魔に弔いを!

バニルさんが倒された。

 

どうやら、バニルさんは『見通す悪魔』の異名を持つ魔王軍幹部の一人だったらしい。

確かに、どこかで聞いたことがあったかもしれない名前かと思ったけど、まさか魔王軍幹部だったなんて、思いもしなかった。

そして、バニルさんはウィズさんの友人でもある。つまり、友人を亡くしたということだ。きっと悲しんでいるに違いない。私もライムや友達じゃなくてライバルのめぐみんが死んでしまったら悲しいだろう。そう思いながら、少し高めのお菓子を持ってウィズさんの店へと向かう。

 

「おっ、ゆんゆんじゃないか、それにライムも」

 

「あっ、カズマさんとダクネスさん」

 

ちなみに、バニルさんを倒したのはカズマさんたちのパーティーでめぐみんがとどめを刺したらしい。

 

「君もウィズのところに?」

 

ダクネスさんが尋ねてくる。やっぱり、ダクネスさんもここに来たらしい。

 

「はい、ウィズさんには、よくお世話になってるので。それに、実は言うとバニルさんとは、この街に戻ってきて、すぐの頃にほんの少しだけお会いしまして。そのときに、ライムとの付き合い方でアドバイスをもらいまして……そのときのお礼がまだ言えてなかったなって」

 

「そうか……私もバニルとは、ほんの少しの間だったが、体を共有して暴れまわった仲だ。こんなことを、エリス教徒を言うべきではないのだろうが、嫌いな奴ではなかったよ」

 

 ダクネスさんは寂しそうにそう言った。いや、一緒に暴れまわったって何をしたんだろう、っていうか体の共有って何!? すごい気になるんだけど!

 

バニルさんが倒されたことはダクネスさんから話すらしい。そして、お店の扉を開けると……

 

 「へい、らっしゃい! 店の前で恥ずかしいセリフを口にしていた娘よ、我輩に性別はないため、そんな恥ずかしい告白を受けても困るのだが……そして、体の共有という部分に思考を引っ張られている紅魔の幸薄き少女よ、あくまでも、我輩はこの娘の身体を乗っとり、へっぽこ冒険者共を相手に大立ち振る舞いをしていただけであるので、誤解しないようにすることだ」

 

 頭の中で想像していたことを訂正されて、すごく顔が熱くなるのを感じる。どうしよう、すごく恥ずかしい!

 

「うーむ、ダブルで羞恥の悪感情、大変美味である! どうしたのだ、うずくまってまさか我輩が滅んだのかと思ったか!?」

 

 ダクネスさんと一緒になってうずくまっていると、カズマさんとウィズさんがヨシヨシしてくれた。

 

 

 落ち着いたので話を聞いたところ、いくら七大悪魔の一人でも爆裂魔法を食らってはひとたまりもなかったらしく、一度は死んだらしい。しかし、それは残機が一つなくなっただけでバニルさんからしたら、痛くも痒くもなかった。むしろ、魔王軍幹部をやめたがっていたから逆に生き生きしているとのこと。

 

「今では、すごく無害な悪魔な筈ですよ」

 

 本当に無害なんだろうかと思うと同時に、脳裏には二体の上級悪魔が浮かんだ。

 一人は上級魔法を巧みに使う女悪魔アーネス。もう一人は単純にパワーとタフネスが強かった悪魔ホースト。どちらも邪神ウォルバグの配下で、めぐみんが倒した。

 悪魔が残機制なら、そのうち復活して復讐してくるかもしれない。肝に銘じておこう。

 

 その後は、バニルさんがカズマさんと商談をしている間、ダクネスさんとウィズさんと私が持ってきたお菓子でお茶をしていた。ライムは適当に商品を見ている。

 

「ほう、クリスとそんなことがあったのか。大変だったなぁ、そこに私もいればなぁ」

 

「はい! ですけど、とても楽しかったですよ。隠し通路を見つけたときなんて、すっごくワクワクしましたし。まあ、肝心の宝箱の中身はあれだったんですけど」

 

 楽しくも苦い体験を振り返って、今更な疑問がわいた。

 

「それにしても、どうしてあのトリュフは腐らずに、生きてたんだろう?」

 

「それは、おそらく限定的に時間を止める魔道具や力を使っていたのではないでしょうか。そして、宝箱が開かれたときに魔法が解ける様にしていたのかと。聞いたことがあります。昔、対象の時間を止める力を持った勇者候補がいると」

 

 だから、クリスさんの敵感知に反応がなかったんだ。だけど、食べ物ではあるからライムにはわかったと……

 

「それは破格な力だな、それさえあれば魔王も倒せそうだが」

 

 私もダクネスさんと同じことを思った。どうして勇者になれなかったのだろう。

 

「対象が一つだけだったので、一騎打ちには強かったのですが、対多数戦には弱かったのです」

 

「な、なるほど……」

 

「つまり、魔王軍から袋叩きにあったということだな。絶え間なく進攻してくる軍勢から責め苦を受けるというのは、きっと辛かっただろう、苦しかっただろう。振るわれる武器、嘲笑の声、私に耐えられるだろうか、ましてや、女騎士の私など……くっ!!!!」

 

 ダクネスさんって感受性が豊かなんだなと思った。

 

 

 

 

 それから数日たったとき、めぐみんが私の宿におしかけてきた。

 

 なんでも、めぐみん達がリザードランナーの群れを相手にしたとき、カズマさんが木から落ちて死んでしまったらしい。しかし、アクアさんのリザレクションで生き返る予定だったのだが、天界にいるカズマさんがそれを拒否。そのまま転生すると言い出したとのこと。

 

「それで、カズマさんの下半身に……『聖剣エクスカリバー』と落書きしたのね?」

 

「カズマが悪いのです。帰らないなんて言うから……」

 

 まあ、気持ちはわからなくないけどね。

 

「ただ、カズマさんはすごい怒ってると思うよ?」

 

「だから、泊めてほしいんです。あの家にいたら何をされるかわかりません……」

 

「もう、しょうがないんだから」

 

 めぐみんを、しばらく宿に泊めることにした。

 

「それで、ライムのことは上手くやってるんですか? まだ、一定の功績には届いてないんでしょ? ダンジョンに潜ったようですが、失敗していましたし」

 

「はっきりというわね、でも大丈夫よ。ギルドからは特に期限を設けないから気長にやってくれていいってことだし。もしも、人を殺したり、食べたりしたら大変なことになるけどね、ここで、冒険者をクルセイダーに転職、デコイを使うわ」

 

いま、私たちはボードゲームをしながら近況を話し合っていた。ライムは窓のふちにいる。おそらく、夜風に当たっているのだろう。

 

「うっ、ここでそうされると、攻撃ができなくなるのですが……そうですか。まあ、1億エリス相当のクエストなんて、そうありませんからね」

 

「そうね、だからしばらくは、ここでちょっとだけ上のクエストを受けながら強くなっていくことにするわ。はい、王手。」

 

「なっ、こうなったら……冒険者をアークウィザードに転職! からのエクスプロージョン!」

 

 めぐみんが文字通り、盤面をひっくり返した

 

「ちょっと、爆裂魔法はなしって言ったじゃない!」

 

 私はめぐみんに怒るも、いつものことだと、自分を落ち着かせる。

 

「でも、懐かしいわね。初めてこの街にきたときも、こんな感じでボードゲームをしながらいろいろと話し合ったわね」

 

「さあ、どうでしたかね? そんな昔のこと、忘れてしまいましたよ。私は過去を振り返らないので」

 

「もう、素直じゃないんだから、眼が赤いわよ?」

 

「では、私はもう寝ますので!」

 

 早々にベッドに入ってしまった。少しからかい過ぎたのかもしれない。

 でもやっぱり、めぐみんは、昔から今までもずっとすごいと思った。ネタ魔法と馬鹿にされても、信念を貫き続けて、強敵を何人も倒してきたのだから。だけど、今の私には仲間がいる。人じゃないけど、頼りになる友達ができた。だから負けないと意気込みながら、瞼を閉じた。

 

 

 

 

 めぐみんです。ゆんゆんの宿から家に帰ると、そこには……

 

「アクア、お茶を入れてはくれないか?」

 

白いローブを着て、ソファに優雅にくつろぐカズマと

 

「わかりましたわ、カズマさん。最高級のお茶を入れて差し上げますわ。どうぞ」

 

メイドのように優雅にお茶を入れるアクアがいました。

 

「ありがとう……これはお湯だね」

 

「あら、ごめんなさい、私ったら浄化してしまったようですわ」

 

「いいさ、また入れればいいんだからっさ!」

 

 

「気持ち悪いですぅぅぅ!!!!」

 

 すごく気持ち悪いです! もしかしたら、私があんなことをしたから、おかしくなってしまったのでしょうか……?

 

「あのときのことは謝りますので、元のカズマに戻ってください! 今のカズマはすごく気持ち悪いです!」

 

「何を言ってるんだ、めぐみん。あんなの全然気にしてないさ。今の俺には、余裕があるんだからっさ!」

 

 ファサっと、髪をなびかせる動きに思わず鳥肌が立ってしまいました。いったい何があったのでしょうか? そう考えていると、ダクネスがやってきました。

 

「めぐみん、実をいうとだな」

 

 ダクネスの話によると、最初はすごく怒っていたらしく、私が帰ってきたらとんでもない目に合わせると意気込んでいたようです。ゆんゆんの宿に泊まっていて正解でした……

 

 しかし、悪魔のバニルが訪ねてきてから状況が変わりました。

 

 バニルが言うには、カズマの国の便利グッズがかなり売れる可能性があるらしく、その売り上げの一部を毎月受け取るか、いっそのこと知的財産権を3億エリスで譲渡するかを提案してきたそうです。要はどちらに転がっても、お金持ちになるということで、セレブ気分を満喫しているとのことでした。

 しかも、魔王討伐さえも金で雇った多数の冒険者で袋叩きにすれば良いという始末。ダクネスはダクネスで止めようとしないし……これは、ダメです。

 

 

「私が、何とかしなければ!!!!」

 

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