この素晴らしい世界にスライムを! 作:履舌裏駄像
そんなこんなで、俺たちはアルカンレティアに着くことができた。さすが、水と温泉の都というべきか、人々の活気にあふれており、とても綺麗な街並みだ。特にエルフとドワーフが話してるところを見たときなんか、まさに、ファンタジーという感じで興奮した。
「あれは、ここの名物、アルカンレティア饅頭ですね」
よく知っているなと、めぐみんに聞いてみると、この都は冒険者の湯治場として有名らしく、めぐみんとゆんゆんもアクセルの街に来るまえに、きたことがある。ちなみに、そこでひと悶着あったらしい。まあ、めぐみんらしいと言えばめぐみんらしいか。
馬車から降りて、伸びをする。色々あったが湯治は始まってすらいない。さあ、思う存分楽しもうと思った矢先、アクアがとんでもないことを口にした。
「ほら、すごいでしょ! なんて言ったってこの街は、女神アクアを崇めるアクシズ教の総本山なんだから!!」
アクシズ教の総本山!? アクシズ教徒といったら変わった人しかいないで、有名じゃなかったか……? そう思っていると、こちらに向かってくる人たちがいた。」
「ようこそ、入信ですか?観光ですか?仕事探しですか?洗礼ですか!」
「今なら、この入信書を書いて友達や家族に10枚配るだけで10万エリスもらえる仕事がありますよ!!」
「この石鹼と洗剤もどうぞ!!!」
「改めて、ようこそアルカンレティアへ!!!!」
うわぁ、目がやばいな。完全に飛んでやがる……ダクネスと少し話し合い、さっさと宿に行くことにした。ちなみに宿はゆんゆんに案内をしてもらった。本当にこんなところで湯治なんかできるのだろうか……
ウィズをベッドに寝かせて、ダクネスの生命力を流して回復させる。彼女は、昨晩のゾンビ騒ぎに際して、アクアの浄化魔法に巻き込まれたのだ。ベルディアが川の向こうで呼んでいると聞いたときは顔が引きつったのを感じた。
アクアはアクシズ教本部に遊びに行った。何か問題を起こしていないか心配だったが、ダクネスがめぐみんとゆんゆんたちが大丈夫だろうと言っていた。確かに、ゆんゆんは言わずもがな、めぐみんは爆裂魔法が絡まなければ常識はあるから問題ないだろう。と自分に言い聞かせた。
ウィズからの後押しもあり、ダクネスと街に出かける。しかし、街から一歩出ると……
「ほら、お礼に占ってあげますから! ね! ね!」
「結構ですから! 結構ですから!」
カゴからリンゴを落とした女性がいたので、助けたらアクシズ教徒だった。振りほどこうにも、この人めちゃくちゃ力強い! ダクネス助けて!!!
「すまないが、その男は私の仲間だ。エリス教徒の私に断りもなく勧誘するのは……」
「ぺっ!」
ダクネスがエリス教徒の証のペンダントを取り出すと、唾を吐いて去って行った……なんて奴らだ!
「アクシズ教とエリス教は仲が悪いんだな……そのペンダントは隠しておいたほうがいいかもな」
その後も俺たちは、エリス教徒を悪に仕立てた三文芝居を見せられたり、カフェでサービスだと言って犬の餌をダクネスの足元に置いたりしていた。アクシズ教徒はこういうやつらばっかりらしい。ちなみにダクネスは、様々な嫌がらせをされて喜んだりしていた。
エリス教徒もこんなんじゃないだろうな……
宿に帰りたいと思ったとき、向かいから走ってる小さい女の子が躓いて転んだ。俺たちはすかさず、駆け寄る。どうやら、軽いかすり傷のようだ。
「ありがとう! お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
こんな頭のおかしい街にも、一輪の花のような子供が……! 名前を聞かれたので、俺は自分の名前と、ダクネスを紹介する。すると、俺にどんな字で書くのかを聞いてきた。まだ、字の書き方を練習しているんだろうか、可愛らしいな。
そう思いながら、紙に目を落とすと、俺が持っていたのは入信書であった。なんということだ、この街に来て、子供だけは、子供だけは無垢なままだと思っていたのに……俺は渾身の力で入信書を破って、叫んだ。
「クソったれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」
「おいゴラァ! 責任者出てこい、説教してやる!!」
我慢できなくなった俺は、アクシズ教団の本部までカチコミに来ていた。あんないたいけな少女まで利用しやがって! 言いたいこと全部言ってやる!!!
「どうかされました? 入信ですか? 洗礼ですか? それとも、わ・た・し?」
「わ、私で……」
きれいな女性のプリーストがこんなことを言うものだから、思わず口走ってしまった。すると、女性は腹を抱えながらこちらを頭がおかしい扱いしてくる……グーで殴りたい。
教会の責任者はゼスタというらしいが、勧誘の名目で遊びに行っているらしい。大丈夫なのか、この宗教……
では、青髪のアークプリーストと魔法使いの少女たちはいないかを聞いてみると、めぐみんとゆんゆんは隅っこで小さくなっていた。
「怖いよ……アクシズ教徒怖い……」
「帰りたい……帰りたい……」
かなりやられていた。
ちなみにライムは傍らで高級石鹸を食べていた、お前はブレねえな……
子供たちから石を投げられていたダクネスにペンダントを隠すように言うと、断られてしまった。お前もブレねえな!
「なんで、私はここにいるんだっけ……」
確か、ライムを正式に登録するために仕事がないかを探してたんだっけ。その途中でバニルさんから……
「アルカンレティアの方向に強者の気配あり!」
と言われて、この街に来たんだ。
それにしても、初めて来たときのアクシズ教徒はすごい元気だなって思ったけど、これは……
「元気なんていうレベルを超えてるじゃない! ああ! もう帰りたいよぉ!!!って言うか、勧誘の手伝いをしたのめぐみんだよね! なんでこんなことになってるのよ! ねえ、めぐみん……」
「帰りましょう……一刻も早く、帰りましょう……うぅ……」
天に唾を吐くとは、このことね……
その後、私たちが宿に戻ると、ウィズさんが出迎えてくれた。すごく調子が悪そうだったけど、温泉に入って元気になったみたい。薄々気づいてたけど、たぶんウィズさんはリッチーだ。バニルさんと友達だし、アクアさんの浄化魔法で消えかけたり、薄くなったりしてるし……
だけど、ウィズさんはきっと私たちの敵になりたいなんて思ってないだろうし、私もウィズさんのことは好き。だから黙っておこう。
カズマさんが温泉に入った後に、私たちも入ることにした。めぐみんがお風呂に飛び込んで泳いだり、ライムがまた石鹸を食べたりして大変だった。さすが、スライム……雑食性が人間よりも幅広い。バニルさんから、悪食ガラス以上の大食漢って言われるのも無理はない気がする。
一通り落ち着いた後、めぐみん達と雑談をする。めぐみんがカズマさんたちに湯治を提案した理由は、アクアさんに引き寄せられたアンデッドを狩って経験値の足しにしようと思ったかららしい。これにはダクネスさんも呆れている。そして、流れでカズマさんの話になりそうになったとき。めぐみんが制止した。
「あいつはヘタレだが、大義名分があれば堂々と混浴に入るだろう。きっと今頃私たちの話を聞いていやらしいことを考えているに違いない」
「そんな、簡単に決めつけたらいけないと思うんですけど」
「ゆんゆんはわかっていないのです! あの男がどれほど変態なのかを! そうでしょうカズマ、どうせ壁に耳をくっつけてダクネスが体をどこから洗うのか妄想してハァハァしてるのでしょう!?」
信用がなさすぎる……
しかし、向こうからの返事はなかった、どうやら杞憂だったらしい。
「ちょっと失礼でしたね、まあ、あれでもなんだかんだ言って頼りになりますからね」
「そうだな、私たちが困っているときは必ず助けてくれる。根は良いやつだからな」
めぐみんとダクネスさんがカズマさんの良いところを並べていく。めぐみんは気づいてないかもだけど、たまにカズマさんたちの話をしてるときのあなたってすごい楽しそうなんだよ。
「ゆんゆん、こちらを見て何をニヤニヤしてるんですか?」
「別に、なんでもないよ。ただ、今のめぐみんは楽しそうだなって」
「なんですか、自分はボッチだからって嫌味ですか?」
「もう、照れちゃって!」
「生意気な子ですね、そんなゆんゆんは……こうです!」
「ああ、ちょっと! 胸をいじらないでよ!」
めぐみんが私の胸を触ってくる。すると、いきなり大声を上げた。
「今です!!!!」
「はぁぁぁぁ!!!!!」
それに反応して、女湯と混浴を隔てる木の壁を殴るダクネスさん。すごいコンビネーションだ! すると、向こうで水しぶきが上がる音がした。まさか、本当はいたの!?
「やっぱり、いましたか! この男!」
「あんなエロい男が混浴にいないはずがない!」
二人とも、仲間のことをよくわかってるんだね……と思っていると、上から水が降ってきた。冷たい! それに負けず、二人も桶や石鹸を投げる。いま、ちょむすけ投げなかった!? どうやら、覗こうとした罰として洗ってあげろとのことだ。
そういえば、スライムは洗ったほうがいいのかな?って言うか、どうやって洗うんだろう。まあ、石鹸を食べてるし、大丈夫かな?
「だから、石鹸を食べちゃダメだってば!」