この素晴らしい世界にスライムを!   作:履舌裏駄像

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この温泉旅行にクライマックスを!(開戦のターン)

「な、なにやってんだぁ!!!」

 

「ライム!あなたまだ仮登録なんだよ!? わかってる!? ねえ、ねえ!?」

 

「わ、私は知りませんよ! ゆんゆんの使い魔がしたことですから、ゆんゆんが責任を持つべきです!」

 

「こんなきれいに穴が開くなんて……いったいどんな攻撃をしたのだ! 教えろ、ライム!」

 

「はわわわわわ……」

 

 ライムが人を殺してしまった。人並みの知性があるから、ちょっと勝手はしても、そこまではしないだろうと思ってたのに……! これは、終わった。

 

「大丈夫だよ、ライム。あなたは私の使い魔で友達だもん、罪をひとりで背負わせたりしないよ。一緒に監獄で寝ようね……めぐみん、こんなライバルでごめんね、本当にごめんね」

 

「や、やめてください! いたたまれないのでやめてください!」

 

「お、おい! 諦めるなって! アクア、リザレクション頼む! このおっさんを生き返らせて無かったことにするんだ!」

 

「大丈夫だ、ゆんゆん! 裁判になったら助けてやるからな!」

 

「これは流石にあんまりですよ! ゆんゆんさんはいつも頑張ってるのに」

 

 みんなが私のことを心配してくれている。でも、やっちゃったことは元に戻らない。私は素直に罪を認めて、罰を……

 

「みんな、何を騒いでんのよ。この人、別に死んでないわよ?」

 

「え?」

 

アクアさん以外の皆の声が重なった。

 

「クソ……俺の顔に穴をあけやがって、いったい誰が……ハッ!?」

 

本当に生きてた。だけど、ウィズさんと目がった瞬間に顔を全力でそらしたような……じゃない! まずは謝らないと!

 

「ご、ごめんなさいっ!!! うちのスライムが本当にごめんなさい!!!!」

 

「なんと、ペット連れ観光客の方々でしたか! いえ、人間じゃないので制御が難しいですよね! 大丈夫ですから、お気になさらずに……」

 

「でも、顔に穴が開いてますけど……」

 

 なんだろう、全然こっちを見ようとしない。

 

「あー! 思い出しました!」

 

 後ろから、ウィズさんの声が聞こえてきた。

 

「ハンスさんじゃないですか! 覚えてませんか? 私ですよ、ウィズですよ! 確かハンスさんはデッドリーポイズンスライムでしたよね。もしかして、温泉に毒を入れてたのってハンスさんですか?」

 

「さあ、何のことでしょうか? 私はここの管理人で……」

 

「どうして、知らないふりをするんですか! お互い魔王さんのところで」

 

 そう言ったとき、ハンスが大声を上げた。魔王軍関係者だったんだ。確かに、ライムのアレを受けてピンピンしてるのはおかしいもんね。今更だけど冷静になってきた。

 

「ひ、人違いですから! では、私はこれで……」

 

 ハンスがその場を去ろうとしたとき、カズマさんたちがその進路を断つように立ち塞がった。これにて温泉を汚染していた犯人が判明した。私の友達はハンスの正体に気づいて、躊躇なく撃ったのだろう。それにしても、ノータイムはやめてほしかったなぁ……

 

 

 

「まさか、ばれちまうとはな……ウィズ、お前は確か結果の維持以外では魔王軍には協力しない、代わりに俺たちにも敵対しないってことだったはずだが?」

 

「えぇ!? 私、邪魔をしてましたか!? ただ、顔見知りだったから声をかけただけなのに!」

 

「それが邪魔だって言ってるんだよ!」

 

「ウィズさん、それは無理がありますよ……」

 

「ゆんゆんさんまで!?」

 

 何はともあれ、相手は魔王軍。ここで逃がすわけにはいかない! 皆が臨戦態勢になる。

 ウィズさんは不干渉だって言ってたから、おそらく戦えないだろう。私たちだけで、どう戦うかを考えていると、カズマさんが前に出て、短剣を取り出す

 

「俺の名は佐藤カズマ。あまたの強敵を屠ってきたものだ。この相棒によって倒れるがいい」

 

「ちゅんちゅん丸です」

 

「違う」

 

 カズマさんが名乗りをあげた。それにハンスも答える。

 

「俺の名はハンス。魔王軍幹部の一人にして、デッドリーポイズンスライムのハンスだ」

 

「え、魔王軍幹部? まあ、こうやって工作要員してるんだし? そんな武闘派じゃねえんだろ? なあ、そうだよな……?」

 

カズマさんが声を震わせながら、聞いてくるので皆で答えた。デッドリーポイズンスライムはスライムの中でも、一際危険な魔物であり、ハンスは魔王軍幹部の中でも強力なため、高い戦闘力を持っていると。カズマさんの顔がどんどん青くなっていく。大丈夫かなぁ。

 

「さあ、来るがいい! 冒険者共よ!!」

 

「すみません! 本当にすみません!!!」

 

カズマさんたちは逃げてしまった……

 

 

 

俺たちはハンスたちから逃げてきたが、下からアクシズ教徒もやってくる。まずい、このままじゃ挟み撃ちだ! そこで俺はアクアに提案をする。もう源泉を諦めないかと。どうせ、アクシズ教徒なんて頭のおかしいのしかいないし、他人に迷惑をかけてばかりだし。

 

「なんでよ! それじゃあ、アクシズ教が壊滅しちゃうじゃない!」

 

「良いことじゃないか」

「良いことじゃないですか」

 

めぐみんと声がハモル。すると、アクアは一人で何とかすると言って向かってしまった。

 

「良いんですか、このままだと、もっとひどいことになりますよ」

 

「お前も、同調してただろうが。全く、しょうがねえな。こっちにはゆんゆんとライムがいるんだし、なんとかなるだろ」

 

「わ、私ですか!?」

 

 ゆんゆんが、驚いたように自分のことを指す、相変わらず自己評価が低い子だ

 

「そりゃ、そうだろ。なんちゃってアークウィザードと違って、いろんな魔法が使えるし、ライムだって、いろんな高レベル冒険者を手玉に取ってきたやつだからな、頼りにしてるぜ!」

 

「……はい!」

 

 ゆんゆんは嬉しそうに返事をした。どうやら自信がついたみたいだ

 

「おい、そのなんちゃってアークウィザードが誰のことか教えてもらおうじゃないか」

 

 俺は、黙秘権を行使した。

 

 

 

「……今更、どの面して戻ってきやがった、この雑魚共が」

 

 それに応えるかのようにライムが攻撃をする。ハンスの顔に傷をつけたビームのようなものだ。

 それを何とか腕で受け止めようとしたハンスだったが、そのまま貫通して左胸にも穴をあけた。

 

「くっ、傷がふさがらない……やはり、これは聖水か!」

 

 聖水……水……俺はそれを聞いて、ライムの攻撃が何なのかピンときた。

 

「ウォーターカッターだ!」

 

「ウォーターカッター?」

 

ゆんゆんが俺の言葉を聞き返す。ウォーターカッター、水をとてつもない速さで噴射することによってどんなに硬いものでも切ることができる、その名の通り水のカッターだ。そして、聖水はおそらく、ライムが食べていた石鹸のことだ。偶然ではあるが、それがハンスに対して有効打になったんだ!

 

「ふん! だが、それで俺に致命傷を与えられると思うなよ? ここの汚染さえ完了すれば、この忌々しい街からおさらばできる! だから、邪魔をするな!」

 

ハンスの言うことに否を示すかのようにライムがウォーターカッターを撃ちまくる。

 

「ちっ……小賢しい」

 

さすがに弾幕には弱いのか、ハンスが距離を取る。しかし、そこでライムが凄まじい速さでタックルをかまして、ハンスをぶっ飛ばした。

 

「うぐっ……クソスライムが!」

 

 片や、魔王軍幹部。片や元1億賞金首! スライム同士の攻防はライムに軍配が上がっているようだ。このまま行けるかもしれない!

 

「大変です、カズマ!」

 

めぐみんが何かに気づいたのか話しかけてくる。どうしたのか聞いてみると

 

「このままでは、ライムがハンスを倒してしまいます! 私の出る幕がなくなってしまいます!」

 

「そうだぞ、カズマ! ライムが勝ったら、誰が私の服を溶かすというのだ!」

 

「脳みそ、溶かされてるんかぁ!」

 

 俺が突っ込む横で、ゆんゆんとウィズは彼らの戦いを見守っている。

 

「ねえ、カズマさん。これってもしかしたら、ハンスに勝てるんじゃない? もし勝ったらアクシズ教総出で宴を開きましょうよ! いっぱい美味しいものを食べさせてあげなくちゃ!」

 

 そう言った瞬間、ライムのウォーターカッターがめちゃくちゃ弱くなった。まるで、小さなじょうろだ。とても可愛らしい。

 

「って、ちがーーーう!!! 弾切れ起こしてんじゃねえか!? お前がフラグを立てるから!」

 

「なんでよぉ! 私何もしてないじゃない!! 冤罪よ!」

 

ライムが防戦一方になり始めた。高に体当たりをしているが、それも奴には効果が薄いみたいだ。そして、ライムはハンスの攻撃をうまくよけながら、俺たちの元へと戻り、ゆんゆんを前に押し始めた。お前が戦えということらしい。高額賞金首で魔王軍幹部相手にしろとか主人に厳しすぎではなかろうか……

 

「ちょっ、ちょっとライム!? 押さないでよって言うか急にどうしたの!? お、押さないでってばぁ! 無理だから! 私戦えないよぉ!」

 

「フハハハハ……どうやら、そのクソスライムはもう戦えないようだな。次はお前が相手をするのか? 紅魔の小娘」

 

「うぇ!? ええと、それはその……っていうか、管理人のはどこにやったのよ!」

 

「喰った」

 

「え?」

 

い、今こいつなんて言ったんだ……? ゆんゆんも聞き返す

 

「だから喰ったと言っている。俺はスライムだぞ、食べることが本能だ」

 

 なんて奴だ……やっぱり、こいつは今まで出会ったやつの中でもダントツでヤバイ!!!どうすんだよこれ!!

 

 そう思っていると、俺の背後が冷たくなった。なんだ!? と思って振り返ると、そこにはウィズが立っていた。なんかすごく怒ってないか?

 

「……カースド・クリスタルプリズン」

 

 巨大な氷が相手を閉じ込めようと襲い掛かる。反応がくれたハンスは片腕が氷漬けになってしまう。

 

「私が中立でいる条件は『戦いに携わる者以外を殺さない方に限る』でしたね」

 

 ウィズが前に出る。その冷たい雰囲気は周りを凍らせていく。ウィズは語る、冒険者が殺されてしまうのは仕方ないこと。彼らもモンスターの命を奪っているのだから、逆に自分が狩られることも覚悟すべきだと。そして、騎士も税を取って住民を守っているのだから、戦いで命を落とすのはしょうがないことだと……その声は、確かに彼女がアンデッドの王で、魔王軍幹部であることを思い出させる。しかし……

 

「ですが、管理人のおじいさんには何の罪もないじゃないですか!」

 

 それは、人としての優しさがある怒りだった。

 

 

「ウィズが怒ってる、超怖いんですけど……」

 

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