結城友奈は勇者であるゼノバース   作:kaz u

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お久しぶりです。
気づけば元の小説からかなり付け足してしまいました。
また不定期な更新になると思いますがよろしくお願いします。



異変始まる!?決めろ龍拳!!

 

「さてと、今日の依頼は……」

 

 犬吠埼風が勇者部にきた依頼を確認しながら歩いている。来週の幼稚園での人形劇の依頼、剣道部の助っ人の依頼、が来ていた。「剣道部の方は夏凜と若葉に行ってもらって……幼稚園の方はアタシが行くとして……」そう考えていると部室前に着いたのであった。

 

 勇者部……讃州中学にある部活の一つで皆のためになる事を勇んでやる部活らしくほぼボランティア部となっている、最近部員が25人近くになったとか、ボランティア部らしいが概要はよく分からない部活である。

 

「それじゃぁ、始めるわよ。え〜とまずは……」

 

 剣道部の依頼方針と幼稚園での依頼の内容を確認し終わると

 

「東郷他に依頼とかきてる?」

 

「いえ、今のところはきていません」

 

 他の依頼がきているかの確認を済ませて向かおうとした時、「ガラガラ」と部室の扉が開いたのだった。

 

「ごめんなさい、遅れました」

 

「先生!!」

 

 そこで息を切らして21号が立っていた。

 

 人造人間21号……今から約1ヶ月前に樹海で倒れている所を勇者部が見つけた

 話を聞いてみれば此処とは全く別の場所で死んだと思ったらここに倒れていたとのことだった。しかも体の大部分が機械だというのだ。最初は信じられなかったが大赦の調べで彼女の体が正体不明の物質で構成されていたらしく更にある事で全員頭を抱えていた。

 

「遅いですよ」

 

「ごめんなさい、資料をまとめていたら遅くなってしまって、さて活動内容は?」

 

「もう説明しました。それより“発作”は大丈夫ですか?」

 

 この発作が大赦達を悩ませていた。21号は自分の中に抑えきれない程の捕食衝動があることを会った時に説明した。その気になればこの世界の全ての生き物を捕食してしまう。それ程の規模のため大赦も迂闊に調べられず、勇者部に監視件抑制という事で勇者部の顧問になった。

 

「えぇ、もうそろそろだと思うけど、……もしもの時はよろしくね」

 

 とはいえほとんどの発作は声をかけると止まっていたため。全員戦う事はなかった。

 そんな事を思いつつ活動内容の報告が終わりこれから活動を始めようとした時だった。

 全員のスマホから不気味なアラームが鳴り響いたのだった。

 

「「樹海化警報!!」」

 

「皆さん! 準備をお願いします!」

 上里ひなたが注意を呼びかけると同時に周りの時が止まり、白い光に包まれたのだった。

 

 周りが樹海になり勇者部の部員達が勇者システムを起動させ全員変身する。

 スマホのレーダーで敵の位置を見ると乙女座型、蠍座型と書かれた大きな赤い点と小さな無数の赤い点が表示されていた。

 

「先陣はタマに任せてたまえ!!」

 

「いえ、先人はこの銀が!!」

 

「銀!」「タマっちセンパイ!!」」

 

「まずは遠距離から様子を見ましょう」

 

 先陣をきろうとした二人を止め、迫ってくる様々なバーテックスを銃やボウガン、弓で倒していると、レーダーに獅子座型と書かれた敵が出現した。

 

「風先輩!」

 

「先にヴァルゴとスコーピオンを倒しましょう」

 

「「了解」」

 

 指示されると、「まってました」と言わんばかりに勇者達は連携して大型バーテックスに向かっていった。ある勇者は2本の剣で切り裂き、またあるものは拳で打ち砕き、槍で突き、鎌で切るなど様々な武器を使いヴァルゴとスコーピオンを打ち倒したのであった。

 

 その頃勇者部部室

 

「皆さん大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫だよ、今回は小規模なはずだから」

 

 戦闘に参加できない国土亜耶と藤森水都、上里ひなたの巫女達3人は全員が無事に帰ってくるのを待っていると

 

「うっ……はぁ、はぁ、はぁ」

 

「先生? 大丈夫ですか?」

 

 急に21号が頭を抱え苦しみだした。心配した巫女達が触ろうするも

 

「触らないデ!! 離れて!!」

 

「先生!!」

 

 鬼の形相で払い除けるとさらに苦しみだす。

 

「落ち着いて!」

 

「ゆっくり息を吸ってください!」

 

 巫女達が懸命に声をかける。いつもならすぐに元に戻っているのだが今回は違った。

 

「うっ……ウルサイ!! 邪魔をするな!!」

 

 片手で黒い巨大なエネルギーの球体を作り上げると間髪入れず巫女達の方に投げた。三人を飲み込み大きな爆発が起こる。

 

「あっ……あぁ……嫌……嫌──ー!!!」

 

 爆煙が無くなると同時に正気に戻った21号だがすぐ後悔の念に襲われた。

「あの時と同じ」また大切な人を……

 そう思うと全身から黒い気が溢れ始めた。徐々に気の量が多くなり21号を呑み込む直前に放出が止まった。

 

「やっと出られた」

 

「貴方は……っ!」

 

 背後に気配を感じて振り返るとそこには自分が立っていた。

 

「どうして!」

 

「さぁ? でも今は自分の心配をした方がいいんじゃない?」

 

 そう言うと21号を一瞬で組み伏せうつ伏せに倒す。片足を乗せ動きを封じて片手に気弾を貯め始めた。

 

「以前のように邪魔にならないようにここで消すわ。さようなら、もう一人の私」

 

 気弾が撃たれる瞬間、近くの壁を破って男が飛び出してきた。

 男は気弾を窓側に蹴り飛ばすとそのまま片手を掴み同じ方に投げた。

 気弾は窓ガラスを破り外で爆発が起こる。投げた21号は回転して受け身をとり、窓枠にぶつかるだけで済んだ。

 

「お前は!」

 

「21号でいいんだよな?」

 

 あの窓の所にいるのが分離した悪の心の21号(悪)ってところか、それで俺の後ろで倒れているのが元の21号(善)か。おっと奴さん待ちきれないみたいだ。

 

「普段ならメインは最後までとって置くのだけど、今はお前から食べるとしよう!」

 

「危ない!」

 

 21号(悪)が人差し指をこちらに向けた瞬間、カシューは近くにあった木製の椅子を投げた。

 一瞬驚くもこれを簡単に避ける。それを読んでカシューは投げたと同時に地面を蹴り距離を詰め掌底を繰り出した。

 

「カハッ!」

 

 掌底はみぞにはいり21号(悪)は窓ガラスを割り外に飛び出す。そして間髪入れず気弾を放ち追撃する。爆煙がはれるもそこには21号(悪)の姿はなかった。

 

「逃したか」

 

 すぐさまスカウターをつける。すると遠くに逃げる生体反応を見つけた。

 見つけるも徐々に他の勇者達に近づいていた。ここまでは作戦通り、とりあえず赤嶺に連絡を入れる。

「すまん取り逃した」

 

「大丈夫です! 先に先生達の所に行ってこっちは任せて!」

 

「あぁ頼む」

 

 体の向きを変えると三角座りでうずくまっている21号がいた。

 

「おい! 大丈夫か?」

 

「……私のせいです。……私はまた大切な人を」

 

 カシューの腕を力強く掴みながら彼女の目から大粒の涙が溢れていた。その時

 

「先生!」

 

 壊れた壁を通って隣の部屋から三人の巫女が21号に近づく。

 

「どうして……」

 

「この人が当たる直前に隣の部屋に避難させてくれたんです」

 

「付け焼き刃の知識と技だったがなんとか無事に成功したからな」

 

「どう言うことですか?」

 

「あぁ今説明する」

 

 時は昨日の夜に戻る。

 21号と別れたカシューはいち早く造反神と会話をしていた。

 

『神の力とやらでどうにかならないのか?』

 

 21号の中にある暴走直前の食欲、その部分だけどうにか取り除けないか。できるとしたら、この場で一番力を行使できる。神樹と造反神この二人の神に目星をつけていた。

 だが神から帰ってくる答えは全て『できない、自分の範疇を超えている』という答えだけだった。

 

『……時間がない、どうにか手はないか? ……あっ!」

 そういえば21号の記憶を見た時、あの忌々しい魔神の姿をしていた。あの捕食衝動の原因があの魔神の力に似た物だとしたら。

 以前怒りによって自分の悪の心と分離した事をカシューは思い出した。

 

『なら無理矢理引っぺがすのはどうだ? 原因だと思われる部分だけを暴走直前の瞬間、今まさに乗っ取る直前のタイミングで!』

 

『可能!』ということで急ピッチで作業を進めて行った。

 

 こうして赤嶺の使う造反神流の瞬間移動を覚えると、それとなく陽動してもらえるようにお告げ? というものも使った。

 

 ────────────────

 

 現時刻に戻り

 

 こうして無事? 21号(悪)と分離できた作戦を話した。

 

「と言うわけだ」

 

「…………」

 

 話を聞き終わると21号は無言でカシューの前に立ち平手打ちを放った。

 

「どうして……彼女達まで危険な目に合わせる様なこと! 私だけどうにかすればよかったのに!」

 

「なに簡単なことだ、俺はこいつらがどうなろうと知ったことはない。話は終わりだ」

 

「待って!」

 

 割れた窓から飛び立ち21号(悪)の所に向かっていった。

 

「あの人は!」

 

「先生! 待ってください!」

 

 追いかけようとする21号の手を掴み巫女達は止める。

 

「離してください! あの人は!!」

 

「もし彼の言う通りだとしたら、わざわざ私達を助けたりしません!」

 

「えっ?」

 

 そうだわざわざ彼女達を巻き込んだとはいえ、結果的には助けている。でもどうして? 

 冷静に考えれば嘘だって気付く。

 

「なんとなくわかる気がする」

 

「水都さん?」

 

「危険な時、うたのんが一人で行った時に似てるんだ」

 

「若葉ちゃん達も私達に心配かけない様にする時の姿に似ていますね」

 

「……」

 

「危険な時こそ一人で抱え込む。私がした事と同じね。それなら急いで追いかけないと」

 

 巫女達に待機する様に言い残すと、窓から飛び出し一人カシューの事を追った。

 

 

「痛った、あいつ本気でビンタしやがって。それにもう接触した頃か? 急ぐとするか」

 

 気を高め更にスピードをあげる。

 

 

 時は戻り、勇者達がヴァルゴ、スコーピオンを倒し敵の位置を見るためレーダーを見ると

「まずいです!! 先生がレオの近くに」

 

「これは! 赤嶺も近くにいるぞ!!」

 

「友奈ちゃん(高嶋さん)!!」

 

 レーダーを確認し危険を感じ取った結城友奈と高嶋友奈が走り出して行ってしまった。

 

「すぐに追わないと」

 

「でも、まだ敵が」

 

「くっ、まだこんなに!」

 

 追いかけようとするも周りには他のバーテックスが道を塞ぐ様に沢山集まっていたのであった。

 

(友奈ちゃんどうか無事でいて!!)

 勇者達はバーテックスに二手に分断してしまったのであった。

 

 

 レオ付近では21号(悪)が近づいていた。

 

「アハ美味しそう」

 

「勇者パンチ!」

 

 赤嶺友奈は21号の真上まで浮遊すると落下する力を加えた勇者パンチを繰り出す。反応されガードするも地面に叩き落とした。

 

「ヘェ〜珍しい気を使える何て、でも今はあなたより……」

 

「行かせない!」

 

 そう言うと無傷で起き上がった21号に急接近する。

 懐に入りジャブの様な素早い攻撃を放つ。パン! と音を立て腹部に命中する。一撃は重くない。手刀を放つも、先に一歩下がり避ける。そしてすぐに反撃、赤嶺は一発目の攻撃で倒しきれないと読んでカシューが来るまでの時間を稼ぐように立ち回っていた。

 それは21号(悪)にもわかっている。だが自分の知っている勇者はバーテックスを一撃ような溜めの多いものと思っていた。だが他の勇者と違い、赤嶺は対人戦の心得がある。早い動きで完全にペースを握っていた。

 

「隙あり、勇者キック!」

 

 21号(悪)は逃げようと背中を向けた。その隙をついて赤嶺は助走をつけた勇者キックを放った。

 

「ありがとう。おかげで間に合うわ!」

 

「あっ!」

 

 背中に命中しくの字になりながら蹴り飛ばされ、レオのいる所に飛んで行った。

 そしてピンク色の光と共にレオの姿が見えなくなった。代わりに21号(悪)の手にはカップケーキがあった。そしてそれを食べ始めた。

 

「う〜ん、38点ってところかな、まあまあね。でも、力が溢れてくる! 空腹は最高のスパイスって言うけれど本当に最高!!」

 

 全身から信じられない程の黒い気が溢れ、21号(悪)の姿が変わた。目は赤くなり、髪は白く、肌はピンク色となり、尖った耳に長い尻尾。衣装は黒いチューブブラに白いズボン姿になった。

 

「っ!! 勇者パンチ!!」

 

 自分のミスに狼狽えるもすぐに勇者パンチを繰り出す。21号(悪)は避けることなく、パンチは命中した。今までで最高の威力なはずだが、伝わってくる感触は、まるで硬めのグミを殴ったかのようなまるで手応えが無い。

 

「嘘っ!」

 

 危険を感じて距離を取ろうとするも、鞭のように尻尾が動き赤嶺の頬を叩く。頬に鈍い痛みがはしり口の中が鉄の味がする。それでもなんとか体制を変えるも、既に21号(悪)の姿がなかった。

 

「どこ!?」

 

「ダメでしょ目を離したら」

 

 後ろから声が聞こえ、咄嗟に蹴りを放つ。

 

「もういいわ」

 

 だがやはり効いている様子はない。

 今度は21号(悪)が指を突き出し、ピンク色のビームを赤嶺向かって打つ。

 赤嶺は避けられず、直撃するもバチン! と精霊バリアが発動して難を逃れた。

 

「あなたもそれ持ってるんだ」

 

 そう言うと一瞬のうちに連続でパンチや蹴りを繰り出した。全く反応できず、そのまま地面に叩きつけた。そのまま巨大なエネルギー弾を手のひらに集中しニヤッと笑い発射しようとした瞬間

 

「「ダブル勇者パーンチ!!」」

 

 二人の勇者が横からパンチを放ち体勢を崩したためエネルギー弾は赤嶺には命中せずに発射されたのだった。赤嶺を抱きかかえるとすぐに距離をとる。

 

「赤嶺ちゃん! 大丈夫?」

 

「結城ちゃん、高嶋先輩!」

 

 赤嶺を助けたのは結城友奈と高嶋友奈の二人だった。赤嶺は立ち上がると

 

「なんでここに!?」

 

「レーダーを見て先生と赤嶺ちゃんが近くにいるってわかったから赤嶺ちゃんが危ないと思って」

 

「でもあれが先生なの?」

 

「もう! なんで何回も邪魔をするの!?」

 

 次から次へと邪魔をされ、21号(悪)のイライラが最高潮になっていた。

 

「私の邪魔をするなぁ!!!」

 

 21号(悪)から今まで以上に気が高まり大爆発がおこる。三人は巻き込まれてしまった。

 煙が晴れると赤嶺達はうつ伏せで倒れていた。変身は解けていないが、すぐには動けそうにない。

 

「まずは、一人」

 

「赤嶺ちゃん」

 

「逃げて」

 

 ビームが発射される瞬間、カシューが飛び蹴りで21号(悪)を蹴り飛ばした。

 

「よう赤嶺、遅くなって悪かったな」

 

「カシューさん?」

 

「よく頑張ったな、後は任せろ」

 

 カシューは赤嶺の前に立つ。目線はしっかり21号(悪)の方を向いていた。

 

「おい! あいつの相手は俺がやる。お前達は動けるようになり次第、赤嶺を連れて撤退しろ!」

 

 赤嶺と桜色の勇者服を着た二人の勇者に聞こえるように叫んだ。

 

「私を倒せると思ってるの?」

 

「問題ない! はぁぁぁ────!!!」

 

 21号(悪)の拳を方腕で受け止める。そして全身に力を込めと黒い髪が金色に染まり、目が黄緑色に変わる。超サイヤ人に変身した。

 

「すごい!」

 

「結城ちゃん! あの人の言う通り離れよう!」

 

 二人はカシューの変身に驚きながらも赤嶺に肩を貸しながら、急いで離れて行った。

 

「やるか!」

 

 腕をうまく使い拳を弾く。互いに距離をとるも一瞬にして姿が消えた。すると二人の拳がぶつかる音と共に衝撃波が起きた。

 力は拮抗していたがカシューが一瞬早く動き、21号(悪)の顎に向かって蹴りを放つ。後ろに回りながら回避するもすぐさま体勢を立て直し距離を詰めなおす。ナイフの様に鋭い手刀を繰り出すも全て避ける。瞬く間に十を超えるほどの攻防を繰り広げていた。そして全ての攻撃を相殺もしくは回避している。どちらも一歩も引かない状態になっていた。

 

「すごい……」

 

「でも全然見えない」

 

 少し離れたところで観ていた友奈三人組だが既に二人の動きは既に常人には目に追えない程のスピードになっていた。

 その時近くで砂煙が上がる。

 

「クソッあいつなかなかやるな……うん? おいまだこんな所にいたのか? もっと離れてろ!」

 

「えっ!?」

 

「ハァァァ──!!」

 

 21号(悪)が両手を上げ黒い巨大なエネルギーの玉を作り出し投げてきた。

 

「もっと下がれ!」

 

 そう言うとカシューは飛び出す。そして拳に力を込める。

 

「龍拳!!」

 

 突き上げた拳が黄金の龍に見えた。そしてエネルギーの玉を消し去り、拳が21号(悪)を捉えた。

 だが命中するも威力が落ちていたため決定打にはならず、反撃の回し蹴りを放ってきた。それを回避すると21号(悪)の背後に回り込み両手を合わせて拳を作り放ち地面に叩き落とした。

 すぐに起き上がった21号(悪)の背後に周り空中に蹴り上げる。

 

「一気に決める!」

 

 カシューは両腕を横に広げて大の字になり気を高める。気が高まるにつれ雷の様な物が走り地面の一部が浮かび上がる。更にカシューの筋肉が膨張し顔には血管が浮き出ていた。

 

「これで終わりだ!! ファイナルフラシュ──ーっ!!!」

 

 21号(悪)がエネルギー波で応戦するも虚しくそのままファイナルフラッシュに飲み込まれてしまった。

 その威力は凄まじく、そのまま黄色い光が天高く上がり、宇宙空間までおそらく伸びていた。

 

「はぁはぁはぁ……どうだ」

 

 辺りを見渡す限りは21号(悪)の姿はない。それにしてもギリギリだった。アイツの回復能力を甘く見ていた。打つ瞬間、今まで与えた傷が全て回復していた。あのまま続けていたらいずれ負けていただろう。

 

「おーい」

 

「おう……赤嶺」

 

「勝ったの?」

 

「まだ油断するな。あいつの気は元々感じない。もしもって事があるからな、まだ警戒していた方がいい」

 

 息切れしているカシューの元に赤嶺達が駆けつけた。息を整えながら警戒を促していると、人影が飛んできた。

 

「先生!」

 

「よかった、無事だったんですね。それでもう一人の私は?」

 

「それならあの人がバーって」

 

 赤嶺に似た勇者が合流した21号に擬音まみれで状況説明をしていた。

「あれで伝わるのか?」そう思いながらスカウターを付けると念の為生体反応を探そうとする。

 その時、全身に悪寒が走った。

 

「避けろ!!」

 

「えっ!?」

 

 カシューの声が響いたと同時に、紫色のレーザーがこちらに飛んできた。気づいたのはカシューのみで、他はいまだに状況を理解していなかった。

 

「いたた、一体何が?」

 

「あの男の人の声が聞こえて?」

 

「……カシューさん!?」

 

 カシューは肩を抑えて倒れていた。肩からは赤いシミの様なものが見える。

 あの刹那21号と赤嶺、そして他の勇者達全員をカシューが押し倒し、レーザーの射程から無理矢理外していた。

 

「当たった、当たった。やっぱり他を攻撃すれば庇うと思ったのよね」

 

「お前は!」

 

 そこには確かに消し飛ばしたと思っていた21号(悪)が先程よりも禍々しい気を放ちながら立っていた。

 

「やっぱり仕留めきれていなかったか……くっ!」

 だがどういうことだ? さっきとは全く別の気を感じる。だが今やることは! 

 

「カシューさん! ダメです!」

 

「くらえ!」

 

 カシューは超サイヤ人に変身すると無事な方の手で気弾を作り他を振り切って突撃して行った。21号(悪)に向かって大きな気弾を放つ。それを奴は避けようとも弾こうともせず、ただ自分の額に指を当てていた。

 

「まさか!?」

 

 気弾が爆発が起きる直前、カシューは蹴り飛ばされた。地面を何度も跳ね神樹の根っこに大きなクレーターを作り止まった。

 

「ガハッ! 瞬間移動だと!?」

 

 すぐに起きあがろうとするもカシューの足と腹をレーザーが突き抜けた。前のめりで地面に倒れる。直後燃えるような痛みと血が引いた様な寒さが全身を襲う。

 

「まずい意識が朦朧としてきた……」

 

 目の前が暗く。くそ血を流しすぎた。カシューの意識が暗闇に落ちそうになっていた。

 

 

 ────────────────────

 

 復活した21号(悪)がカシューさんを蹴り飛ばしたと思ったら……突然姿が消えた。

 気づいた時には私と結城ちゃん、それに高嶋先輩は地面に倒れていた。遅れて全身に痛みが走り、この時初めて攻撃された事に気づいた。

 私が最後に耳にしたのは遠くで誰かの声が聞こえ……る。

 こうして何もできず私達は意識を失った。

 

「皆さん!!」

 

「まさか一撃なんて、この子達を食べてもたいした力はつかなそうね」

 

「なんで無傷なの!?」

 

「さぁ?」

 

 21号(悪)もなぜ自分が無事なのかわかっていなかった。けれども少し前より大幅にパワーアップしたことは明白だった結城さんと高嶋さんの二人を肘打ちで倒し、赤嶺さんも掌底で三人が気づかないうちに倒した。気絶しているだけだと思うけれど、頼みの綱であるカシューさんですら倒された。戦況は絶望的だ。

 

「後は貴方を始末すればゆっくりこの世界の力を奪えるわ」

 

 そう言うと手のひらに気弾を作った。

 

「じゃあね」

 

 気弾を発射する瞬間、近くに雷が落ちたかと思える様な凄まじい気を感じた。

 カシューの飛ばされた方角に光の柱が立っていた。

 

「何?」

 

「それをどうするつもりだ?」

 

 21号(悪)の背後に既に超サイヤ人2に変身したカシューが回り込んでいた。そして気弾を放つよりも早く21号(悪)を殴り飛ばした。

 

「無事だったんですね」

 

 よく見ると道着に穴と赤いシミが着いているが、傷が完全に回復していた。不思議に思っていると

 

「ああ、傷のことか仙豆を食ったんだ」

 

 仙豆……一粒食べれば、10日間は何も食べずにいられ、更に傷が癒え、体力も回復する。奇跡のアイテムだ。それをカシューは緊急用に持っていた三粒のうちの一つを食べた。

 

 意識を失う直前、星屑に手を噛まれてなんとか持ち堪えた。星屑の表情はわからなかったがなぜか焦っている様に見えて急いで仙豆を食べてここまで戻って来れた。

 

「やつが近づいてくる。こっちは任せろ! あいつらを頼む」

 

「……分かりました」

 

 急いで気絶している三人の所に向かう。この時正直私は、彼は時間稼ぎに来たとしか思っていなかった。今の彼が勝てる姿が想像できなかった。しかしその不安は杞憂で終わる。

 

「いいの? 全員で戦わなくて?」

 

「俺一人で十分だ」

 

「まぁいいわ。さっさとあなたを食べると……!」

 

「はぁ!」

 

「危ないわね!」

 

 カシューは話し終える前に蹴りを放つ。21号(悪)は一瞬早く気付き回避する。

 

「外したか」

 

「そう、そんなに早く食べられたいのね!!」

 

 21号(悪)に怒りの表情が見える。

 どうやらさっきの一撃で完全にキレたみたいだ。怒りのままパンチを放つそれを冷静にカウンターする。今度は蹴りを放つも腕でガードされ逆に片足を足払いして転ばせそこにパンチを放つ。転がり回避されたが起き上がると同時に近づき攻撃を仕掛ける。

 

「ガハッ!」

 

「どうした? 俺を食べるんじゃなかったのか?」

 

「このぉ!」

 

 反撃する21号(悪)だったが、その全ての攻撃をいなされ、手痛い反撃を受けていた。先程まで力の差はそれほど開いていなかったはずが、今は一方的な状態になっていた。

 

「どうした? こんなもんか?」

 

 カシューは常に拳が届く間合いギリギリまで詰め寄り、ヤツの動きを制限していた。

 一瞬でも判断を誤れば回復される。かなりキツイが今はこれしかない。

 チャンスは一度。

 

「何? なんなの? コイツは!!」

 

 21号(悪)は恐怖していた。体力の配分すら気にせず、全ての攻撃を的確にカウンターしてくる。気づけば体の傷も増えてきた。このままだとやられる。

 

「隙だらけだ」

 

「しまっ」

 

 一瞬意識がそれた所をカシューは見逃さなかった。重い拳の一撃が21号(悪)の腹部を捉えた。間髪入れず蹴り上げる。

 そしてファイナルフラッシュの体勢をとる。

 

「させるかぁ!!」

 

 空中で急停止して片手からフルパワーエネルギー波を放った。まだカシューは打てる状態では無いのをわかっていた。

 少しずつ目の前にまでエネルギー波が迫る。間に合わなければこの世界を消し去るほどの威力だがそれでもカシューは限界まで気を溜めていた。

 

「ファイナルフラッシュ!!」

 

 後数メートルでぶつかるという所で、ファイナルフラッシュとエネルギー波がぶつかり合う。

 そしてエネルギー波を押し返す。

 

「うぉぉぉ──────!!!」

 

「はぁぁぁ──────!!!」

 

 ちょうど中間くらいまで押し返えした所で拮抗する。そして相殺され大爆発がおこった。地面は砕け、砂塵は舞い、衝撃波は遠くまで避難していた勇者達の所まで届いていた。

 

「やったわ! あれさえなんとかしてしまえば、あとは……」

 

 その時だった……視界を塞ぐ程の砂塵の中に金色の光が見えた。

 

「なんで……ここに!?」

 

「これで終わりだ! ……龍拳!!」

 

 カシューはあの爆炎をものともせず最短で21号(悪)の元まで近づくと渾身の龍拳を放った。

 黄金の龍が通り21号(悪)体が爆発そして肉片一つ残さず消し飛ばした。

 

「俺の勝ちだ!」

 

 そう口にした途端辺りが白くなり樹海化した空間が元に戻り始めた。

 こうして人造人間21号(悪)との戦いは終わった。

 

 

 ……続く。

 




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